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旧型PC最新ゲーム対応化計画、ビデオカード交換だけで高画質かつ滑らかに

SandyBridgeでもまだ行ける、GTX 960/970にアップグレード text by 坂本はじめ

 今回お届けするテストレポートのテーマは「Kepler世代以前のGPUから最新のMaxwell世代のGPUに乗り換える価値はあるのか」というもの。

 国内外問わず多くの比較レビューが公開されており、詳しい人からすれば「そりゃあるでしょ」と答えが出ているテーマではある。

 ただし、それは最新のCPUと組み合わせてテストした場合の話。旧プラットフォームに導入した際のデータは意外に少ない。大人気となった「Sandy Bridge」のZ68チップセット環境や、パワーユーザーから支持を集めた「Bloomfield」のX58チップセット環境を使用しているユーザーもそれなりにいるのではないだろうか。

 ということで、旧プラットフォームでもビデオカードを載せ替える意味はあるのか、Kepler世代のGeForce 600シリーズ搭載をした旧プラットフォームPCを用意し、GeForce 900シリーズにアップグレードした際の性能を検証してみた。

今回プレイしたゲーム
メタルギアソリッド V グラウンド・ゼロズ
アサシンクリード・ユニティ
バトルフィールド 3

扱いやすいショート基板の「GV-N960IXOC-2GD」と性能重視の「GV-N970G1 GAMING-4GD」をチョイス

 今回のテーマとなるKeplerからMaxwellへのアップグレード。それぞれNVIDIAのGPUアーキテクチャの名称だが、簡単に特徴を説明しておこう。

 KeplerアーキテクチャはGeForce GTX 600/700シリーズに採用され、それ以前のGPUに採用されていたFermiアーキテクチャから大きく改善された電力効率と高い3D描画性能で好評を博した。MaxwellはそのKeplerの後継となる最新のGPUアーキテクチャで、Keplerよりもさらに優れた電力効率を実現している。

 さて、今回のテストでは、Kepler世代のGPUである「GeForce GTX 660」と「GeForce GTX 670」。Maxwell世代のGPUである「GeForce GTX 960」と「GeForce GTX 970」を用意した。アーキテクチャと製品の世代が異なるが、ラインナップ上で同じ位置づけにあるGPUからの乗り換えを想定してチョイスした。

GV-N960IXOC-2GD(GeForce GTX 960)
GeForce GTX 960搭載のGIGABYTE「GV-N960IXOC-2GD」。170mmサイズのショート基板を採用しつつ、GeForce GTX 960を1,127MHz(ブーストクロック1,178MHz)から1,165MHz(ブーストクロック1,228MHz)にオーバークロックして搭載。
GV-N960IXOC-2GD(GeForce GTX 960)
GeForce GTX 970搭載のGIGABYTE「GV-N970G1 GAMING-4GD」。3基のファンを搭載した大型GPUクーラー「WINDFORCE 3X」を搭載し、GeForce GTX 970を1,050MHz(ブーストクロック1,178MHz)から1,178MHz(ブーストクロック1,329MHz)に大きくオーバークロックした性能特化モデル。
比較用の旧世代モデル(GeForce GTX 660/670)
GeForce GTX 660搭載のGIGABYTE「GV-N660OC-2GD」。オリジナルGPUクーラーを搭載したGeForce GTX 660を980MHz(ブーストクロック1,033MHz)から1,033MHz(ブーストクロック1,098MHz)にオーバークロックして搭載。
GeForce GTX 670のリファレンスボード。GeForce GTX 970は、KeplerアーキテクチャベースのGK104コアを採用した2012年登場のハイエンドGPU。もう3年近く前の製品ということになる。

 これらのGPUを搭載するプラットフォームとして、Intel Core プロセッサーの第1世代、第2世代、そして第4世代をベースにしたテスト環境を用意した。CPUはIntel Core i7-950(チップセット:Intel X58)、Intel Core i7-2600K(チップセット:Intel Z68)、Intel Core i7-4790K(チップセット:Intel Z97)の3つ。

Intel Core i7-2600K。開発コードネーム「Sandy Bridge」こと、第2世代Core プロセッサーの4コア8スレッドCPUで、動作クロックは3.4GHz(ターボ時最大3.8GHz)。性能と電力効率が飛躍的に向上した近年屈指の傑作CPUだ。近年と言っても、登場は2011年1月であり、既に登場から4年以上が経過している。
Intel Core i7-950。開発コードネーム「Bloomfield」こと、第1世代Coreプロセッサーの4コア8スレッドCPUで、動作クロックは3.06GHz(ターボ時最大3.33GHz)。登場は2009年……もう6年も前のCPU。
Intel Core i7-4790K。開発コードネーム「Devil's Canyon」こと、第4世代Coreプロセッサーの4コア8スレッドCPUで、動作クロックは4.0GHz(ターボ時最大4.4GHz)。Haswell世代のCPUに改良を施し、4GHz以上の動作クロックを実現した現在最速の4コア8スレッドCPUだ。
Intel Core i7-2600K環境に搭載したGeForce GTX 970のGPU-Z実行画面。接続バスがPCI Express 2.0 x16になっている。

