イベント

NVIDIAとMSIの合同イベントで未発売のOCビデオカードが展示

新クーラー「TWIN FROZR VI」やゲームキャプチャ機能「Ansel」について解説 text by 関根慎一

会場の様子

 MSIとNVIDIAは7月9日、両社の製品情報を紹介する趣旨の合同イベントを開催した。会場はツクモパソコン本店4階。

 イベントは二部構成で、第一部ではMSIのGPU向けクーリングファン「TWIN FROZR VI」およびNVIDIAのGPUアーキテクチャ「Pascal」に関する解説を実施。第二部ではプロゲーマーとFPSタイトル「Counter-Strike: Global Offensive」で対戦できる交流イベントが実施された。本記事では、第一部の内容をメインに掲載する。

 なお米国で7月7日に発表され、日本では19日に発売予定の「GeForce GTX 1060」に関する追加情報が期待されるタイミングだったが、本イベントでの言及は特になかった。

風量と風圧、静音性を大きく向上させた「TWIN FROZR VI」

製品説明を担当したアスクの内野圭一氏

 会場では、MSIがラインナップする国内未発表のビデオカード「GAMING Z」シリーズのサンプル展示が行われていた。

 GAMING Zは、発売済みの「GAMING X」からベースクロックを引き上げたオーバークロックモデルで、「GeForce GTX 1080 GAMING Z 8G」および「GeForce GTX 1070 GAMING Z 8G」が発表されている。

TWIN FROZR VIが搭載されたGAMING Zシリーズ(左)と、GAMING Xシリーズ(右)
ブレード形状を微妙に変えて、ファンが生み出す風量と風圧をアップさせている
側面のMSIロゴは、ユーティリティの制御によって好きな色に発光させられる
TWIN FROZR VIクーラー裏面
GPU接地面に肉厚のニッケルメッキ銅プレートを採用
バックプレートには新たに発光するロゴのギミックを仕込んである
TWIN FROZR VI搭載ビデオカードを組み込んだPCの作例
GAMING Zのボックスイメージ(上段)

 GAMING ZにはGAMING Xと同様に新クーラー「TWIN FROZR VI」が搭載されており、見た目は非常によく似ているが、旧モデルの「TWIN FROZR V」からさらに冷却効率を高めているという。具体的にはファンのブレード形状を一新し、風量と風圧をそれぞれ向上。内部にはダブルボールベアリング構造を取り入れ、耐久性も確保。この結果、静音性が40%向上し、温度も従来から20%低下しているとした。

 このほか、バックプレートにはLEDによる発光ギミックを装備。付属ソフトによりカラーや発光パターンの制御も可能となっている。

TWIN FROZR VIとリファレンスクーラーの性能比較
旧モデルのファンと比べて送風効率が向上している
ファンのブレード形状を変更
細部の設計を変更しさらなる静音化に成功
旧モデルと回転数ごとの騒音を比較
60度までは送風しない「ZeroFrozr」
細部にわたるまで冷却性能にこだわった

 またMSIでは、PCゲーム向けのミドルレンジ~ハイエンドパーツが属する「Gaming Series」ブランド展開の一環として、イメージソング「Song of MSI Gaming」を6月に公開した。同社のスタッフによれば、MSI創業30周年の節目を記念する意味合いもあるという。

【Song of MSI Gaming】

自由なアングルで"ゲーム内写真"を撮影できる新機能「Ansel」

NVIDIAの高橋一則氏

 NVIDIAの高橋一則氏が登壇したNVIDIAのセッションでは、Pascalアーキテクチャの各種機能と、旧アーキテクチャとのパフォーマンスの差などを紹介。同氏による発売直後の技術解説にもある通り、ベースクロックやメモリ帯域幅の向上をはじめ、マルチディスプレイ時の視野歪み補正やVR使用時のパフォーマンスを向上する「レンズマッチドシェーディング」や「シングルパスステレオ」といった機能について話した。

