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“寺子屋的”プログラミング教育の老舗スクール「TENTO」を取材してきた

~イベント「パソコンとマイクラ」で語られるプログラミングとは?~

TENTOさいたまの様子。開放的で明るい雰囲気だ

 「PCでマインクラフトをプレイする楽しさ」をテーマに、影Modのポイントやマインクラフトを活用したプログラミング入門も紹介する無料イベント「パソコンでマイクラ! ~Windows 10ではじめるマイクラとプログラミング~」がいよいよ26日(日)に開催される。

 会場では、「マインクラフトで学ぶプログラミング」をテーマにしたプログラミング関連のセッションや体験コーナーもあるが、そこでご協力いただいているのが、日本の小中学生向けプログラミングスクールの草分けである「TENTO」。

 ここ数年、「子どもへのプログラミング教育」への関心が高まっており、子どもを対象としたプログラミングスクールも急増。そして2020年度からは、小学校でのプログラミング教育が必修化される見込みでもある。

 そこで今回、「TENTO」ではどういった教育が行われているのか、その授業の模様を取材し、代表の竹林氏にお話を伺ってきた。

楽しそうにプログラミングに取り組む子ども達

TENTOさいたまの入居するビル

 TENTOは、2011年に設立された日本初の小中学生向けプログラミングスクールであり、現在は首都圏を中心とした10教室での展開を行なっている。今回取材したのは、JR南浦和駅の近くにあるTENTOさいたまである。

 TENTOさいたまは、開放的で明るい教室だ。子ども達はまず好きな場所に座り、リラックスした雰囲気の中、「授業」をうける。

 アイスブレイク的なセッションがあったのち、子ども達は、習熟度ややりたいことに応じて、4つのテーブルに分かれる。取材時は、Viscuitをやる初心者組、Scratchを一緒に学んでいくScratch初心者組、自由にプログラムを組むScratch上級組、Processingを使ってプログラミングを行なうテキスト言語組の4つのテーブルに分かれていたが、参加する子ども達がやりたいことをやるというシステムなので、日によってその内容は変わる。

 ある程度慣れた子ども達は、もくもくとプログラミングを進めていく。何か分からないことや困ったことがあったら、講師を呼ぶというスタイルだ。講師は5名おり、丁寧に子ども達の質問に答えていた。一コマの授業時間は1時間30分だが、途中でダレたりすることなく、子ども達はみんな楽しそうにプログラミングに取り組んでいた。終了時間になっても、すぐに帰る子どもは少なく、そのままプログラミングを続けたり、ゲームなどで遊ぶ子どもが多かった。

習熟度ややりたいことに応じて、子ども達は4つのテーブルに分かれて学習が行なわれた。このテーブルでは、講師と一緒にScratchを学んでいた
Scratchにある程度慣れた子ども達は、自由にScratchでプログラムを組んでいた

年齢やスキルがさまざまな子どもが集まる寺小屋方式が特徴

株式会社TENTO 代表取締役社長 竹林暁氏

――TENTOを設立した経緯について教えて下さい。

[竹林氏]TENTOは、私と草野の二人で創業しました。二人とも以前は中学受験塾で教えていたのですが、私はそのあとプログラマーとして働いていました。二人で一緒に仕事を始めようということになり、今までの経験を活かして子どもに何かを教えるのがいいだろう、それもこれからはコンピューターだろう、プログラミングだろうっていうことで始めました。

 ただ、中学受験塾は、基本的に詰め込み学習ですよね。それは絶対ダメだというのが、我々のTENTOのベースになっています。だから、子どもが自分でやりたいと思ったことを教えていくようにしました。もちろん、プログラミングの技術を教えたいとは思いますが、それよりも、子ども達の学び方自体を変えていきたいというモチベーションでやってきました。

――他にも子ども向けプログラミングスクールは多数ありますが、TENTOがこだわっているところは何でしょうか?

[竹林氏]それは学習方法ですね。今見ていただいたように、寺子屋教育って我々はいっていますが、お仕着せのカリキュラムを画一的にやるのではなくて、自分達がやりたいことをやるというのが特徴です。そのときにポイントとなるのが、完全に個別で子ども達がやるのではダメだということです。完全に個別にやっていると、人とコミュニケーションもないし、人に影響を与えたり、影響を与えられることがない。子どもっていうのは、周りの子とのコミュニケーションの中で育っていくんですよ。だから、子ども達同士のコミュニケーションはとても大事なんです。しかも、均質化した、同じような子どもだけでコミュニケーションするのではダメです。年齢が違ったりとか、考え方が違う子が、集まって刺激し合うっていう環境が大事なんです。それが他の所にはないと思います。だからTENTOには、基本的にコースというのはなくて、子ども達がやりたいものをやります。

――今、TENTOではどのような学習を行なっているのでしょうか?

