借りてみたらこうだった!

A-DATAのOCメモリ「XPG V2」をテスト、常用ならDDR3-2400が狙い目?

A-DATAのオーバークロックメモリ「XPG V2」シリーズ

 どーも、こんにちは。相次ぐ新作ヒートシンクの発売により、財布へと到来した猛烈な寒波に震える瀬文茶です。

 今回は、第四世代Intel Core プロセッサ向けに設計されたというA-DATA製DDR3メモリ「XPG V2 シリーズ」から、最上位モデルのDDR3-3100対応メモリ「AX3U3100W4G12-DGV」(4GB×2枚)と、DDR3-2400対応メモリ「AX3U2400W8G11-DGV」(8GB×2枚)をお借りしました。2製品の特性をそれぞれご紹介します。

DDR3-3100動作の超ハイクロックメモリ「AX3U3100W4G12-DGV」

A-DATA AX3U3100W4G12-DGV
製品スペック

 市販されているDDR3メモリの中でも最高クラスのハイクロック動作DDR3-3100に対応したメモリが、A-DATA XPG2シリーズの最上位モデル「AX3U3100W4G12-DGV」です。4GBモジュールを2枚セットにした8GBデュアルチャンネルメモリキットで、DDR3-3100時は、メモリタイミング12-14-14-36、電圧は1.65Vで動作します。

 ちなみにこのAX3U3100W4G12-DGV、実売価格は80,000~100,000円。4GB×2メモリとしてはもの凄く高価なメモリです。

 AX3U3100W4G12-DGも他のオーバークロックメモリ同様、UEFIで設定を行わないとスペック通りに動作しませんが、XMP(Extreme Memory Profile)に対応しているため、XMP対応マザーボードであれば、メモリのXMPをロードするだけで動作設定が完了します。

 XMPに対応していることで動作設定自体は簡単なのですが、これほどのハイクロックメモリともなると、スペック通りに動作させるためにはCPUやマザーボードに、個体レベルでのメモリクロック耐性が求められます。そこで、今回はAX3U3100W4G12-DGVを動かせるCPUとマザーボードのペアと、念のため、電源ユニットまで含めた動作環境一式をお借りしました。

DDR3-3100で動作するメモリコントローラを持つIntel Core i7-4770K(ES品)。ちなみに、筆者所有のIntel Core i7-4770KではDDR3-3100での起動は不可能だった。
ASRock Z87 OC Formula。極冷OC向けに基板表面を耐水コーティングしたOC向けマザーボード。
SilverStone SST-ST85F-GS(80PLUS GOLD認証/850W電源)。最近は電源の品質向上により、OC時の挙動に影響が出ることは稀になったが、念には念を入れてということで借用した。
XMP設定のロード画面。ここで「XMP 1.3 Profile 1」に設定すると、DDR3-3100の設定がロードされる。
CPU-Zの実行画面。CPU-ZのDRAM FrequencyはDDR換算前の数値なので、1549.4MHzと表示されている。また、ベースクロックが129.2に設定されるのは、DDR3-3100になるメモリ対比が存在しないため。
OCCT(Linpack)の高負荷テストを1時間パス。借用した機材のハイクロックメモリ耐性の高さが伺える。

 さて、DDR3-3100という超ハイクロックメモリはどの程度PCのパフォーマンスを押し上げるのでしょうか。比較用としてお借りしていたDDR3-1600メモリ「AD3U1600W8G11-B」(8GB×2枚)を利用して、DDR3-1600動作時とDDR3-3100動作時のパフォーマンスを比較してみました。

SiSoftware Sandra 「Memory Bandwidth」
SiSoftware Sandra 「Cryptography」
BATTLEFIELD 4 (TEST RANGE)

・テスト使用機材
CPU Intel Core i7-4770K(ES品) マザーボード ASRock Z87 OC Formula ビデオカード GeForce GTX 770 ×2 SLI 電源 SilverStone SST-ST85F-GS OS Windows 8.1 Pro 64bit

・メモリ設定値
DDR3-3100 ベースクロック(BCLK) 129.2MHz CPUクロック 3,488MHz(倍率27) CPUキャッシュクロック 3,876MHz(倍率30倍)
DDR3-1600 ベースクロック(BCLK) 100.0MHz CPUクロック 3,500MHz(倍率35) CPUキャッシュクロック 3,900MHz(倍率Auto)

 メモリの帯域幅を測定するSiSoftware SandraのMemory Bandwidthでは約16%、メモリ帯域がスコアに反映されやすいCryptography:Encryption/Decryption Bandwidthでは約14.4%ほどDDR3-3100が高速という結果となっています。

 ただ、メインメモリの動作クロックがパフォーマンスに大きく影響するアプリケーションは限定的で、多くの場合はBATTLEFIELD 4のように、僅かにパフォーマンスを底上げする程度に留まります。4GB×2枚キットで85,000円を超える価格や、動作可能な環境が限られることも含めて考えると、本当に突き詰めてPCのパフォーマンスを高めたい超上級者向けの製品と言ったところでしょう。


iGPU強化に最適?DDR3-2400動作の16GBメモリキット「AX3U2400W8G11-DGV」

A-DATA AX3U2400W8G11-DGV
製品スペック

 続いてはDDR2-2400対応の「AX3U2400W8G11-DGV」です。8GBモジュールを2枚セットにした16GBデュアルチャンネルメモリキットで、DDR3-2400時は、メモリタイミング11-13-13-35、電圧は1.65Vで動作します。

