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"殻割り"Core i7-4770KをOCチェック

リスクに見合う変化はあるのか、冷却/オーバークロック性能をテスト   Text by 瀬文茶

Core i7-4770K

 6月2日に発売されたHaswellこと第4世代Intel Core プロセッサーの殻割りレポートをお届けする。

 発売直後より、いくつかのPCショップがHaswellの殻割りに挑戦しており、既にHaswellのヒートスプレッダとCPUコア間のTIM(Thermal Interface Material)が、Ivy Bridgeと同じくサーマルグリスであることは判明している。

 今回は、標準塗布されたグリスがどの程度熱輸送を妨げているのか、また、そのボトルネックを殻割りでどの程度解消できるのか検証を行った。

難度の上がったHaswellの“殻割り”、表面実装部品のケアがカギ

 今回殻割りを行うCPUは、Haswellのコンシューマ向けCPU最上位モデル「Core i7-4770K」だ。モデルナンバーに「K」のサフィックスが付与されたこの「Core i7-4770K」は、CPU倍率の上方変更が可能という付加価値を持つ、自作PCユーザー向けのCPUである。

 その「Intel Core i7-4770K」を殻割りしたものが以下の写真だ。

ヒートスプレッダ内部
殻割りには0.245mm厚のカミソリを用いた
グリス/シール材除去後

 CPUコアとヒートスプレッダの間に塗布されたサーマルグリスや、CPUコアの横に配置されたチップ部品が確認できる。

 今回は、刃厚0.245mmのカミソリを用いて殻割りを行った。より薄い0.1mm厚のカミソリなどもあるのだが、ある程度力を加えても変形しない程度に硬い刃の利用をおすすめする。

 さて、ここで注目したいのが、CPUコアの横に配置されたチップ部品である。Haswellで追加されたPCB表面のチップ部品は、殻割りの難易度を若干高めるとともに、導電性のあるグリスや液体金属の利用を阻害する要素となっている。Haswellの殻割では、チップ部品の存在がもたらす問題を如何にしてクリアするのかが重要となる。

CPUコア付近に実装されたチップ部品
チップとシール材は一部隣接
チップ部品はCPUコア以上に脆いため注意が必要

 殻割り自体の難易度については、チップ部品の位置を把握してから殻割に臨めば、ある程度リスクを減らすことは可能だが、チップ部品と導電性TIMとの短絡防止についてはよく検討が必要だ。

 今回のテストでは、耐熱絶縁テープを用いてチップ部品を養生してテストを行ったが、より長期的に運用することを考えるのであれば、熱に強く、導電性グリスが浸透しない、安定した養生方法を考えたいところである。

内部のグリスを変更してテスト、高負荷時の温度は大きく低下

 殻割り前の温度と、殻割り後にTIMを塗り替えた際の温度を比較することで、Haswellに標準で塗布されているサーマルグリスが、どの程度熱輸送を妨げるボトルネックとなっているのか検証する。殻割り後に塗布するTIMには、非導電性のサーマルグリス「Prolimatech PK-3」(熱伝導率11.2W/mk)と、導電性の液体金属「Cool Laboratory Liquid Pro」(熱伝導率82.0W/mk)を用意した。

チップは耐熱絶縁テープで養生
Prolimatech PK-3を塗布
Cool Laboratory Liquid Proを塗布
検証機材

 テストの条件としては、CPUを「3.5GHz@電圧オート設定」、「4.2GHz@1.200V」、「4.4GHz@1.300V」の3設定で動作させ、240mmラジエータ採用のSilverStone製オールインワン水冷クーラー「SST-TD02」を搭載し、付属ファンをフル回転に設定して冷却を行った場合の温度を測定している。

 その他の検証機材やストレステストの内容についてはグラフ中(拡大画像内)に記載してあるので、そちらを確認してもらいたい。

 検証の結果、殻割り前は60℃であった3.5GHz動作時の温度が、殻割り後は53〜57℃へと3〜7℃低下していることが確認できる。この殻割り前後の差は、CPUの発熱が増す設定になるに従って拡大しており、4.2GHz動作時は6〜12℃、4.4GHz動作時は7〜17℃の温度差がついている。

 これだけの温度差がついていることを見れば、HaswellのCPUコア 〜 ヒートスプレッダ間に塗布されているグリスの性能は、市販のサーマルグリスより数段劣るものであり、CPUの発熱を放熱するまでの経路における大きなボトルネックとなっているのは明白と言えよう。

グリスを仕様と割り切って使うか、リスクを冒して温度低下を図るか

 以上の通り、HaswellでもCPUパッケージ内部のTIMが熱輸送を妨げる大きなボトルネックとなっている。HaswellのTDPがIvy Bridgeより高くなったことから、はんだ仕様が復活するのではないかと期待していたユーザーにとっては残念な話だろう。殻割りをするにしても、PCB表面への実装部品追加により、殻割り作業自体の難易度と長期運用上のリスクが上昇したのは悩ましい。

 「Core i7-4770K」の価格と殻割りのリスクを鑑みると、今回の温度検証の結果では、非導電性の高性能グリスである「PK-3」への塗り替えは、殻割りのリスクに見合うほどのレベルとは言い難い。一方、90℃という危険域の温度に達した4.4GHz動作時の温度を73℃まで引き下げた「Liquid Pro」の効果は魅力的だ。

 リスクを冒してまでHaswellの殻割りにチャレンジするのであれば、最大限の温度低下を狙って、チップ部品の養生方法を考えた上で「Liquid Pro」のような強力なTIMを利用したい。もし、標準グリスの劣化が心配という理由で殻割りを検討するのであれば、リテールパッケージ品の3年間保証が切れてから、あらためて考えてみるべきだろう。

(瀬文茶)

Intel Core i7-4770K