特集、その他

Sandy世代から買換えでビデオカードも2倍高速に、ゲームをするなら最新モデル

最新 vs 旧型ガチンコ勝負 ビデオカード編 text by 石川ひさよし

2015年の最新PCパーツ

 去る8月初旬、Windows 10とIntelの最新CPU Skylakeが発売された。特にSkylakeはプラットフォームとしての強化点も多く、発売までPCのアップグレードを待っていたユーザーも多いだろう。

 そこで、旧世代のPCパーツから最新世代のPCパーツに買い替える価値があるのか、その違いをはっきりさせておこうというのがこの企画だ。前回のマザーボード編に続き、今回はビデオカード編をお届けする。

最新 vs 旧型ガチンコ勝負:バックナンバー
マザーボード編Sandy世代から買換えで快適に、新旧の性能差は最大2.5倍、ゲームなら流行りのゲーミングマザー
SSD編Sandy世代から大幅にコスパが向上した最新SSD、容量倍で半値以下に

 ビデオカードは比較的進化スピードが速く、新旧モデルで差が出やすい。現在の最新PCでできること、古いPCではできないこと、新旧プラットフォーム間でどの程度パフォーマンス差が出るのかといった点を紹介しよう。

今回紹介するZOTACのGeForce GTX 950搭載カード「GeForce GTX 950 AMP! Edition(ZT-90603-10M)」

ビデオカードの進化を、GPU、クーラーという2つの視点で振り返る

 ビデオカードの進化は、GPUと、クーラーなどの設計という2つに分けて考えることができる。

 まずはGPUから見ていこう。今回扱うNVIDIAの現行世代GPUは、「Maxwell」系コアが採用されている。対してSandy Bridge世代の頃のGPUは、「Fermi」系コアだったと記憶している。

 この2つのGPUコア世代の間に「Kepler」系コアもある。つまり、Fermiは現行世代から見て2世代前のコア設計と言える。シリーズ型番としては、多少の例外はあるものの、概ねFermiが400/500シリーズ、Keplerが600/700シリーズ、Maxwellが900シリーズで、800シリーズはデスクトップ向けGPUとしては欠番になる。

NVIDIAのサイトで公開されているそれぞれのアーキテクチャの特徴、左からMaxwell、Kepler、Fermi

 ではMaxwellとFermiを比較してみよう。Maxwellは、言うまでもなく、最新のDirectX 12をフルサポートしている。例えば「Feature Level 12_0」、「Feature Level 12_1」といった機能も利用できる。一方、FermiはDirectX 12を利用できるものの、「Feature Level 12_0」、「Feature Level 12_1」といった機能はサポートしていない。

 DirectX 12自体は動くが、機能の詳細を見ていくと、サポートの有無に違いが出てくる。そうした機能を利用するシーンにおいては、2つのGPUコア世代の間に、GPUの処理性能以上の性能差が生まれることになる。

 また、当然だがGPUの処理性能というところで大きな差がある。まず製造プロセスで見るとFermiが40nm、KeplerとMaxwellは28nmだ。仮に同じダイサイズだとして、搭載できるトランジスタの数に違いが出てくる。もちろん、より微細なプロセスのMaxwell世代のほうが高性能となるのは明らかだ。

 そのうえで、アーキテクチャの違いでも性能は異なってくる。分かりやすいのが電力効率だ。Fremiも、それ以前のGPUと比べれば電力効率が良かったが、Keplerではこれがさらに引き下げられ、とくに静音性という点で現れた。そしてMaxwellでは、TDPや補助電源コネクタの数という点で、より分かりやすく引き下げられた。消費電力を削減しつつ、もちろん各グレードでのパフォーマンスは向上している。

