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余裕でTITAN X超え、スーパーOC版GTX 980 Tiは最高峰のビデオカードだ!

ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeの実力を検証 text by 瀬文茶

GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme(ZT-90505-10P)

 NVIDIAのウルトラハイエンドGPU「GeForce GTX 980 Ti」は、最上位GPUであるGeForce GTX TITAN Xに匹敵するパフォーマンスを持ったGPUとして注目を集めている。

 今回は、そのGeForce GTX 980 Tiを搭載するカードの中でも「最速」といえるような、ZOTACのスーパーオーバークロックモデル「 GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme」の検証を行う。現在販売されているGeForce GTX 980 Tiカードの中では最高クロックの製品だ。

 この「GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme」が最速の1枚となり得るポテンシャルを秘めているのか、リファレンス版のGeForce GTX 980 Ti・GeForce GTX TITAN Xと比較しながら実力をチェックしてみたい。

ZOTACがカスタムしたGeForce GTX 980 Tiのスーパーオーバークロックモデル

ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme。

 GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeは、NVIDIA GeForce GTX 980 Tiを搭載したZOTACオリジナルデザインのビデオカード。

 3スロット占有の大型GPUクーラー「IceStorm」を備え、その冷却能力をもってGeForce GTX 980 Tiを20%以上もオーバークロックして搭載したスーパーオーバークロックモデルである。

 GeForce GTX 980 Ti AMP! ExtremeのGPUクロックは、1,253MHz(ブーストクロック:1,355MHz)で、リファレンス仕様の1,000MHz(ブーストクロック:1,075MHz)から約25%クロックアップされている。また、VRAMもリファレンスの7,010MHzから7,220MHzにオーバークロックされている。

ビデオカード裏面。肉厚の金属製バックプレートを備えており、ボード全体の剛性を高めている。
基板裏面にはPower Boostと記載されたキャパシタを実装。
ビデオカード側面。GPUクーラーを含めると3スロットを占有する。
ディスプレイ出力端子はDVI-I、HDMI 2.0、DisplayPort 1.2×3基。最大で4画面の同時出力が可能。
電源回路は8フェーズ。
補助電源コネクタは8pin×2系統。
ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! ExtremeのGPU-Z実行画面(左)とリファレンス版GeForce GTX 980 TiのGPU-Z実行画面(右)。クロックが大きく違うことがわかる。

ZOTACオリジナルGPUクーラー「Ice Storm」の冷却能力はかなり強力

 前述の通り、GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeは、90mmファンを3基備えた3スロット占有型GPUクーラー「Ice Storm」を搭載している。

 IceStormは、金属と樹脂を組み合わせた外装を備えており、仕上がりは重厚で高級感のあるものだ。

IceStorm。3基の90mmファンを備え、3スロットを占有する大型GPUクーラー。
ceStormの外装。外周部に肉厚の金属が使用されている。

 IceStormが搭載している3基の90mmファンは、一般的な形状のブレードに比べ、エアフローが30%向上させるという2重構造を採用した「EKOファン」。最近流行りのセミファンレス機能も備えており、GPUが十分に冷却できている状況ではファンが停止する。最大回転数は約2,800rpm。

ファンのブレードを2重構造化した「EKOファン」。通常のブレードよりエアフローが30%向上するという。
マニュアルでファンを制御した場合の回転数。フルに回転させれば2,800rpmで動作する。

 ヒートシンクは2ブロックの放熱ユニットに、4本の8mm径ヒートパイプと2本の6mm径ヒートパイプを備えている。ヒートパイプにメッキ処理は施されていないが、ヒートパイプと放熱フィンをろう付けするなど、性能重視の作り込みが見られる。3スロットを占有するだけあってかなり大型のヒートシンクであり、ヒートシンク単体で570gもの重量がある。

