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【10年使えるATXケース徹底紹介(3)】
~Cooler Master Silencio 652S / Corsair Carbide 330R / Fractal Design Define R5編~

DOS/V POWER REPORT 2015年3月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集記事をほぼまるごと紹介するこのコーナー、今回は「10年使えるATXケース徹底特集」の第3回目としてCooler Master Technologyの「Silencio 652S」とCorsair Componentsの「Carbide 330R Silent」、Fractal Designの「Define R5」の検証記事を掲載する。今回紹介する3台のケースはどれも静音重視の密閉型だが、それでいてファンを増設すれば冷却力アップも行うことができる汎用性の高いモデルだ。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年3月号は全国書店、ネット通販にて絶賛発売中。3月号では本特集のほか、今話題の低価格タブレットPCを筆頭にその魅力に迫る「2万円からのフル機能激安PC選び」、用途・予算に合わせて選ぶ「低価格CPU大全」、髙橋敏也氏による連載記事「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」など、多数の記事を掲載。

 今号の特別付録は「使えるPC小物&周辺機器大カタログ」。ちょっと欲しい!今すぐ欲しい!がいっぱい!!の内容だ。


- ATXケースの選び方 2015年版 -
10年使えるATXケース徹底紹介


老舗メーカーの実力派ハイブリッドモデル

Cooler Master Technology Silencio 652S

メンテナンス性 ★★★☆☆
冷却拡張性   ★★★★☆
剛性      ★★★★★

 静音性重視の密閉型構造ながら、高い冷却拡張性も備えたバランス型モデル。先代Silencio 652の基本設計を継承しつつ、標準搭載ファンの仕様を変更している。フロントドアとサイドパネルは不織布と吸音素材を組み合わせた3層構造のシートを貼った遮音カバーとなっており、内部のノイズを効果的にシャットアウトする。側面や天板のパネルの一部を外すとメッシュガードが姿を現わし、エアフローを強化することができ、さらに天板には24cmの水冷ラジエータも搭載できる。

 内部構造ではドライブケージの柔軟性が目を引く。3.5インチ/ 2.5インチデバイス両方に対応できるほか、ドライブケージをすべて外して内部を大きく空けることも可能だ。実質1世代前の製品だけに、エアフロー強化状態の見た目、裏面配線スペースの狭さなど、幅広いニーズに対応すべきバランス型としては洗練度という点で見劣りする部分がある。密閉型としての実力は優秀であり、剛性や工作精度など基本品質の裏付けもあるため、比較的シンプルなシステム向けとして選ぶ手はあるだろう。

[Text by 鈴木雅暢]

【Specification】

規格:ATX●カラー:ミッドナイトブラック●付属電源:なし●ベイ:5インチ×3(5インチ×1→3.5/2.5インチ×1変換アダプタ×1)、3.5/2.5インチシャドー×8、2.5インチシャドー×1●標準搭載ファン:12cm角×2(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:20cm径/18cm角×1 / 14/12cm角×2(天板)、18/12cm角×1(底面、18cm角×1は3.5/2.5インチシャドー×4と排他、12cm角×1は3.5/2.5インチシャドー×4と排他)、20cm径/18cm角×1(側面)、12cm角×1(シャドーベイ)●本体サイズ(W× D× H):220×508.6×507mm ●重量:10.4kg●実売価格:13,000円前後
AKIBA PC Hotline!掲載記事:今週見つけた新製品 COOLER MASTER Silencio 652S(2014/5/17)

