eスポーツWatch

急成長する「eスポーツ」を完全解説、
若きプロゲーマーたちを取り巻く新潮流とは?

〜ゲームで生活し、世界を目指す〜 text by 佐藤カフジ

Wikipediaより
2015年の世界大会も2ヶ月後に控えている。プレミアム観戦料からなる賞金プールは早くも10億円台を突破

 賞金総額10億円以上。ワールドチャンピオンの座を賭けて、各地域トップの16チームが一同に会す。1万人を超えるファンがスタジアムを埋め尽くし、ストリーミング放送を通じて数千万人が試合の模様を試聴する。世界で最もハイレベルなトーナメントを制し、優勝を果たしたチームは6億円を超える賞金と、比類なき名声を手にした……。

 これは、2014年7月に実施されたとあるゲームの世界大会で実際に起きたことだ。そのゲームは皆さんもよくご存知のPCゲームメーカーValveが展開するチームバトルゲーム「Dota 2」。MOBA(Mutiplayer Online Battle Arena)と呼ばれる人気ゲームジャンルのトップタイトルのひとつで、アクティブプレーヤーは世界で数千万人。Steamを通じて賞金を集める仕組みがうまく機能したこともあって、空前の規模で世界大会が運営された。

 各地域の予選を勝ち抜いて決勝の舞台に立った各チームは典型的な“プロゲーマー”と呼ばれる人たちだ。すなわち、ゲームをプレイして食い扶持を稼ぐ職業。その収入源は大会の賞金であったり、契約企業からのスポンサー料、CM等の出演料など多岐にわたるが、すべての源泉は彼らのプレイを見て熱狂し、気前よく観戦料を支払うファンたちの存在だ。

 競技性が高く、巨大なプレイ人口を誇るオンラインゲームの世界ではこのような観客と選手の関係が成立し、新しいプロスポーツビジネスが本格的に立ち上がっている。上述の「Dota 2」をはじめ、同様に人気の高いRiot Gamesの「League of Legends(LoL)」や、Valve「Counter-Strike: Global Offensive(CSGO)」、Wargaming.netの「World of Tanks」などなど、世界有数のゲームタイトルでは必ずといっていいほど、“目もくらむような賞金”と“巨大なファンベース”、そして“選りすぐりのプロゲーマーたち”による巨大なeスポーツビジネスが展開し、さらなる成長を続けている。

2015年4月末、ワルシャワで開催された「World of Tanks」の世界大会。各地域の予選を勝ち抜いた12のプロチームが集まった

eスポーツ分野で立ち遅れた日本,先行する海外その理由とは?

 海外ではすっかり定着しつつあるeスポーツビジネスだが、この分野では日本は完全なる後進国だ。

 この記事をご覧の皆さんの大半も、おそらくこれまでeスポーツの試合を観戦したことがなかったり、ショービジネスとしてなにが行なわれているかについてよく知らないのではと思う。それこそが日本がeスポーツ後進国であることの証明だが、デジタルゲーム先進国である日本が、この分野ではどうも振るわないというのは一見謎だ。

 しかし、理由はある。代表的なところを3つ挙げてみよう。

1.“ゲーム”に対する捉え方の違い

 ファミコン用ソフト「たけしの挑戦状」の有名なエンドメッセージ「こんなげーむにまじになっちゃってどうするの」は、日本人のデジタルゲームに対する向き合い方をよく表すミームのひとつだ。

 日本で“ゲーム”というと、まず子供の遊びというイメージに始まり、2000年代中旬には「ゲーム脳論」なるトンデモ学説がひとり歩きしたことも影響して不健全な印象もプラスされ、まさに、「げーむにまじになってどうするの」という空気が長年にわたって支配的だった。かたやeスポーツは、ゲームに人生を賭ける試みである。完全に真逆の概念だ。

