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PCケース/電源の選び方

【保存版 PC自作マニュアル 2015(6)】

DOS/V POWER REPORT 2015年5月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、今回より「2015年5月号」の総力特集「保存版 PC自作マニュアル 2015」を掲載する。

 第六回目は「PCケース」と「電源」の選び方について解説する。PCケースについてはデザインや拡張性に注目するのは当然だが、頻繁にパーツを組み替える癖がある場合はメンテナンス性にも注目しよう。

 電源は不必要なケーブルを外すことが出来るプラグイン対応が主流。ケーブルの本数を減らすには内蔵するデバイスの台数を考慮する必要がある。たとえば最近ではあまり使われなくなってきたペリフェラル電源を必要とするデバイスがある場合、それだけでケーブルが一本増えることになる。利用頻度の低いデバイスは外してしまうのも手だ。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年5月号は全国書店、ネット通販にて絶賛発売中。58ページの大ボリュームで送る総力特集「保存版 PC自作マニュアル 2015」のほか、キャリアメールが必要ないならこれでいいんじゃないか?「知らなきゃ損するMVNO! 六つの格安SIMを比較する」、802.11nが普及してきたと思ったら、時代はすでに11ac?最新の通信事情に対応したネットワークアイテムを紹介する「有線・無線LANをもっとスマートに ネットワークまわりの便利アイテム大集合!」、やっぱりソフトウェアキーボードより使いやすい!「PCでもスマホ&タブレットでも大活躍! Bluetoothキーボードオールスターズ」など、特別企画も盛り沢山。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は、Windowsをもっと便利に、さらに快適にするテクニックが満載の「自作PC がよくなるWindows設定集」。Windows7とは勝手が違うWindows8で困ったときに役立つ本だ。


- 保存版 PC自作マニュアル 2015 -
PCケース/電源の選び方


PCケースの選び方

 組み込みたいマザーボードやビデオカードのサイズに合わせて、最適なPCケースを選ぼう。PCケースによって冷却性能や静音性が異なるため、製品選びは慎重に行なおう。

フォームファクターの選択

 ほとんどのPCケースは「ATX」、「microATX」、「Mini-ITX」という三つの規格に分類される。この分類はマザーボードの規格と同じものであり、ATX対応PCケースにはATX対応マザーボードを、Mini-ITX対応PCケースにはMini-ITX対応マザーボードを組み込める。なお、三つの規格には下位互換性があるので、ATX対応PCケースにはmicroATX/Mini-ITX対応マザーボードを組み込むことも可能だ。

 Define R5はATX対応PCケースの売れ筋モデルの一つで、各種ベイをすべて取り外せるユニークな構造を採用する。PCケース内部の広い空間を使い、大型のビデオカードや水冷ラジエータを簡単に組み込めるほか、メンテナンス性にも優れている。初心者がPC自作を始めるにはピッタリの製品だ。

バランス型の決定版
Fractal Design Define R5
Specification
規格:ATX●カラー:ブラック、チタン、ホワイト●付属電源:なし●ベイ:5インチ×2、3.5/2.5インチシャドー×8、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:14cm角×1(前面)、14cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面)、12cm角×1(前面、14cm角×1と排他)、12cm角×1(背面、14cm角×1と排他)、14/12cm角×3(天板)、14/12cm 角×2(底面)、14/12cm角×1(側面)●本体サイズ(W×D×H):232×531×462mm●重量:11.2kg
マザーボードの周囲に、拡張ベイや電源ユニット用のスペースが設けられており、内部にはかなり余裕がある

 PC-Q33のようなMini-ITX対応PCケースはコンパクトで、机の上に置いてもジャマにならない。多くのMini-ITX対応PCケースは内部が狭くて組み立てにくいが、PC-Q33はマザーボードベース周辺が開放された構造になっており、組み込み作業の難易度が低い。

