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Sandy世代から大幅にコスパが向上した最新SSD、容量倍で半値以下に

最新 vs 旧型ガチンコ勝負 SSD編 text by 石川ひさよし

(9/17 更新)東芝のNAND「TH58TFG8DDLTA2D」がMLCであることを追記
2015年の最新PCパーツ

 最新プラットフォームと、Sandy Bridge世代のプラットフォームを比較し、現在の最新PCでできること、古いPCではできないこと、パフォーマンスといった点を明らかにしていく今回の企画。

 前々回のマザーボード編、前回のビデオカード編に続き、今回はストレージのSSDにスポットを当ててみたい。

 Sandy Bridgeが登場した2011年頃、既にSSDはハイエンドユーザーを中心にある程度普及しており、接続インターフェースも6Gbps SATAが登場してきた頃だ。

最新 vs 旧型ガチンコ勝負
マザーボード編Sandy世代から買換えで快適に、新旧の性能差は最大2.5倍、ゲームなら流行りのゲーミングマザー
ビデオカード編Sandy世代から買換えでビデオカードも2倍高速に、ゲームをするなら最新モデル

 当時のハイエンドモデルの性能は、現行モデルと比較してもそれなりに高く、まだまだ使える、使いまわせると考えている方も多いことだろう。

 とはいえ、この企画趣旨としては、最新世代と当時モノの違いを明確にし、渋る読者の目を覚まし、悩む読者の肩をポンっと押す内容で進めたい。

今回メインで取り上げるPlextorの定番SSD「M6V」。バリュー向けSSDに属す製品で、容量あたりのコストパフォーマンスに優れている

容量単価が下落、システムドライブだけでなくデータドライブとしての利用も視野に

 冒頭に書いたとおり、Sandy Bridgeが登場した2011年当時もSSDは6Gbps SATA接続だった。当時からシーケンシャルリードに関しては500MB/sに迫り、一部では500MB/sを超えるものも存在した。だからこそ、当時大枚をはたいて買ったSSDがまだまだ現役でイケると考える方が多いだろう。

 もちろん筆者も当時モノを使っている。ただし、NANDフラッシュメモリには書き換え回数の限界がある。使い方次第ではあるが、当時モノなら4~5年もするとそろそろエラーが生じてもおかしくない。現在、およそメインストリームと呼ばれるクラスの製品保証が3年、ハイエンドで5年である。これがひとつの目安になる。

「M6V」も比較対象の「M2P」もともに6Gbps SATA接続の製品。インターフェースで見ると、ここ数年は6Gbps SATAがスタンダードなままだった。

 そのうえ、SSDの故障は兆しがなく突然やってくる。そろそろ寿命に差し掛かる頃だなと感じたら、早めに対策をとり、そのうえで旧ドライブはキャッシュドライブのような、ファイルを保存する以外の用途として活用するのがベターではないかと筆者は考える。

 キャッシュドライブであれば、作業中のデータに影響が出るだけで、ほかのドライブのデータファイルに深刻なダメージを与える可能性は低いからだ。

 さて、6Gbps SATAという接続インターフェースが変わらず、シーケンシャルリードも当時から500MB/sだったとすると、どこが進化したというのかと思うだろう。まずは容量だ。Sandy Bridgeの頃、2011年頃では、SSDの容量と言うと、64~256GBが主流だった。しかし、今や64GBモデルはほとんど見かけなくなり、128GB~2TBというラインナップ。256~512GBがスタンダードとなっている。

 以前であれば、容量が少ないためにSSDはOSなどのシステム用として使用し、これにHDDをデータ用として加える方法が一般的だったが、今はデータを含めてSSDのみで運用することが現実的に可能となってきたのだ。

M6Vの内部に収められた基板。コントローラチップとキャッシュ用のDRAMチップ、NANDフラッシュメモリチップで構成されている。最近はNANDフラッシュメモリのチップあたりの容量が拡大し、チップ枚数が8枚以下のものも珍しくない。