 他のパーツにも優れたメモリクロック耐性を要求するDDR3-3100対応メモリAX3U3100W4G12-DGVに比べれば、だいぶ扱いやすいスペックのメモリです。価格も、8GB×2枚キットとしてはそう割高でもない20,000円前後となっています。

 今回、このAX3U2400W8G11-DGVは、ASRock製AMD A85Xチップセット搭載マザーボード「FM2A85X-ITX」と「A10-6800K」を組み合わせた、AMD Socket FM2プラットフォームで動かしてみました。マザーボードの FM2A85X-ITXがXMPをサポートしていることと、A10-6800KがDDR3-2400用のメモリ対比を持っているため、XMPを読み込むだけという、Intel環境と同じ手順でメモリの動作設定が可能です。

ASRock FM2A85X-ITX。AMD A85Xチップセットを搭載するMini-IUTXマザーボード。
メモリの設定はXMPのプロファイルを指定するだけで完了。
CPU-Z、GPU-Zとも、DDR3-2400(約1200MHz)で動作していることが確認できる。

 メモリの帯域幅が内蔵GPUの大きなボトルネックとなっているAPUでは、ビデオカードを搭載したIntel環境以上に、メインメモリの動作クロックがパフォーマンスに影響する傾向があります。以下のグラフは、BATTLEFIELD 4で DDR3-1600メモリ「A-DATA AD3U1600W8G11-B」搭載時とAX3U2400W8G11-DGV搭載時のフレームレートを比較したものです。

BATTLEFIELD 4 (TEST RANGE)
DDR3-1600動作時のフレームレート(1,920×1,080 描画設定 中)
DDR3-2400動作時のフレームレート(1,920×1,080 描画設定 中)

 DDR3-1600とDDR3-2400のフレームレート差はおおよそ19~27%。軽く操作しただけでも、十分体感できるレベルでパフォーマンスが向上しています。快適にゲームをプレイするためには、もう少し設定の調整が必要ですが、DDR3-1600メモリよりDDR3-2400メモリを搭載した場合の方が、描画設定を妥協せずにプレイできることは間違いありません。


オーバークロックメモリがスペック通りに動かせなかったら…

マスタードシード扱いのA-DATA製メモリの保証規定
マスタードシード扱いのA-DATAメモリで、動作保証があるのはSPDとXMPの設定のみ。クロックのみを下げる場合、製品保証は有効だが、動作保証は無い(当然ながら、メモリ以外が原因の動作不良は、動作保証・製品保証の範囲外となる)。

 DDR3-3100の項目で少し触れましたが、CPUやマザーボードのメモリクロック耐性が足りないという理由で、オーバークロックメモリをスペック通りに動作出来ない場合があります。これはDDR3-3100クラスの超ハイクロックメモリに限った話ではなく、DDR3-2400やそれ以下のクロックのメモリでも、CPUやAPUのスペックを超えれば、動かない可能性というのは常にあります。

 では、オーバークロックメモリをスペック通りに動かすことが出来なかった場合、そのメモリは無駄になってしまうのかと言うと、そうではありません。

 今回借用したA-DATA製メモリの国内代理店であるマスタードシードに確認をとったところ、電圧やメモリタイミングを変更することなく、メモリクロックのみを引き下げて使用するのであれば、動作保証は無いものの、代理店の製品保証は失効しないとのことでした。

 つまり、一定の制限はあるものの、マスタードシード扱いのA-DATA製メモリについては、製品保証の範囲内において、DDR3-3100をDDR3-2933で動かしたり、DDR3-2400をDDR3-2133で動作させることが可能という訳です。電圧やメモリタイミングの縛りがあるため、完全に「大は小を兼ねる」という訳にはいきませんが、手持ちの環境のポテンシャルに賭けて、ワンランク上のメモリを選ぶというのは、決してハイリスクな賭けではありません。

 なお、マスタードシード以外の代理店が扱うオーバークロックメモリについては、保証規定がそれぞれ異なるため、上記の使い方であっても製品保証が失効する場合があります。

メモリクロック引き下げの例。DDR3-2400のXMPを適用した後で、DRAM FrequencyをDDR3-2133に設定すれば、電圧やタイミングの設定はそのままに、メモリクロックのみを引き下げ可能


常用ならDDR3-2400あたりが狙い目なA-DATA XPG V2シリーズ

 今回試した製品を振り返ってみると、DDR3-3100対応メモリのAX3U3100W4G12-DGVは、まさにエンスージアスト向けと言った感じの製品でした。これほど高いクロックで動作するメモリチップと基板を、メーカーレベルで選別して製品化しているということを考えれば、80,000~100,000円という価格も理解できるのですが、これほどの対価を払ってまで手にしようと思える自作PCユーザーはごく僅かでしょう。そのごく僅かな人のために作られた製品がAX3U3100W4G12-DGVなのです。

 対して、AMD環境でなかなかのパフォーマンスを見せたDDR3-2400対応メモリ「AX3U2400W8G11-DGV」は、価格的にも容量的にも選びやすい製品ですね。現状、DDR3-1600対応の8GBメモリ2枚セットの相場は15,000円前後なので、価格的には5,000円少々の差がありますが、内蔵GPUの底上げが期待できる環境で使うなら、費用対効果はそう悪くありません。

 2013年12月現在のメモリ価格は、DDR3-1600対応製品からDDR3-2400対応製品までの価格差が、比較的小さい傾向にあります。クロックを下げて使えるマスタードシードの製品保証も合わせて考えれば、A-DATA XPG V2 シリーズの狙い目は、DDR3-2400あたりにあると言えるでしょう。