 ゲームに対してマジになれない風潮の社会で、世界トップレベルの選手が生まれるはずもない。

 一方、海外、特に印欧語族の文化圏では“ゲーム”に対して全く異なる捉え方がある。

 英語の“Game”はもともと“人が集まる”という意味合いの語源を持ち、「スポーツの試合」、「勝負」、「競技」、「狩猟の獲物」などを意味する語として使用されてきた経緯がある。つまり、コンピューターを使った遊びに“Computer Game”と名付けられた時点から、そこにはスポーツ的なニュアンスが不可分に存在していたのだ。

 FPSやRTSといった対戦プレイがメインのゲームジャンルが早期に登場し、市場を支配できた経緯において、そういった文化的な背景が重要な役割を果たしたと考えられる。

欧米圏では、ゲーム=勝負に対してガチになるのは当たり前。スポーツ選手としてのひたむきな姿勢は、傍目ににも格好良い

2.長きに渡ったコンシューマー機による市場支配

オンライン流通システムの代表例として知られる「Steam」。その成立以前から、ゲームのベータ版や製品版をインターネットやパソコン通信上で流通させる仕組みは、PCゲーム界隈では一般的であった

 いろいろとガラパゴスな日本だが、ゲームをとりまく事情で最も大きなもののひとつは、長年のコンシューマーゲーム機による市場支配だ。

 狭い国土に高度成長期以来のふんだんなインフラ投資を経て世界最高レベルの流通システムを誇ることになったこの国では、ROMカセットやCD/DVD/BD-ROMといった物理媒体を速やかに消費者へ届けるというビジネスが大成功を収め、80年代から2000年代までのゲーム市場をほぼ完全に支配した。最盛期は世界全体の半分近くの市場が日本国内にあったことも影響し、ゲームメーカーが国内向けにコンシューマーゲームを作れば儲かるという時代が長く続き、それが体質化した。

 そして上述のように、国内の消費者の周りにはゲームにマジになることを好まない空気がある。いきおい、一人遊び用もしくは友好的コミュニケーション重視の非競技的ゲームが市場のほとんどを占めるという流れとなった。

 これに対照的なのは、世界で最初にプロのeスポーツリーグが成立したアメリカだ。コンシューマーゲーム機は市場の半分までは支配したものの、国土が巨大で流通システムの穴も多かったため(輸送の費用も、時間もかかり、小売店の在庫リスクも高く、消費者から小売店までの距離も遠い)、オンライン流通が早くから利用できたPCゲームが常に市場の重要な部分を担ってきた。

 1993年に登場したFPS「DOOM」がパソコン通信(CompuServe)発の大ヒットで2,000万本以上を売り上げたのち、1996年にはインターネット対戦に対応した「Quake」が登場。オンライン対戦文化が大いに盛り上がり、1997年には世界初のプロゲーマーリーグ「PGL」が成立した。その後、「Quake」や「StarCraft」、「Counter-Strike」等のゲームコミュニティが牽引する形でプロゲーミングへの試みは拡大。当初よりeスポーツ展開を睨んだタイトルも多数登場する流れとなり、現在のようなeスポーツ市場を形成するに至っている。

3.賭博規制と景品表示法の規制

 北米で最初に登場したプロゲーマーたちははもれなく“賞金稼ぎ”だった。

 大会の運営元が参加費・観戦料、あるいはスポンサー企業の協賛金を集め、それを大会運営費および大会賞金に充当することで、90年代末から100万円単位、1000万円単位という優勝賞金が珍しくなく、トッププレーヤーの年収は賞金のみで数千万円にのぼった。これだけ稼げれば自動的にゲームを仕事にできる。高額な賞金はノンプレーヤーに対しても話題を提供し、企業からのスポンサーシップも活発になっていく。

 スポンサーシップを受けたゲーマーは一度や二度大会に負ける事があっても、一定の収入を期待できるようになった。おかげで継続的に専門的なトレーニングを行なうことが可能となり、トップゲーマーのレベルはどんどん上がっていく。このような正のスパイラルがはじまった最初の触媒は、間違いなく“高額な賞金”だ。