組み立てやすいMini-ITX対応PCケース
Lian Li PC-Q33
Specification
規格:Mini-ITX●カラー:ブラック、シルバー●付属電源:なし●ベイ:3.5インチシャドー×1、3.5/2.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:なし●本体サイズ(W × D× H):229×240×328mm●重量:2.18kg
約17cm四方のマザーボードの周囲に側板などが配置される構造で、一般的に内部はかなり狭い

一般的なATX 対応PCケースとMini-ITX 対応PCケースの違い

 Mini-ITX対応PCケースとATX対応PCケースでは、サイズのほかにもベイの数、組み込めるCPUクーラーやビデオカードのサイズが異なる。組み込みたいパーツに合わせて選ぼう

PCケース内部の構造にも注目

PCケース内部の構造
水冷ラジエータの対応状況を確認
天板にファンマウンタがある場合でも、無条件ですべての水冷ラジエータが付けられるわけではない。スペック表の対応状況も確認したい

 内部スペースの広さ、ベイの数、冷却ファンの搭載数は、自作PCの性格を決める重要な要素だ。たとえば組み込みたいビデオカードのサイズが、PCケースが許容するサイズ以上なら物理的に組み込めない。最近は、シャドーベイを外したり移動させたりすることで、内部構造をある程度自由に変更できる製品が増えている。こうしたタイプなら、水冷のラジエータなど大型のパーツを組み込みたくなっても対応しやすい。内部構造を自由に変えられるPCケースは、長く付き合える相棒になる。

構造がユニークな注目PCケース

バランス型はパーツの選択肢が多い

Define R5のライバル
Specification
規格:ATX●カラー:チタニウム●付属電源:なし●ベイ:5インチ×3、3.5/2.5インチシャドー×4●標準搭載ファン:14cm角×1(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面)、12cm角×1(前面、14cm角×1と排他)、14/12cm角×2(天板)●本体サイズ(W × D × H):210×495×484mm●重量:6.8kg

 多数のファンを装備し、組み込んだパーツをしっかり冷却できる「冷却性能重視型」。標準搭載のファンは少なめで、音漏れを防ぐ仕組を備える「静音性重視型」。現行のPCケースのほとんどは、大きく分けてこの二つのタイプに分類される。組み込みたい構成によってどちらか選ぶことになるのだが、ここ数年は両者のよいところ取りをした「バランス型」が勢いを増している。

 バランス型は、上記の分類で言えば静音性重視型の1種だ。たとえば「Carbide 330R」では、側板や天板には空気穴がない密閉型の構造を採用。音漏れを防ぐ前面扉や、3基までのファンを制御できるファンコントローラを搭載し、非常に静かなPCを作れる。しかし天板のカバーを外すことで、14/12cm角ファンを2基増設できる。ここに幅28cm以上の大型水冷ラジエータを組み込み、冷却性能を大幅に強化することも可能だ。ビデオカード用のスペースも45cmと広く、強力なビデオカードも安心して運用できる。

 基本は静音性重視型ながらも、ちょっと手を加えるだけで簡単に冷却重視型になる。それぞれのタイプに特化したPCケースにはマネのできない機能である。

 バランス型は、自分にどんなPCがマッチしているのかがよく分からない初心者にこそオススメだ。最終的に選んだ構成に合わせて、冷却性能や静音性を調整できるのは、バランス型だけなのだから。

標準では静音性重視の構成
簡単な構成変更で冷却重視に変身
ケースファンなどの回転数を調整できるファンコントローラは、ファンの回転数を落として動作音を小さくするための装備だ
天板や側板にあるカバー板を外すと、そこにファンを増設し、冷却性能を強化できる
前面扉は、前面の吸気口からPCの動作音が漏れてくるのを防ぐための装備だ。静音性重視のPCケースではほぼ標準の装備である
ファンを増やすと風量が増えるが、内部にホコリが入り込む機会も増える。吸気口前に防塵フィルタを装備するかどうかも確認したい

