借りてみたらこうだった!

性能が上がるSLIブリッジ?MSIの冷却ファン付きモデルの効果を検証

GTX 980 Ti×3枚 + MSI 3WAY SLI BRIDGE KITの環境でテスト text by 坂本はじめ

 「冷却ファンを搭載可能なSLIブリッジ」という、なんともユニークな製品がMSIから登場した。

 今回、そのSLIブリッジ「3WAY SLI BRIDGE KIT」と、GeForce GTX 980 Ti搭載ビデオカード「GTX 980Ti GAMING 6G」を3枚借用。GeForce GTX 980 Tiの3-way SLI構成で、実際にどの程度の効果が得られるのか紹介する。

冷却ファンが搭載できる金属製シールド採用のSLIブリッジ

左から2-way用、3-way用、4-way用。

 GeForce系ビデオカードの上位は、複数の同一GPUを束ねてパフォーマンスを向上させる「SLI」をサポートしている。そのSLI動作時に各GPU間の通信を補助するのがSLIブリッジの役割だ。

 MSIから発売されているSLIブリッジのラインナップは、2枚のビデオカードを束ねる2-way SLI用、3枚のビデオカードを束ねる3-way SLI用、4枚のビデオカードを束ねる4-way SLI用の3種類。

 赤黒に装飾された金属製シールドと、発光パターンを任意で変更可能な「MSI GAMINGドラゴンLEDイルミネーション」に対応する点が特徴だ。

3-way SLI対応モデル
3-way SLI対応の3WAY SLI BRIDGE KIT、ファンマウント機能付き。
3WAY SLI BRIDGE KITの基板裏面(SLIコネクタ側)
3WAY SLI BRIDGE KITが対応するスロット配置
4-way SLI対応モデル
4-way SLI対応の4WAY SLI BRIDGE KIT、ファンマウント機能付き。
4WAY SLI BRIDGE KITの基板裏面(SLIコネクタ側)
4WAY SLI BRIDGE KITが対応するスロット配置
2-way SLI対応モデル
2015年に発売された2WAY SLI BRIDGE L。2-way SLIに対応。
MSI GAMINGドラゴンLEDイルミネーション点灯時。発光色は白。補助電源は不要。
MSI GAMINGドラゴンLEDイルミネーションの発光パターンは、ユーティリティ「GAMING APP」により変更可能。

 「3WAY SLI BRIDGE KIT」と「4WAY SLI BRIDGE KIT」では、3-way/4-way対応に伴って大型化したブリッジのサイズをいかし、冷却用に120mmファンを搭載する機能を備えている。

 3~4枚のビデオカードが密集することで熱の処理が厳しくなりがちな3-way/4-way SLIの冷却をSLIブリッジによって補助するという発想は、なかなかユニークで面白い。

ファンマウンタ。
SLIブリッジへの固定部分。振動によるノイズや傷を防ぐためOリングが貼り付けてある。長穴なので取り付け位置は調整可能。
SLIブリッジの反対側にはゴムブッシュを取り付ける。これにより、ビデオカードとマウンタが接触して傷や騒音が生じるのを防いでいる。
付属ファン「FA12015M12LPA」。PWM制御に対応しており、ファンの回転数はおおよそ500~1,600rpm。
ファンの固定にはテーパーネジを用いる。ケースに干渉しないなら市販の120mm角ファンを取り付けることも可能。
SLIブリッジにファンマウンタを取り付けたところ。

 赤くカラーリングされた金属製のファンマウンタは、120mm角ファンに対応した固定穴を備え、SLIブリッジ本体側面にねじ止めで取り付ける。マウンタ本体の固定穴とファンの固定穴はともに長穴となっており、取り付け位置の微調整が可能。

 冷却ファンは標準でCoolerMaster製の120mm角15mm厚ファン「FA12015M12LPA」が付属。PWM制御に対応しており、回転数は500~1,600rpmの範囲で可変。最大回転数の1,600rpm付近まで回しても動作音はそれほど大きくならない。動作に必要な電源は、一般的なPWMファン用4ピンコネクタで供給する。

MSIの上位マザーボード用に設計された3-way/4-way対応SLIブリッジ

 通常のプリント基板に金属製のシールドを備えた3WAY SLI BRIDGE KITや4WAY SLI BRIDGE KITは、フレキシブル基板を採用したSLIブリッジのような柔軟性を持たないため、MSI製のマザーボードとビデオカードの組み合わせであっても使用できない場合がある。

 記事執筆時点で、3WAY SLI BRIDGE KITと4WAY SLI BRIDGE KITが使用できるマザーボードとビデオカードは以下の通り。

対応製品
使用可能なマザーボード
X99A GODLIKE GAMING CARBON
X99A GODLIKE GAMING
X99S GAMING 9 AC
X99S GAMING 9 ACK
X99A XPOWER AC
X99S XPOWER AC
使用可能なビデオカード(MSI製)
GeForce GTX TITAN搭載品全モデル
GeForce GTX 980 Ti搭載品LIGHTNINGシリーズ以外
GeForce GTX 980搭載品全モデル
GeForce GTX 970搭載品リファレンスモデルのみ

 使用可能なマザーボードが限定されるのは拡張スロットの配置のため、使用可能なビデオカードが限定されるのはGPUクーラーとSLIブリッジが干渉するため。

 なお、LGA2011-v3対応CPUはモデルごとにCPU内蔵PCI Expressのレーン数が異なり、下位のCore i7-5820Kなどは利用できるのが28レーンまでに制限される。このため、Core i7-5820Kなどを使用した場合はCPU側の制約で4-way SLIなどを構築することができないので、注意が必要だ。

