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NVIDIAが店頭イベントで「GeForce GTX 1080」の新技術を解説

text by 関根慎一

会場となったドスパラ秋葉原本店の店頭には、GeForce GTX 1080を組み込んだBTOマシンがデモ展示されており、ベンチマークソフト「3DMark」の「Fire Strike」が動作していた

 5月28日(土)、ドスパラ秋葉原本店にて、NVIDIAの最上位GPU「GeForce GTX1080」の発売記念イベントが開催された。

 GeForce GTX1080は、最新世代のPascalアーキテクチャを採用した最上位ビデオカード。国内の実勢価格は10万円前後で推移しており高価なモデルだが、前日の5月27日(金)、秋葉原の複数のショップで22時より実施された深夜販売では、入荷量が少なかったこともあり販売開始と同時に売り切れる店舗が続出した。

 本イベントでは、エヌビディア・ジャパンの高橋一則氏が登壇し、GeForce GTX1080で用いられている新技術を中心に紹介した。各技術について詳しくはすでに各メディアで報じられているところであるが、Pascal世代のGeForce GTX 1080ではMaxwell世代から変更・進化した点も多いこともあってか、今回のイベントはそれぞれの技術を簡単におさらいする内容となった。

エヌビディア・ジャパンの高橋一則氏
会場の様子

 Pascalアーキテクチャでは、製造プロセスの微細化だけでなく、回路の構造設計を最適化し、旧モデルと比べて動作クロックが向上。旧機種で1GHz前後だったベースクロックは1.61GHzとなっている。

PascalアーキテクチャのGPU概要
トランジスタ製造プロセスの微細化と回路設計の最適化によって、大幅に性能が向上している

 また、メモリには10Gbps駆動を実現するGDDR5Xを採用しており、GDDR5Xを搭載するためにI/O回路を新規に設計し、DRAMの帯域幅が1.4倍まで向上している。

新メモリ「GDDR5X」を搭載。既存の回路ではデータ転送が間に合わないため、新たに高クロック向けのI/O回路を設計した

 Pascalのメモリ圧縮技術には、オリジナルの8分の1まで容量を圧縮する「8:1デルタカラー圧縮」を使っている。従来用いていた「2:1圧縮」よりも小さい容量に圧縮できるようになったことで、メモリ帯域の利用効率が1.7倍程度向上しており、画像において圧縮効果が得られる範囲も拡大した。

 イベントでは「Project Cars」の画像を例に出し、Maxwell世代のメモリ圧縮効果が適用される範囲を比較していた。

新たに「4:1デルタカラー圧縮」と「8:1デルタカラー圧縮」が利用可能になった
帯域幅と圧縮率の向上によって、メモリ帯域の利用効率が1.7倍に上昇している
Project Carsで圧縮効果が適用される範囲。Pascalでは背景の一部を除いて画面内のほとんどの領域に適用されている

「同時マルチプロジェクション」(Simultaneous Multi-Projection、以下SMP)は、複数の画面に対して同時にレンダリングを行なえる機能。マルチディスプレイで1つの画面を映した際、両端に近づくにつれてオブジェクトが伸びたように見えてしまう遠近感のズレを是正できる。画像出力プロセスの中で、ラスタライズの前段にある「PolyMorph Engine 4.0」に内蔵されている。

VRやカーブディスプレイなど、新しい画面の形に対応していく
ジオメトリを再演算することなく、複数の視点(画面)をレンダリングできるSMP

 また、VRにおいてはVRゴーグルのレンズの歪みに合わせて歪んだ画像を出力することで、実際に表示しない部分の画像生成を省略する「レンズマッチドシェーディング」機能や、左目用と右目用のジオメトリを1パスで演算する「シングルパスステレオ」機能を利用可能。これらはいずれも従来GPU側で必要だった処理を省略する方向性の技術であり、GPUとしての基本性能が強化されたことと合わせて、VR性能を2倍以上に向上する要因となっている。

VR描画における負荷を低減するレンズマッチドシェーディングとシングルパスステレオ

 Pascalのグラフィック処理では、GPUが持つ描画処理と演算処理に使うリソースを動的に配分する「ダイナミックロードバランシング」を可能とする非同期処理を採用している。先に計算が終わり、余ったリソースを処理中の作業に割り当てられる点がメリット。

非同期処理で余ったリソースを処理中の作業に割り当てることによって、処理時間の短縮を図る
動的なタスク処理が可能なことから、非同期タイムワープまでの時間をフルにグラフィック処理に割り当てられるようになった

 将来普及が見込まれるHDRディスプレイへの対応も進めている。HDRディスプレイは現在の2倍の可視領域(人間が知覚可能な色の75%)を持ち、輝度は1,000cd/平方m、10,000:1のコントラスト比を実現するという。

HDRディスプレイに対応した

 Pascalアーキテクチャでは、60fpsの4K HDR映像に対して12bitカラーのデコード、10bitカラーのエンコードに対応。DisplayPort 1.4とHDMI 2.0bもサポートした。

HDRの4K映像処理も可能
GPUによる描画処理と、ディスプレイの表示処理を分離した「FAST SYNC」
GeForce GTX 1080の主なスペック
GeForce GTX 1070の主なスペック

 取材当日、GeForce GTX 1080は前日の深夜販売で品薄の状態。会場となったドスパラ秋葉原本店でもカード単体の販売はしていなかった。高橋氏によれば「来週にはまとまった本数を出荷する」そうなので、少し待てば確実に入手できる状況になることが予想される。

想定よりも参加者が多くなったため、景品がもらえるくじ引きから、急遽じゃんけん大会に変更した