 同時に、容量単価もずいぶんと下がってきた。

 もちろん、SSDにもハイエンドやメインストリーム、エントリーなど、様々なセグメントがあり、それぞれに製品が登場しているが、Sandy Bridge世代の頃は、2万円出して128GBといったあたりだっただろう。今なら2万円出せば256GBでもお釣りが来るし、少し足して512GBモデルが狙える時代だ。

 256GBあればOSに加え、市販のアプリケーションを多数導入したとしてもなお余裕が生まれ、512GB以上あればデータを保存しておく余裕が生まれる。このように、容量ラインナップの拡大、容量単価の下落は、SSDの使い方にも大きく影響を与える。

 容量の拡大にはいくつかの要因があるが、主なところとしてNANDフラッシュメモリの単価の下落や、NANDチップあたりの容量の拡大が挙げられる。

 とくに後者に関しては、「TLC」と呼ぶ技術が登場してきたことが大きい。NANDフラッシュメモリは、1つのセルにいくつの値を格納できるかで、1値ならSLC、2値ならMLCと進化し、3値をTLCと呼ぶ。これにより、チップ面積あたりの容量が拡大していくわけだ。

 NANDフラッシュメモリチップは、プロセスの微細化がCPUなどよりも先に到達することが予想されていたため、このように1セルに多値を格納できる技術開発が進められてきた。とはいえ、NANDフラッシュメモリの場合、書き換え回数の上限がある。

 そのうえで、TLCはMLCよりも、MLCはSLCよりも書き換え回数の上限が低い。ウェアレベリングのように、特定のセルに書き換えが集中しないよう寿命を延ばす技術も進化しているが、それでもTLCは容量単価と書き換え制限の点で、バリュー向け製品を中心に採用されている。

Plextor「M6V」は、容量単価が手ごろなバリュー向け製品だ。採用するNANDフラッシュメモリは東芝「TH58TFG8DDLTA2D」(MLC)で、1チップあたり32GBという大容量のものを採用している。

 今回メインで紹介するPlextorのバリューモデルである「M6V」には、東芝製のNANDフラッシュメモリ「TH58TFG8DDLTA2D」が採用されていた。片面のみの実装で8チップ、これで256GBを実現しているので、1チップあたり32GB程度となるようだ。なお、代理店のリンクスインターナショナルによると、「M6Vシリーズに搭載されている“TH58TFG8DDLTA2D”は、東芝15nm Toggle MLC NAND」とされており、バリューモデルだか寿命も意識した製品になっている。

 また、容量の点では、「3D NAND」や「BiCS」といった技術が登場してくる。これらは、ウェハを縦に積層していくことで、面積あたりの容量を増やしていく技術だ。同じ面積でも、積載することによって容量を拡大していける。

 東芝ではTLCで48層を積載する技術で、量産化のアナウンスがあった。ほかにもNANDに代わる新たな技術も生まれており、そうした技術では、2.5インチSSDサイズで10TB以上の容量が実現できると言う。こうなると、映像データのようなファイルの大きなものまでSSDに保存していく時代が近づいてきていると言えるだろう。

速度面では実用的な部分が強化されてきたSSDSkylakeでサポートされる新たなインターフェースにも注目

Plextor M6Vでは、Silicon Motionの「SM2246EN」コントローラチップが採用されていた。Silicon Motion製コントローラチップは、ここ最近のエントリー向けモデルで採用例が増えてきている。SM2246EN自体は、SLCやMLCおよびTLCにも対応する

 速度の面では、シーケンシャルリードこそ500MB/sを超えたあたりから進歩が緩やかになっているが、ハイエンドモデルを中心にシーケンシャルライトや、4Kリード/ライトといった部分の速度が向上してきた。

 実際にPCを使う場合、シーケンシャルリード/ライトの割り合いは少ない。むしろ、4Kリード/ライトなどより小さなデータを扱うほうが多いため、より実用的な性能が向上してきたのだと言えるだろう。

 こうした、速度面での向上は、NANDフラッシュメモリ自体の高性能化に加え、コントローラチップの進化が挙げられる。コントローラチップは、CPUやGPUのように毎年新製品が出てくるわけではないが、それでもおよそ2年毎に新しいチップが登場している印象だ。