 もっとも古いもので約6年前のCPUを用意したわけだが、今回用意した3つのテスト環境のうち、ビデオカードの接続バスであるPCI Express 3.0をサポートしているのは、最新のIntel Core i7-4790Kのみ。残る2環境では、PCI Express 2.0 x16で各ビデオカードと接続することになる。

 古いプラットフォームでは、CPU性能の違いだけでなく、接続バスでも制約が生じることになる訳だ。最新GPUのスペックをフルに生かせない環境でも、ビデオカードをアップグレードする価値があるのかという点に注目しつつ、テスト結果を確認してみたい。

旧型PCでもGTX 900シリーズにするだけでゲームは遊べる、有名タイトルでテスト

 それでは、実際のゲームで各GPUのパフォーマンスをチェックしていこう。

 CPUとGPU以外のテスト環境については以下のとおり。

【CPUとGPU以外のテスト環境】
 メモリ(Core i7-2600K)DDR3-1333 8GB×2枚
 メモリ(Core i7-950)DDR3-1066 2GB×6枚
 メモリ(Core i7-4790K)DDR3-1600 8GB×2枚
 電源SilverStoneSST-ST85F-G(850W 80PLUS Gold)
 OS日本マイクロソフトWindows 8.1 Pro Update(64bit)
 グラフィックスドライバGeForce Driver 347.88


メタルギアソリッド V グラウンド・ゼロズ

 まずチェックしたのは「メタルギアソリッド V グラウンド・ゼロズ」。

 2015年9月16日にPC版の配信が予定されている「メタルギアソリッド V ファントムペイン」の前日譚にあたるこのタイトル。描画設定をPC版向けの高品質設定「Extra High」に設定しフルHD(1,920×1,080ドット)でテストを行った。
なお、性能的にゆとりがありそうな結果が出たので、さらに高解像度のWQHD(2,560×1,440ドット)でもテストを行っている。

メタルギアソリッド V グラウンド・ゼロズ。本編である「メタルギアソリッド V ファントムペイン」の配信がコンシューマ版(9月2日発売予定)とほぼ同時期に決定した。コンシューマ版より高い描画品質を楽しめるよう、グラウンド・ゼロズが快適に遊べるPC環境を整えておきたい。
フレームレートの測定地点は負荷が比較的高い「GROUND ZEROES」のスタート地点。

(c) 2014 Konami Digital Entertainment

メタルギアソリッド V グラウンド・ゼロズ(1,920×1,080、Extra High)
メタルギアソリッド V グラウンド・ゼロズ(2,560×1,440、Extra High)

 メタルギアソリッドVをPC版で遊ぶなら、描画設定はコンシューマ版よりも高品位なグラフィックで楽しめる「Extra High」に設定したいところ。

 測定ポイントの描画負荷がゲーム中屈指の「重たい」ポイントなので60fpsを割り込んでいる結果もあるが、GeForce GTX 960とそれに並ぶGeForce GTX 670程度の性能があれば、おおよそ50~60fpsでのプレイが可能だった。

 GeForce GTX 970なら、さらに一段上の解像度で60fpsに迫るフレームレートが実現できる。確実に60fpsを維持するなら多少妥協が必要な場合もあるが、GeForce GTX 900 シリーズを導入すれば、メタルギアソリッドVは快適にプレイできると言ってよさそう。

 また、このテスト結果で注目したいのは、プラットフォーム間のパフォーマンス差が思いのほか小さいところ。LGA1155世代のCPUどころか、LGA1366世代のCPUを使っていても、GeForce GTX 900シリーズを導入する意義は大きい。

 Kepler世代のミドルレンジGPUやそれ以前の世代のGPUを使っているなら、メタルギアソリッドVをプレイするにあたり、他のパーツより優先してGeForce GTX 900 シリーズに投資する価値がありそうだ。

アサシンクリード・ユニティ

 続いてチェックしたのは「アサシンクリード・ユニティ」。このゲームでは、描画品質を「高い」に設定し、フルHD解像度でテストを行った。

アサシンクリード・ユニティ。現在屈指の重たいゲームであるユニティは、GPUはもちろん、CPUのパフォーマンスも必要とされるタイトルだ。
フレームレートの測定地点は「パレ・ド・ジュスティス」のシンクロポイント。時刻は日中で、高速移動で移動した直後の視点で測定した。