ZOTACのオリジナルクーラー「IceSrorm」、デュアルファン + 高密度ヒートシンク構成
低負荷時にはファンが止まる機能も備えている

 続いてはクーラー。クーラーはもちろん冷却性能が進化してきている。

 とくにビデオカード専業メーカーの製品は、2011年頃まではリファレンスクーラーをベースにコストを訴求したモデルが多かったのだが、昨今は独自のクーラー技術を磨き、かなり静かで冷えるクーラーを採用するモデルが増えた。2015年現在では、ヒートパイプ、高密度ヒートシンク、デュアルファンといった構成がトレンドだ。

 合わせて、静音性も向上してきた。ヒートパイプで熱輸送の効率を高密度ヒートシンクで放熱効率を高めることで、クーラー自体の放熱効果が高まったところに、ファンを複数搭載することで1基あたりの負担を下げ、回転数を下げ、動作音を抑えることが可能になってきたわけだ。

 このあたり、回転数の制御や冷却ポリシーに各社の違いが見られるが、全体的にビデオカードは静音なものになってきた。これに加え、Keplerの第2世代以降、とくにMaxwell世代では本格的に、低負荷時においてファンの回転を止める機能が多くのビデオカードメーカーで採用されてきたことも、静音性の向上を印象付けている。

 では実際に製品で見ていこう。最新世代ビデオカードとして用意したのはZOTACの「GeForce GTX 950 AMP! Edition」だ。

 NVIDIAのメインストリーム向けGPU「GeForce GTX 950」を搭載しており、これをオーバークロックしたモデルだ。CUDAコア数は768基で、コアクロックは1,203MHz、Boostクロックは1,405MHz、メモリはGDDR5の128bit接続で7GHzだ。メモリ容量は2GBとなる。

ZOTAC GeForce GTX 950 AMP! Edition
GPU-Zから見た「ZOTAC GeForce GTX 950 AMP! Edition」。リファレンスではGPUが1,024MHz、Boostクロックが1,188MHz、メモリが6.6GHzとなるので、それぞれOCされた仕様だ

 対するはEVGAのGeForce GTX 460カード「01G-P3-1371」。ファイナルファンタジーXIVやBattlefield 3などを遊ぶために購入したといユーザーも多いのではないだろうか。

 GeForce GTX 460は、CUDAコア数が336基で、コアクロックは675MHz、Boostには非対応で、当時は別にシェーダークロックが用いられており、こちらが1,350MHz、そのほかメモリはGDDR5の256bit接続で3.6GHzだ。GeForce GTX 460には1GB版と768MB版があったが、これは1GB版だ。

EVGA GeForce GTX 460 1GB
GPU-Zから見たGeForce GTX 460
2011年の大型タイトルとして発売された「Battlefield 3」
ファイナルファンタジーXIV(旧作)はGeForce GTX 460とのセットパッケージなども発売された

 スペック面で比較すると、まずメモリ容量の違いを紹介したい。GeForce GTX 460 1GBは、当時で大容量モデルだったが、今はひとつ下のクラスのGPUでも2GB搭載していることが珍しくない。さらにGeForce GTX 960では4GBモデルもある。GPU性能が上がれば画質の向上や、それに伴うテクスチャの増大などでより多くのグラフィックスメモリを必要とする。

 また、メモリに関してはほかにも、GeForce GTX 950はバスがGeForce GTX 460の半分、一方、メモリクロックはおよそ倍というスペックだ。どちらもおよそ100GB/sec強のメモリ帯域幅である。

 クーラーで見ると、GeForce GTX 460側はこれもオリジナルクーラーになるが、シングルファンでカバー部分が大きく、いかにも古い設計だ。一方、GeForce GTX 950側はトレンドであるデュアル構成の大型ファンを搭載し、合わせてフレームも細めだ。

 もちろん、低負荷時にはファンを停止させる機能も付いている。いちおう、片側のファンを停止したらもう一方を低回転で回し、しばらくしたらこの逆を行うというように、両方のファンが完全停止する時間を減らしているようで、もしかしたらこれは瞬間的な熱量増加時によりスムーズに回転数を上げるための仕組みではないだろうかと思う。