 この点で日本は全く事情が異なる。賭博規制と景品表示法による厳しい規制の存在だ。

 例えば、プレーヤーから参加費を募って賞金に充当する方法は、賭博規制に抵触するおそれがあるので絶対に不可だ。また、日本ではゲームの販売・運営会社が大会を運営するケース(つまり参加者がサービスや商品の購入を条件として参加しているとみなされる)がほぼ全部を占めてきたが、その場合、景品表示法上の規制に抵触する恐れがあり、30万円以上の賞金を出すことができなくなる。

 それを避けるためには、販売・運営会社でない第三者が大会を運営する必要があるが、eスポーツ市場が成熟していない環境においては、運営費用を賄うためのハードル、その上で高額賞金を用意するためのハードルが非常に高いという現実があった。

(6/25更新) 第三者が大会を運営する場合の考慮が抜けていたため、記事を修正させていただきました。

 こうなると、北米のようにコミュニティ主催の巨大イベントを開くなどはほとんど不可能だ。また、メーカーやパブリッシャー主催の大会でも、高額賞金を出せる余地はほとんどないということになる。これでは、賞金稼ぎタイプのプロゲーマーが国内で生まれる余地などないわけだ。

そんな日本にも吹き始めた新しい風……eスポーツビジネスの小さくも確実な1歩

プロゲーマー、梅原大吾選手の公式ページ

 2000年代に世界中でeスポーツがどんどん盛り上がっていく中、完全に取り残された日本であったが、風向きが変わり始めたのは2010年。世界トップレベルの格闘ゲーマーである梅原大吾選手(ウメハラ)が、北米のゲームデバイスメーカーMadcatzのスポンサーシップを受ける形でプロゲーマー化を果たしたのだ。

 ウメハラがプロ化を果たせた理由は、海外でeスポーツ市場が盛り上がった結果、日本発の格闘ゲームを使った大会も海外で大規模に開かれるようになったおかげだ。高額賞金と、全世界のオーディエンスからの注目を集める国際大会。ウメハラはそこで勝利を重ねることによってワールドクラスの選手となり、eスポーツのワールドワイドなビジネスの潮流に乗ることができたというわけだ。

 これと同様のアプローチは、もっと以前から日本のゲーマーがプロになるためのほとんど唯一の手段だった。しかしFPSやRTSといったワールドワイドなジャンルでそれが成されなかったのは、ひとえに“試合で結果を出せなかったから”に他ならない。これらは国内ではプレーヤー人口の少ないジャンルであり、競争もぬるい。国内で最強無敵を謳う選手であっても、層の厚い海外のプロ勢には全く歯が立たないのだ。90年代末より、「Quake」、「Counter-Strike」、「StarCraft」から連なる様々なeスポーツタイトルで、国内で無双を誇った無数のプレーヤーやチームが、次々に世界の壁の前に砕け散り、夢半ばにして引退・解散という結末を迎え続けた。

 という面で考えると、格闘ゲームは日本発のジャンルであり、アーケードを中心に分厚いプレーヤー数を誇るという特殊性がある。国内の層が厚いため、そのトッププレーヤーは、海外のプロ勢に対しても充分に通用するレベルにある。このおかげで、海外の大会で結果を出すことができ、ワールドワイドな注目を浴びることもできた。そしてこの成功例は、他のゲームジャンルでの新たなチャレンジを生み出すことにつながった。

新たなプロゲーマー誕生の舞台となっている「League of Legends」賞金総額数億円、視聴者延べ1億人超……

「LJL」、2015年ファーストシーズンのプレーオフ大会の様子
プロチーム化を果たした「DetonatioN FocusMe」。国内大会では無敵の成績を残している
「AVA」最強チームとして長らく君臨してきたチーム「DeToNator」もプロチーム化

