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ビデオカードはクーラーで選ぶ時代に、
GIGABYTE「WINDFORCE」をMaxwellで試してみた

text by 清水 貴裕

GV-N75TWF2OC-2GI

 Keplerコアを搭載するGeForce GTX 600シリーズより導入された、自動OC機能ともいえるGPU Boost。

 温度や消費電力に余裕がある場合にGPUの動作クロックを引き上げるという機能だが、高いブーストクロックを維持するためには、ビデオカードの冷却が大変重要になってくる。冷却力や静音性の向上以外に、「性能を引き出す」という役割がGPUクーラーに加わった今の時代において、高性能なGPUクーラーは必需品ともいえるのだ。

 そこで今回、GIGABYTEが誇る高性能GPUクーラー「WINDFORCE 2X」を搭載したGeForce GTX 750 Tiカード「GV-N75TWF2OC-2GI」での性能をチェックしてみた。WINDFORCEの特徴をおさらいしつつ、その性能を検証していきたい。

GIGABYTEの誇るビデオカードクーラー「WINDFORCE」の特徴は?

GV-N75TWF2OC-2GIが搭載するWINDFORCE 2X
空気をよりスムーズに流すためにファンは約15℃傾斜している。
S字に湾曲した銅製のヒートパイプを採用。GPUコアに直接触れる構造なので熱伝導が高そうだ。4枚のメモリチップの内の上側の2枚も冷やす構造になっている。
エアフローの模式図

 まずはWINDFORCEの特徴をチェックしていこう。

 最新のWINDFORCEは大きく分けると2種類に分けられる。具体的に言うならば、今回テストしたGV-N75TWF2OC-2GIに搭載されているデュアルファン仕様のWINDFORCE 2Xや、ファンを3基搭載するWINDFORCE 3Xなどがある。ヒートパイプの仕様や、対応TDPなどでさらに細分化されるが、全てのモデルで共通していることがある。それは「気流のコントロール」を意識したデザインだ。

 オリジナルクーラーというと、高性能なPWMファンがまず頭に浮かぶと思う。当然、WINDFORCEも高性能なPWMファンを搭載しているのだが、ただ搭載しているだけではない。注目してほしいのは、その取り付け方法だ。

 WINDFORCEのファンは15℃ほど傾斜させて取り付けられているが、これには大きな意味がある。ファンに角度を付けることによって、エアフローがよりスムーズになり、ファンの回転数以上の高い冷却力を実現できるのだという。当然ファンの回転数を低く抑えることが可能なので、静音性も抜群という訳だ。

 ただファンを傾斜させて取り付けるだけでは気流のコントロールが不十分なので、ヒートシンクのデザインにもこだわっているのがWINDFORCEの特徴のひとつ。ファンの発生するエアフローに合わせて、フィンの角度や形を最適にデザインすることではじめて、冷却力と静音性を高次元で両立できるのだそうだ。

【3連ファンの「WINDFORCE 3X」】
3つのファンを搭載している
「WINDFORCE 3X」のフィン、ファンのエアフローに合わせて、微妙に角度が付いているのが分かる。
「WINDFORCE 3X」が搭載するコンポジットヒートパイプの解説

 なお、上位モデルが搭載するWINDFORCEのフラッグシップモデル「WINDFORCE 3X」にはワンランク上の冷却技術が導入され、TDP 450Wにも対応する。具体的なポイントの1つは、「コンポジットヒートパイプ」と呼ばれる、ウィック構造の高性能なヒートパイプ。内側に細かい溝が入った、ユニークな構造のヒートパイプで、熱を輸送する作動液の流れやすさと伝達性を高め、一般的なヒートパイプよりも優れた熱伝導性が特徴となっている。

 もうひとつは「Triangle Coolテクノロジー」というGIGABYTEの独自技術。これはヒートシンクの受熱部分に熱伝導性に優れた三角形の金属製ベースを設けるというもの。受熱面積を広め、GPUコアからフィンへの熱移動をよりスムーズに行うことができるという。

 気流の流れをコントロールするこだわりのデザインと、冷却技術で生まれたのが「WINDFORCE」というわけだ。

Maxwellコアの最新GPU「GeForce GTX 750 Ti」でテストしてみた出荷時点でもOC仕様

カードの裏面。基板サイズはリファレンスと同じ。

 今回テストするカードは、WINDFORCE 2Xを搭載するGIGABYTE製GeForce GTX 750 Tiカード「GV-N75TWF2OC-2GI」だ。

 まずはカードの仕様から確認していこう。

 コアクロックはリファレンスモデルの1,020MHzから1,215MHzへ、ブーストクロックは1,085MHzから1,294MHzへと大幅にオーバークロックされている。過激なまでのチューニングの代償として、補助電源に6PINのコネクタが1本搭載されているが、約200MHzのオーバークロックが施されたカードを安定駆動させるためには当然の選択だ。