【このPCケースの注目機能】
ノイズを遮断するフロントドア
吸音シートを貼ったフロントドアを装備。3層構造の吸音シートはずっしりと重量感があり、見るからに吸音効果は高そうだ。パタっと吸い付くように閉まる様子も高級感を醸し出す
防塵仕様の12cm角ファンを3基搭載
先代Silencio 652は前面に18cm角ファン、背面に12cm角ファンを1基ずつという構成だったが、新型の12cm角ファン(Silencio FP120)を3基(前面2基、背面1基)搭載する構成に変更された。空気を巻き込むように設計された特殊ブレードを採用し、IP6X相当の防塵性も備えている点が特徴だ
【パーツを組み込んでの使い勝手】
裏面配線スペースはやや狭い
マザーボードベースには裏面配線用のケーブルホールが用意されているが、ベースから右サイドカバーまでは最大1.7cm程度(内側のガイドまで約1.5cm)と最近の製品としては狭い。また、上部のメンテナンスホールも実測で約14.2×14.2cmと小さく、ソケット位置やクーラーのバックプレートのサイズによっては機能しないことがありそうだ
システム構成に応じて調整できるドライブケージ
中央部のドライブケージは3.5インチ用と2.5インチ用と幅を変えることができるほか、外して最大42.3cmのビデオカードを使うことも可能。3.5インチならツールレスで使えるドライブレールの構造も秀逸だ
水冷強化にも対応できるハイブリッド仕様
大型ラジエータを搭載可能
トップカバーを外せば通気性のよいメッシュガードが現われる。ファンは20cm径/18cm角なら1基、14/12cm角なら2基搭載可能。24cmの水冷ラジエータも搭載できる
側面に大口径ファンを搭載できる
左右側板にも吸音シートを装着しており、ずっしりと重い。左側板の小カバーを外せばメッシュガードとすることができ、20cm径/18cm角のファンを搭載することが可能だ
キラリと光る付加機能
SDカードスロットを標準装備
天板手前の端子部にSDメモリーカードスロットを装備。パーツの追加なしでこうしたメモリカードが使えるのは便利だ

【検証結果:新型ファンの静音性は優秀】

新型ファンは、マザーボードのファン制御なしでもそこそこ静音だが、ファン制御をすることで、アイドル~低負荷時にはより静音で運用できる。一方、CPU温度はやや高く、ハイエンド構成ではエアフローを強化したいところ。密閉型として運用するならばミドルレンジ前後のシステム構成が無難だろう。

こう使え!

・静音性重視の密閉型としての利用を前提に考えたい
・ミドルレンジ以下の比較的シンプルなシステムがベター

はやりのギミックを網羅
ファンコン搭載でより静かに

Corsair Components
Carbide 330R Titanium Edition Silent Mid-Tower Case

メンテナンス性 ★★★★☆
冷却拡張性   ★★★★☆
剛性      ★★★★☆

 ATX対応マザーより短辺が広いExtendedATX対応マザーが組み込める、大型のバランス型PCケースだ。前機種の「Carbide 330RMid-Tower Case」と比較すると、ファンの回転数を3段階で制御できるファンコントローラを搭載し、マザーボードを問わず静音PCとしての運用ができるようになった。

 大型マザーボードに対応するだけに、内部スペースには余裕がある。とくに天板とマザーボード上端のスペースが広いので、ファンや水冷ラジエータの組み込みは楽に行なえるだろう。5インチベイと3.5/2.5インチシャドーベイの間には大きな空間があり、ここを利用すれば長さ45cmまでの大型ビデオカードが組み込める。ファンコントローラはファンを3基まで接続し、一括制御するタイプ。電源供給はSerial ATAコネクタ経由で行なう。

 前面の防塵フィルタは手前側から外して簡単に清掃でき、天板のファンカバーは磁石式で脱着は簡単だ。このように組み込みや日々のメンテナンス、拡張時の作業性を高めるはやりのギミックは一通り装備しており、選んで間違いのないバランス型PCケースの一つである。

[Text by 竹内亮介]

【Specification】

規格:ExtendedATX●カラー:チタニウム●付属電源:なし●ベイ:5インチ×3、3.5/2.5インチシャドー×4●標準搭載ファン:14cm角×1(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面)、12cm角×1(前面、14cm角×1と排他)、14/12cm角×2(天板)●本体サイズ(W× D × H):210×495×484mm ●重量:6.8kg●実売価格:13,000円前後
AKIBA PC Hotline!掲載記事:今週見つけた新製品 Corsair 330R Silent(CC-9011071-WW)(2014/12/7)