PCI Express拡張カード型の「M6e Black Edition」と、M.2タイプの「M6e M.2」。SATAの上限を超える高速SSDはPCI Express接続がポイントとなってくる(M.2にもSATA接続のものがあるので、購入時はここがポイント)
M6e Black Edition 256GBモデル
M6e M.2 128GBモデル

 TLCのように新しいNANDフラッシュメモリ技術に対応するため、あるいはより大容量のNANDフラッシュメモリチップに対応するためというのが大きな機動力だ。そして最近では、より新しい接続規格に対応するためにも、新たなコントローラチップが登場してきている。

 では最後に新しいSSDの接続規格について説明しておこう。

 最新世代のマザーボードでサポートされるのが、M.2スロットやSATA Expressポートなどだ。M.2はHaswell世代あたりからマザーボードへの本格採用が始まった。接続インターフェースとしてはSATAとPCI Express接続をサポートしている。

 PCI Express接続の場合、最大Gen3 x4接続が可能で、SATAの6Gbpsを大きく上回る32Gbpsの理論帯域を実現する。ただし、Haswell世代ではスロット側もPCI Express Gen2 x2接続が中心で、M.2 SSD側も6Gbps SATA接続の製品のほうが多かった。これが、Skylake世代ではスロット側がPCI Express Gen3 x4接続に、M.2 SSDでもPCI Express接続の製品が本格的に登場してくる見込みとなっている。今年がM.2の本格普及する年になるだろうと見られている。

 一方のSATA Expressは、6Gbps SATAを2つ束ね、そこにPCI Express接続可能な専用コネクタを加えたポート形状になる。ただし現在のところストレージ製品は登場していない。

 デモンストレーションとしてSATA ExpressのHDDは見られたが、昨今の動向を見ると、ケーブル接続できるPCI Expressとして、USB 3.1をケースの前面に追加するような利用方法が先行している。SSDに関して言えば、本命はM.2だろう。

 もうひとつ、「NVMe」モードについても紹介しておこう。これまで、ストレージを制御するインターフェースは、IDEモード、AHCIモードと進化してきたが、NVMeはこれをPCI Express接続に最適化したものだ。

 既にエンタープライズ向けのPCI Express拡張カード型SSDや2.5インチ形状SSDで採用されはじめている。なお、2.5インチ形状のモデルはコネクタにSFF-8639を採用しており、M.2スロットに「U.2アダプタ」を接続することで利用可能になる。このような最新のSSDとインターフェースに対応できるのは、Skylakeプラットフォームの大きな魅力だ。

現行モデルは4Kの速度が高速、トップスピードを求めるなら新世代インターフェース対応製品

 では今回も、Skylake世代の環境と、Sandy Bridge世代の環境を用意し、最新SSDと当時モノのSSDの性能差を明らかにしていきたい。

 Skylake環境Sandy Bridge環境
CPUCore i7-6700KCore i7-2700K
マザーボードASUS H170 PRO GAMINGASUS P8Z68-V/GEN3
メモリDDR4-2133 8GB×2DDR3-1333 2GB×2
ビデオカードZOTAC GeForce GTX 950 AMP! EditionEVGA GeForce GTX 460 1GB
SSDPlextor M6V PX-256M6V 256GBPlextor M2P PX-128M2P 128GB
OSWindows 10 64bitWindows 10 64bit

 ストレージ性能を計るベンチマークはそこまで多くはないので、ここでは代表的な2つのベンチマークを用いて検証していこう。用いたのは、「CrystalDiskMark」と「Atto Disk Benchmark」だ。

 まずはCrystalDiskMark v5.0.2。当時のハイエンドモデルであるM2Pは、既にシーケンシャルリードで500MB/sを超えており、今現在使っていても速さを感じる。

Skylake(左)+Plextor M6VとSandy Bridge+Plextor M2P(右)のスコア(CrystalDiskMark)
2011年代当時、書き込み速度の速さなどから人気を集めたPlextor M2Pシリーズ。
発売時の価格は128GBモデルが2万円前後だった。

