パワレポ連動企画

10年前のマシンでWindows 10を動かす ~アップグレード実証1~

【パワレポ連動:チョイ古 自作PC再生計画(25)】

DOS/V POWER REPORT 2016年7月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2016年7月号」の第1特集「あなたのPCが生まれ変わる!3年、5年、10年前のパーツもめんどう見ます!! チョイ古 自作PC再生計画」を掲載する。

 第25回目からは旧世代のPCを実際にアップグレードし、どの程度の性能向上が見込めるかを検証していく。まずは利用者も未だ多いと思われるCore 2 Duo搭載PCで、Windows 10を快適に動かすプランを紹介する。

 本特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2016年7月号は全国書店、ネット通販にて5月28日(土)に発売。第2特集はコストパフォーマンスに優れる大容量ディスクを用途別に解説する「容量単価×用途別が正解です 最新HDD購入案内」を掲載。そのほか、あなたのPCのメインメモリ、有効活用しませんか?「16GBオーバーのメインメモリはこう使え! Windows 10時代のRAMディスク活用術」、持ち運びに便利な大容量で高速なフラッシュメモリ「ベンチで性能が丸分かり! 一つは持ちたい最新USB 3.1/3.0メモリ」、スペースが許せば考えたい「ウルトラワイドもオーバー30型も PC体験を一変させる大型液晶ディスプレイ」など、特別企画も満載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は、自作PCの組み立てやメンテナンスに関わる「?」を解決!「39のギモンにベストアンサー! PC自作Q&A事典2016」だ。


-チョイ古 自作PC再生計画-
10年前のマシンでWindows 10を動かす ~アップグレード実証1~


10年前のマシンで Windows 10を動かす

 Windows XP世代のマシンでも、メモリやストレージを強化すればWindows 10を実用的な速度で動かすことができる。その方法を紹介しよう。

Core 2 Duoマシンを「現役」にする

10年前のCore 2 Duoマシン

 アップグレードするのは、Windows XP時代の2006年に発売されたCPU、Core 2 Duo E6600をベースとしたマシン。詳細なスペックは下の表のとおりだ。

 Core 2 Duo E6600は、発売当時、高性能かつ省電力ということで高い人気を誇ったが、10年の月日が経った現在では、その性能はさすがに現行CPUと比ぶべくもない。また、G965チップセットを搭載したマザーボードも、サポートするインターフェースが旧世代であるなど、現行製品と比べると古くささは否めない。しかし、この世代のシステムであっても、現行のパーツによる強化が可能であり、弱い部分を補強することで、Windows 10マシンとしてまだまだ現役で使うことができる。その実践方法を紹介していくので、ぜひ参考にしてほしい。

カテゴリー製品名
CPUIntel Core 2 Duo E6600(2.4GHz)
マザーボードIntel DG965RY(Intel G965)
メモリPC2-5300 DDR2 SDRAM 1GB×2
グラフィックス機能Intel GMA X3000(Intel G965内蔵)
HDDSeagete Barracuda 7200.10 ST3320620AS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、320GB)
光学ドライブパイオニア DVR-111BK(DVD±R/RW/-RAM)
電源ユニットアビー AS Power ER-1480A(480W、ATX)

【Windows 10はインストールできるのか?】

 Windows 10のハードウェア要件は、動作周波数1GHz以上のCPU、2GB以上のメモリ(64bit版)など。意外と要求が低いので、Core 2 Duo E6600世代のマシンでも十分対応可能だ。今回のベースマシンでも、UEFIモードには対応しないもののインストールは普通に行なうことができた。

 問題は各パーツのドライバだ。今回使用したIntelのG965マザーでは、PCIシンプル通信コントローラ以外は自動でインストールされたが、多くのドライバが自動でインストールされないことも予想される。その場合は、メーカーのWebサイトなどから入手する必要があるので留意しておきたい。

 なお、対応ドライバが入手できない場合は、その機能はあきらめるしかない。

アップグレード前のスコア

【検証環境】

OS:Windows 10 Pro 64bit版
アイドル時:OS起動10分後の値
高負荷時:PCMark 8- Home Accelerated実行時の最大値
電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

