eスポーツWatch

話題の「eスポーツ」、見てみませんか?

実況で盛り上がり、解説で涙する……実はそんなヒューマンドラマ

海外で行われたStarCraft2の決勝戦の模様。毎回大きな会場を貸し切って行われる。
中国で開かれたeスポーツの世界大会。選手たちのプレイに熱狂する観客たち。NVIDIA GeForce eSports 2013にて
中央の巨大スクリーンには、ゲーム画面と両チームの選手たちの様子が映し出されている。

 ここ最近、日本国内において「eスポーツ」の本格展開が進んでいる。

 eスポーツとはコンピュータゲームを「競技」として捉える場合の総称で、中にはプロリーグが存在するタイトルもある。一例としては、日本ではMOBA(Multiplayer Online Battle Arena)タイトル「League of Legends」(以下LoL)のリーグが2014年より発足、秋葉原で4月に開催された国内大会「League of Legends Japan League」(以下LJL)の決勝戦には数百人規模の観客が集まるなど、盛り上がりの注目度もどんどん大きくなってきた。

一方、海外では100万ドル単位の高額の賞金がついた大会も定期的に開催、大会の開催時期には、動画配信プラットフォーム「Twitch」などを通して、大勢のファンがプロゲーマーのプレイに熱狂している。

 つまり、「ゲーム」が「単なる遊び」だったのは一昔前まで。

まるでコンサートホールのような会場で、スポットライトを浴びながらゲームをプレイするプロゲーマー……。ステージ正面の巨大スクリーンにはゲーム画面、観客席にはスティックバルーンや応援ボードを掲げながら応援するファンたち。

スーパープレイが飛び出せば、大歓声とともにこだまする選手コール。まさにプロ野球やJリーグさながらの熱気である。

実況と解説で盛り上がる「eスポーツ観戦」実はゲームを知らなくても?

プロシーンでは、3ヶ月から半年間にかけて開催される長丁場のリーグも。写真はレギュラーシーズンで1位を獲得したチーム。
プロゲーマーの練習時間は1日平均10時間ぐらい。優勝の喜びもひとしお。StarCraft2の2013 WCS Season1 Finalsで優勝したInnoVation選手
LoLのゲーム画面。1人の選手が3人連続倒す好プレーは直後のリプレイで再確認。

 ………と、硬い文体はここまでにして。

 AKIBA PC Hotline!の読者のみなさん、はじめまして。スイニャンと申します。

 私は、いわゆる“普通”の兼業主婦(パートしてます)。eスポーツ好きが高じて2007年ごろから細々とeスポーツライターとして活動しています。

 そんなわたしがeスポーツ観戦の楽しさに目覚めたのは、海外での留学先。

 「ゲームそのもの」を楽しみつつ、「プロ」として人生をかけてゲームに取り組む選手たちの生き様、ライバル同士の因縁の対決、トップを守る王者と挑戦者の奮闘、勝者の喜びと敗者の悔しさといった、真剣勝負の中で生まれるヒューマンドラマは、球技や格闘技、モータースポーツのそれとまったく同じ。

 わたし自身、もともとスポーツ観戦が好きだったこともあって、その熱さに魅了され、のめり込むのにそれほど時間はかからなかったことを憶えています。

ゲームをプレイしたことがなくても、実況解説の話を聞けば楽しく観戦できます。写真は日本のLJL専属実況eyes氏、解説者のRevol氏。

 と言っても、わたし自身はヘビーゲーマーではありません。

ゲームをやりこみ、ルールを熟知していた方が楽しんで観戦できるのは間違いないですが、試合は実況や解説もとても楽しいもの。それらを聞きつつ、「ゲームの流れ」に身を任せてみると、盛り上がりも体感でき、注目すべきポイントもわかります。

 これは球技やモータースポーツの中継と同様で、実際のプレイ経験がなくても観戦を楽しめるのと同じです。ゲームによっては、選手が好プレーをした直後にスローモーションでリプレイが改めて流れることもあり、こちらもサッカーや野球の中継さながらです。

阪神 vs 巨人的な一戦も?

Samsungも長年にわたってゲーミングチームを運営しています。

 さて、「eスポーツの商業化」が世界で最も進んでいるのは韓国です。実に10年以上の歴史があり、SamsungやSK Telecom、CJといった大企業がスポンサーとなってチームを運営しています。

 それぞれのチームや所属選手にはファンが付き、彼らの動向をeスポーツ専門のWebメディアが逐一掲載し、ファンの人々はちょうどスポーツ新聞を読むような感覚で記事を読み、動向に注目する、ということが行われています。

 例えば韓国eスポーツ黎明期からの名門チームで、大手携帯電話キャリアのSK Telecom T1とKT Rolsterは、日本のプロ野球に置き換えるならば、阪神と巨人のようなライバル関係のイメージと言えばわかりやすいと思います。

人気ゲーマーの条件は実力+α

アイドルさながらの容姿でゲームも上手い選手には、女性ファンが本当にたくさん。写真はStarCraft1で絶大な人気を誇っていた韓国Bisu選手
PCゲームでは、プロゲーマーの指先はピアノを弾いているかのように素早く動きます。Tokyo Game Show 2014にて元プロゲーマーのcArn氏
アーケードゲームでは、ボタンやレバーを正確に操作しないと技が出ないのだとか。Tokyo Game Show 2014にてプロゲーマーの板橋ザンギエフ選手