 ディスプレイ出力は2系統のHDMI、DVI-DとDVI-Iの4つを備える。2系統のHDMIを使用した4K(60Hz)解像度(最大4,096×2,160ドット)での出力にも対応しているのが特徴だ。

 GPUクーラーには、デュアルファン仕様のWINDFORCE 2Xを搭載。ファンを2基搭載するからか、大胆にも4cm程基板からはみ出している。エアフローのためにファンを傾斜させたデザインに加え、銅製のヒートパイプを搭載するなど、見るからに冷却力は高そうだ。

ディスプレイ出力として、HDMI×2、DVI-D×1、DVI-I×1を備える。
OCモデルということもあり、補助電源コネクタとして6PINを1基搭載。
SKhynix製のメモリチップを搭載。「H5GC4H24MFR」と刻印がある。
サイズこそリファレンスカードと同じではあるが、Ultra Durable2に準拠しており実装部品の品質は段違い。
【リファレンスカード(比較用)】
GeForce GTX 750 Tiのリファレンスカード

ベンチマーク&ゲームプレイでの違いを確認

GV-N75TWF2OC-2GIのGPU-Z画面。GPUクロックは1,215MHzで、ブーストクロックは1,294MHzとなっている。ブーストクロックの実測値は最大で1,345.5MHzだった。
リファレンスカードのGPU-Z画面。GPUクロックは1,020MHzで、ブーストクロックは1,085MHzとなっている。ブーストクロックの実測値は最大で1,149.7MHzだった。

 まずは3DMark Fire Strikeを実行して、GV-N75TWF2OC-2GIのパフォーマンスをチェックした。検証環境は、CPUがIntel Core i7-4770K、マザーボードがGIGABYTE GA-Z87X-UD3H、メモリがG.SKILL F3-19200CL9Q-16GBZHD(DDR3-1600、2枚のみ使用)、OSがWindows 8.1 Pro 64bit、室温は23℃。

 結果は、GeForce GTX 750 Ti搭載リファレンスカードが4,049ポイントで、GV-N75TWF2OC-2GIは4,488ポイント。約1割スコアが向上している。

 また、GPU Boost時の実際の動作クロックは、GPU-Zを用いた実測で1,345.5MHzを記録した。これは、公称スペックの1,294MHzを50MHz程上回る。冷却力の恩恵か、クロックがドロップせずに安定していたのが印象的だった。

 ベンチマーク中のGPU温度は、リファレンスカードが60℃を記録したのに対し、GV-N75TWF2OC-2GIは最大48℃までの上昇。ファンの回転数が低いままなので、静音性もかなり高い。

【3DMark Fire Strikeの結果】
【温度の状態】
【WINDFORCE搭載モデルのテスト結果】
GV-N75TWF2OC-2GIで3DMark Fire Strikeを実行した際のスコア。リファレンスカードから1割程スコアが伸びている。
【FF XIVベンチマークの結果】
【バトルフィールド4のFPS】

 次に「FINALFANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」を用いて、より実ゲームに近い環境でのテストを行った。画質はデスクトップPC(高品質)、解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)のフルスクリーンモードに設定し、3回連続で実行した内の最大値をスコアとした。リファレンスカードのスコアは6,576ポイントを記録し評価は「とても快適」。対するGV-N75TWF2OC-2GIは、7,145ポイントを記録。7,000点を超えたことによって、評価は最も高い「非常に快適」になった。これは実際にゲームをプレイするために購入する人にとっては、大きなメリットとなるだろう。

 実ゲームでの挙動は、Battlefield 4をプレイしてチェックしてみた。こちらも解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)。「快適なゲーミング環境」ということで、液晶ディスプレイは120Hz対応のものを利用した。

 まず最初に、FPS値の測定が可能なソフトウェア「Fraps」を用いて、FPSの最小値、最大値、平均値の計測を行った。描画設定は「中」で、測定を行うシーンは、シングルキャンペーンの「SHANGHAI」冒頭のデモシークエンス。開始からの60秒間を3回計測し、その平均値を求めた。

 リファレンスカードの平均FPS値は、76.28FPSを記録。値としては「十分」とも言える数値といえる。

 だが、120Hz液晶を使ってゲームをする場合は、この数字はやや物足りない。というのも、120Hz表示ならではの「動きの滑らかさ」は80FPSがひとつの基準になっており、80FPSを超えることで「快適な滑らかさ」を感じやすくなるからだ。