 ただし、最新のM6Vは、エントリー向けモデルながらシーケンシャルリードで560MB/sを超え、M2Pを上回った。もちろんそれだけではない。4K Q32T1のように、ネイティブコマンドキューイングなどが使える環境での4KパフォーマンスではM2Pが200MB/s台なのに対し、M6Vは300MB/s台にのせている。

 結果を見れば、全項目でM6Vの圧勝だ。同時に、256GBモデルのPX-256M6Vの実売価格はわずか12,000円前後でしかない。当時128GBのPX-128M2Pは2万円近くした記憶がある。より安く、より速く、より大容量となれば、買い換えメリットは大きいと言えるだろう。

 続いてATTO Disk Benchmarkの結果を見ていこう。

 こちらは、転送サイズを順次拡大していくことで、サイズ毎の転送速度の特性を見ることができる。基本的には似通ったグラフとなるが、やはりM6Vのほうがどのサイズ領域でも転送速度が速い。

 そのうえで、0.5KB~8KBといった小さなサイズ領域で、M6Vのほうが場合によっては2倍近い転送速度が記録された。それだけ実用サイズ領域でのパフォーマンスが高いわけである。

Skylake(左)+Plextor M6VとSandy Bridge+Plextor M2P(右)のスコア(ATTO Disk Benchmark)

 ほか、参考までに、PCI Express拡張カードモデル、M.2モデルの転送速度も見ていこう。

 いちおう、今回用意した「M6e Black Edition」、「M6e M.2」とも、PCI Express Gen2 x2接続なので、世代としては第1世代モデルと言える。COMPUTEX TAIPEI 2015では、より高速な次世代モデルが展示されていたので、今後の動向に期待だ。

M.2タイプの「M6e M.2(128GB)」(左)とPCI Express拡張カード型の「M6e Black Edition(256GB)」(右)のスコア(CrystalDiskMark)。ともにSkylake環境で検証。
M.2タイプの「M6e M.2(128GB)」(左)とPCI Express拡張カード型の「M6e Black Edition(256GB)」(右)のスコア(ATTO Disk Benchmark)。ともにSkylake環境で検証。

2.5インチSSDは容量/コスト面で向上、速度を求めるならPCIe/M.2のSSD

 SSDに関しては、速度的なパフォーマンス面だけを見ると分かりづらい結果となったかもしれない。Sandy Bridge側として用意したM2Pは、当時のハイエンドであるため、元々パフォーマンスが高かった。一方のM6Vはバリューモデルというハンデもある。

 ただしそれでも4Kのパフォーマンスやライトのパフォーマンスが向上しているため、ちゃんと差は現れている。そのうえで、容量に関しては、当時は128GBクラスが主流、現在は256~512GBクラスが主流と倍増。価格も同容量で比較すれば半値以下だ。

 とくにSSDは、その性質上、全容量の半分ほどを空けておくのがパフォーマンスを最大にする秘訣と言われている。ベンチマークなどでは測りにくい部分ではあるが、容量が増えるというのはそれだけで性能向上に繋がると言ってもいいだろう。PCを使い続けていくと、どうしてもデータが増えていく。低容量のSSDをお使いの方は、定期的にデータの断捨離を行っているかと思われるが、大容量モデルが4年前の半額以下で買える今なら、その手間を減らすこともできる。

 繰り返しとなるが、SSDには書き換え回数の寿命がある。それはHDDと比べるとかなり短い。ブラウザなどのアプリケーションや、とくに古めのOSを使っている場合、設定をしなければキャッシュがSSDに置かれてしまうことがある。知らないうちに、SSDの書き換え回数が上限に迫っているということも起こり得る。そうした観点からも、SSDの寿命に関しては、ある程度把握しておくことが望ましい。その日が突然やってこないよう、SSDはある程度で見切りをつけることが大事だと筆者は考えている。

 4年という歳月は、そうした意味でも、そろそろ買い替えどきではないだろうか。コストを抑えるならM6Vのようなバリューモデル、長く使いたいならハイエンドモデル、そして新たなインターフェースにも同様にハイエンドモデルとバリューモデルが用意されている。そのPCに合ったSSDを選んでみてはいかがだろうか。

[制作協力:Plextor]

石川 ひさよし