特集、その他

FF14やOverwatchが快適に遊べる高コスパゲーミングノート「GP62 7RDX Leopard」を試す

カジュアルにゲームを楽しみたいユーザーにぴったり、MSIの15.6インチモデル text by 加藤勝明

Core i7-7700HQとGeForce GTX 1050を組み合わせたMSI製のフルHDゲーミングノート「GP62-7RDX-1011JP」。実売価格は税込16万円前後だ。

 ゲーミングノートの性能は年々向上しているが、デスクトップPC並の性能を求めると結構な出費を迫られる。

 起動ドライブにSSDは外せないし、そこそこ良いキーボードも欲しい……とこだわるほど製品選びが難しくなってくるが、そんな時にはMSIのゲーミングノートはどうだろうか?

 今回取り上げるMSI製「GP62-7RDX-1011JP(以降GP62)」は、Core i7-7700HQにGeForce GTX 1050という組み合わせで実売16万円程度という高いコストパフォーマンスを武器にしたゲーミングノートだ。これが人気ゲームでどの程度動作するのか検証してみたい。

ファイナルファンタジーXIV、Overwatch、For Honorといったゲームがどの程度遊べるのかもチェック

GP62の外観をチェック、液晶サイズは15.6インチで重さは2.4kg

 それではGP62の外観からチェックしてみよう。

 15.6インチのフルHD液晶とDVDスーパーマルチドライブを搭載しているため、本体は比較的大きめだが、家庭やオフィスの中で楽に持ち運べる程度の機動性は備えている。今更光学ドライブなんて……と思うかもしれないが、データの手渡し手段やパッケージソフトの導入時など、長い目でみれば“あっても困らない”装備には違いない。

高品質アルミ素材を使用した仕上げが美しい天板。MSIのゲーミングブランドのシンボルであるレッドドラゴンは白い部分が通電時に淡く点灯する。
ACアダプタは本体とほぼ同じ厚みの150W出力のものが付属する。
外部ディスプレイ出力はHDMIとmini DisplayPort出力の2系統。USB Type-Cコネクタがあるが、上流はUSB3.0なので転送性能は5Gbpsが上限となっている。
背面には端子は配置されておらず、冷却ファンの排気孔だけが設けられている。
光学ドライブが内蔵されているためパームレスト部分の厚みはおよそ24mm。パームレストに手首を預けてしまえばタイピングは結構快適。
右側面にはSDカードリーダーやDVDスーパーマルチドライブを配置。光学ドライブなしでも運用できる時代にはなったが、あればあったで使い道が広がるものだ。

 MSI製ゲーミングノートを選ぶメリットといえるのが、SteelSeries社製のキーボードが搭載されていることだろう。安めのゲーミングノートだと5キー以上は取りこぼす製品もあるが、本機なら両手で10キーを押してもゴーストやマスクされるキーが出ない。もっとも今はマウス+キー操作が主力なので同時認識数はあまり問題にならないが、細部にまで手抜きがない設計というものはよいものだ。

キー配列は一部特殊な部分(右ShiftやBackspaceキーなど)があるものの、文字部分は一般的な18mmピッチ。キーは軽く押し込むと入力されるため、力を入れなくても確実に操作できる。
キートップはフルカラーLEDバックライト付きだが、キートップの側面が透けることでキーの輪郭を暗闇で浮かび上がらせる効果を狙っている。MSIはこれを“Silver-Lining Print”と呼んでいる。
キーの右上にある3つのボタンは、システムの冷却を全力で行う“Cooler Boost”ボタン(左)、キーボードの発光パターンなどを順に切り替えるボタン(中央)、そして電源ボタン(右)となる。
キーの発光色やマクロの設定はプリインストールされている「SteelSeries Engine」から行なう。キー単位で色を変更する機能はないが、1キーにつき2つのLEDを仕込むことで、微妙なグラデーションを表現するなど芸が細かい。

快適さと利便性のバランスがとれた構成Core i7 + GeForce GTX 1050にストレージはSSD + HDD、高冷却クーラーも搭載

 外観のチェックが終わったところで中身に目を移そう。

 CPUは4コア8スレッドモデルの「Core i7-7700HQ」、GPUは軽~中量級ゲームに適したGeForce GTX 1050を採用している。メモリはDDR4-2400 8GB×1枚だ(※空きスロット1、最大で16GB×2枚を搭載可能)。

 さらにストレージにM.2 SSD+HDD(容量は128GB+1TB)、ネットワークにRivet NetworksのKiller E2400にIntel製のDual-Band Wireless-AC 3168と、快適さと利便性のバランスをとるようなハイブリッド構成になっている。

搭載ハードの情報を「HWiNFO64」でチェック。メモリはDDR4-2400のシングルチャンネル構成だが、CPU内蔵GPUは補助的な役割なので大きな問題にはならない。また、ストレージは3台(SSD、HDD、光学ドライブ)ともにSATA接続であることもわかる。

 内部構造は比較的シンプル。肉厚の銅板と静音冷却ファン、レイアウトが最適化された6本の太いヒートパイプなど、CPUやチップセット、GPUの冷却をシステムレベルで考慮した“Cooler Boost 4”が採用されており、狭いボディー内でも効率的に放熱を行える。