 そんな人気プロゲーマーの条件は、「まず実力」が大前提。

これに加えて、ファンサービス心が旺盛だったり、話術が長けていたり、容姿端麗だったりする選手に人気が集まります。

 また、「プロゲーマー」というのは、操作の素早さ・精密さが「ワザ」の一つ。PCゲームならマウスやキーボード、アーケードゲームならボタンやレバーを迅速、かつ正確に動かし、突然の戦況変化にも迅速に対応する、こうしたことを行い続けるには、人並み外れたフィジカルも必要で、体を鍛えている選手も普通です。

 わたしは2007年頃から、アジアを中心にeスポーツを観戦しています。RTSの「StarCraft」に始まり、最近はLoLなどもよく観ます。

 そうした中、色々な選手を見ていますが、一番印象に残っているのは、2012年に引退した台湾の公務員プロゲーマー、HRU選手。

彼は平日に市役所で働きつつ、週末にはプロリーグに出場。独特のパフォーマンスとイケメン俳優のような容姿で、男女を問わず人気を博していました。ミーハーなわたし、実は彼にどうしても会いたくて、わざわざ台湾まで行きました(笑

台湾のリーグTeSLにて。いちばん左に座っているのがわたしの憧れのHRU選手。
左がわたし、右はHRU選手です。思いっきりミーハーな写真ですみません(笑
中国で知り合ったMacSed選手。元WarCraft3の選手ですが、StarCraft2に転向して現在も活躍しています。

 また、中国で行なわれた世界大会で取材した際、初めて会ったMacSed選手は、気さくで感じが良く、一気に大ファンに。その大会で優勝候補だった強豪を破って見事優勝の栄誉を勝ち取った彼は、今現在27歳。プロゲーマーとしてはそろそろベテランにさしかかる歳と言えますが、たゆまぬ努力を続けています。

 人生をかけた勝負の世界に生き、一個人としても魅力的な選手たちに出会えることもスポーツ観戦の楽しみ。

試合会場に足を運んで直接お話しできるかどうかは運次第だけど、そんな彼らを応援できるのが、私や私の「観戦仲間」の人生の楽しみだったりします。

実は女性ファンが多かったりも…

韓国の人気プロゲーマーの周りは、常にファンの女性でいっぱい。写真は試合終了後のファンミーティングの様子。
台湾の女性ファン。好きな選手のために、手作りの応援ボードを掲げて試合会場に駆け付けています。

 ちなみに、実際に会場へ足を運ぶファンの人々は国によって傾向が違うのですが、話をすると驚かれるのが「アジアでは女性ファンが多いこと」。

 こうした傾向は、(日本を除く)アジアでは、eスポーツが「一般的なもの」として定着し、スター選手が多いから、なのだと思っています。競技場へ行けばスター選手たちに直接会えるので、追っかけの女性ファンも会場に詰めかける、という寸法(?)なのかなと。

 日本の「eスポーツ」がどういった方向に進んでいくか、ちょっと興味のあるところです。

中国のファンたちが作った横断幕。意訳すると「直接に見に行けないファンのためにも頑張れ!」といった内容が書かれています。
台湾の選手カードコレクション。袋にランダムに入って売られていて、どの選手のカードが当たるかは開けてみないと分からない代物。
LoLを観戦する観客。海外ではeスポーツ観戦が一つの文化として根付いています。

日本のeスポーツシーンはどう広がる?

最近、世界的に人気があるのはLoL。写真は中国のWorld EliteがNVIDIA GeForce eSports 2013で優勝したときのもの。

 ここ最近で一番人気のeスポーツ種目はLoL。

なぜなら、地域による実力差が比較的少なく、北米、欧州、アジアのどの地域出身のチームも優勝できる可能性があるからです。特に米国ではLoLの公式大会「League Championship Series」(LCS)が国から正式にプロスポーツとして認定されるなど、世界中で盛り上がりを見せています。

 日本は世界に比べるとまだまだ実力不足感がありますが、それでも国内独自リーグである「LJL」が開始され、いくつかのプロゲーミングチームも設立されています。

開発・運営元のRiotGames社も日本法人を立ち上げており、近々レイテンシー(遅延)の低い日本サーバーがオープンするとの噂もあったり。

日本のeスポーツ施設「e-sports SQUARE AKIHABARA」で行われているLJLの様子。
LJL 2015のシーズン1ファイナルで優勝を果たしたプロゲーミングチーム「DetonatioN FocusMe」。

 さらに、日本でも観客席のあるeスポーツ施設「e-sports SQUARE AKIHABARA」が2014年にオープン、ようやく「観戦」を楽しめる環境が整ってきました。

最近は、ゲームメディアのみならず一般のメディアにも取り上げられることが増え、「プロゲーマー」がどうやって日々研鑽し、マジメに取り組んできているか、そうした事も徐々に知られるようになってきました。

コンピューターゲームが「スポーツとして認知される」、ようになる日も遠くないのかもしれません。

 ちなみに、直近での「プロゲーマーの活躍の場」といえば、本日5月23日(土)から始まるLJLのシーズン2(動画配信はこちら)。

今回はe-sports SQUAREでのオフライン観戦イベントも併催で、そのチケットはすでに完売していますが、もちろん動画配信もでも視聴できます。

気になる方はまずオンラインで、そしてできればイベント会場で、プロゲーマーを取り巻く熱気と、「今」のeスポーツシーンを肌で感じてほしい、と思います。

編集部より

AKIBA PC Hotline!では、「eスポーツを観戦する」ことにフォーカスした新コーナー「eスポーツWatch」を開始しました。現在の盛り上がりの中心となっている、League of Legendsをメインに、選手たちの戦いとドラマをお届けします。チームのインタビューや観戦ガイドなど、eスポーツを楽しく見る情報満載でお届けしていきますので、みなさまよろしくお願いします。

(スイニャン)