[竹林氏]学習内容としては、最初は必ず、Viscuitをやります。Viscuitはとても楽しいんですよね。まず、「プログラミングは楽しい」ってことをわかってもらいます。その次が、Scratchですね。Scratchは取っつきやすいですが、本当にいろんなことができるんですよ。だから、Scratchによって、プログラミングの可能性を感じてもらう。

 Scratchの次は、テキスト言語をやってもらいます。我々の場合は、Processingから入るのが普通ですね。ProcessingとJavaScriptから入ります。ProcessingやJavaScriptは、プログラミングをやりたい子ども向けで、表現をやりたい人はHTMLでWebサイトを作ります。

初心者はまずViscuitを利用してゲームを作る。Viscuitでは、絵を描くだけでプログラミングが可能だ

――子ども達のやりたいことにあわせていろいろ選べるわけですね。

[竹林氏]そうです。ネットからデータをとってくるとか、いろいろなライブラリを使いたい子は、Pythonをやったりもしてます。ProcessingやJavaScript、Pythonあたりで、テキスト言語の基本的な概念を学んでもらいます。変数だったり、条件分岐だったり、エラー処理だったり、ファイル処理だったり、いろいろありますよね。それを学んだら、そこから先は自分でやることを決めることになります。

 我々が重視しているのは、この場所を作るということなんですよ。この場所に、プログラミングをやっている子ども達が集まって仲間になると。子どもって結局、親とか先生の評価ではなくて、子ども達同士の評価を一番重視するんですよ。だから、子ども達同士でうまく、自然発生的にコミュニティができるといいなっていうのが、我々の重視しているところです。

このテーブルは上級者組。テキスト言語のProcessingを学んでいた
テキストを見ながら、コードを入力していく
彼女はProcessingにもかなり習熟しているようで、何も見ないでコードをどんどん書いていた
プログラミングに関する書籍も多数置かれており、生徒達が自由に閲覧できるようになっていた

「マインクラフト」と「プログラミング教育」の関係は?

――今後の展開はいかがでしょうか?教室を増やす予定とかはありますか?

[竹林氏]普通に考えたら、我々は教室を増やすペースがかなり遅いと思うんですが、それにはやはりこだわりがあって、我々としては本物のプログラマーにアドバイスを求められるという環境を与えたいんです。TENTOの講師はほとんどが業務経験を持つプログラマーです。だから、なかなかいい人材を見つけるのが大変で、教室を増やせないんですよ。今後も教室展開としては、そんなに増えなくて、1県に1校とかというレベルじゃないかと思っています。首都圏は別ですけどね。ただ、首都圏ではかなり受講者が増えていて、今年中に講座の数は、2倍にしようと思っています。

 それから、我々としては教材を自社開発していきたいと思っています。言語開発のレベルでやっていきたいと思っています。やはり、教室展開だけだと、どうしてもビジネスとしては難しいところがあるので、カリキュラムをプロバイドする側に回りたいんですよ。カリキュラムを作るだけではなくて、ネット上の教材みたいな、例えば、CodeMonkeyってありますよね。ああいうものを我々は作りたいんですよ。

――CodeMonkeyはよくできていますよね。自習できるようになっていますし。

[竹林氏]そうです。ただ、我々としては、そこにひと味スパイスを加えたいんですよね。つまり、プログラミングを自習できるのなら、Webサービスが1つあればいいはずですよね。でもなんで、うちはリアルにやっているかというと、さっきも言いましたが、子ども達同士で集まって、コミュニケーションを行ないながら育っていくという側面があるので、そこに注目したうまい方式を作れないかなと、今構想中です。

――3月26日に秋葉原でマインクラフトのイベントが行われます。その中でセッションを行われる予定とのことですが、その内容について教えていただけないでしょうか?