【このPCケースの注目機能】
3基のファンを制御できる
マザーボードベース裏側に、3基のファンを接続できるファンコントローラ用のコネクタと、Serial ATAタイプの電源供給用コネクタを装備する
防音シートで音漏れを防ぐ
両側板と前面扉の内側に、防音シートが貼り付けられている。標準では静音PC向けにチューニングされているバランス型ではおなじみの装備だ
【パーツを組み込んでの使い勝手】
天板付近には余裕がある
天板とマザーボード上端の隙間が広く、ATX/EPS12Vコネクタの接続や、天板へのファンの組み込みもラク
内部は広いので作業しやすい
ExtendedATXに対応する大型PCケースなので、内部はかなり広い。メンテナンスホールも、今回組み込んだ短辺約24cmのマザーボードでは覆い切れないほどの広さがある
裏面配線用のスペースは約2cm
マザーボードベース裏面から側板までは、実測値で約2cm確保する。電源ケーブルが多少重なっても問題ない
前面パネルのカスタマイズが可能
扉を開く方向の変更、防塵フィルタの取り外しも簡単
ヒンジを移動することで、置き場所に合わせて前面扉を開く方向を左右どちらにでも変更できる。奥にある防塵フィルタはフックで固定されており、手前に倒すようにして簡単に外せるので、清掃は手軽に行なえる
天板にはファン、ラジエータを設置可能
天板のフタは磁石で簡単に脱着できる
天板のファンマウンタは、磁石で固定される防音カバーでふさがれた状態だ。防音カバーを外せば、ファンや水冷ラジエータを組み込んで冷却性能を強化できる

【検証結果:静音化に大きく貢献するファンコントローラ】

ファンコントローラの効果は高く、最小回転数に設定すると、アイドル時や低負荷時は無音に近い状態になった。もっとも、最大回転数でもうるさいとは感じないレベルなので、もともと静音構成向きに調整されているのだろう。CPU温度やGPU温度は平均的な数値だ。

こう使え!

・標準状態のまま静かに動作する静音PCを作る
・一点豪華主義で大型ビデオカードを組み込む

内部構造の自由度を高めバランス型の可能性を広げる

Fractal Design Define R5

メンテナンス性 ★★★★★
冷却拡張性   ★★★★★
剛性      ★★★★★

 バランス型PCケースのロングセラー「Define R4」。本機はその後継モデルだ。内部構造をさらに洗練させ、冷却拡張性を強化したことが最大の特徴と言える。

 まず注目したいのはベイ構造だ。ユニット化された3.5/2.5インチシャドーベイに加え、5インチベイも取り外せるようになった。ここまで外すと、ケース内部はほぼフレームだけの状態になり、天板には最大で幅42cmもの超大型水冷用ラジエータが取り付けられる。ここまで自由度の高い製品は、ミドルタワーケースでは見たことがない。

 底面の防塵フィルタは、前面から引き抜いて清掃できるようになった。前面扉は、ヒンジを付け換えることで開く方向を変更できる。側板はレバーのみで開閉でき、ネジ止め作業が必要ない。メンテナンスや清掃をストレスなく行なうため、こうした細かな工夫が凝らされていることもR4からの改良点だ。

 発熱の小さなパーツであれば、そのまま使えばよい。大型で高性能なパーツでも、ベイ構造にちょっと手を加えるだけで対応できる。バランス型PCケースとしての可能性は、名機だったR4をしのぐ。

[Text by 竹内亮介]

【Specification】

規格:ATX●カラー:ブラック、ホワイト、チタニウム●付属電源:なし●ベイ:5インチ×2、3.5/2.5インチシャドー×8、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:14cm角×1(前面)、14cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面)、12cm角×1(前面、14cm角×1と排他)、12cm角×1(背面、14cm角×1と排他)、14/12cm角×3(天板)、14/12cm角×2(底面)、14/12cm角×1(側面)●本体サイズ(W×D×H):232×531×462mm ●重量:11.2kg●実売価格:16,000円前後
AKIBA PC Hotline!掲載記事:Fractal Designの人気静音ケース「Define」に新モデル、カラーは3色(2014/12/19)