MSI X99A GODLIKE GAMING

 今回の検証に使用したマザーボードはX99A GODLIKE GAMING。

 多彩なイルミネーションを楽しめる「MYSTIC LIGHT」機能を備える点が特徴のハイエンドモデルで、OC向けの機能やスタジオ品質をうたうサウンド、ゲーム用LAN、USB 3.1(Gen.2) Type-C、M.2/U.2など、オンボードデバイスも豊富。

バックパネルインターフェイス。
2,048色から自由に色が選べるイルミネーション機能「MYSTIC LIGHT」。
ヒートシンクやカバーなどのデザインにもこだわった1枚だ。

性能低下を防ぐ冷却ファン、3-way SLIのテスト環境では4%性能向上

 SLIブリッジに冷却ファンを搭載するというユニークな機構が目を引く3WAY SLI BRIDGE KITと4WAY SLI BRIDGE KIT。

 その効果のほどを確かめるべく、LGA2011-v3対応マザーボード「X99A GODLIKE GAMING」に、GeForce GTX 980 Ti搭載ビデオカード「GTX 980Ti GAMING 6G」を3枚搭載した3-way SLI環境で検証を行ってみた。

 なお、テストは検証台を使用して行っている。

ハイエンドマザーボード「X99A GODLIKE GAMING」に、GeForce GTX 980 Ti搭載の「GTX 980Ti GAMING 6G」を3枚搭載。CPUはCore i7-5960X Extreme Edition。

・テスト環境
 CPU IntelCore i7-5960X Extreme Edition
 マザーボード MSIX99A GODLIKE GAMING
 ビデオカード MSIGTX 980Ti GAMING 6G×3枚
 メモリ DDR4-2133 4GB×4
 OS 日本マイクロソフトWindows 10 Home 64bit
 グラフィックスドライバGeForce Game Ready Driver 364.72

 テストの内容は、ベンチマークソフト「3DMark」において最も描画負荷の高いテストプリセット「Fire Strike Ultra」を実行。冷却ファンの有無によって、スコアとGPU温度にどの程度の差が出るのかをチェックする。

 なお、最大効果を調べるため、3WAY SLI BRIDGE KITの冷却ファンはフル回転(約1,600rpm)で動作させている。GPU温度や動作クロックなどの情報はGPU-Z 0.8.7で取得した。

 まずはベンチマークスコア。ファンを搭載しなかった際のスコアが10,457なのに対し、ファンを搭載した際のスコアは10,840。おおよそ4%弱の差がついている。

ファンなし時のスコア:10,457
ファン搭載時のスコア:10,840
CPUソケットに近い側(写真左側)から順にGPU-1、GPU-2、GPU-3としてグラフ化。見た目の印象で言えば、隣接するGPU-3によって吸気を妨げられているGPU-2の冷却が厳しそうに見える。

 続いてGPU-Zで測定した動作中の温度を紹介する。3基のGPUがベンチマーク中に記録したGPUの最高温度について、CPUソケットに近い側から順にGPU-1、GPU-2、GPU-3としてグラフ化した。

 GeForce GTX 980 TiはGPU温度や電力に余裕があると自動でGPUクロックを高める「GPU Boost」に対応している。ざっくり言ってしまうと、動作温度が低い方が最高性能を発揮させやすい。逆に冷却が足りない場合は、サーマルプロテクションによりクロックが下がるため性能低下を招く。

ベンチマークテスト実行中の最高GPU温度

 3基のうち最も高いGPU温度を記録したGPU-2は、ファンなしでは92℃という極めて高い温度に達したが、3WAY SLI BRIDGE KITによって冷却ファンを追加することで、最高温度は5℃低い87℃にまで低下した。GPUクーラーの吸気を遮るものの無かったGPU-3については逆に温度が上がってしまっているが、全体の動作に影響を与えるほどのものではない。

 SLI構成の場合、性能の基準となるのは最も動作クロックが低いGPUとなる。今回のケースでは、3枚のカードの中では「GPU Boost」の効きが悪いと想定されるGPU-2のクロックを基準に動作しているはずだ。

 GPU-1とGPU-3は温度的に余力があると思われるが、ベースとなるGPU-2のクロックが上がらないことには余力が使われることは無い。このため、GPU-2を冷やすことがスコアを伸ばすことに直結していると言え、4%の性能差はここから生まれたものだと推測できる。

 スコアを伸ばすには元々の動作クロックの高さも重要だが、3-wayや4-way SLIの場合、間に挟まれるカードの動作温度が高温にならないよう冷却することも非常に重要だ。

スタイリッシュに冷却ファンを追加、魅せる自作に活用したいSLIブリッジ

 複数のビデオカードを用いるSLI構成では、どれほど高性能なGPUクーラーを搭載していても、冷却ファンが十分な吸気スペースを確保できず、十分なパフォーマンスを発揮できないということが珍しくない。空冷環境で3-way/4-way SLIを構築するなら、ビデオカード周辺にエアフローを提供する冷却ファンは必須と言える存在だ。

 今回借用した3WAY SLI BRIDGE KITと4WAY SLI BRIDGE KITの魅力は、ビデオカードのデザインと親和性の高いSLIブリッジに冷却ファン搭載機能を持たせることで、見た目を損なうことなく、スタイリッシュに冷却ファンの追加を可能にした点にある。魅せる自作という方向で、強力なゲーミングPCの構築を目指すなら一考の価値があるだろう。

[制作協力:MSI]