CPUをアップグレードする   オススメ度★★★

 PCの性能に直結するパーツと言えばCPU。まずはここから検証したい。今回使用しているIntel製のG965マザーボードは、FSB1,066MHzにしか対応していないため、右の表のとおり、Core 2 Duo E6700、Core 2 Quad Q6600、Core 2 Quad Q6700の三つがアップグレードの選択肢だ。なお、新製品は入手困難なため、中古品を購入するしかない。

【Core 2 Duo E6600とアップグレード候補のCPUのスペック】
Core 2 Duo E6600Core 2 Duo E6700Core 2 Quad Q6600Core 2 Quad Q6700
動作周波数2.4GHz2.66GHz2.4GHz2.66GHz
コア/スレッド数2/22/24/44/4
FSB1,066MHz1,066MHz1,066MHz1,066MHz
TDP65W65W105W105W
2次キャッシュ4MB4MB8MB8MB
対応ソケットLGA775LGA775LGA775LGA775
中古実売価格1,000円前後2,000円前後3,000円前後6,000円前後
Core 2 Quad Q6600にアップグレード
Core 2 Quad Q6600とQ6700の性能差は小さいが、中古市場価格が倍ほど違うので、コストパフォーマンスを考慮してQ6600を選択した

 今回は、コストパフォーマンスも考慮してCore 2 Quad Q6600にアップグレードすることとした。

 その効果は下のとおり、CPUの単体性能(マルチスレッド処理)で76%性能が向上、またシステム全体の性能も9%向上した。やはりCPUのアップグレードは効果的だ。

CPU交換によるCINEBENCH R15の結果
CPU交換によるPCMarck 8 v2.7.613の結果

メモリを増設する   オススメ度★★

8GB(4GB+4GB)に換装
現状、DDR2メモリは中古で購入するしかない。PC2-6400 DDR2 SDRAMの4GBの実売価格は3,000円前後。2本だと6,000円前後で入手できる

 ハードウェア要件を満たしているとはいえ、メモリ2GBでWindows 10の64bit版を動かすとストレスがたまる。実際、メニューを表示させたりするにも動作がもたつく。メモリにフォーカスして効果的なアップグレードを探ることにした。

 試したのは、PC2-6400 DDR2 SDRAMを2GB(1GB+1GB)増設、4GB(2GB+2GB)増設、8GB(4GB+4GB)に換装の3パターン。まず2GBを追加して4GBにしたところ、エクスペリエンスインデックスのメモリスコアが5.5から5.8にアップし、実際の操作感も格段に向上した。それ以上の増設では、エクスペリエンスインデックスのスコアは変わらず、PCMark 8のスコアも下の結果のとおり、あまり差が付いていないが、実際の操作感はメモリサイズが多くなるにつれ快適になった。

メモリ交換によるPCMarck 8 v2.7.613の結果

 使用しているマザーボードは8GBまでしか認識できないので、ここでは、メモリを4GB+4GBに換装、最大容量の8GBを搭載することとしたい。

システムドライブをSSDにする   オススメ度★★★

240GBのSSDをシステムドライブに
Serial ATA 2.5接続のため性能は300MB/sで頭打ちとなるので、SSDは性能よりも価格重視で選ぶとよい。ここではコストパフォーマンスの高いADATAの240GBモデルを選択した

 10年前のシステムではチップセットがSerial ATA 2.5(3Gbps)にしか対応しておらず、Serial ATA 3.0(6Gbps)対応の最新SSDを使用しても性能をフルに発揮させることはできない。

 しかし、下のテスト結果を見ていただけば分かるとおり、Serial ATA 2.5対応のHDDと比べるとその性能差は歴然としており、システムドライブをSSDにすることで、システム全体の性能を向上させることができる。

今回使用しているSSDは、Serial ATA 3.0環境ではもっと性能が出るが、このマシンではSerial ATA 2.5接続のため、300MB/s弱で頭打ちになっている。それでもSerial ATA 2.5世代のHDDと比べるとその性能差は圧倒的と言える
SSD交換による結果

