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SSDは高性能DRAMレスが人気!24TBに到達したHDDにも注目【PCパーツ100選 2024 ストレージ編】

DOS/V POWER REPORT 2024年冬号の記事を丸ごと掲載!

SSDは2TBモデルの低価格化で大人気に

 2023年のSSDは、秋以降一部で値上がり傾向の製品もあるが、基本的には大きく価格を下げた1年間だった。人気の中心は1万円以下で購入できる1TBモデルだが、この1年で価格を半値近くにまで下げた2TBモデルが登場。とくに夏商戦においては1万円台で購入できる2TBモデルが続出し、売り上げランキングの上位に顔を出すようになった。

さまざまなメーカーからPS5対応のヒートシンク付き製品が登場。PS5向けというジャンルが形成されたと言ってよいだろう

 また、DRAMレス製品の躍進も大きなトピックだ。2022年発売のWD_BLACK SN770はDRAMレスでもDRAM搭載のハイエンドクラスに近い性能を持つSSDが作れることを証明したが、2023年はそれに続く製品が数多く登場。低価格と大容量の両立が求められるストレージにおいて、高性能DRAMレスは今後の主流になっていくだろう。

現在のGen 5 SSDはすべてPhisonの「E26」を採用しているが、Silicon Motionもコントローラを用意しており、2024年は多様化に期待したい

 一方でGen 5 SSDは、性能は文句なしに高いものの、Phison製コントローラを採用した製品しか現状ではないことに加え、価格の高さや発熱などネガティブな要素もあって盛り上がりに欠けた1年だった。そのほか、PS5対応のヒートシンク搭載製品が増加し、現在では一定の人気を得ている。

ポータブルゲーミングPCの人気で2230サイズのSSDが増加中

ポータブルゲーミングPCで採用例が多い2230サイズのSSD。DRAMレス、最大速度5,000MB/sまでのGen 4の製品が主流で、現在の最大容量は2TBだ

 2023年のSSD業界の興味深い動きの一つが、幅22mm、長さ30mmという短い2230サイズのSSDが数多く登場したことだ。2230サイズのSSDは、ROG Ally、Steam Deckといった人気ポータブルゲーミングPCやMicrosoftのSurface Proなどに採用されており、容量アップを狙った交換用途での需要が高まっている。この動きは2024年も続きそうだ。

DRAMレスでも高性能のSSDが増える

 2023年はDRAM搭載製品に迫る高性能なDRAMレスが増えたが、これにはNANDメモリの高性能化が大きく影響している。

大きな話題となった中国系SSDの基板。コントローラはMaxio「MP1602A」。NANDメモリはYMTC製の232層3D TLC NANDを採用する

 実際に、ここ数世代のNANDメモリは、コントローラとの接続に利用するインターフェースが急速に高速化してきた。たとえば、主にGen 5 SSDで採用されているNANDメモリは2,400MT/sの速度に対応している。この速度があれば、DRAMレスの4チャンネルコントローラでも7,000MB/sオーバーの速度を実現可能だ。低価格で高性能だと大きな話題になった中国系のGen 4 SSDが、実際にこの組み合わせを用いてDRAM搭載のハイエンドクラス並みの性能を実現している。

 また、最新世代のNANDメモリを採用したDRAMレスSSDは、レスポンス性能を計測するベンチマークにおいてもDRAM搭載のハイエンドクラスSSDに肉薄するスコアを叩き出すことも増えている。これは、主にNANDメモリのスループット向上と低レイテンシ化の恩恵だ。

 ただし、DRAMレスSSDにも欠点はある。記録容量が増える(空き領域が減る)とデータを探すのに時間がかかるようになり、ランダム読み出し性能が低下することが一般的だ。また、空き容量に関係なく、記録容量の大きいモデルは容量が少ないモデルよりもランダム読み出し性能が低い。そのため、1TBよりも2TBのほうが速度は遅くなる。

