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【10年使えるATXケース徹底紹介(4)】
~Lian Li PC-8E / be quiet! Siltent Base 800 / NZXT H440編~

DOS/V POWER REPORT 2015年3月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集記事をほぼまるごと紹介するこのコーナー、今回は「10年使えるATXケース徹底特集」の第4回目としてLian Li Industrialの「PC-8E」とListanの「be quiet! Silent Base 800」、NZXTの「H440」の検証記事を掲載する。

 なお、今回紹介するなかで「H440」にはゲーミングデバイスでおなじみの「Razer」とのコラボモデルH440MB-RazerSEも販売されている。通常モデルより価格が多少高くなるがRazerの製品を愛用していてデバイスとの統一感を重視する場合はこちらもおすすめだ。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年3月号は全国書店、ネット通販にて絶賛発売中。3月号では本特集のほか、今話題の低価格タブレットPCを筆頭にその魅力に迫る「2万円からのフル機能激安PC選び」、用途・予算に合わせて選ぶ「低価格CPU大全」、髙橋敏也氏による連載記事「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」など、多数の記事を掲載。

 今号の特別付録は「使えるPC小物&周辺機器大カタログ」。ちょっと欲しい!今すぐ欲しい!がいっぱい!!の内容だ。


- ATXケースの選び方 2015年版 -
10年使えるATXケース徹底紹介


大型水冷にも対応した超軽量アルミケース

Lian Li Industrial PC-8E

メンテナンス性 ★★☆☆☆
冷却拡張性   ★★☆☆☆
剛性      ★★★☆☆

 長年アルミケースを作り続けているLian Liの最新ATXモデル。先代PC-8Nをベースにリファインしたもので、電源搭載スペースを上部と背面中部の2カ所に設け、24cmラジエータの水冷クーラーの搭載も可能にした。先代の構造を活かし最小限の変更で天板にラジエータを搭載できるようにするため背面部にも電源搭載スペースを設けているのだが、同時に背面ファンスペースが犠牲となってシステム構成の自由度はかなり制限される。

 アルミケースの大きなメリットの一つは軽さで、本製品も重量は4.7kgと通常のATXケースの半分程度ととても扱いやすい。一方、振動耐性や遮音性ではどうしても見劣りするため、遮音効果はアテにせず動作音の発生を減らす方向でシステムを考える必要がある。また、内部構造も2000年代前半の設計をほぼ引き継いでおり、最近の流行からは大きく外れている。パーツ点数を減らし、ケーブル配線の必要性が少ない構成ならばそれほど見劣りを感じずにいられるだろう。軽さや質感は魅力だが、使いこなすにはテクニックを要する上級者向けの製品と言える。

[Text by 鈴木雅暢]

【Specification】

ATX●カラー:ブラック、シルバー●付属電源:なし●ベイ:5インチ×4、3.5インチシャドー×5、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:14cm角×1(前面)、12cm角×1(天板)●追加搭載可能ファン:12cm 角×1(天板)●本体サイズ(W× D× H):210×500×450mm●重量:4.7kg●実売価格:14,000円前後
AKIBA PC Hotline!掲載記事:電源の縦置き/横置きに対応したタワー型ケースが発売LIAN-LI製 (2014/6/12)

【このPCケースの注目機能】
フワッと軽い4.7kg !
とにかく軽い。重量は4.7kgと、一般的なATXケースの半分ほど。それでも板金は厚め、曲げ加工など補強もしっかりしており、やわな印象はない
アルミ素材ならではの輝き
オールアルミ素材ならではの質感の高さも魅力。ヘアライン加工で仕上げた外装の質感もよいが、内装も光をよい具合に反射し、華やかな存在感を放つ
【パーツを組み込んでの使い勝手】
電源は実質奥行き14cmモデル専用
上部の電源スペースは奥行きに余裕がなく、天板ファンと干渉しやすい。奥行き14cmのモデルが無難だ。なお、電源はサイドにも搭載できるが、CPUクーラーの自由度が極端に狭まる。電源を横向きにするのは実質的に水冷クーラー搭載時専用だろう
ドライブケージは90°設置可能
ドライブケージは手回しネジで取り外し、90°回転した角度で装着することも可能。メンテナンス性はケーブル配線がすっきりする標準の配置のほうがよいが、90°回転配置にすると前面ファンのエアフローはよりスムーズになる
従来の基本設計をベースにリファイン
天板排気、24cmラジエータにも対応
2000年前後の流行を思わせるクラシカルなスタイルだが、天板排気に対応。標準の排気ファンを外して24cmラジエータも取り付けることができる。その場合、電源をサイドに設置するためかなり内部は狭くなるが、水冷ヘッド程度ならば問題ない
裏面配線も不可能ではない
マザーボードベース裏に十分な空間はある
裏面配線用の穴などは用意されていないが、マザーボードベースから右側板までは実測で2.4cmほどの隙間が空いている。ベース周囲からケーブルを通して引き回す余裕はある

【検証結果:静音性、冷却性能ともさらなる改善が欲しい】

動作音は冷却重視型並み、温度は密閉型の中でも下のレベル、と厳しい結果となった。冷却強化を図るなら、爆音覚悟でファンを強化するか水冷を導入するかだが、遮音効果が低いアルミと水冷の相性もよいとは言い難い。システムを省電力化し発熱を抑える方向も検討したい。

こう使え!