 システム全体のパフォーマンスを計測するPCMark 8の結果ではスコアが3%しか向上していないため、効果を数値的に見て取ることは難しいが、システムキャッシュやWebブラウザなどのキャッシュの読み出し速度の向上など、SSD化の恩恵はいたるところに現われるので、実際の使用感はかなり向上する。

【Serial ATAのリビジョンに注意】

今回のマシンのマザーボードに搭載されているチップセットのICH8はSerial ATA 2.5の対応にとどまる

 古いマシンをアップグレードする場合は、サポートするSerial ATAのリビジョンに注意したい。Serial ATA 2.5は、最大転送速度が3Gbpsなので、最新の6Gbps転送が可能なSerial ATA 3.0対応SSDの性能をフルに発揮できない。

 ちなみに、IntelのチップセットでSerial ATA 3.0をサポートするのは、2011年に発売されたSandy Bridge対応のP67/H67などからである。

【2.5インチドライブを装着するマウンタが必要】

左は5インチベイに2.5インチドライブを装着できるアイネックス「HDM-32」(実売価格:1,000円前後)。右は3.5インチベイに2.5インチドライブを装着できるアイネックス「HDM-29」(実売価格:600円前後)

 古いPCケースには2.5インチドライブベイが装備されていないことが多い。その場合は、5インチベイまたは3.5インチベイに2.5インチドライブを装着するアダプタを活用しよう。

【HDDはどうする?】

HDDはデータドライブとして使おう

 システムドライブとして使用していたHDDは、性能が低いとはいえ、まだ活用することができる。システムをSSDに移行したら、データ用ドライブとして使用するとよい。

ビデオカードを増設してゲーム対応に   オススメ度★★

最新3Dゲームに対応するGeForce GTX 950搭載ビデオカードを増設
NVIDIA GeForce GTX 950を搭載したビデオカード。下のテスト結果のとおり、ファイナルファンタジーXIVクラスのゲームをプレイするには十分な性能を持つ。補助電源を必要としないので、PCI Express補助電源コネクタを持たない電源ユニットを搭載している古いマシンのアップグレードに適している

 今回アップグレードするマシンはビデオカードを搭載しておらず、チップセットのG965が内蔵するグラフィックス機能(Intel GMA X3000)を使用しているため、ストリートファイター4などの旧世代のゲームもまともにプレイすることができない。しかし、この世代のマザーボードはPCI Express 2.0 x16スロットを装備しているので、ビデオカードを搭載すれば、最新世代のゲームもプレイすることが可能になる。

 ちなみにこの世代のマシンにビデオカードを搭載するなら、ミドルレンジクラスのビデオカードがよい。と言うのは、ハイエンドのビデオカードを搭載しても、CPUなどの性能がボトルネックとなり、ゲームプレイにおいてその性能を十分に活かし切ることができないし、電源も大出力のものに交換する必要が出てくるからだ。そういった観点からここではGeForce GTX 950搭載ビデオカードを搭載することにした。

旧世代のゲームもプレイ困難だったが、人気の3Dゲームのプレイが可能に!
旧世代のストリートファイターIVもプレイ困難であったが、最新世代のファイナルファンタジーXIVがHD解像度の最高品質で快適にプレイできるようになった
ストリートファイターIV (c)CAPCOM U.S.A., INC. 2008,2009 ALL RIGHTS RESERVED.
ファイナルファンタジーXIV 蒼天のイシュガルド (c)2010-2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
ビデオカード増設によるファイナルファンタジー XIV:蒼天のイシュガルドベンチマークの結果
ビデオカード増設による3DMark v2.0.2067の結果

【ディスプレイ出力の増設なら低価格ビデオカードでOK】

HDMIを装備する低価格ビデオカード
AMD Radeon HD 5450を搭載した玄人志向のRH5450- LE1GB/D3/HS。ディスプレイ出力には、HDMI、DVI-D、Dsub15ピンを装備する。実売価格:3,500円前後