IceStormのヒートシンク。ヒートパイプは8mm径4本と6mm径2本のハイブリッド仕様。
GPUに接するベースユニットの周辺部は、熱伝導シート経由でVRAMの冷却も行う設計となっている。
放熱フィンとヒートパイプはろう付けされている。

 さて、この重厚なGPUクーラーの実力をチェックしてみよう。

 ファイナルファンタジーXIVベンチマークをフルHD解像度かつ最高品質(DirectX 11)で実行し、その間のファン回転数とGPU温度をGPU-Zを使って測定した。なお、測定はの室温は27℃の環境下において、ケースに収めないバラック組みのテスト機材で行っている。

ファイナルファンタジーXIVベンチマーク実行時のGPU温度とファン回転数
ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme
GeForce GTX 980 Ti(リファレンス仕様)

 ベンチマークテスト中のGPU温度は最高70℃で、ファンの回転数は最大で約1,640rpmだった。テスト中は概ね60℃台のGPU温度で動作しており、テストが終了した510秒時点から540秒までの30秒の間にGPU温度は50℃まで低下、セミファンレス機能によりファンの動作が停止している。

 同条件では、リファレンスデザインのGeForce GTX 980 TiのGPU温度は最高84℃に達しており、大幅にオーバークロックされたGeForce GTX 980 Tiを70℃以下の温度に抑え、短時間でファンレス動作に移行可能な温度まで冷却できていることから、IceStormの高い実力が確認できる。

GeForce GTX 980 Ti AMP! ExtremeのパフォーマンスをTITAN Xと比較しながらチェック

 続いて、ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeでベンチマークテストを実行してみた。

リファレンス仕様のGeForce GTX 980 Tiと、GeForce シリーズのシングルGPU最上位モデルGeForce GTX TITAN Xを比較対象として、ベンチマークスコアからその実力を測っていく。

ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク

 まずは、GPUクーラーの性能チェックでも利用した「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」の結果から。

ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
(1,920×1,080ドット/DirectX 11最高品質)
ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme
GeForce GTX 980 Ti(リファレンス仕様)
GeForce GTX TITAN X(リファレンス仕様)

 フルHD解像度(1,920×1,080ドット)でのパフォーマンス。ここでGeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeは「17,615」を記録。リファレンス版GeForce GTX 980 Tiの「16,081」はもちろん、GeForce GTX TITAN Xの「16,225」にも1割近い差をつけて上回った。

ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
(3,840×2,160ドット/DirectX 11最高品質)
ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme
GeForce GTX 980 Ti(リファレンス仕様)
GeForce GTX TITAN X(リファレンス仕様)

 4K解像度(3,840×2,160ドット)では、ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeが「5,985」で「とても快適」の評価を獲得。「4,918」で「快適」評価に留まったリファレンス版GeForce GTX 980 Tiを大きく上回り、GeForce GTX TITAN Xの「5,165」にも2割弱の差をつけた。より高負荷な条件で上位GPU相手に差を広げたのは好印象だ。

3DMark FireStrike/FireStrike Ultra

3DMark FireStrike

 つづいて、定番ベンチマークソフトの3DMarkから、FireStrike(1,920×1,080ドット)とFireStrike Ultra(3,840×2,160ドット)を実行してみた。

3DMark FireStrikeは、3DMarkのテストの中で最も負荷の大きいDirectX 11ベンチマークテストだ。

 結果としては、フルHDのFireStrike、4KのFireStrike Ultraとも、最高スコアをマークしたのはGeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme。GeForce GTX TITAN X相手に10~15%ほどのスコア差をつけており、完勝と言える結果だ。

Grand Theft Auto V

 Grand Theft Auto Vでは、4K解像度でベンチマークモードを実行した。描画設定はGeForce Experienceを使って、“リファレンスGeForce GTX 980 Ti”に最適化した設定を固定して計測している。