このPCケースの注目機能
すべてのベイが取り外し可能
3.5/2.5インチシャドーベイだけでなく、5インチベイも取り外せる。天板や前面に大型の水冷用ラジエータを取り付けたいときに便利。取り付ける向きの変更も可能だ
分かりやすいマニュアル付き
大きなイラストで、組み込み方法や機能を紹介するマニュアルが付属する。日本語表記も当然サポートしている
【パーツを組み込んでの使い勝手】
ピンヘッダケーブルは整理済み
ピンヘッダケーブルは、マザーボードベース裏側でバンドでまとめられている。電源ケーブルも含めてまとめ直すだけで、裏面配線の作業が完了する
裏面配線用のスペースが広い
マザーボードベース裏側の底部は、内側にへこんだ状態だ。太いケーブルが集中する場所なので、このエリアが広いとケーブルの整理がしやすい
ファンの増設や移動が可能
取り付け時の微調整など細部にも気配りが
バランス型なので、ファンマウンタをふさぐ防音カバーを外せば、各所にファンを増設できる。また前面ファンや背面ファンには、位置を微調整する機能がある。CPUクーラーのファンと背面ファンの高さを合わせて冷却効果を高めよう
楽々フィルタ清掃
ホコリ清掃は前面から気軽に
底面の防塵フィルタは、手前に引っ張り出せる。前面ファン用防塵フィルタも前面からメンテナンスできるため、清掃が楽だ
開き方を変更可能
左右どちらにも開ける
前面の両側面に前面扉用のヒンジ固定穴を設けている。置き場所に合わせ、前面扉を開く方向を変更できる

【検証結果:ファン回転数を絞ればほぼ無音状態に】

標準では静音向けチューニング。ファンコントローラで回転数を落とせば、アイドル時はほぼ無音状態だ。CPU温度は平均的だが、GPU温度はかなり低い。排気方向に設置された背面ファンが、拡張カード固定部脇の通気口から外気を取り込んだ結果かもしれない。

こう使え!

・静音PCからゲームPCまで幅広く対応可能
・本格水冷導入のベースに使うもよし

【掲載ケース共通検証環境】

CPU:Intel Core i7-4790K(4GHz)、マザーボード:ASUSTeK H97-PRO(Intel H97)、メモリ:CFD販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ビデオカード:MSI GTX 970 GAMING 4G(NVIDIA GeForce GTX 970)、SSD:Intel SSD 335 SSDSC2CT240A4K5(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:サイズ エナジアプラチナ550W(550W、80PLUS Platinum)、CPUクーラー:サイズ 虎徹、OS:Windows 8.1 Pro Update 64bit 版、室温:21.4℃、暗騒音:32.4dB、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.1 POWER SUPPLYテストを10分間動作させたときの最大値、各部の温度:使用したソフトはHWMonitor 1.26でCPU はCPUTemperaturesのPackage、GPUはTemperaturesの値、動作音測定距離:ケース正面から20cm


DOS/V POWER REPORT 2015年3月号は2015年1月29日(木)発売】

★第一特集「10年使えるATXケースを買う」
★第二特集「2万円からのフル機能激安PC選び」
★特別企画「低価格CPU大全」「スマホから使える多機能リモコン」「ブラウザゲーム群雄割拠」
★連載「最新自作計画」「POWER REPORT PLUS」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 紙版は特別付録小冊子「使えるPC小物&周辺機器大カタログ」が別途付属
★ 電子版では小冊子の電子版も完全収録
★ 電子版は割安な税別926円
★ 毎月700円(税込)で最新号が読める 直販電子版 月額プランも受付中
http://book.impress.co.jp/teiki/dvpr/2014-12-26-1549.php

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(AKIBA PC Hotline!編集部)