 今回使用しているマシンはディスプレイ出力がDsub15ピンしかない。こういうマシンにHDMIなどのディスプレイ出力インターフェースを増設したいだけであれば、数万円もするような最新ゲーム対応の高性能ビデオカードを使用する必要はない。4,000円以内で購入できるAMD Radeon HD 5450やNVIDIA GeForce 210を搭載した低価格ビデオカードで十分だ。これらのビデオカードは、低消費電力で補助電源が必要なく、古いマシンで使うのに適している。

CPU、メモリ、SSD、ビデオカードをアップグレードする   オススメ度★★

 ここまでのすべてをアップグレードすると下のとおり、かなり性能が向上する。Windows 10が動くのはもちろん、ゲームを含め幅広い用途に対応可能だ。しかし、その費用は、新規に低コストマシンを作成するよりも安くはあるが微妙なところ。お金をかけるならワンポイントかツーポイントのアップグレードにしておくのが無難。それ以上は将来性のある新規マシンとよく比べてみよう。

【使用したパーツ】
カテゴリー製品名実売価格
CPUIntel Core 2 Quad Q6600(2.4GHz)※中古3,000円前後
メモリPC2-6400 DDR2 SDRAM 4GB×2 ※中古6,000円前後
SSD ADATAPremier SP550 ASP550SS3-240GM-C(Serial ATA 3.0、TLC、240GB)7,500円前後
ビデオカード玄人志向 GF-GTX950-E2GB/OC/ECO(NVIDIA GeForce GTX 950)20,000円前後
36,500円前後
アップグレード後のスコア

【拡張カードで機能を追加する】

PCI Express x1接続のUSB 3.0カード
2基のUSB 3.0ポートと内部ピンヘッダを増設できるエアリアのOver Fender R SD-PEU3R-2E2IL。実売価格:2,000円前後

 USB 3.0カードを使用すればUSB 3.0ポートを増設することもできる。

 ただ覚えておきたいのは、古いマシンのPCI Expressはリビジョンが古く帯域が狭いため、USB 3.0の性能がフルに発揮できないこと。それでも下のテスト結果のとおりUSB 2.0よりは大幅に性能が向上するので、増設する価値はある。

CrystalDiskMark 5.1.2
RAID 0/1に対応したSerial ATAカード
RAID 0/1に対応した2基のSerial ATA 3.0ポートを増設できるエアリアのRAID JET SD-PESA3-2RL。実売価格:2,500円前後

 古いマシンではPCI Expressの帯域の問題でSSDの性能を発揮し切れないが、RAIDカードを増設し、SSD2台でRAID 0を組めばストレージ性能をかなり向上させることができる。

【検証環境】

SSD:Micron Crucial MX100 CT256MX100SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)
Serial ATA-USB 3.0変換ケーブル:サンワサプライ USB-CVIDE3

【問い合わせ先】

エアリア:Webサイトのフォームから/http://www.area-powers.jp/


[Text by 滝 伸次]


DOS/V POWER REPORT 2016年7月号は5月28日(土)発売】

★第1特集「あなたのPCが生まれ変わる! 3年、5年、10年前のパーツもめんどう見ます!! 『チョイ古自作PC再生計画』」
★第2特集「容量単価×用途別が正解です 『最新HDD購入案内』」
★特別企画「16GBオーバーのメインメモリはこう使え! 『Windows 10時代のRAMディスク活用術』」「ベンチで性能が丸分かり! 『一つは持ちたい最新USB 3.1/3.0メモリ』」「ウルトラワイドもオーバー30型も 『PC体験を一変させる大型液晶ディスプレイ』」
★連載「最新自作計画 ~最新ケースで作るパワフル小型マシン~」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」
★ 特別付録「39のギモンにベストアンサー! 『PC自作Q&A辞典2016』」(雑誌のみ別途付録、電子版では本誌巻末に収録)
★ 雑誌を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 毎月700円(税込)で最新号が読める 直販電子版 月額プランも受付中
http://book.impress.co.jp/teiki/dvpr/2016-05-23-0956.php