パワレポ連動企画

Core i7-4790K+Mini-ITX環境を常用するための冷却術

【冷却まわりの新鉄則、教えます(12)】

DOS/V POWER REPORT 9月号

 このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌9月号の特集記事「冷却周まわりの新たな鉄則、教えます~冷却・静音、これが答えだ!~」をほぼまるごと掲載する。

 第十二回目の今回は、高性能CPU「Core i7-4790K」とMini-ITXマザーボードからなる小型PCを、徹底的に冷却・静音化するテクニックを紹介する。

 なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 9月号は絶賛発売中。9月号では今回の特集のほか、USBバスパワーで動作する冷却グッズや薄型CPUクーラーの紹介、6TBクラスの大容量HDD特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事が載っている。また、100個の自作PC問題を載せた「PC自作力 2014年度夏期試験」が小冊子として付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。


- DOS/V POWER REPORT 2014年9月号 Special Edition -


狭いスペースをどう活かす?
Mini-ITX環境でCore i7-4790Kを常用するための冷却術

 冷却強化や静音化の選択肢が限られるMini-ITXプラットフォーム。しかし、パーツの選択やカスタマイズしだいで、発熱の大きい高性能CPUの常用も可能だ。

最新の高性能Mini-ITXマシンをベースに小型PCの冷却を研究

 高性能CPUの冷却性能を強化する一般的な手段は、大型の高性能CPUクーラーに交換したり、ケースファンを追加したりしてPCケース内部のエアフロー効率を高めることだ。しかし、Mini-ITXなどの小型PCでは、内部スペースやパーツレイアウトの関係上、搭載可能なCPUクーラーの選択肢が狭く、ケースファンも追加できないことがある。

 また、PCケースに大型CPUクーラーを搭載できるスペースがあったとしても、使用するマザーボード側のレイアウトによって制限されることも、めずらしくはない。このように小型PCは、もともと冷却性能の強化や静音化に対する制限がとても多い。

冷却性能や静音性の強化手段が限られる

 しかし、最近では小型PCに対する需要の高まりを反映してか、従来の小型PCの弱点をカバーした、新世代のPCケースやマザーボードが登場している。使いたいパーツを吟味すれば、冷却性能や静音性の強化も以前よりはやりやすくなっており、高性能な小型PCを作りやすい環境が整ってきている。

 そこで今回は、高性能だが発熱も大きいハイエンドCPU「Core i7-4790K」を搭載したMini-ITXマシンをベースに、安定した動作と高い静音性を両立する冷却法を見つけるべく、さまざまなテストを行なってみた。PCケースは小型ながら内部が広く、高さ18cmまでのCPUクーラーを搭載可能な「PC-Q33」を採用している。さまざまなカスタマイズと調整を行なうことで、CPU温度や動作音がどのように変化していくのかを検証する。

【ケースはPCQ33を使用】
最新のMini-ITXケースは内部スペースにも余裕があり、大型のCPUクーラーも搭載しやすいものが多い。「PC-Q33」はその代表格だ
【マザーボードのレイアウトに注意】
Mini-ITXマザーボードは、製品によってCPUソケットの位置が異なるため、使用するCPUクーラーの選択は慎重に
使用したベースマシンの構成
カテゴリー製品名実売価格
CPUIntel Core i7-4790K(4GHz)37,000円前後
マザーボードGIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-Z97N-Gaming 5(rev. 1.0)(Intel Z97)17,000円前後
メモリCFD販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)9,500円前後
グラフィックス機能Core i7-4790K 内蔵(Intel HD Graphics 4600)-
SSDMicron Technology Crucial MX100 CT256MX100SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)16,000円前後
電源ユニットCorsair Components CX500M(500W、80PLUS Bronze)6,500円前後
PCケースLian Li Industrial PC-Q33A(Mini-ITX)12,000円前後
CPUクーラーIntel Core i7-4790K付属クーラー-

最新CPUならMini-ITX+リテールクーラーで余裕……じゃなかった!