省電力パーツがバランス型を引き立てる

NVIDIAミドルレンジGPUの最大消費電力
GeForce GTX 760世代は例外的に高いが、基本的には世代が新しくなるにつれて最大消費電力は低下している

 CPUはアーキテクチャやプロセスルールが進化するたび、消費電力が低下してきた。ビデオカードも同じだ。右は、NVIDIA製の歴代ミドルレンジGPUの最大消費電力を比較した表だ。ハイエンドモデルに近い位置付けのGeForce GTX 760を除き、世代が新しくなるほど省電力になっている。

 負荷の低い状態では動作クロックを下げる機能がCPUやGPUで一般的になったこともあり、PC全体での消費電力や発熱の低下は著しい。こうした傾向が、静音性重視型PCケースの派生品と言えるバランス型PCケースの流行を支えている。

目的特化型のPCケースが増加

 作りたいPCのイメージが固まっているなら、目的特化型のPCケースのほうが作りやすく、運用やメンテナンス面でも有利だ。ハイエンドビデオカードを2枚以上搭載したいなら冷却重視型のPCケースを選ぶべきだし、多数の3.5インチHDDを搭載したいのであれば、シャドーベイの数と冷却システムの状況をチェックして、サーバーPC向きのモデルを選ぼう。

目的特化型の主なPCケース

5年でこう変わった 静音型が進化して復権

2007年に発売され、ロングセラーとなった「CM690」の後継モデル。前面メッシュパネルと大型ファンの採用でよく冷えるが、遮音性は今一つだった

 2010年は、Cooler Masterの「CM690 Ⅱ Plus」など冷却重視型のPCケースが主流だった。2015年のスタンダードである「Define R5」は、静音性を重視したバランス型ながら、設計の最適化により旧タイプの静音性重視ケースよりかなり冷える。またファンの搭載位置、ベイの配置など、多くの面で自由度が高い。使うと分かるが、同じATX規格でも別物と言えるほどの違いがある。

拡張能力をアップしつつ静音性を確保
最新のスタンダードPCケースDefine R5と、スペックをおおまかに比較した。サイズにはほとんど変化がないが、Define R5のほうが3.5/2.5インチストレージの搭載数が増えて、クーラーやビデオカードの選択の幅が広がっている

[Text by 竹内亮介]


電源の選び方

 CPUやビデオカードなどではコスパを気にするのに、電源が「とりあえず大出力」では実にもったいない。必要十分な出力を見きわめて、賢く製品を選ぶべきだ。

必要十分な出力はどのくらい?

 必要な電源出力は「実際に使うピーク電力の約2倍」が目安。下に掲載した作例の消費電力が参考になるだろう。これを見ると分かるように、必要な電源出力は意外と少ない。現在の定番的な構成ならば、ビデオカードを搭載するシステムでも400W台で十分対応が可能だ。430Wという適度な出力、奥行き14cmのコンパクトさ、セミプラグインと今風のトレンドを満たすCorsairのModular CX430Mなどは価格も手頃で、幅広くお勧めできる。

 ハイエンドパーツで固めたオーバークロック、ビデオカード2枚挿しなどには600W以上の出力が必要となる。こういうシステムでは、高負荷が長時間かかる運用が前提だから品質面の強い裏付けも欲しいところなので、品質に定評のあるSeaSonic製で価格もリーズナブルな650Wの「Gseries SSR-650RM」がオススメ。正規代理店であるオウルテックによる5年間新品交換保証も心強い。

最新トレンドを手頃な価格で
600W台・高品質でリーズナブル
Specification
ファン:12cm角×1(底面)●電源コネクタ:ATX20/24ピン×1、ATX/EPS12V×1、Serial ATA×4、ペリフェラル×3、PCI Express 6+2ピン×1、FDD×1
Specification
ファン:12cm角×1(底面)●電源コネクタ:ATX20/24ピン×1、ATX/EPS12V×1、Serial ATA×8、ペリフェラル×5、PCI Express 6+2ピン×4、FDD×1
作例から見る最適な電源出力
理想の出力は高負荷時の2倍。電源選びの参考にしていただきたい

