パワレポ連動企画
ITライターが作るスタンダードPC ~その1~
【金と銀のPC自作プラン(1)】
(2014/9/29 12:05)
このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌11月号の特集記事「対決!金と銀のPC自作プラン」をほぼまるごと掲載する。
今特集では、DOS/V POWER REPORTが掲示した4つのテーマについて、それぞれ2名のライターが独自の解釈でPCを作成、そのポイントを解説する。
第一回目の今回は、予算15万円で製作する「スタンダードマシン その1」を紹介する。ITライター「鈴木雅暢」氏がパフォーマンスとエコのバランスを考えて選んだ一品だ。なお、記事の末尾で読者投票を実施しているので、このPCが気に入った人はぜひ投票をして頂きたい。
この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 11月号は、絶賛発売中。11月号では今回の特集のほか、8月末に発売されたHaswell-Eの解説記事や、最新ビデオカードの特集、セミファンレス電源カタログ、新世代ベアボーンPC特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事が載っている。また、PCケースを約160種集めた「PCケース パーフェクトコレクション 160」が小冊子として付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。
- DOS/V POWER REPORT 2014年11月号 Special Edition -
予算15万円で作るスタンダードマシン その1
パフォーマンスとエコをバランス、microATXの省電力PC
製作者:鈴木雅暢
合理性、高効率、最適化を好むITライター。それゆえPCパーツは常に最新に保たないと落ち着かないが、趣味のJRAへの無期限積み立て定期預金が家計を圧迫している。早く解約したい。
快適な性能と使い勝手を確保、その上でエコもよくばる
テーマはスタンダードマシンということで、構成の際に重視したのは、用途をあまり限定しない汎用性と、快適に運用できる使い勝手、拡張の余地を残すこと、そしてそれらとコストのバランスを取ることだ。その上で、Haswellを中心とした最新パーツの電力効率を活かし、エコや静音という要素もよくばってしまおうというのがコンセプトだ。
このエコや静音という要素を意識し過ぎると、ついついコストを度外視し、完全ファンレス化など偏った構成に走ってしまいがちなので、あくまでもスタンダードマシンの範疇から逸脱しないことを大前提として課している。また、カリカリに追い込んだチューニングありきではなく、パーツ本来の特徴を活かすことで誰でもムリなく再現できる構成を目指した。
そういった意味でも、マザーボードやPCケースのパーツ選択に関しては、拡張性やスペース効率を考えて、microATXフォームファクタ―の製品を選択している。
パーツ選定に際しては、上記の条件のほかに、エコっぽいイメージを演出するため、見た目、とくにカラーリングについてはかなり意識している。レッドを多用した製品はゲームマシンのイメージが強いし、ゴールドなどのメタリックカラーやLEDでピカピカと光るギミックを備えたモデルもエコのイメージに反するので、そういうものは避けている。
また、「グリーンPC」や「グリーンサーバー」といった言葉があるように、エコのイメージカラーとしてはグリーンを使うことが多い。そのため、グリーンや同系色を使用したものを選んでいる。
カテゴリー | 製品名 | 実売価格 |
---|---|---|
CPU | Intel Core i5-4460(3.2GHz) | 21,000円前後 |
マザーボード | MSI H97M ECO(Intel H97) | 11,000円前後 |
メモリ | CFD販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G (PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2) | 9,500円前後 |
SSD | Samsung 840 EVO MZ-7TE500B/IT (Serial ATA 3.0、MLC、500GB) | 26,000円前後 |
PCケース | AeroCool DS Cube Window Green(microATX) | 12,000円前後 |
電源ユニット | Corsair Components CS450M(450W、80PLUS Gold) | 11,000円前後 |
CPUクーラー | ZALMAN FX100 | 8,000円前後 |