[竹林氏]マインクラフトって、普通に遊ぶだけでも面白いんですけど、その世界の中でいかにクリエイティブに創作するのかって、子ども達は思っているわけですよね。

 マインクラフトを使ったプログラミングというと、例えば、ComputerCraftっていうマインクラフトの中でブロックプログラミングができるものもありますし、PythonやJavaScriptも扱えます。もっと上級者向けになると、Javaでマインクラフト自体のMODを作ったりすることもできます。

 通常ですと、用意された世界の中で作るんですけども、プログラミングができれば、マイクラの世界そのものを拡張できます。

 3月26日(日)のイベントでは、そうした可能性を子ども達に見せてあげたいと思っています。要はマイクラという世界に関して、遊び手から作り手に変わるわけですよね。そこは非常に大きいですよね。

――最近、若者のPC所有率が下がっていることが問題になっていますよね。

[竹林氏]はい。だから逆に子ども達は、今パソコンをかっこいいと思ってるんです。ゲーミングPCってありますよね。あれがとても人気あるんですよ。子どもは大体二派に分かれて、Macが欲しい派か、ゲーミングPCが欲しい派なんですよ。子どもに何が欲しいってきくと、ゲーミングPCって普通に答える子が多くなっているんですよ。だからそういう意味で、潮目が変わりつつあります。それはすごくいいことです。子どもがゲーミングPCを欲しいっていったら、是非買ってあげて欲しいんですよ。

――最後に、子どものプログラミング教育に興味のある読者へのメッセージをいただけますか。

[竹林氏]ただ単にプログラミングの技術が向上するという側面だけではなくて、プログラミングを学ぶことは、新しい学び方に繋がるということに注目して欲しいと思っています。プログラミングは自学自習にすごく向いています。先生がいらないんですよ。我々がそれを言うのもなんか矛盾しているんですけど、我々の役割はあくまでも場を作ることだと思っています。自分で何かを考えて作ることで学ぶっていうところが、一番プログラミングのいいところなので、プログラミングを通して、そういったものの学び方の変化を子ども達に経験して欲しいなと思います。だから、お子さんに自由に扱えるPCを与えてあげるということも大事だと思います。

【イベント開催概要】

イベント名
「パソコンでマイクラ!」
~Windows 10ではじめるマイクラとプログラミング~
主催
旭エレクトロニクス株式会社
協賛
日本ギガバイト株式会社

日程
2017年3月26日(日) 12時30分~16時00分
場所
秋葉原UDXギャラリー NEXT3
住所
〒101-0021 東京都千代田区外神田4-14-1 4F

【イベント内容】

●トークセッション
第1部 :パソコン版マイクラのはじめかた
【13時00分~13時30分】
 「パソコン版マインクラフト」の違いや楽しさのポイントや、マインクラフトを楽しめるPCを紹介。解説は「改造バカ」こと高橋敏也氏と、マインクラフトにも詳しいテクニカルライターの芹沢正芳氏。

第2部 :高性能パソコンだとマイクラはこんなにすごい!
【14時00分~14時30分】
 パソコンでマイクラをやるなら「影Mod」は入れたいもの。影Modを入れることで何が変わるか、そして「影Mod」を入れて楽しくプレイするにはどれぐらいのスペックが必要なのかを解説します。解説は高橋敏也氏と、PCでのゲームシーンに詳しいテクニカルライターの加藤勝明氏。

第3部 :マイクラでプログラミングに挑戦してみよう!
【15時00分~15時30分】
 子供向けプログラミングスクール「TENTO」が、子供向けに「プログラミングの楽しさ」を紹介します。
 マイクラ内で動き回る自走ロボットを作成できるMod「Computercraft」を使った、プログラムできる「自動ロボット」の魅力や、RaspberryJamModとPythonを使った事例、Eclipseを使ったModそのものの開発方法など、幅広い内容で「子供とプログラミング」を紹介します。

●会場展示など

マインクラフトを楽しむためのPC(体験コーナー)
 「プレイできればいい」から「Modを入れまくってプレイしたい」「プログラミングや配信もやってみたい」まで、様々なニーズに応えるPCを紹介します。実際にプレイもでき、PC選びのポイントがわかる小冊子や子供向けPCの設定ポイントがわかるパンフレットも配布します。

Modプログラミング(体験コーナー)
 PC版マインクラフトの魅力の一つである「Mod」ですが、それを自分で作れることもPC版の魅力。このコーナーでは、「Modプログラミングの楽しさ」の入り口を紹介、「何がどう楽しいのか」を体験できます。ごく簡単な内容をご用意しますので、プログラミング初級者の中学生や小学校高学年のお子さまでもOKです。詳細はこちらをご覧下さい。