奥行きケーブルは要チェック

 電源はATXという規格が主流だが、奥行きは製品によってさまざま。PCケースによって電源用スペースも異なるので、事前にチェックしておきたい。ケーブルを取り回すスペースも考慮し、1~2cm余裕を持ったほうが無難。とくに小型ケースでは十分な注意が必要だ。

 また、ケーブルの形状や本数もポイント。内部が狭いケースでは必要なケーブルだけを使えるプラグイン式や、一部が直付けのセミプラグイン式が便利だ。

奥行きの違いで必要なスペースが異なる
ケーブル処理に便利なプラグイン式
奥行き16cmが事実上の標準だが、最近は14cm以下の製品も増えている。大容量製品では18cm以上ある場合も
ケーブルが着脱可能なプラグイン式だと必要なケーブルのみ使えて、狭いケースでもゴチャゴチャしにくい

「80PLUS」って何?

80PLUS認証ロゴ
80PLUS認証を取得した製品にはグレードに応じたロゴが付与される

 80PLUSには6種類のグレードがあり、上位にいくほど変換効率が高いことを示す。変換効率の高さは電源の発熱やPCの消費電力に直結するので、省電力にこだわるなら重視したい要素だ。

 電源の変換効率は負荷率50%前後がもっともよく、低負荷や高負荷では悪くなる。そのため、負荷率50%前後の一番オイシイところを使わないとせっかくの高変換効率電源の効率も宝の持ち腐れ。負荷率50%の状態とは、実測の電力が電源出力の1/2の状態なので、出力選びをきっちりしてこそ、効率も最大に発揮できるということになるのだ。

80PLUS認証における負荷率・変換効率の基準

静音を追求するなら

定格出力520Wの完全ファンレス電源。80PLUSPlatinum認証と変換効率も高い。ほぼ全域をパンチ加工し、通気性を高めたボディが印象的

 最近の電源は負荷に応じて回転数が変化する大口径ファンを搭載している。普通に使う分にはほとんど気にならない程度の音しかしないが、より静かなPCを目指す場合は、低負荷時にファンが停止する準ファンレスや、完全ファンレスの製品もある。静音を極めるPCを目指すなら検討してみてはいかがだろうか。

5年でこう変わった 効率の底上げと小出力の選択肢が増加

80PLUS未取得製品も当時は多かった
5年前の80PLUSはGoldが最高だったが、今は2グレード上のTitaniumに。低価格帯では80PLUSなしもあったが、今はBronze以上が当たり前でGoldやPlatinumもめずらしくない

 もっとも目立つ変化は、変換効率の向上だろう。当時は80PLUSはGoldが最高で、数千円クラスでは80PLUS Standardや認証なしもあったが、今はほぼBronze以上だ。PCシステムの消費電力低下に伴い、当時はほとんどなかった450W以下の高効率電源の選択肢も増えた。

[Text by 鈴木雅暢]


【使用パーツ問い合わせ先】

Fractal Design:03-5215-5650(アスク)/ http://www.fractal-design.jp/
Lian Li Industrial:03-5298-3880(ディラック)/ http://www.lian-li.com/
Thermaltake Technology:03-5215-5650(アスク)/ http://jp.thermaltake.com/
NZXT:Webサイトのフォームから(タイムリー:http://www.timely.ne.jp/)/ http://www.nzxt.com/
Corsair Components:03-5812-5820(リンクスインターナショナル)/ http://www.corsair.com/
SilverStone Technology:03-5298-3880(ディラック)/ http://www.silverstonetek.com/
Sea Sonic Electronics:046-236-3522(オウルテック)/ http://www.seasonic.com/


DOS/V POWER REPORT 2015年5月号は2015年3月28日(土)発売】

★総力特集「保存版 PC自作マニュアル 2015」
★特別企画「六つの格安SIMを比較する」「ネットワークまわりの便利アイテム大集合!」「Bluetoothキーボードオールスターズ」
★連載「最新自作計画」「POWER REPORT PLUS」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 特別付録小冊子「自作PCがよくなるWindows設定集」(紙版のみ別途付録、電子版では本誌末尾に収録)
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(AKIBA PC Hotline!編集部)