 新たなプロゲーマー誕生の舞台となっているゲームタイトルは、全世界で数千万人のアクティブプレーヤー数を誇るMOBAタイトル「LoL」だ。Riot Gamesが主催する「LoL」世界大会の賞金総額は「Dota 2」に及ばないものの、数億円には達しており、大会の視聴者は延べで1億人を超えるという、世界最大規模のeスポーツタイトルとなっている。また、「LoL」は日本国内でも10万人前後のプレーヤーベースがあり(筆者推計)、国内のPCゲームコミュニティでは最大級の規模感だ。

 このような特性を持つ「LoL」は海外での盛り上がりに乗っかっていくには理想的なタイトル。そこに目をつけたのが秋葉原に拠点を置く広告代理店の株式会社SANKOである。SANKOは、2011年よりeスポーツ特化型のイベントスペース「e-Sports SQUARE」の営業を開始、様々なゲームタイトルで、様々な大会運営の形を模索した後、2014年より「League of Legends Japan League(LJL)」を主催・運営している。

 このような取り組みが巡り巡って、いま、「LoL」界隈を中心にプロゲーミング文化が国内でいよいよ花開こうとしているのだ。そのトップバッターとなったのが、マルチゲーミングチームDetonatioNである。当初「カウンターストライクオンライン」のチームとして始まったDetonatioNは、2012年から「World of Tanks」を中心に活動。2014年からは「League of Legends」部門を拡充し、2015年2月、「LoL」部門のトップチームである「DetonatioN FocusMe」の完全給与制・プロゲーマー化を果たした。

 「賞金稼ぎではなく給与制からスタートする」というのは日本のガラパゴス的な事情を踏まえると自然な成り行きだが、いずれにしてもこれをきっかけに“プロゲーマーという職業”への社会的認知度がぐっと上がってきたことは確かなことだ。

 以前にもゲームパブリッシャーに雇われる形でプロを名乗るゲーマーは存在してきたが、完全に独立した選手の集まりとして、プレイを通じて生計を立てていく事業体としての、ほんもののプロゲーマーチームは、DetonatioNが国内初の例である。

 これを後追う形で、オンラインFPS「Alliance of Valiant Arms(AVA)」で長年トップ成績を残してきたマルチゲーミングチームDeToNatorが、モバイルゲーム企業Aimingの出資により事業化を実現。株式会社GamingDを立ち上げ、「AVA」、「Dota 2」、「LoL」の3部門でプロゲーミング活動を展開していくことを明らかにしている。

東京アニメ・声優専門学校に2016年より設立されるプロゲーマー専攻
Wargaming.net Asiaには14のチームが所属。日本のチームも上位に食い込んでいる

 これらの動きが活発化しつつあった今年3月には、学校法人滋慶学園の東京アニメ・声優専門学校に、プロゲーマー専攻コースが開講されることも発表され、話題を集めた。「eスポーツ プロフェッショナルゲーマーワールド」と名付けられたこのコースでは、プロゲーマーのほか、eスポーツに関連したPR・ビジネスリレーション系のスタッフ、MC&実況声優、イベント運営テクニカルスタッフといった育成内容を掲げており、巷で言われるよりは地に足の着いた絵を描いているようだ。

 世界トップベルのゲーマーを教育で作れるかどうかには大いに疑問が残るものの、少なくとも、その周辺を含めたeスポーツ産業の成長を見込んでいることは確かなことだ。こういった、プロゲーマー/eスポーツがらみの動きが多数出てくるようになったことで、計算外のシナジー効果を発生し、現実が理想に追い付きつつあるような印象が、いまの業界にはある。

 これに加えて、世界的なeスポーツタイトルのひとつである「World of Tanks」では、各地域のトップリーグであるWargaming.net League GOLDシリーズに属する各チームのメンバーに、運営元のWargaming.netが直接給与を支給するというゲーマー支援プログラムを発表した。ひとりあたり1,500ドルから2,000ドル(およそ18万円〜24万円)のサラリーとなる模様で、国籍等の縛りもない。現時点では日本のチーム「Charlotte Tiger」もGOLDシリーズに所属しており、当プログラムがスタートすることでこれらのチームもまた違った形で“プロ化”を果たせることになるかもしれない。