 さらにフレームレートが70FPS付近になると、120Hz液晶による快適さは消えていくのだが、リファレンスカードの場合、横に動いている敵を視点移動で撃つようなシチュエーションや、急激な視点移動などで違和感を感じることがあった。

 対するGV-N75TWF2OC-2GIの平均FPS値は85.22FPSを記録。最小値は79FPSと、リファレンスカードの平均値よりも高い値を記録した。

 今回の例ではちょうど「80FPS超え」になったことで、120Hz液晶を存分に活かせた印象。先述したようなシチュエーションでも、リファレンスカードより狙いをつけやすい感覚だ。

 クロック向上によるFPSの変化は、画質設定や解像度で様々に変化する。特にこのクラスの製品は高画質設定でのパフォーマンスアップは望みにくいが、製品に適した設定を行えば、クロックアップで大きな効果が望めることがわかると思う。

さらなるOCもテストさすがに余力はわずかだが、リファレンスカードと比べると……

GV-N75TWF2OC-2GIを1,446MHzまでオーバークロックした際の設定。電圧は+0.1875となっているが、定格でも完走可能。これ以上電圧を入れると、パワーターゲットの上限に達してしまう。
オーバークロックしてBattlefield 4をプレイした時の設定。3DMarkよりも消費電力が増えるからか、+80MHzの1426MHzが安定して動作する限界値だった。

 さて、「冷却力をウリとするWINDFORCEクーラーを搭載するとなると、オーバークロックも得意なはず」と思い、こちらも軽く試してみた。

 独自ユーティリティのOC GURU IIを使用して、動作クロックを+100MHzに設定し、3DMark Fire Strikeを実行。電圧が定格のままだが余裕で完走。スコアは200ポイント程向上し、4,686ポイントを記録。3連続で実行してもGPU温度は53℃までしか上昇しなかった。ファンの回転数がほとんど上昇していないのに、きちんと冷却できているのは素晴らしい。

 これならゲームもいけると思い、Battelfield 4を立ち上げるも、シングルキャンペーンが開始されると画面には何も映らない… そして流れていく音声…

 GPU電圧を昇圧するも症状は逆に悪化。ついにはフリーズしてしまう。どうやらパワーターゲットの上限に達しているようだ。値をユーティリティ上で100%から可変できないあたり、何らかの制限が入っているようだ。

 粘りに粘っても駄目だったのでクロックを+80MHzに設定すると、ゲームは何事もなかったかのように動き出した…(最初からそうしとけと言うツッコミはなしで)

 この時の設定は、電圧はAUTOでブーストクロックは1,426MHz。FPS値は最大値が97FPS、最小値が83FPS、平均値が89.35FPSだった。全体的に4FPS程の向上が見られたが、体感上では違いを感じなかった。

【WINDFORCE搭載モデルのOC結果】
GV-N75TWF2OC-2GIを1,446MHzまでオーバークロックした際の3DMark Fire Strikeのスコア。100MHzのオーバークロックで総合スコアが約200ポイント上昇した。
リアレンスカードのGPUクロック設定値は最大で+135MHzとなっている。補助電源がないからか、明らかに制限されている。

 念のためにリファレンスカードでもオーバークロックを行ってみたが、結果は散々。なんと、GPUクロックの設定が+135MHzまでしか用意されていなかったのだ。3DMark Fire Strikeは完走したものの、スコアは4,333とGV-N75TWF2OC-2GIの定格状態にも及ばない結果となった。

 ちなみに、この1,285MHzでの動作時でGPU温度は最大62℃。WINDFORCE搭載モデルは1,446MHz動作時でも最大53℃にとどまっており、リファレンスカードの設定上限がもっと上だったとしても、余力がどこまであるかは正直疑問だ。

【リファレンスカードのOC結果(比較用)】
リファレンスカードはオーバークロックしても、GPUクロックの設定上限が低いため、スコアが伸びない。

 というわけで、「WINDFORCE」を搭載したGeForce GTX 750 Tiカードの実力を見てみたが、リファレンス仕様にない補助電源コネクタを搭載した上で、かなりカリカリにチューニング、確実にワンランク上の性能を発揮している。

 省電力性よりも、快適なゲームプレイを重視する人や、リファレンスのGeForce GTX 750 Tiでは物足りない人にとっては、かゆい所に手が届く絶妙な1枚といえるだろう。

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清水 貴裕

GIGABYTE GV-N75TWF2OC-2GI