 なお今回は、ゲームの中で自由な画面写真を撮影できるインゲームキャプチャ機能「Ansel」(アンセル)について特に多くの時間を割いて言及していた。

GTX 1080で採用されたGDDR5Xメモリの解説
ゲーム内で撮影したスクリーンショットを"写真芸術"としてとらえる見方を紹介
Anselの持つ主な機能

 Anselは、対応ゲームタイトル内におけるスクリーンショットの撮影を支援する機能。NVIDIAでは"ゲーム内で写真を撮る機能"と位置づけており、単なるスクリーンショットとは異なる点を強調している。

 Anselの特徴は、「ゲーム内写真」を撮るためにゲーム本体からプレイヤーに対してかけられている制限を一時的に解除できる点。具体的には、カメラアングルの制限を解除できる。

 対応タイトルでAnselを起動するとゲームが一時停止し、システム上プレイヤーに許された視界の制限を超えて、カメラアングルを自由に変更できるようになる。また、撮影したゲーム内写真に対して後からフィルタをかける処理も可能となっており、例えば、昼のシーンを撮影したイメージに対して、ゲーム内での夜に撮影したようなイメージを作り出せる。

 さらに、撮影時の画像はゲームエンジンが対応する最大解像度、仕様上は61,440×34,560ピクセルの超高解像度を指定でき、一部だけを切り抜いて作品を仕上げることができる。現時点での対応タイトルとしては「The Division」、「The Witness」、「The Witcher 3 Wild Hunt」、「Law Breakers」、「Paragon」、「No Man's Sky」、「Unreal Tournament」、「Mirror's Edge Catalyst」などが挙げられた。

自由な視点で写真が撮れるフリーカメラ機能
デジタル写真でいうところのRAWデータにあたる「EXR CAPTURE」
露出など多岐に渡る設定を調整することで、自由にイメージを調整できる
61,440×34,560ピクセルにおよぶ超高解像度で広範囲のイメージを撮影できる
仕様上の主な数値
輝度が異なる複数の画像をつなぐ際の問題を解決するCUDAベースのステッチャーを使用する
Anselによるポストプロセスを経て最終イメージが出力される
使用可能なエフェクト
それほど多くないコードの追加によって簡単に実装が可能
対応ゲームタイトルの一部
The Divisionで撮影した作例
The Witcher 3で撮影した作例

「これまでこういった形でゲーム内写真を撮るには、元からゲーム内写真を撮影する活動をしていたプレイヤー個人に対して、デベロッパーやパブリッシャーが特別な撮影用ビルドを提供していたのですが、これからは誰でもそういった写真を撮ることができます」(高橋氏)

 Anselはゲームタイトルへの対応を非常に容易に行なえる点も特徴の一つであり、The Witnessの場合は約40行、The Witcher 3の場合は約150行のコード追加で実装しているという。なおAnselを使うことによる"ネタバレ"を防ぐために、ゲーム側でもカメラを動かせる範囲やアングルについて制限をかけることは可能だという。

 このほか、VRエンジン「VRWorks」に新たに実装された物理演算オーディオ機能「Path Traced Audio」も紹介した。本機能では、ゲーム内のある地点から発生した音がゲーム内空間に存在するオブジェクトに反響してプレイヤーのいる位置に届くことを物理演算によって再現する。現状では音源から距離や向きに応じて直接音が聞こえてくるが、Path Traced Audioを適用することで、従来と比べて段違いの臨場感が得られるとのこと。

物理演算によりオブジェクトに反射した音響を再現する「Path Traced Audio」
実効イメージ

 第二部では、元プロゲーマーで現在はNVIDIAでコンスーマーマーケティングマネージャーを務める谷口純也氏と、プロゲーミングチーム「DeToNator」のYamatoN氏、akioni氏が登壇して、来場者とFPSで対戦する形での交流が行なわれた。

谷口純也氏
DeToNatorは現在競技として取り組んでいるゲームタイトルの中から「Overwatch」を紹介した