 規模感を増す世界の潮流により、日本のeスポーツも新しいステージに入ろうとしている。

設立初年。はやくも軌道に乗りつつあるDetonatioNの取り組み専用施設の整備や給与制、毎月数百万の経費を超えて…

プロチーム「DetonatioN FocusMe」(LJL公式サイト より)

 こうして新局面に入ってきた日本のeスポーツシーンだが、その代表的なグループはビジネス的にも成功を手にし始めている。それは、上述のマルチゲーミングチームDetonatioNである。

 DetonatioNは去る2月、「LoL」部門のトップチームである「Detonation FocusMe」を完全給与制のプロチーム化すると同時に、ゲーミングハウスを設立。プロスポーツチーム顔負けの共同生活をスタートさせている。

 ゲーミングハウスというのは、野球やサッカーチームのクラブハウスと同様の概念で、チームメンバーが集まり、練習を行なうために用意された専用の施設だ。近場に住まいのない選手には寝起きする場所も提供するのが一般的で、DetonatioNのゲーミングハウスではFocusMeのメンバー全員が寝起きしている。おはようからおやすみまでの共同生活。無期限の合宿会場のような格好だ。

ゲーミングハウスでの練習風景。1日8時間にも及ぶ練習セッションを、毎日続けている
彼らがプレイしているのは、世界最強クラスのチームが多く集まる韓国サーバーだ

 元は事業家の住居であったという3階建ての豪邸には、5人のチームメンバーとコーチが同時に「LoL」をプレイできるゲーミングルームを用意。午後は深夜まで練習タイムで、5時間のソロ練習、3時間のチーム練習を経て、就寝前には全員が集まっての反省会。5月24日に開幕する「League of Legends Japan League」のシーズン2に向け、FocusMeのメンバーは週休1日の体制でこのような生活を続けている。

 4月末に出場した国際大会「IWCI」ではグループリーグでの敗退を喫してしまったものの、国内では並ぶもののない最強チームとなっているFocusMe。次なるチャンスをものにするため、世界最強レベルのチームが集まる韓国サーバーに参戦。その練習にはますます力が入っている。

チームを率いるDetonatioN代表の梅崎伸幸氏。プレーヤーとしては実質的に引退し、組織運営に集中している

 このようなプロチームとしての活動をはじめてからというもの、この建物の家賃に、FocusMeメンバーへの給与の支払いで、毎月数百万円の出費が続いていると語るのは、DetonatioN代表の梅崎伸幸氏だ。もともと「カウンターストライイクオンライン」のプレーヤーであった梅崎氏は、DetonatioNのマルチゲーミングチーム化以降はチームマネジメントに集中。毎日の練習の監督や、財務管理、メディア対応といったチーム運営業務に忙殺される毎日だ。

 大会賞金を稼げない現状では、チームの収入源は協賛企業からのスポンサー料が中心だ。ここでは梅崎氏の、重電系企業を相手にした営業職という前職のスキルが大いに生きており、ロジクールをはじめとする大手企業からのスポンサーシップを、プロ化を果たす以前から複数獲得している。

プロ化以前よりロジクールのスポンサー契約を受けており、選手たちのマウス・キーボードもロジクール製で統一されている

 プロ化を果たしてからは、その動きがますます加速。“プロゲーマー”という看板を掲げた瞬間から話題性が高まり、テレビ番組にも度々取り上げられるようになるなどメディア露出が倍増、それがさらに話題を呼ぶというスパイラルが急激に進んでいるという梅崎氏。スポンサー契約の提案が以前とは比べ物にならないほどの勢いで届くようになり、以前なら“藁をもすがる立場”であったところ、今では同ジャンルの競合メーカーの双方から問い合わせが来てしまうほどという。