【スタンダードに組んだ状態】
CPU付属のCPUクーラーを使用し、マニュアルどおりに組んでみた。マザーボード周辺にはケースのフレームがないため、テスト台のような感覚で組み込める

 まずはCore i7-4790K付属の標準クーラーを組み込み、冷却面のチューニングをとくに行なっていない状態でCPU温度や動作音を計測してみた。ちなみに、以前同じケースを使った構成で、Core i7-4770Kを組み込んだときのCPU温度は高負荷時で88℃。ギリギリ常用可能と言える温度だったので、今回もとりあえず大丈夫だろうと思ったのだが、実際に計測してみたら何と99℃!

CPU温度と動作音
【ファンコントロールはスタンダードモード】
マザーボードのファンコントロール設定は、CPUクーラーとケースファンともに「スタンダード」に設定した

 これは、とてもではないが常用可能な数値ではない。それなりにスペースの広いPC-Q33にもかかわらず、小型PCケースの限界がいきなり浮き彫りになった格好だ。

 負荷がさらに続く状況では100℃に達する可能性もある。またこんな状況では、TurboBoostの効果に悪影響がありそうなので、Core i7-4790Kを使う意味が薄れる。まずはCPUクーラーを変更して、CPU温度を下げることを目標にする。

交換するCPUクーラーを選ぶ

 小型のPCケースで使いやすいのは、リテールクーラーと同じように高さが低いタイプや、やや高さはあるが、マザーボードやPCケースの部品に干渉しにくい小型のサイドフロータイプだ。

【ケースによって使えるクーラーは異なる】
左から阿修羅、刀4、リテールクーラー、小太刀。高性能CPUを使うなら、可能な限り大型のCPUクーラーを選びたい
【大型CPUクーラーを搭載】
サイズの「阿修羅」を搭載した状態。PC-Q33のように、内部スペースに余裕のある小型ケースであれば、こうした大型の高性能CPUクーラーも利用可能だ

 ここでは前者の代表例として「サイズ 小太刀」、後者の代表例として「サイズ 刀4」を選択した。さらにPC-Q33を含めて、最近のMini-ITXケースは大型クーラーを搭載できるものが増えているので、大型のサイドフロータイプ「サイズ 阿修羅」も加えて冷却性能をテストした。

 阿修羅の冷却性能は、ほかの二つと比べるとダントツの成績だった。ケースに組み込んでみても冷却性能は低下せず、動作音もまずまず静かだった。

【バラック状態でのCPU温度】
もっともCPU温度が低かったのは阿修羅。付属のCPUクーラーと比較すると、高負荷時は何と25℃も低い
CPU温度と動作音(阿修羅使用時)

さらなる冷却性能の向上にチャレンジ!

【阿修羅を搭載した状態でさらなる冷却性能の向上を目指す】
CPUクーラーを阿修羅に変更した状態。スペースに余裕のあるPC-Q33なので、冷却パーツの配置はあれこれアレンジできる

 CPUクーラーを阿修羅に交換した際の結果は満足のゆくものだった。しかし、最新自作パーツの可能性をもっと追求してみたい。そこで、ここではCPUクーラーのファンの位置や向き、数などを変更することで、CPU温度や動作音がどのように変化するのかを検証してみた。

 試してみたのは4パターンで、それぞれCPUクーラーを阿修羅に交換した上記の状態と比較している。

OCはムリだった

 ちなみに、試しにマザーボード付属のOCツール「EasyTune」を使い、全コア4.5GHz動作に設定して負荷テストを行なってみたところ、1分も経たずにCPU温度が100℃に達したため、テストを続行できなかった。やはりOCまで視野に入れると、大型CPUクーラーを搭載可能なPC-Q33でも厳しいということだ。

パターン1 CPUクーラーのファンの位置を変更

CPUクーラーのファンは、通常ヒートシンクに風を吹き付ける方向で設置するが、吸い出す方向に変更してみた
【CPU温度と動作音】
高負荷時の温度は変わらず、アイドル時の温度が1℃だけ上昇している