合計98,500円前後 |
ポイント1 マザーボードは省電力タイプ
性能を犠牲にすることなくユーティリティで簡単エコ設定
コンセプトの実現のためにはシステムの中核となるマザーボード選びは重要なポイント。MSIのH97M ECOは、文字どおり省電力をテーマにしたマザーボードだ。見た目といい、テーマといい、今回のマシンにぴったりの製品だろう。
エコに偏り過ぎではないかという懸念はあったが、特別に奇をてらった仕様ではないし、高コストなわけでもない。必要十分な拡張性と使い勝手はしっかり確保されており最適だと判断した。
H97M ECOの省電力アプローチは、かなり徹底している。基板設計の段階から省電力を意識し、配線や実装部品の選定を行なっていることに加えて、付属ソフトの「ECO CENTER PRO」を使って、各部のLEDをOFFにしたり、PCIスロットへの給電をOFFにしたりできることが大きな特徴だ。プリセットとして「ECO」、「ラウンジ」、「サーバー」と三つのモードも用意されている。その内容は下の別表に記載したように、ラウンジやサーバーではかなりアグレッシブに省電力化を行ない、電力削減効果も大きい。
もっとも、今回はスタンダードPCであるので、そこまでカツカツに詰めるのはコンセプトに反する。「ECO」を基本として、CPUクーラー停止(CPU温度42℃以上で回転開始)、およびECOボタンのLED消灯の二つの設定を適用して使うことにした。
ポイント2 省電力化が進んだHaswellならノーマルモデルでも十分エコでパワフル
クアッドコアは絶対条件、通常モデルでも十分エコ
CPUは、性能と消費電力、価格のバランスを考えて、Core i5-4460を選択した。Corei5としては比較的下位で、Core i3に近い価格帯のモデルであるが、クアッドコアでTurbo Boostに対応するだけに、デュアルコアでTurbo Boost非対応のCore i3とは用途の幅に大きな差がある。スタンダードPCとして、どんな用途にも対応できる汎用性を求められることを考えると、クアッドコアであることは譲れない条件だ。
クアッドコアであれば、動作クロックの多少の違いはそれほど決定的な差ではない。エコもテーマとしている以上、オーバークロックは想定外であり、倍率ロックフリーである必要もないことから、クアッドコアのCorei5としてもっとも安価なクラスのモデルを選んだ。マザーボードに選んだH97M ECOの電源部の回路構成からしても、ハイエンドのCPUを組み合わせるのはややアンバランスで、このくらいがベストマッチだろう。
エコがテーマだとTDPの低い「S」や「T」モデルも選択肢には入ってくる。ただ、これらはTurbo Boostの上限周波数を抑えることでピークの消費電力を抑えているので性能もその分低い。たとえば、Core i5-4460とCorei5-4460Sは、ともにTurbo Boostの上限周波数が3.4GHzであるが、実際のところ、3.4GHzで動作するのはCore i5-4460は4コアのうち2コア、Core i5-4460Sは1コアのみに負荷がかかっている場合に限られる。4コア全部が同時に動作する上限周波数はCore i5-4460が3.2GHzに対して、Core i5-4460Sは3GHzで、これがマルチスレッド処理の性能に影響する。左下のグラフに示したように、アイドル時の消費電力は変わらないので、ピーク時の放熱さえ間に合うならば、運用上のメリットはあまりない。今回は入手性も考慮してCore i5-4460を使うことにした。
ポイント3 ケースの強力なエアフローを活かす大型のヒートシンクを採用
ケースのエアフローを活かしCPUはファンレス冷却
今回採用したAeroCool DS Cube Windowは静音性重視のPCケースで、前面に20cm径という大口径のファン、背面にも12cm角のファンを搭載しており、非常にエアフロー効率のよいモデルだ。同時に、ケース内部はかなりスペースに余裕があり、背の高いCPUクーラーも使用することができる。この構造を活かすべく、CPUクーラーについては、CPUを直接冷却するファンを省く方向で選定した。
選んだのがZALMANのFX100だ。かなり大柄なため本来想定された向きで取り付けようとするとケースファンや内部ベイとわずかに干渉したため、縦横を変えて装着する必要はあったものの、理想的なエアフローが得られる位置に装着することができた。
これだけ大柄で強力なファンレスクーラーを装着できたとなれば、あわよくば前後のファンのどちらか、あるいは両方を止めることも可能なのではないかと思い、温度を監視してみたのが下のグラフだ。結果としてはやはりケースファンなしではやや不安が残る結果だ。前面のファンより背面ファンのほうが効果的で、よほど高い負荷をかけない限りは背面ファンのみでも運用できそうな感触。ただ、負荷が低下した際の温度の下がり方はあきらかに両方回したほうが速い。PCケースの遮音性が高く、はっきり言って両方回しても耳をケースにぴったり付けてようやく違いが分かる程度の音しかしない。