プロとして「世界大会で勝つため」に

 このような流れで、DetonatioNは今後数ヶ月のうちには事業の黒字化を達成する見込みだ。しかしそれだけで終わりではない。梅崎氏は、DetonatioNをプロ化した目的は金儲けではなく「あくまでも世界大会で勝つためだ」と語っている。

 元来、ひとりのゲーマーであった梅崎氏が目指すのは、彼が率いるチームがゲームの世界大会でスターダムにのし上がることだ。DetonatioNが事業的に軌道に乗り始めたことで、それが急速に実現に近づきつつある。

大会で結果を出し、スポンサー契約を受け、事業化を果たすことで、プロとしての専門的な練習環境を構築することができた。それがさらに実力を伸ばし、より大きな結果を狙うことに繋がる
LJLの大会の様子
国内で開催されるリーグ「LJL」では負け知らずのDetonatioN。プロチームとしての活動が軌道を載せるためには、国内だけでなく世界の舞台でも結果を残せるチームになっていけるかがカギを握る

 競技種目に「LoL」を選んだことも、この目的があってのことだ。梅崎氏は「Dota 2では成功できない」と断言する。それには2つの理由がある。

 1つ目の理由は、、「Dota 2」の運営母体であるValveはSteamを通じた世界展開に注力しており、各地に現地法人を置いてプロモーションやローカル大会の運営をするといった見込みがない、ということだ。日本ならなおさらだ。対する「LoL」は、近々に日本サーバーのオープンが間近と見られており、今以上の盛り上がりや、公式大会への参加への道筋がさらに広がっていくだろう。

 2つ目の理由はもっと決定的だ。eスポーツでは、結局のところ世界大会で結果を出せてナンボである。たとえいま国内最強チームとして注目を浴びていても、何年経っても一度も世界大会に出場できないとか、上位にも進出できないのでは、お山の大将で終わる。やがてファンも白け、潮が引くようにスポンサーも去っていくこと必定である。勝たねばならない。勝つためにはどうするか。世界トップレベルの連中と練習していくしかない。

 幸いに、「LoL」最強のチームが集まるのは、お隣の韓国である。韓国とはネットワーク的にも距離が近いため、本番の大会に近い理想的な環境で試合をすることができる。実際、DetonatioNのメンバーは現在、韓国サーバーで活動し、韓国トップレベルのチームと練習を重ねている。これに対して、「Dota 2」最強の地域は中国である。中国はネットワーク的に遠く(いわゆるグレートファイアーウォール、金盾の影響だ)、通信環境が優れないためまともに国際試合ができない。したがって、ハイレベルな練習をしにくい。ハイレベルな練習なしに、ハイレベルなチームは生まれ得ない。

 だから「日本でプロチームを成功させるには、そのタイトルが韓国で最強であるかが重要」という梅崎氏。ただひたすらに、国際大会で勝つためを考えてのチーム運営。世界を相手に勝てなければ全く無価値な集団になるという、ハイリスクなビジネス。そこには、既存のプロスポーツチーム顔負けのリアリズムがある。

 このDetonatioN FocusMeを筆頭に、日本のプロゲーマーたちは、eスポーツの新時代を切り開いていくことだろう。そこに賭ける人々がいるからこそ、大会で繰り広げられるトップレベルの試合は、我々一般のゲームファンやノンゲーマーにとっても、手に汗にぎるテンションを発することができるのだ。

編集部より

AKIBA PC Hotline!では、「eスポーツを観戦する」ことにフォーカスした新コーナー「eスポーツWatch」を開始しました。現在の盛り上がりの中心となっている、League of Legendsをメインに、選手たちの戦いとドラマをお届けします。

チームのインタビューや観戦ガイドなど、eスポーツを楽しく見る情報満載でお届けしていきますので、みなさまよろしくお願いします。

(佐藤 カフジ)