(c) 2014 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved

アサシンクリード・ユニティ(1,920×1,080、描画設定:高い))
GeForce GTX 970なら、フルHD解像度で描画設定を「高い」にした今回の条件でも、ほぼ60fps以上を維持可能。

 アサシンクリード・ユニティは、筆者にとってより美しいグラフィックで遊びたいゲームタイトルのひとつ。描画品質を落として60fpsを維持するくらいなら、描画品質を上げて30fpsの維持を目指した方がアサシンクリードの世界を楽しむ点ではお勧めだ。

 また、アサシンクリード・ユニティの家庭用ゲーム機版は1,600×900ドット/30fps(最大)で動作しているとされている。せっかくPCで遊ぶなら、30fps以上で高画質という部分にもこだわりたい。

 測定ポイントの描画負荷だが、ゲーム中でもそこそこ重い負荷がかかるシーンを選んだ。常時30fpsを維持することを目指すなら、そこそこ負荷がかかるシーンでも40fps程度は出しておきたいところ。測定の結果は、GeForce GTX 900 シリーズは全てのプラットフォームで40fpsを上回るフレームレートを実現した。

 Kepler世代のハイエンドGPUを使っているユーザーなら、この基準をクリアすることは可能だが、それ以前のGPUを使っている場合はGeForce GTX 900 シリーズへの乗り換えは有意義だ。

 ただ、注意しておきたいのは、アサシンクリード・ユニティが比較的CPUパフォーマンスを要求するタイトルであるという点。Core i7-950環境でのみ、GeForce GTX 970のフレームレートが10fps程度低下していることからその傾向が伺える。

 Core i7クラスのCPUを使っているならGPUのアップグレードだけでもその恩恵が得られるが、Core i3以下のCPUを使っているような場合は、CPUのアップグレードも合わせて検討した方が良さそうだ。

BATTLEFIELD 3

 Kepler世代のGPUが主力であった頃のゲームタイトルの一つ「BATTLEFIELD 3」。このゲームではフルHD解像度で描画設定を最高にしてテストを行った。

BATTLEFIELD 3は、Kepler世代のGPUが登場する直前の2011年に発売されたFPSゲーム。
フレームレートの測定地点はキャンペーンモード「OPERATION SWORDBREAKER」のスタート地点。

(c) 2015 Electronic Arts Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.

Windows 8.1環境でBATTLEFIELD 3を実行しようとした場合、左のようなエラーメッセージが表示されて起動できない場合がある。これについては、コントロールパネルの「時計、言語、および地域」→「地域」→「管理」より、Unicode対応でないプログラムの言語を「英語(米国)」に設定することで回避できる。ただし、この方法では、他のプログラムの動作に悪影響(日本語名のフォルダにアクセスできないなど)が出る場合がある。ゲームをしない時は元に戻すことをお勧めする。
BATTLEFIELD 3(1,920×1,080、描画設定:最高)
BATTLEFIELD 3(1,920×1,080、描画設定:中)

 最高品質に設定した場合、GeForce GTX 900シリーズはKepler世代のハイエンドGPUと同等以上のパフォーマンスを発揮できる。

 測定ポイントの描画負荷はそれなり高いため、ここでギリギリ60fpsを上回るGeForce GTX 960とGeForce GTX 670は、この設定で常時60fps以上をキープすること難しいが、画質設定を若干落とせば60fps以上を常時キープすることも可能だ。

 FPSゲームは、美麗なグラフィックスが魅力であると同時に、フレームレートが特に重要とされるジャンルでもある。キャンペーンモードをプレイするだけなら描画品質優先でも良いが、プレイヤー同士での対戦となると、品質よりもフレームレートが優先される。

 という訳でフレームレートを優先して「中」設定でのテストを実行してみた訳だが、結果として、どのプラットフォームであっても、GeForce GTX 900 シリーズはKepler世代のハイエンドGPU以上のパフォーマンスを発揮できている。

 ただし、120fpsを目指すようなセッティングの場合は、プラットフォーム間でのパフォーマンス差は思いのほか大きい。120Hzや144Hz駆動の液晶ディスプレイと組み合わせることを望むなら、GPUだけでなく、CPUのパフォーマンスも必要ということだ。

ベンチマークでプラットフォーム間の性能を数値で比較

 さて、ベンチマークテストの結果を二つ紹介しよう。

 実行したベンチマークテストは定番の「3DMark Fire Strike」と、「FINALFANTASY XIV 新生エオルゼア」だ。FINALFANTASY XIV 新生エオルゼアに関しては、フルHD解像度で最高品質に設定してベンチマークテストを行った。

