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「自動製造で性能向上」、ASUSにビデオカード生産の最新技術を聞く
品質向上のための「自動製造」、OSまで最適化する新型ユーティリティ text by 石川ひさよし
(2015/7/13 00:05)
COMPUTEX TAIPEI 2015のASUSブースのビデオカード展示エリアでは、同社の新技術を複数採用する「STRIX GTX 980 Ti」の展示が行われていた。
新技術の中でも、世界初の試みという「完全自動製造技術」(メーカー)の「AUTO-EXTREME Technology」は強くアピールされており、この技術を採用するモデルはオーバークロック耐性が高く、長寿命だという。
ASUSが革新性に自信を見せる「AUTO-EXTREME Technology」とはどういった技術なのか、担当者に話を聞くことができたのでその模様をお届けしよう。
また、大口径ヒートパイプ採用の新型クーラーや、OS環境も最適化可能な新型ユーティリティなど、そのほかの新技術も合わせて紹介する。
「オーバークロック耐性向上・長寿命化」をうたうAUTO-EXTREME Technology基板製造は「完全自動化」に進化
――新旧の基板が並べられて違いがアピールされていますが、具体的にどのような点が進化したのでしょうか。
[David氏]STRIX GTX 980 Tiの基板の製造では、「AUTO-EXTREME Technology」を初採用しています。
ビデオカードの製造では、組み立て作業の機械化が進んでおりますが、チップ実装などASUSでもまだ30%ほど手作業による工程が残っておりました。手作業が入る場合、個体差や不良が発生することを完全に無くすことは困難です。そこで、すべての工程を見直し、「100%機械生産」を実現するための技術「AUTO-EXTREME Technology」を開発しました。
こちらの2枚の基板は、一つは従来のビデオカード基板で、もう一つが今回のAUTO-EXTREME Technologyを取り入れたビデオカード基板です。外観からでも、従来基板とAUTO-EXTREME Technologyによる基板は判別できます。
まずは表面側で、チョークコイルの列が整っているところが挙げられます。機械生産では、決められた位置に決められた部品を正確に実装することが可能で、品質のばらつきを非常に低く抑えることができます。
次にカードの裏面では、ビデオカード表面にチップを実装した部分の裏側で、チップの脚が飛び出ることなく平らで、ハンダが盛り上がっているようなこともありません。
AUTO-EXTREME Technologyのメリットとしましては、生産効率の向上のほか、ヒューマンエラーの解消などが挙げられますが、それだけではありません。
手作業では、チップ一つにつき、ハンダごてで熱を加えることになります。チップ数が多いハイエンドカードともなると、熱をかなりの回数加えることになってしまいます。AUTO-EXTREME Technologyでは、こうした熱を加える回数を大きく削減することができ、部品レベルでのオーバークロック耐性を向上させることに成功しました。
また、ハンダ用フラックスの不使用化にも成功したことから、基板へのホコリの付着を抑えたり、部品の酸化を最小限に抑えたりすることができます。結果、製品寿命という点でも、従来基板から大きく向上することになります。
マザーボードなど、他の製造部門でもAUTO-EXTREME Technologyを採用するかは未定となっていますが、ビデオカードではSTRIX GTX 980 Ti以外にも採用モデルを増やしていく予定です。
3連ファン+極太ヒートパイプを搭載するSTRIX GTX 980 Tiのクーラー
――「STRIX GTX 980 Ti」に搭載されているクーラーは、これまでのSTRIXシリーズものと大きく変わりました。このクーラーの特徴について教えて下さい。
[David氏]同じGM200コアのGPUとしてはGeForce GTX TITAN Xがありますが、そちらは現在のところNVIDIAからオリジナルクーラー(空冷)の搭載許可が下りていません。これに対しGeForce GTX 980 Tiはオリジナルクーラーの搭載が可能です。そこで、DirectCU技術をベースに、GeForce GTX 980 Tiに最適化したクーラーを設計しました。
今回のクーラーは「DirectCU III」として、9cm径ファンを1基増やし、ブレードにもわずかなねじれを加えることで風を直下に集中させ、風圧を高めています。また、ヒートパイプは10mm径のものが2本、8mm径が1本、6mm径が2本という計5本を組み合わせて使用しています。10mm径のヒートパイプを2本使用したのはASUSでも初のことです。
8mm径10mm径のヒートパイプは通常のヒートパイプの2倍となる1本あたり70~100Wぶんの熱を輸送できます。一般的な6mm径のものは1本あたり40~50Wぶんの熱を輸送できます(計算すると熱輸送は理論上最大370W程度あると見積もることができる)。
DirectCUは、ヒートパイプがGPUに直接接触する構造を特徴としていますが、実をいうと、STRIX GTX 980 Tiでは中央に配置された10mm径2本、8mm径1本の3本までしかGPUに触れることができていません。残る6mm径パイプ2本は、GPU上からはみ出すことになりますが、これらも中央のパイプから熱を奪いますので、熱輸送の効果はしっかりあります。
――背面側のデザインもこれまでのモデルとは異なりますね
[David氏]背面パネルは新設計の薄型のものを使用し、合わせてGPUの裏面に赤いプレート「GPU Fortifier」を装着しています。
これは大型ヒートシンクを取り付けた際のゆがみによってアンダークラック(ゆがみによって生じるコンタクトの部分的な剥がれなど)を防ぐもので、今後のハイエンドモデルにも採用される予定の技術になります。
小型のGPUコアを搭載するカードでは必要ありませんが、大きなGPUコアを搭載するモデルの信頼性を高めるための技術です。
――Super Alloy Powerなど、高品質部品の点では変更がありますか。
[David氏]今回新たに「Super Alloy Power II」基準を採用しました。
まずキャパシタは耐用年数を通常品の2.5倍から3倍に引き上げ、チョークコイルもさらにコイル鳴きを抑えた構造のものを採用しました。MOSFETもDrMOSを採用することで20%の発熱低下を実現しています。Super Alloy Power IIはGeForce GTX 980 Ti搭載モデルからスタートし、以後のハイエンドモデルで採用していきます。
独自ユーティリティ「GPU Tweak」もパワーアップ、OSを最適化してfpsを稼ぐ
――ソフトウェアもデモされていましたね。
[David氏]ソフトウェアではGPU Tweakをアップデートした「GPU Tweak II」を導入します。
GPU-Zとの共同開発という点は引き続き同じで、より分かりやすいUIを目指しております。旧来の詳細なUIもありますが、初心者向けにメーターパネルを模した分かりやすいクロック表示や、プロファイル切り替えのボタンも大きくしています。
ほか、STRIXシリーズはファン停止機能が特徴ですが、ファンを止めたくないという方もおりますので、「0dBファン」のオン/オフ機能も設けました。
さらに新機能としましては、「Gaming Boost」として、OSの最適化機能を加えています。
例えばWindowsのビジュアル・エフェクトをオフにすれば1fps程度の影響がありまして、これに不要なタスクを終了させればさらに1fps程度変わります。これだけで2fps程度の向上が見込めることになります。
さらに、メモリデフラグ機能はメインメモリのデフラグを行い、空き容量を300~500MB程度確保することができます。これらはビデオカードのGPU機能ではありませんが、こうした機能もゲームをより快適にプレイするための機能として提供いたします。
そのほかではXsplitのプレミアムライセンスも提供します。こちらのXsplitは、ASUSのカスタムUIを採用し、GPU Tweak II上から起動できるよう設計されています。
カスタムUIというのは見た目のことだけではなく、UIを自由に設計できるというものになります。例えばストリーミングしながらでもGPUのプロファイルを切り替えられるようになります。