 ほか、映像出力レイアウトや補助電源コネクタにも、時代の違いが感じられる。どちらもリファレンスデザインに沿ったレイアウトを採用しているが、映像出力で見ると、GeForce GTX 950はDisplayPort、HDMI、DVI×2と、標準サイズの現行主力端子を備えているのに対し、GeForce GTX 460はmini HDMI、DVI×2となる。

ZOTAC GeForce GTX 950 AMP! Editionの映像出力端子はDisplayPort、HDMI、DVI×2
EVGA GeForce GTX 460 1GBの映像出力端子はmini HDMI、DVI×2。mini HDMIという変換が必要な端子が採用されていたり、端子数も少なかったりと、HDMI主流の現在からすると使いやすいとは言えない

 とくにmini HDMIは今やmicro HDMIよりも採用例が少ない端子になりつつある。もちろん、各社標準HDMI端子への変換ケーブルなどをバンドルしていたが、あまり使い勝手がよいとは言えないだろう。これも、当時のスタンダードがまだDVIだったためだ。現在はHDMIが主流になりつつあるので、HDMIが利用できるディスプレイを導入したタイミングが、もしかしたら当時のビデオカードからの買い替えタイミングと言えるかもしれない。

 もうひとつの補助電源コネクタについては、GeForce GTX 460は6ピン2基、GeForce GTX 950は、ひとつ下のセグメントではあるが6ピン1基だ。

 なお、GeForce GTX 460と同じs工面とのGeForce GTX 960も6ピン1基なので、6ピンひとつが削減された。TDPで見ると、GeForce GTX 460(1GB)は160W、GeForce GTX 960は120Wで、40Wの差がある。GeForce GTX 950はさらに低い90Wとなる。

ZOTAC GeForce GTX 950 AMP! Editionの補助電源端子は6ピン1基。TDPは90W
EVGA GeForce GTX 460 1GBの補助電源端子は6ピン2基。TDPは120Wだ。補助電源端子の向きは今ではあまり見ないカード後部向きだ

性能は2~3倍向上、フルHD・最高画質でPCゲームを楽しむなら最新世代がオススメ

 さて、ここからはそれぞれの世代の環境でパフォーマンスの比較をしてみたい。

 Skylake環境Sandy Bridge環境
CPUCore i7-6700KCore i7-2700K
マザーボードASUS H170 PRO GAMINGASUS P8Z68-V/GEN3
メモリDDR4-2133 8GB×2DDR3-1333 2GB×2
ビデオカードZOTAC GeForce GTX 950 AMP! EditionEVGA GeForce GTX 460 1GB
SSDPlextor M6V PX-256M6V 256GBPlextor M2P PX-128M2P 128GB
OSWindows 10 64bitWindows 10 64bit

 まずは3DMark。DirectX 11のテストとなるFire Strikeのスコアで比較してみよう。GeForce GTX 950を搭載するSkylake環境では6,533ポイント、GeForce GTX 460のSandy Bridge環境は2,315ポイントと、大きな開きが確認できた。とくに、グラフィックススコアで見ると、7,273対2,380となり、3倍の開きが見られた。GT1のフレームレートも、34.05fps対11.14fpsだ。

Skylake+GeForce GTX 950(左)とSandy Bridge+GeForce GTX 460(右)のスコア(3DMark)

 続いてファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク。こちらはDirectX 9またはDirectX 11を選択できる。そこで、DirectX 11の最高品質、1,920×1,080ドットという環境でテストしてみた。

 スコアは7,014対2,758で、2倍以上の開きがある。なお、Sandy Bridge環境の2758は、評価としては「やや快適」だ。ただし、フレームレートを確認すると21.018fpsで、30fpsに満たない。快適とは判定されているが、画面を見る限り、スムーズさには欠ける印象だ。

Skylake+GeForce GTX 950(左)とSandy Bridge+GeForce GTX 460(右)のスコア(ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク)

 メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ。設定は引き続き最高品質、1,920×1,080ドットとした。ベンチマークモードがないので、FRAPSから1分間のフレームレートを計測したところ、59.917対30.550fpsとなった。