内部にアクセスするには本体底部のパネルを外すだけ。GeForceロゴの下にウーファー用とおぼしきメッシュ穴が空いている部分があるが、これはただの飾り(他モデルとの共通化用?)だ。ちなみに内部にアクセスすると保証が切れるのでオススメできない。
GP62の内部(光学ドライブは外してある)。2基のブロワーファンに繋がる6本のヒートパイプと、巨大なヒートスプレッダが印象的。ちなみに中央がGTX 1050、その右にあるのがCore i7-7700HQだ。クーラーはCPUとGPUを独立して冷却する、セパレート冷却機構を採用。他メーカーのモデルでは、ヒートパイプがGPU/CPUをまたがるコンバイン冷却機構が大多数。コンバイン冷却は製造しやすいメリットはあるものの、冷却性能ではセパレート冷却が優れるという。
CPUとGPUの冷却機構をよく観察すると、肉厚の銅板で熱を吸いあげてからヒートパイプにバトンタッチしていること、CPU脇の電源回路が持つ熱もヒートパイプで吸い上げていることがわかる。
メモリスロットは標準で8GBモジュールが1枚装着済みなので1スロット空いている。SSDはM.2だが内部的にはSATA接続のもの。検証機にはKingston製のものが使われていた。
金メッキを施したオーディオジャックの隣、本体手前側に向けて片側2基ずつスピーカーを配置。容積が小さいので低音部が弱いのは否定できないが、ゲームの爆発音や銃声などはしっかり聞こえる。
ネットワークは有線+無線LANのハイブリッド構成。無線LANモジュールはインテル製の「Intel Dual Band Wireless-AC 3168」なので802.11acにも対応するが、通信速度は433Mbpsとやや控えめ。ゲームは有線LAN、それ以外は無線LANという使い分けがベターだろう。

 そしてサウンドシステムには、ハード面は金メッキジャック+独自設計のアンプ(Audio Boost)、ソフト面では管理ユーティリティー“Nahimic”を組み込むことで、迫力と定位感の高い良質なゲームサウンドが堪能できる。本体内蔵のスピーカーはさすがにノートPCっぽい音だが、冷却ファンが回っていても比較的聴き取りやすく、広がりのある音が堪能できる。

サウンドシステムは同社製ノートではお馴染みの“Nahimic”。ゲームサウンドの疑似サラウンド化はもちろん、マイクで拾った声をリアルタイムで変調させる“ボイスシェーパー”等の機能を搭載。
これはMSI独自のツール「Dragon Center」。CPUやGPUの使用状況や温度のチェックやファン回転数のプロファイル切り替え、キーボードバックライトの発光パターンの変更などが一括で実施できる。

CPUからストレージまで性能はバランスの良い構成普段使いであればバッテリー動作時間は4時間半が目安

 GP62がゲームでどれだけ使えるか検証する前に、PCとしての基本的なパフォーマンスを確認しておきたい。まずCPUの馬力をみる「CINEBENCH R15」を利用する。

CINEBENCH R15のスコア。

 最新デスクトップ用CPUに比べるとスコアは全体に控えめだが、モバイル用のCore i7-7700HQとしては十分なスコアが出ている。特に発熱がネックで処理速度が出ない、という心配はないようだ。

 続いてグラフィック性能を「3DMark」で、ストレージ性能を「CrystalDiskMark」でチェックする。

「3DMark」のスコア。
「CrystalDiskMark」によるストレージ性能。左がSSD、右がHDD

 ここまでの結果から、グラフィック性能は軽~中量級ゲームで設定を欲張らない人向けといえる。SSDの性能はSATA接続であるため特筆すべき点はないが、容量が128GBなので大物ゲームを何本もインストールしておくスタイルには向かない。遊ぶ頻度の低いゲームやデータはHDD側に入れる等の工夫が必要だろう。

 最後に「PCMark8」で総合的なパフォーマンスをチェックしてみた。テストは“Home”と“Creative”のOpenCL付きモードで実行した。

「PCMark8」のスコア。左がHome Accelerated、右がCreative Acceleratedとなる。

 CPUからストレージまでバランスの良い構成であるため、ゲームはもちろんのこと一般的な作業においても良好なパフォーマンスをみせている。

 ちなみに、バッテリーの持続時間は「bbench」でキーストローク&無線LANによるWeb巡回あり、液晶輝度50%設定で計測したところ、およそ4時間32分といったところだった。

最近のゲームが標準画質/60fps前後で遊べる性能、実ゲームで性能をチェック

 それでは実ゲームのパフォーマンスを中心にチェックしよう。

 まずは先日新しいベンチマークが登場した「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」を使用する。画質は一番重い“最高品質”のほかに2段下げた“高品質(ノートPC用)”でも計測した。