Grand Theft Auto Vのベンチマークモードで3GPUを比較した。
GeForce Experienceで最適化した設定。GeForce GTX 980 TiとGeForce GTX TITAN Xのリファレンスボードでは、まったく同じ設定がロードされたので、この値で固定してテストしている。
テスト時の描画設定でのビデオメモリ消費目安は4,155MB。

 ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeは、ベンチマークモードで実行される5つのパス全てで最も高い平均フレームレートを記録した。

 3つの製品の中で、平均フレームレートが40fpsを下回らなかったのはZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeのみで、測定誤差で優劣が逆転する程度の差しかないGeForce GTX 980とGeForce GTX TITAN Xを尻目に、1グレード上のGPUであると言えるほどの差をみせている。

 以上、3つのソフトで計測したが、いずれのベンチマークテストでも、トップスコアを記録したのはGeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeだった。

 最上位GPUであるGeForce GTX TITAN X相手に1~2割程度の差をつけていることから、少なくともシングルカードではGeForce GTX 980 Ti AMP! ExtremeがGeForce GTX TITAN Xよりも高いゲーミング性能を持ったビデオカードであることは間違いないだろう。

ビデオカード以外のテスト環境機材
 CPU IntelCore i7-4790K
 メモリ DDR3-1600 8GB×2
 マザーボード MSIX99S SLI PLUS
 電源 SilverStoneSST-ST85F-G(850W)
 OS 日本マイクロソフトWindows 8.1 Pro Update(64bit)
 グラフィックスドライバGeForce Driver 353.30

ZOTAC謹製のユーティリティ「FireStorm」、動作クロック/ファン回転数を制御可能

Zotac FireStormのメイン画面。中央にGPU温度計、左側にモニタリンググラフ、右側にチューニングボタンを備える。

 GeForce GTX 980 Ti AMP! ExtremeにはZOTAC謹製のユーティリティ「FireStorm」が付属しており、これを利用することで、GPUの動作状態のモニタリングと、GPU動作のチューニングが行える。

 ファンの動作設定を手動で行うことにより、セミファンレス動作を無効化することも可能だ。

モニタリンググラフの「More」ボタンを押すことで、別枠表示されるグラフ。
チューニングボタンの「Advance」を押すことで表示される動作設定画面。
Advanceで表示された項目から、「Fan Speed」内のAdvancedボタンを押すと、ファンの動作を10℃/10%単位でマニュアル設定できる画面が表示される。

 GPUのチューニング機能については、「Quick Boost」モードから3つのプリセットをロードする方法と、「Advanced」モードで手動設定する方法がある。

 なお、チューニング機能の右端に用意された「Gamer」ボタンについては、ZOTACの一部ビデオカードが備えている「OC+」チップを用いるチューニング項目で、同チップを備えていないGeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeでは利用できなかった。

 Quick Boostの設定に関しては、Quick Boostボタンを押してから、下段の「2D」「3D」「3D+」ボタンを選択して適用することで動作設定が反映される。なお、手軽に動作をチューニングできるQuick Boostだが、メーカー保証外のオーバークロック動作であることには注意したい。

Quick Boostで「2D」に設定した際のGPU-Z実行画面。GPU:1,283MHz、VRAM:1,823MHzで、GPUとメモリの両方がオーバークロックされる。
Quick Boostで「3D」に設定した際のGPU-Z実行画面。GPU:1,303MHz、VRAM:1,823MHz。
Quick Boost 3D+に設定した際のGPU-Z実行画面。GPU:1,323MHz、VRAM:1,823MHz。

 ここで、「FireStorm」の「Advance」モードを使い、手動オーバークロックでGeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeの限界を探った結果を紹介しよう。

 と、その前に、オーバークロックの大前提として、オーバークロックはメーカー保証外の行為であるため、故障時に一切の保証が受けられなくなること。そして、オーバークロック中の動作についての安定性を誰も保証してくれないこと。この二点はよく理解しておいて頂きたい。過去にいくつかのビデオカードをオーバークロックで破壊してきた筆者としては、「壊れてしまっても仕方ない」と済ませられる覚悟が無い限り、やらない方が良いと断っておく。