なお、上記で紹介したECO CENTER PROではCPU温度が41℃以下のとき、CPUファンコネクタに接続したファンを停止させる設定にした。背面ファンをCPUファン用のコネクタに接続し、高負荷時以外は回さないようにしたわけだ。背面ファンが動作しなくてもアイドル時~低負荷時の温度は35 ~ 40℃辺りで推移し、42℃を超えることはほとんどなかった。
5インチベイやビデオカードを活用するならコンパクトなCPUクーラーを使おう
FX100を使えば、高負荷時以外は1基のファンのみで冷却できるが、縦横を入れ換えて配置せねばならない関係上、PCI Express 3.0 x16スロットが使えなくなってしまう。5インチベイもギリギリだ。これらを活用するなら別のもっと小さいCPUクーラーを利用したほうがよさそうだ。
実のところ、当初はファンレスではなく、右のThermalright AXP-100 Muscleを試していた。リーズナブルなプライス、スマートなスタイル、エコっぽいカラーリング、いずれもこのマシンのコンセプトにマッチする。
ポイント4 いろいろこだわる細部の仕上げ、そのほかのパーツ選びも楽しむ
PCケースはエコっぽいグリーンかホワイトであること、そしてmicroATXフォームファクターで拡張性が確保されていることを条件に探した。AeroCool DS Cube Windowは黒ベースながらフロントマスクと内部に鮮やかなグリーンを大胆に使っており、抜群のインパクトでテーマをアピールできる。さらに内部が広く大型CPUクーラーが使え、エアフロー効率、遮音性も優秀と、スタンダードでエコも静音もよくばるという今回のコンセプトにピッタリとハマった。
電源ユニットはこのケースに合わせて奥行き140mm以下、プラグインケーブル、そしてできればグリーンという条件にCorsairのCS450Mがヒットした。ビジュアル的にもサイズ的にもケース付属電源かと思うほどに溶け込む。450Wという容量はエコを突き詰めるならば少々効率はよくないが、将来の拡張を視野に入れたスタンダードPCであれば許容範囲だろう。SSDはグリーンの製品が見当たらないため、コスパがよく、デザイン的に全体のイメージを損なわないシンプルなものということでSamsungの840 EVOを採用している。
SFX電源ユニットはマッチングせず
当初のプランでは小容量で省スペースなSFX電源ユニットの採用を考えていた。しかし、PCケース側に用意された電源ホールド用のゴム足が、ATX電源ユニット専用であったほか、電源ケーブルがマザーボードのコネクタまでうまく届かないなど、PCケースとのマッチングがよくなく、残念ながら利用を断念した。
基本はそのままにカラーコーディネイトを徹底する
内容だけでなく外観的にも統一感があり、なかなかのマシンに仕上がったと思うが、さらにコストをかけて手を加えるならば、カラーコーディネイトをより徹底したいところ。CorsairのVengeanceにはグリーンのヒートスプレッダを搭載したモデルがあり、それを使うとさらに内部の統一感が増しそうだ。ヒートスプレッダなしの緑基板というのもエコっぽくてよいかもしれない。また、地味な背面ファンは、グリーンベースのものに交換すれば、ケース内の統一感がより高まるだろう。
このPCの構成が良いと思ったら、以下のボタンを押して投票してください(一人1回まで)。
投票は本ページと、DOS/V POWER REPORT 2014年11月号の読者アンケート(同誌購入者のみ投票可能)で行なっています。
DOS/V POWER REPORTの読者アンケートから投票された方には、抽選で3名様に「Intel Pentium G3258」をプレゼントいたします。
投票結果はDOS/V POWER REPORT 2015年1月号(11月29日発売)にて発表する予定です。
【DOS/V POWER REPORT 11月号は9月29日(月)発売】
★第1特集「対決!金と銀のPC自作プラン」はもちろん、8月末に発売された「Haswell-E」の解説や、最新ビデオカードの特集、セミファンレス電源カタログ、新世代ベアボーンPC特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事を掲載
★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
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