HDDはCMRで24TBを実現、30TBサンプル出荷も

 HDDは2023年も最大容量を更新し、CMRで24TBの記憶容量を実現した製品の量産出荷がWestern DigitalやSeagateから始まっているほか、SMRで28TBの製品も出荷がスタート。また、Seagateは、次世代技術の「HAMR」を採用した30TBの製品のサンプル出荷を開始しており、HDDの開発が順調に進んでいることをアピールしている。

SeagateとWestern Digitalは10枚プラッタで、24TBの記憶容量を実現したCMRの製品の量産出荷を開始している
Western Digitalの24TB HDDは、データの書き込み時に電流をアシストするePMR技術とOptiNAND技術によって実現されている

 一方でHDDは、円安の影響なのか値上がり傾向に転じた製品も多い。とくに8TB以下のモデルの値上がりが顕著だ。

ベンチマーク Gen 5/Gen 4/Gen 3の合計26台のSSDがベンチマークで激突!

 ここでは、Gen 3からGen 5までの合計26機種のベンチマーク結果から現在のSSDの性能を見ていこう。

*メーカー非公式。テスト結果に基づく推測による

 その結果だが、すべてのベンチマークにおいてGen 5 SSDはGen 4/Gen 3 SSDとは別次元の性能を発揮している。また、Gen 5 SSDには、最大速度10,000MB/sと12,000MB/s超の製品があるが、PCMark 10−Full System Drive Benchmarkや3DMark−Storage Benchmarkの結果から明確なレスポンス性能の違いを見いだすことはできなかった。コントローラはすべて同じPhison「E26」ということもあって、ランダム性能の差が小さいためだろう。12,000MB/s超の製品は、動画編集など大容量ファイルを扱う用途に適している。

 次にGen 4/Gen 3 SSDの比較をしていきたい。まずは、最大速度だが、Gen4 SSDの最大速度は、読み出し7,000MB/s前後、書き込み6,600MB/s前後でほぼ横並びだ。注目しておきたいたいのはHIKSEMIのFUTUREで、DRAMレスSSDの中で唯一、DRAM搭載製品とほぼ同等の最大読み出し/書き込み速度を記録した。これは2,400MT/sの速度のNANDメモリを採用しているためだ。また、4KBランダム(Q1T1)が速かったのは、MicronのCrucial T500とFUTUREの2製品。いずれも232層3D TLC NANDメモリを採用した製品で、その性能の高さがよく分かる。

*メーカー非公式。テスト結果に基づく推測による

 実アプリでのさまざまな動作をエミュレートしてレスポンス速度を中心に計測するPCMark 10や3DMarkの結果は、Crucail T500やSamsungのSSD 990 PRO、SolidigmのP44 Pro、Western DigitalのWD_BLACK SN850XといったDRAM搭載勢が強みをみせた一方で、キオクシアのEXCERIA PLUS G3やWD Blue SN580、WD_BLACK SN770、FUTUREなどのDRAMレスの製品も上位勢に迫るスコアをマークするなど、かなりの健闘を見せている。この結果を見ても分かるように、最新のDRAMレスの製品は、最大読み出し/書き込み速度こそ5,000MB/s弱の製品が多いが、レスポンス性能はかなり底上げされてきている。DRAMレスの製品が人気になってきていることも納得の結果だ。

【検証環境】
CPUIntel Core i5-13600K(10コア24スレッド)
マザーボードASRock Z790 Steel Legend WiF(i Intel Z790)
メモリSamsung M323R2GA3BB0-CQK(PC5-38400 DDR5 SDRAM 16GB)×2
グラフィックス機能Intel UHD Graphics 770(CPU内蔵)
システムSSDキオクシア EXCERIA PLUS NVMe SSD SSD-CK1.0N3P/N[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]
OSWindows 11 Pro(22H2)

[TEXT:北川達也]

PCパーツ100選 2024

DOS/V POWER REPORT「2024年冬号」の記事をまるごと掲載

 今回は、2023年末に休刊したDOS/V POWER REPORT「2024年冬号」の記事をまるごと掲載しています。

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