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8TB×5台=40TBが「手に届く夢」に!「レビューの余り」で構築してみた

超大容量ドライブをPCで実現 text by 石川ひさよし

 3月に掲載した「8TB HDD」テーマの企画記事だが、その際大量の8TB HDDが集まった。最近入手しやすくなったとは言え、8TB HDDが何台も手元にあるという状況は滅多に無い。せっかくなので、かねてより試してみたかった「超大容量ドライブの作成」をやってみた。

 先日10TB HDDが発売され、8TB HDDの「店頭で買えるドライブとしては最大容量」という記録は更新されてしまったが、「手に届く未来」として参考にして貰えれば幸いだ。

8TB×5台による超大容量ドライブ構築の夢

 今回作ったのは8TB×5台で合計40TB。結果から先に紹介しておくと、今回のドライブ構築は何ら問題なかった。もちろんOSやUEFIが大容量ドライブサポートしていることが必須であるため、最新ハードウェアが前提ではあるが、ハードルは低いと言えるだろう。

 環境についていくつか説明しておこう。用意したのはごく無難にIntel Z170チップセットを搭載したマザーボードとWindows 10 Pro 64bit版を組み合わせた環境だ。

【今回の検証環境】

■スペック
CPU:Core i7-6700K(4GHz)
マザー:GIGABYTE GA-Z170N-Gaming 5
メモリ:CFD Panram W4U2400PSN-8G(PC4-19200 DDR4 SDRAM、8GB×2)
SSD(OS起動用):Micron Crucial BX200 CT480BX200SSD1(Serial ATA 3.0、TLC、480GB)
データHDD:Seagate Desktop HDD ST8000DM002(7,200rpm、8TB)×1
データHDD:Seagate NAS HDD ST8000VN0012(7,200rpm、8TB)×2
データHDD:Seagate Archive HDD ST8000AS0002(7,200rpm、8TB)×2
電源:Seasonic SS-1000XP(80PLUS Platinum、1,000W)
OS:Windows 10 Pro 64bit版

 まずマザーボードはMini-ITXのGIGABYTEの「GA-Z170N-Gaming 5」とした。Mini-ITXマザーボードでは、Serial ATAポート数が削られている製品もあるが、本製品はチップセットがサポートする6ポートすべてが利用できる。

 なお、チップセットによってはSerial ATAポート数やRAIDへの対応可否も異なるし、ハードウェアRAIDでは、チップセットのSerial ATAポートと、別チップによるSerial ATAポートは足して混在させることができない。ストレージ特化PCを自作する場合、こうしたポイントを確認するのが重要だ。

今回用意したGIGABYTE「GA-Z170N-Gaming 5」はMini-ITXながらSerial ATA 3.0ポートを6基搭載。Mini-ITXでは4ポートしか搭載しない製品も多いので要注意
システムSSDと合わせて6ポートすべてが埋まる計算

 続いてHDD。これはたまたまだが、用意できたHDDが「5台」というのはちょうどよい数とも言える。LGA1151の場合、チップセットの仕様で6ポートのSerial ATAを備えるマザーボードが多いが、これに別に1台システムドライブを用意するとちょうどすべてのポートが埋まる。つまり、ストレージ特化PCを組む場合の現実的な構想であるわけだ。

本来なら同型番で揃えるのがよいが、今回はあくまで検証。ストレージ特化PC構築を目指す方は同型番で揃えてほしい

 なお、集まった機材の都合により違うシリーズのHDDが混在する形となったが、本来RAIDを構築する場合は同じ製品シリーズの同じ型番を用意するのが望ましい。今回は検証目的だったためそのまま進めたが、実際にストレージ特化PCを運用する場合はトラブルの元になりかねないので避けたほうがよい。

 そして電源。今回は手持ちの機材から1,000Wの電源を使ったが、選択のポイントは出力だ。HDDは、電源投入直後に始まるモーターのスピンアップ時に最も消費電力が高い。そしてHDDの仕様を見ても、最大消費電力は記載されていることがまずない。記載されているのは平均消費電力ばかりだ。平均消費電力をベースに電源の出力を選んでしまうと、イザという時に足りず、不具合の原因になることも考えられる。最近ではHDDも低消費電力がトレンドとなっているし、スピンアップのタイミングをずらすような仕組みもあるので、深刻に悩むほどではないが、データを失う可能性を考えれば余裕があったほうが精神衛生上よいだろう。

 ではHDDの最大消費電力はどのように見積もればよいだろうか。これはNASキットが参考になる。NASキットは、ユーザー自身がHDDを装着していく仕組みであるため、余裕を持った電源出力を用意している。例えば4ベイモデルの電源を見ると90W程度であることが多いようだ。90Wを4台でざっくり割ると20W強≒25Wと見積もればよいだろう。今回は5台なので125Wほど見積もれば安心だ。なお、これは余裕を見た値なので、HDDを除くパーツで最大消費電力を見積もった上で、通常の電源出力を計算するように2倍し、さらにプラス125Wすればよい。あるいは、HDDを除いた最大消費電力が400Wを超えるシステムでは800Wクラスの電源を選んでいるだろうから、125W分の余裕は織り込み済みと考えることもできるから800Wのままでよいだろう。