・熱や騒音源、配線を最小限に抑えた構成がベター
・水冷ならばポンプの動作音が低いものを選びたい

ヨーロピアンテイスト漂う大型ミドルタワー

Listan be quiet! Silent Base 800

メンテナンス性 ★★★☆☆
冷却拡張性   ★★★★☆
剛性      ★★★★☆

 静音ファンやCPUクーラー、電源で知られるドイツ発の「be quiet!」ブランド初のPCケース。be quiet!はデザインにインパクトがあるものが多いが、このSilent Base 800も同様。フロントマスクの目立つ部分だけでなく、通気口やスタンド、電源ボタンなど細かい部品まできっちりとデザインされ、表面仕上げにも配慮。優雅な上質感がある。

 ケースとしての性格は、静音志向の密閉型で、フロントとサイドのパネルには遮音シートを貼っている。ファンは最大7基搭載可能で、天板部には最大28cmの水冷ラジエータも搭載できるなど冷却拡張性も確保されている。ただ、カバーを全面的に開放したり、メッシュカバーに交換できるわけではなく、あくまでも静音志向の範囲内。最近のトレンドを踏襲した内部構造でおおむね組みやすいのだが、トップカバーが外しにくい点が惜しい。また、マザーボードベース裏のベイを合わせても2.5インチデバイスが最大4台しか搭載できないなど、大柄なボディを持て余している感も否めない。こういう細部の欠点よりもデザインに魅力を感じられるかがポイントだろう。

[Text by 鈴木雅暢]

【Specification】

規格:ATX ●カラー:ブラック+オレンジ、フルブラック、ブラック+シルバー●付属電源:なし●ベイ:5インチ×3、3.5インチシャドー×7、2.5インチシャドー×4●標準搭載ファン:14cm角×2(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×2(天板)、14/12cm角×1(底面)、12cm角×1(側面)●本体サイズ(W×D×H):266×495×559mm●重量:9.31kg●実売価格:22,000円前後
AKIBA PC Hotline!掲載記事:今週見つけた新製品 be quiet! Silent Base 800(2014/12/13)

【このPCケースの注目機能】
こだわりのデザイン
もっとも特徴的なのはデザインのこだわりだろう。フロントパネルやサイドパネルなどの外装には吸排気口をうまくデザイン要素の一部に取り入れているし、フィルタや吸音材といった普段は見えないような部分にいたるまで、be quiet!ブランドらしい、機能性と見た目の美しさを両立させた個性あるデザインを導入している
【パーツを組み込んでの使い勝手】
マザーボードベース裏面を有効活用
マザーボードベースには裏面配線用のケーブルホール、CPUクーラー取り付け作業用の大きな穴(実測19.7×13.6 ~ 15.3cm)があり、裏面に2.5インチドライブベイを2基用意。側板まで最大3.4c m(内側のガイドまでは2cm強)の空間があり、ケーブルの取り回しは楽に行なえる
ドライブケージは着脱可能
3.5インチHDDが3基および4基搭載できる2組のドライブケージは取り外すことができ、取り外した状態では40cmまでの拡張カードを搭載できる。3.5インチドライブそれぞれにラバー質のドライブレールを取り付けて固定する仕組で、少々手間がかかる。2.5インチデバイスは各ケージの一番上のみに搭載可能で、マザーボードベース裏の2基と合わせて最大搭載台数は4基にとどまる
静音志向だが冷却強化にも対応できる
トップカバー内部にラジエータが設置可能
天板部には28cm(14cm角ファン×2)、24cm(12cm角ファン×2)の水冷ラジエータを搭載できる。トップカバーがやや外しにくいが、天板端子用の配線があるため、開閉は慎重に行なう必要がある
吸音シート付きサイドカバー
両サイドカバーには吸音シートが標準で貼られている。中央のロゴがあるカバーを外して左側面に12cm角ファンを搭載することも可能だ
静音ファンを制振ゴムを介して固定
前面(14cm角×2)と背面(12cm角×1)に独自ファン「Pure Wings2」を採用。独自のブレードデザインが特徴の静音ファン(1,000rpm)で、いずれも制振ゴムを使って固定されている

【検証結果:大きさのわりには地味な結果】

静音性、冷却性能ともに密閉型としては水準クラス。悪くない結果なのだが、ボディの大きさや価格を考えると少々もの足りなさはある。ファン制御の有無で温度がほとんど変わらないことから、ファンの冷却性能自体の限界が見て取れる。

こう使え!