 さて、前置きが長くなったが、そろそろオーバークロックの結果を紹介しよう。以下のスクリーンショットが、ファイナルファンタジーXIVベンチを完走できたセッティングとそのスコアだ。

ファイナルファンタジーXIVベンチを完走できた時のセッティング。
フルHD解像度でのスコアは18,292。
4K解像度でのスコアは6,240。

 GPUクロックは1253MHz→1298MHz(+3.5%)、メモリクロックは7220MHz→8000MHz(+10.8%)で、スコアの伸びは5~7%前後となった。CPUがGPUの足を引っ張らないよう、全コア4.8GHzまでオーバークロックしているので、スコアアップにはその影響も多少はあるだろう。

 意外と伸びしろが少ないように感じるかもしれなが、GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme自体がGeForce GTX 980 Tiを大幅にOCした製品であるということを忘れてはいけない。筆者が頑張ってもこの程度しか伸びないということは、GeForce GTX 980 Ti AMP! ExtremeがGPUコアの持つポテンシャルを限界近くまで引き出していることの証左でもある。

 ちなみに、今回のGPUオーバークロックだが、実は相当苦戦した末にこの結果を出している。というのも、GeForce GTX 980 TiにはGPUの温度や電力の状況に応じてGPUクロックを変動させる「GPU Boost」機能が備わっているのだが、オーバークロック中もこれが機能して動作クロックが一定にならないのだ。

 GPU Boostの動作には、GPUクロック、GPU電圧、「Power」、「GPU Temp Target」などのパラメーターが関係しているのだが、それぞれが複雑に絡み合っているため、ベンチマークテスト中に想定以上のクロックに上がってしまいフリーズしてしまうということが少なくない。困難だからこそやり甲斐もあるというものだが、完全にコントロールできない要素を含みながら、安定したセッティングを見つけるというのは、とても大変な作業だ。これはGeForce GTX 980 Tiを搭載した製品の全てに言えることだろう。

 スーパーオーバークロックモデルであるGeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeは、そのような難しいチューニングを行う必要も無く、オーバークロックによってGPUコアのポテンシャルを限界近くまで引き出した性能が得られる。安定性が確保されたセッティングによって限界近くまでオーバークロックされたGeForce GTX 980 Tiを、メーカー製品保証付きで入手できることこそ、GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeの魅力なのである。

その実力はシングルGPUの最高峰、今最速のGeForceが欲しいなら「GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme」

 ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeは、GeForce GTX 980 Tiを大幅にオーバークロックして搭載することで最上位モデルであるGeForce GTX TITAN Xを逆転するという、下剋上を実現したビデオカードだ。

 GeForce GTX TITAN Xは、GeForce GTX 980 Tiの2倍のVRAMを搭載するものの、ことゲームに関してはVRAM容量の差が明確に出るケースは少ない。ゲームを改造するため、Mod超大量に導入するといった極端な例を除けばほぼ無いといってもいいだろう。

 そもそも、GeForce GTX 980 Tiが持つ6GBのVRAMで足りないような場面では、VRAM容量に余裕があったとしてもGPUパワーが不足してしまう。カード単体で使う限りにおいて、ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! ExtremeはGeForce GTX TITAN Xを凌ぐ、シングルGPU最高峰の性能を持ったビデオカードであると言えるだろう。

 税込で約13万円前後という価格は、GeForce GTX 980 Ti搭載ビデオカードの中では高価だが、15万円以上で販売されることの多いGeForce GTX TITAN Xを上回る性能と、質の良い基板、高性能なGPUクーラーを備えていることを考えれば、むしろ割安と見ることもできる。シングルGPU搭載のビデオカード1枚で最高の性能を求めるユーザーなら、選択肢に加えるべきモデルだ。

[制作協力:ZOTAC]

瀬文茶