パターン2 CPUクーラーにファンを追加

阿修羅に12cm角の「サイズ 隼120 PWM 1300rpm」を追加してみた。追加するにあたって、PWM対応のファン分岐ケーブルを使用している
【CPU温度と動作音】
ファン1基に比べて、アイドル時で1℃、高負荷時で2℃下がった

パターン3 ケースファンとCPUクーラーのファンを吸気方向に変更

排気方向に取り付けられているケースファンとCPUクーラーのファンを、吸気方向に変更してみた
【CPU温度と動作音】
吸気構成にするだけで、高負荷時で4℃と大きく下がった

パターン4 吸気方向に変更後ファンを追加

ケースファンとCPUクーラーのファンを吸気方向に変更して、さらにパターン2と同じ12cm角ファンを追加
【CPU温度と動作音】
アイドル時が1℃下がったものの、高負荷時はファンを追加しないときと変わらず

冷却性能を維持したまま、動作音を低減できるか?

【ファン回転数をコントロールして静音化】
マザーボード付属のファンコントロールソフトも駆使して、静音化を図ってみる

 CPU温度をさらに下げることに成功したので、今度は気になる動作音の低減に挑戦してみよう。ここでは、上記で冷却と静音性の両面でよい成績だった「ケースファンとCPUクーラーのファンを吸気方向に変更」をベースにして、マザーボード付属のファンコントロールユーティリティ「Smart Fan」や追加のファンを使い、ファンの回転数を調整することで静音化を図り、CPU温度とのバランスを見て、最適な設定を探る。

アイドル時の温度は低くなったが、高負荷時の動作音は少し上がってしまった
アイドル時の動作音は低くなったが、高負荷時の温度が上昇してしまった
暗騒音近くまで動作音を抑えられたが、温度はアイドル時、高負荷時ともに上昇した
動作音は2番目に低く、温度の上昇も比較的抑えられている。これをベスト設定としたい

【まとめ】

●高性能CPUを使うなら、大型CPUクーラーを付けられるPCケースを選びたい
●ファンの吸排気方向は意外と重要
●ファンを追加して低回転で運用すると、静音化しやすい


【ビデオカードを追加してみた】

ビデオカードを挿す場合は条件が変わる

【ビデオカードと大型CPUクーラーを同時に搭載】
GA-Z97N-Gaming 5(rev. 1.0)は、阿修羅のような大型CPUクーラーとビデオカードを同時に装着できる

 阿修羅をケース内に搭載した状態を基本に、エアフローを排気方向と吸気方向のそれぞれの状態でビデオカードを挿して、各部の温度を計測したのが下のグラフだ。

 吸気構成だとCPU温度が低くなるのは、前述の「さらなる冷却性能の向上にチャレンジ!」のパターン3と変わらないが、GPU温度は、排気構成に比べ5℃も高くなってしまった。CPUクーラーの排熱がケース内にとどまり、ビデオカードの冷却に悪影響を与えたのだろう。また、動作音も吸気方向のほうが、かなり大きくなってしまっている。

 ビデオカードなしなら吸気構成にカスタマイズするのがベストだが、ビデオカードを挿すなら排気構成にしたほうがよさそうだ。

ファンの向きと各部の温度
動作音


【検証環境】

室温:26.2℃、暗騒音:31.2dB、動作音測定距離:ケース正面から20cm、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT4.4.0のPOWER SUPPLY テストを10分間動作させたときの最大値、CPU温度:HWMonitor 1.25のCPU Temperatures のPackageの値

[Text by 竹内亮介]


DOS/V POWER REPORT 9月号は7月29日(火)発売】

★巻頭特集「冷却周まわりの新たな鉄則、教えます~冷却・静音、これが答えだ!~」はもちろん、USBバスパワーで動作する冷却グッズや薄型CPUクーラーの紹介、6TBクラスの大容量HDD特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事を掲載

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(AKIBA PC Hotline!編集部)