・大型簡易水冷クーラーはデザイン的にも相性がよい
・超ハイエンド構成では冷却性能がやや頼りない

5インチベイを排して12cm角ファンを前面に3基装備

NZXT H440

メンテナンス性 ★★★★☆
冷却拡張性   ★★★★★
剛性      ★★★★☆

 ミドルタワークラスのサイズ感ながら、前面に3基もの12cm角ファンを搭載した冷却重視型のPCケースだ。5インチベイを排除することで、前面に3基のファンを搭載し、冷却性能の強化を図っている。

 内部構造も凝っている。3.5/2.5インチシャドーベイは1基ずつトレイになっており、すべて取り外すことが可能。外したままにすれば、前面ファンからの風がCPUクーラーやビデオカード周辺に届きやすくなるし、長さのある高性能ビデオカードも余裕を持って組み込めるようになる。また、冷却重視型ながら、側板などに防音材が貼られていることにも注目。ファンの回転数を制御すれば、静音性を保ちつつ高い冷却性能も実現可能だ。

 マザーボードベース裏面には、10基までのファンを接続できる集中コネクタを装備しているので、ファン用電源コネクタの数が足りなくなることは少ないだろう。ただ、前面パネルは扉ではないので、防塵フィルタを清掃するには、前面パネルを外す必要がある。とはいえ防塵フィルタは磁石での固定なので、清掃は簡単だ。

[Text by 竹内亮介]

【Specification】

規格:ATX●カラー:マットブラックアンドグロスレッド、グロッシーホワイト●付属電源:なし●ベイ:3.5/2.5インチシャドー×6、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:12cm角×3(前面)、14cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14cm角×2(前面、12cm角×3と排他)、12cm角×1(背面、14cm角×1と排他)、14cm角×2 / 12cm角×3(天板)●本体クラス(W× D× H):220×475.3×510mm●重量:9.75kg●実売価格:14,000円前後
AKIBA PC Hotline!掲載記事:外部ベイが1つも無い全面フラットなATXケースが販売開始(2014/3/19)

このPCケースの注目機能
前面には3基の12cm角ファン
5インチベイを搭載せず、前面には3基もの12cm角ファンを装備する。前面からたっぷりと取り込んだ外気で、CPUやビデオカードを冷却できる
大型の防塵フィルタを装備
3基の前面ファンをカバーする防塵フィルタは、かなり大きめだが、磁石式で取り外しも清掃も簡単。底面の防塵フィルタは引き出して取り外す
【パーツを組み込んでの使い勝手】
集中ファンコネクタを装備
マザーボードベースの裏側に、合計で10基のファンを接続できる集中ファンコネクタを装備する
トレイは取り外し可能
そのままでもシャドーベイの間の隙間が広く前面ファンからの風を遮りにくいが、トレイを外すことで、冷却効率をさらに高めることができる
太いケーブルを裏面に回しやすい
小さなホールを経由しないので、ATX電源などの太いケーブルを裏面に回しやすく作業が楽
前面パネルや天板は簡単に外せる
天板と前面パネルは引っ張るだけで外せる
前面パネルは、背面のへこんだ部分に手を当てて手前に引っ張り、天板は背面側にやや力を入れて引っ張ることで、取り外せる
ケーブル接続が楽になるライト
LEDで背面コネクタの抜き挿しが容易に
背面にLED用スイッチを装備。点灯すると電源ユニット付近のロゴと、バックパネルのコネクタ部分が照らされる。PCの動作中しか利用できないが、背面にケーブルを接続するときに便利だ

【検証結果:前面3連ファンの効果さすがの冷却性能】

CPUやGPU温度はかなり低く、今回テストした中ではトップグループ。アイドル時でも動作音はかなり大きいが、マザーボード側にファンを接続し、回転数を制御するとかなり改善された。各部の温度は若干上昇するが十分な冷却性能であり、許容範囲内だろう。

こう使え!

・ゲーミングPC向けの高性能なパーツ構成でも安心
・大型水冷ラジエータでさらなる冷却強化も視野に

【掲載ケース共通検証環境】

CPU:Intel Core i7-4790K(4GHz)、マザーボード:ASUSTeK H97-PRO(Intel H97)、メモリ:CFD販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ビデオカード:MSI GTX 970 GAMING 4G(NVIDIA GeForce GTX 970)、SSD:Intel SSD 335 SSDSC2CT240A4K5(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:サイズ エナジアプラチナ550W(550W、80PLUS Platinum)、CPUクーラー:サイズ 虎徹、OS:Windows 8.1 Pro Update 64bit 版、室温:21.4℃、暗騒音:32.4dB、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.1 POWER SUPPLYテストを10分間動作させたときの最大値、各部の温度:使用したソフトはHWMonitor 1.26でCPU はCPUTemperaturesのPackage、GPUはTemperaturesの値、動作音測定距離:ケース正面から20cm


DOS/V POWER REPORT 2015年3月号は2015年1月29日(木)発売】

★第一特集「10年使えるATXケースを買う」
★第二特集「2万円からのフル機能激安PC選び」
★特別企画「低価格CPU大全」「スマホから使える多機能リモコン」「ブラウザゲーム群雄割拠」
★連載「最新自作計画」「POWER REPORT PLUS」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
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(AKIBA PC Hotline!編集部)