 最後のOSについては言うまでもないことだが、大容量ドライブを接続するなら64bit版OSを選ぼう。

今回の検証環境の全貌

カンタンになったUEFIからのRAID設定

 PCの組み立てと、5台のHDDの接続が完了したら、通電してUEFIセットアップ画面に進む。BIOSの時代には、BIOSステップの直後に「Ctrl+I」キーを押すなどでRAIDセットアップを行っていたが、UEFIではUEFI画面内にRAIDのセットアップ項目が設けられている。

 今回使用したGA-Z170N-Gaming 5の場合は、まず「Peripherals」の「SATA Configuration」内の「SATA Mode Selection」の項目を「AHCI」から「RAID」に切り替え、「Peripherals」直下の「Intel Rapid Storage Technology」の項目からRAIDのセットアップを行う。

 「Intel Rapid Storage Technology」では、ボリュームの名前、RAIDレベル、RAIDのメンバーに加えるドライブを設定し、ストライプサイズと容量を決めていく。今回選んだRAIDレベルは「RAID 0」だ。RAID 0は転送速度の向上に効果的なうえ、同時にドライブ容量をムダにしないため、今回の企画趣旨に最適という理由から選んだ。RAIDのメンバー選択は、該当ドライブにカーソルを合わせてスペースキーを押し、「x」印を付けていくだけ。ストライプサイズは128KBを選択したが、これはただの勘なので、お時間のある方は、いろいろと試して最適なサイズを導き出すのもよいだろう。

まずは「AHCI」から「RAID」へ
次に「Intel Rapid Storage Technology」からRAIDセットアップに移る
RAIDに関する各種設定を行ったうえで「Create Volume」を押せば準備完了。UEFIではRAIDセットアップもかなり簡単かつ分かりやすくなっている

Windows 10上から40TBドライブを認識! 共有ドライブとしても利用可能!

OSインストールおよびドライバ充当直後のディスクの管理画面

 システムSSDにOSをインストール、ドライバなどを導入したら、「Windows+X」キーでメニューを表示し、「ディスクの管理」を確認してみよう。通常であればRAIDボリュームを自動認識し、ディスクの初期化を促すウインドウが表示されるが、ここではあえてキャンセルしてその状態を確認してみた。未割り当てのRAIDボリュームが37260.17GBとして認識されているのが分かる。

 それではディスクの初期化を行う。パーティションスタイルは「GPT」を選択する。これは「2TBの壁」の際と同様、大容量ドライブを構築する際の基本だ。初期化が完了したら、続いてボリュームを作成する。1パーティションとして使うなら、「新しいシンプルボリュームウィザード」で作成すればよい。フォーマットはNTFSとしている。こうして無事37260.04GBのボリュームが作成された。これをボリュームのプロパティから確認すると、容量は40,007,173,750,784バイト、36.3TBと表示された。

GPTで初期化を行う
NTFSでフォーマット
フォーマット中
無事40TB(36.3TB)のボリュームが作成された
インテル ラピッド・ストレージ・テクノロジーの管理画面
CrystalDiskMark 5.1.2 x64の測定結果
試しにテストしたところ、シーケンシャルリード900MB/sec超の爆速に。しかし3回目には600MB/sec台になるという不安定な結果。混在環境なのでイマイチ計測結果に信ぴょう性がないが参考値として紹介しよう
別のPC(Windows 8.1 Pro)から今回構築したPCの40TBの共有ドライブを参照したところ、そのまま40TBのドライブとして認識された

 さて、こうして無事40TBのボリュームを作成することができたが、ふと思い出したのがNASにおける「16TBの壁」。NASキットでも、機種によっては1ボリュームの最大サイズが16TBに制限されることもある。そのような場合、大容量HDDを複数台組み込んでも、1つのドライブとしてではなく、複数のドライブに分割されて利用することになるようだ。

 これに対して、今回のWindowsベースのストレージ特化PCでは、40TBのボリュームに対して共有設定をしたところ、そのまま40TBのネットワークドライブとして認識できた。この点は、WindowsベースのネットワークストレージPCを構築するメリットになるかもしれない。

100TB超の巨大ドライブもハードウェア的には可能な時代へ

 このように、Intel Z170マザーボードとWindows 10という組み合わせでは、すんなりと超巨大ボリュームが作成できた。しかも共有ドライブとしても有効のようだ。4Kビデオカメラが普及し、4Kホームビデオが当たり前になってきた時代、そのストレージ先として、こうした超巨大ボリュームも現実的ではないだろうか。もちろん、実際の構築ではRAID 5などで、冗長性を持たせるのがよいだろう。

 なお、企画当初は8TB HDD×12台というさらに壮大なネタを考えていたため、Intel X99マザーボードとLGA2011-v3 CPUも仕込んでいた。機材の都合でボツにはなったが、こちらなら5台のHDDを接続してもポートに余裕があり、12台を接続できれば計算上8TB HDDで96TB、10TB HDDなら120TBとなる。100TBクラスの超ストレージ特化PCを組みたい方は、Intel X99マザーボードでの構築も検討してみて欲しい。

当初は8TB×12台の96TBを目論んでいたが今回は断念。合計12ポートのSATAが使えるASUSマザーボード「X99-DELUXE/U3.1」も用意していたのだが………
5台のHDDを接続してもこのとおりポートは半分も埋まらない。いちおうIntel Z170チップセットとは異なる制限があるようだが、ハードウェアRAIDがダメならソフトウェアRAIDという手段もあるので夢の超ストレージ特化PCにチャレンジして欲しい

[制作協力:Seagate]

石川 ひさよし