FF14ベンチのスコア。

 最高品質でも“とても快適”判定になるのはさすがGTX 1050搭載ノートといった印象だが、フレームレート中心に見ると最高品質では少々重い印象だ。次の4枚のスクリーンショットはベンチ中のものだが、GP62の場合、最高品質よりも少し下げた方がフレームレートが稼げる。ただ3~4枚目のようにキャラとエフェクトが多い戦闘シーンではどちらも30fps前後に下がってしまうのは致し方ないところだ。

GP62の場合、最高品質(左)よりも高品質(右)の方が安定して高フレームレートが出せる。拡大写真の左上の数値は「Fraps」を利用して取得したフレームレートだ。
だが重い戦闘シーンの場合は、高品質設定(右)であっても30fps台に落ち込む。これはGTX 1050の限界というべきだろう。

 続いては人気対戦fps「Overwatch」でも試してみた。検証はマップ“King's Row”におけるBotマッチをプレイした時のフレームレートを「Fraps」で測定した。画質は一番重い“エピック”とその2段下の“高”の2種類。それぞれレンダー・スケールは100%に固定して検証している。

「Overwatch」のフレームレート。
キャラや動きが少ないシーンの比較。設定“エピック”(左)では50fpsをやや下回る程度だが、設定“高”では60fpsを安定して超えている。
ただ戦闘が激しくなりUltスキル発動が重なったりするとフレームレートはガクンと下がる。設定“高”でも60fpsを一瞬下回ることがある。

 FF14とOverwatchの2つに共通しているのは、フルHD&最高画質でも遊べなくはないが、画面上でエフェクトなどが炸裂しまくると重さを感じてしまう。GP62は最高から2段程度画質を下げたポジションで遊ぶと優れたパフォーマンスを発揮するといえるだろう。

 追加で中程度の負荷がかかるゲーム「For Honor」のフレームレートもチェックしてみた。画質は“超高”および“標準”の2通りとし、内蔵ベンチマーク機能を利用して計測した。

「For Honor」のフレームレート。
設定“超高(左)”と設定“標準(右)”の比較。同じような戦闘シーンでも10fps程度の違いが出る。なお、「For Honor」とFrapsのスクリーンショット機能の相性が悪いため、今回はShadowPlayで録画したものから切り出している。そのため実際のフレームレートはここから3fps程度足したものになるだろう。

GPUは70℃以下にしっかり冷却、クーラーの冷却性能と動作音をテスト

 最後にGP62の冷却性能をチェックしよう。

 ゲームを遊び込むと発熱で性能が低下することも懸念されるからだ。今回は室温28℃環境で「For Honor(設定“高”)」を約1時間プレイ状態で放置した時のCPUパッケージ温度とGPU温度を「HWiNFO64」で追跡した。前半30分はノーマル状態、後半30分は“Cooler Boost”機能を有効にした状態で計測している。

ゲーム中の温度推移。後半温度が下がっているのはCooler Boostを有効にした状態。
システム起動10分後(アイドル時)とゲーム中のピーク値(高負荷時)の各部温度。

 大抵こういったゲーミングノートではGPUの熱が限界ギリギリまで上がってしまう製品が多いが、GP62はむしろCPU温度の方が高いのは驚いた。GPU側のヒートパイプが多さがしっかり効果として出ている感じだ。

 ここからさらにCooler Boostを効かせるとCPU温度は6~7℃下がるが、同時にファンノイズも大きくなるため、このあたりはトレードオフといえる。ファンノイズは下のグラフの通り、Cooler Boost有効時はかなりうるさい。温度が上がりすぎて怖いなと感じた時に一時的に使う程度の心づもりでよいだろう。

液晶から40cmの位置に騒音計「AR814」を固定した時のノイズレベル。
サーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」を利用し、For Honor起動中の温度分布を比較してみた。左がノーマル状態、右がCooler Boost状態(ともに30分経過時点)。キーボード中央やや奥側の温度が高くなっているが、Cooler Boostを使うと温度の高い領域が小さくなっている点に注目(パームレストに手を載せていないので、実際にプレイしている最中はもう少し違う分布になるかもしれない)。

ほどほどの画質でゲームを快適に遊びたいユーザーにオススメ

 ゲーミングノートはデスクトップ機のようにパーツの換えが効かないぶん、最初のスペック選定で間違うと後悔がずっと続く。自分はどの部分の性能が必要なのかを明確にしておくことが失敗しないコツだ。

 今回取り上げたGP62はCPUは上位だが、GPUはGeForce GTX 1050と下位モデルが組み合わされたモデルだ。ゲームをする際に、画質設定が中程度で遊べればよかったり、あまり重くない人気作を快適に遊べれば満足、という現実主義なゲーマーにしっくりくる製品だろう。質の高いキーボードを備えるなど、普段使い用としても悪くない。

 高画質が命な理想主義のゲーマーなのであれば、より上位のGPUを搭載するモデルがラインナップされているので、そちらを選ぶべきだろう。

 SSDの容量が128GBと少なめな部分や、メモリが標準だとシングルチャネル動作となっているのは気になるものの(※最大16GB×2枚まで強化可能)、これだけの機能と性能が税込で約16万円でまとまっている点は素直に賞賛したいものだ。

[制作協力:MSI]