 Skylake環境ではほぼ50~60fps前後で、一般的な60Hzの液晶ディスプレイの性能を存分に発揮し、スムーズな描写が得られる。一方、Sandy Bridge環境でも平均30fpsは満たしたものの、時折30fpsを割り込むので、スムーズさに欠けるシーンが見られた。

Skylake+GeForce GTX 950とSandy Bridge+GeForce GTX 460のスコア(メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ)

 ドラゴンクエストX ベンチマークソフト。こちらはDirectX 9ベースのタイトルである。グラフィックス設定は最高品質、解像度は1920×1080ドットで計測した。スコアは、19,456対10,973。こちらでも2倍近いスコア差が確認できた。

 ただし、GeForce GTX 460も、評価としては「すごく快適」である。ドラゴンクエストXのように、比較的軽量なタイトルであれば、Sandy Bridge世代の環境でも最高の画質をフルHDで楽しむことは可能だ。

Skylake+GeForce GTX 950(左)とSandy Bridge+GeForce GTX 460(右)のスコア(ドラゴンクエストX ベンチマークソフト)

 対戦格闘タイトルのウルトラストリートファイターIV。平均fpsで見ると、215.677対118.955fpsだった。これもかなり軽量タイトルであるため、Sandy Bridge環境でも十分だ。

Skylake(左)とSandy Bridge(右)のスコア(3DMark Ice Storm)

 最後はやや重いアクションタイトルのThief。画質設定はVery-High、解像度は1,920×1,080ドットとした。ベンチマークの結果は43対17.4fps。Skylake環境では30fpsを超えるのでスムーズな映像だが、Sandy Bridge環境では画面はカクカクで、プレイするにはかなりキツい。

Skylake+GeForce GTX 950(左)とSandy Bridge+GeForce GTX 460(右)のスコア(Thief)

性能はもちろん使い勝手も進化、ゲームをするなら最新のビデオカードに買換え

 このように、もちろんSkylake環境のGeForce GTX 950は、Sandy Bridge環境のGeForce GTX 460とを比べると、2~3倍のパフォーマンス差がある。Skylake+GeForce GTX 950環境は、メインストリームクラスのゲーマーが楽しむだろうタイトルの多くがカバーできる。

 Sandy Bridge+GeForce GTX 460環境は、確かに負荷の軽めのタイトルならまだ現役で行けるだろうが、少し負荷の高いタイトルの場合は、画質を落としたり解像度を下げることで30fpsあたりがターゲットになる。据え置きゲーム機よりもパフォーマンスが劣るのであればPCでゲームをする意味はかなり薄れる。PCゲームは高い画質、高い解像度、高いフレームレートを実現できてこそなので、無理にこの世代のPCパーツを使い続ける理由はあまり無い。

 また、快適度という点で、最新ビデオカードはとにかく静音性能の向上が目覚ましい。ハイエンドビデオカードなら性能とのトレードオフとして許容できるが、メインストリーム向けカードでうるさいとなると興ざめだ。Sandy Bridge世代を振り返ると、高価なオリジナルクーラーモデルでは静音性が向上してきた頃だが、今回用いたEVGA GeForce GTX 460 1GBのように、性能とコスト志向で動作音が「ヘアドライヤー」レベルの製品も多かった。

 高負荷時で見ると、ZOTAC GeForce GTX 950 AMP! Editionは34dB、EVGA GeForce GTX 460 1GBは52dBと、ここでも大きな開きがあった。実際にゲームを楽しむ際、ゲーム中のオーディオ、サラウンドをより豊かに楽しみたいのであれば、買換えどきと言える。

 こうして見ていくと、性能の大幅な向上、静音性の大幅な向上、時代に合わせた省エネ性能や出力端子など、パーツはそれ自体進化していくとともに、時代に合わせて使い勝手も変わってくる。2011年のモデル、4年という時間でここまで変わるものなのだ。

[制作協力:ZOTAC]

石川 ひさよし