3DMark Fire Strike
FINALFANTASY XIV 新生エオルゼア(1920×1080、最高品質)

 3DMarkとFINALFANTASY XIVで、GeForce GTX 960とGeForce GTX 670のスコアが逆転しているが、全体的な傾向はこれまでに確認してきたゲームでのテスト結果と変わらない。

 あえてゲームでのテスト結果との違いをあげるとするなら、GeForce GTX 970のスコアにおけるプラットフォーム毎の差が、ゲームタイトルでの結果よりはっきりしているように見えることことくらいだろうか。FINALFANTASY XIVでは、Core i7-950環境とCore i7-4790K環境で2,000ポイント以上の差がついている。

 ただし、ここで注意したいのは、2,000ポイント以上の差がついているとしても、ベンチマークテストが提示した評価はいずれも最高評価の「非常に快適」であるということだ。数値の目安として、メーカーは7,000ポイントを超えると非常に快適に動作するとしている。

 プラットフォーム毎にスコア差が開いたからと言っても、どちらも快適に動作する目安は大きく超えているので、ゲームをプレイする上で支障が出るようなことは無い。

Core i7-950環境(左)とCore i7-4790K環境のスコア。スコア差は大きいが、評価はどちらも最高評価の「非常に快適」を獲得している。

省電力性が光るGTX 960、プラットフォーム毎の消費電力をチェック

 さて、テストの締めは消費電力の比較だ。

 ワットチェッカーを用いて測定したベンチマーク実行中の最大消費電力を、プラットフォーム毎にまとめてグラフ化した。

消費電力比較(i7-2600K + Intel Z68環境)
消費電力比較(i7-4790K + Intel Z97環境)
消費電力比較(i7-950 + Intel X58環境)

 最も高い消費電力を記録したのは、傑出したパフォーマンスを見せていたGeForce GTX 970。テストに用いたのが性能特化仕様のオーバークロックモデル「GV-N970G1 GAMING-4GD」であったこともあってか、消費電力は思ったよりも高めで、2番目に高い消費電力を記録したGeForce GTX 670より60~70W高い数値を記録している場面もあった。

 一方、パフォーマンスでGeForce GTX 670と張り合っていたGeForce GTX 960は、GeForce GTX 660と同じ程度の低い消費電力を記録している。従来のミドルレンジGPUと同等の消費電力で、従来のハイエンドGPUと互角のパフォーマンスを実現する、電力効率の高さが売りのMaxwellアーキテクチャGPUらしさの光る結果だ。

旧型PCでもビデオカードを換えるだけで最新ゲーム対応PCに、Maxwellに乗り換える価値はあり

 KeplerからMaxwellへ乗り換える価値の有無をテーマに行った今回のテスト。

 古いプラットフォームを引っ張りだしてテストを行ってみたわけだが、筆者としては各プラットフォーム間のパフォーマンス差が思いのほか少ない事が印象的だった。6年前のCPUであるCore i7-950を搭載した環境ですら、KeplerからMaxwellに乗り換える価値は確実にある。

 GeForce GTX 960搭載ビデオカード「GV-N960IXOC-2GD」は、従来のミドルレンジGPUを使用しているユーザーなら、電源ユニットを変える必要も無く、ワンランク上の性能を得られる有力なアップグレード手段だ。170mmというコンパクトなカードサイズも、ミドルレンジクラスのビデオカードをそのまま置き換える際の助けになるだろう。

 GeForce GTX 970搭載の「GV-N970G1 GAMING-4GD」は、かなり攻めたオーバークロック仕様であることもあって、5万円前後で購入可能なビデオカードとしては抜群の性能を持っている。パフォーマンスアップを狙ってのアップグレードなら有力な選択肢だ。

 なお、GIGABYTEには、GV-N960IXOC-2GDと同じく170mmのショート基板を採用し、電源ユニットへの要求が緩いGeForce GTX 970搭載モデル「GV-N970IXOC-4GD」が存在する。価格も税込4万1千円前後とGeForce GTX 970としては手頃で、ビデオカードのみのアップグレードを考えるなら、こちらも合わせて検討することをお勧めする。

 プラットフォームを丸ごとアップグレードすれば、パフォーマンス向上に省電力化などなど、様々な恩恵を得ることができる訳だが、そのために必要となるコストは大きい。

 今、ゲームを快適にプレイすることを優先するなら、今回テストしたMaxwell世代のGPU搭載ビデオカードへのアップグレードが、より費用対効果に優れた選択であると言えるだろう。

[制作協力:GIGABYTE]

坂本はじめ