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大作PCゲームを快適に、性能100%超かつ暴走させない常用OCテクニック

性能を引き出す“キモ”を紹介、4.5GHz常用PCを作成 text by 清水 貴裕

 2015年も残り約2ヶ月と少し。PCゲームはホリデーシーズン向けにビックタイトルが投入されるのが恒例となっており、今年は「Star Wars バトルフロント」や「フォールアウト 4」といった注目タイトルも登場する。

 大作ゲームの発売に合わせ、PCの新調やアップグレードを検討しているユーザーもいることだろう。Windows 10やSkylakeといった新プラットフォームが登場したこともあり、PCに投資するには良いタイミングとも言える。

 そこで、年末の大作ゲームに備え、PCのポテンシャルを最大限引き出しつつ安定性も高い「常用可能なオーバークロックPC」を作成してみた。上位のPCパーツはオーバークロック時の耐久性や安定性をウリにするモデルも多く、ゲームを可能な限り快適に遊ぶため、PCの性能を最大限引き出そうというわけだ。

 今回はPCの性能を引き出すためのパーツ選定のポイント、また、それを使いこなすための「OC設定のキモ」を解説したいと思う。

常用オーバークロックのためのパーツ選びマザーボードとビデオカードにこだわれ!

 今回は「大作ゲームが遊べる常用オーバークロックPC」というテーマに合わせ、安定性とOC性能を意識してパーツをチョイスしてみた。以下の表が今回使用しているPCパーツだ。

 モデル
CPUIntel Core i7-6700K(4GHz/4コア)
マザーボードMSI Z170A XPOWER GAMING TITANIUM EDITION(Z170/ATX)
ビデオカードMSI GTX 980Ti LIGHTNING(GeForce GTX 980 Ti/6GB)
メモリPanram PUD43200C164G2NJW(DDR4-3200/4GB×2)
SSDOCZ TRN100-25SAT3-480G(480GB/2,5インチSATA)
CPUクーラーCORSAIR H110i GT(水冷/280mmラジエータ)
ケースCORSAIR Graphite Series 760T
電源CORSAIR RM1000i(80PLUS GOLD/1,000W)
OS日本マイクロソフト Windows 10 Pro DSP版

 特にこだわったのはマザーボードとビデオカード。OC向けのモデルは高耐久パーツを採用し、電源周りの設計も高負荷に強い設計になっているので、記録を狙う用途以外にも、ゲームのような長時間高負荷がかかる用途にも向いている。

 そうした理由からマザーボードは「MSI Z170A XPOWER GAMING TITANIUM EDITION」、ビデオカードに「GTX 980Ti LIGHTNING」を選んでいる。どちらもOC向けモデルのハイエンド製品なので、細かい調整が可能な上にOC耐性も高いのが特徴だ。

 それではOC性能に影響するポイントをパーツごとに解説しよう。

MSI Z170A XPOWER GAMING TITANIUM EDITION

Z170A XPOWER GAMING TITANIUM EDITION
高効率な小型コンデンサであるHi-C CAPをふんだんに使用したVRM部分。チョークコイルはお馴染みのSFC(スーパーフェライトチョーク)ではなく、新型のチタン製の物が使われている。

 常用OC向けなら、マザーボードは扱いやすさと耐久性の高さを意識したい。CPUの性能を引き出せるかどうかに直結するパーツなので、こだわって選びたい。

 今回選んでいる「Z170A XPOWER GAMING TITANIUM EDITION」は、OC向け機能に加え多数のゲーム向け機能も備えたモデル。

 製品名の中に「GAMING」の文字が入り、ゲーミング寄りの製品になったと思う人もいるだろうが、開発チームに著名オーバークロッカーが加入した影響か、オーバークロック用マザーボードとしてもかなり実戦的な仕上がりだ。

 DDR4メモリの安定性とOC耐性を高める「DDR4 Boost」や、OC設定が可能な外部コントローラ「OC Dashboard」など、パフォーマンスを引き出すための設計や、OC時の使い勝手を高めるためのコントローラを備えている。扱いやすさを意識した設計かどうかも重要なポイントだ。

 また、搭載パーツもOC向けのものが採用され、電源周りの設計も16 Phases DrMOSを採用するなど豪華なものになっている。

バックパネルのインターフェース部分、CPUなどが無くてもマザーボード単体でBIOSの書き換えが可能な「BIOS Flashbak+」用のUSBポートも備える。
OC設定が可能な外部コントローラ「OC DASHBOARD」が付属。CPU倍率やベースクロックの設定のほか、CPU倍率を強制的に8倍まで落とすためのスイッチも備えられている。
「OC DASHBOARD」は基板に直接取り付けて使用可能なほか、付属のケーブルを介して接続することもできる。
メモリの回路を独立させて設計を最適化することで、安定性とパフォーマンスの向上を実現しているという。
1本目と3本目のPCI Expressスロットには「Steel Armor」という金属製の補強金具を備える。基板にハンダ付けされているので、高い強度を誇るだけでなく、ノイズ防止効果もあるとのこと。
CPUの補助電源は8+4ピン構成。
オンボードボタン類。ダイヤルを回してOCのレベルを調整/設定できる「GAME BOOST」ボタンも備える。
ソケットの裏には温度計のセンサーを通すための穴が開いている。極冷中にCPU裏の温度を直接計測できる。
ソケットの下部には4種類のPLL系電圧を測定できるポイントを備える。
競技中に素早くスコアを保存するための「Direct USBポート」が24ピンの横に実装されている。

MSI GTX 980Ti LIGHTNING

GTX 980Ti LIGHTNING
補助電源は8+8+6ピンの構成で最大450Wの給電に対応

 ビデオカードはオリジナル基板を採用するモデルを選ぶのがポイント。はじめからオーバークロックされているモデルは、基板の設計自体が通常モデルとは異なる高耐久仕様だったり、オーバークロック耐性の高い選別品が採用されていることも多い。

 そういったメーカー公認OCモデルは、BIOSがチューニングされている製品が多いので、オーバークロックしても消費電力にリミッターが掛かることが少なく、オーバークロック状態で常用する場合にクロックが安定するというメリットもある。

 今回選んだMSIの「GTX 980Ti LIGHTNING」は、GeForce GTX 980 Tiを搭載する同社製OCシリーズの最上位モデルだ。

 12+3フェーズ構成の大規模な電源回路、8+8+6ピン構成の補助電源コネクタ、最大で700W対応の大型GPUクーラーなど、モンスターVGAと呼ぶに相応しいハイエンドカードになっている。

 コアクロックは1,203MHzで、ブーストクロックはブーストクロックは1,304MHzに達するほか、パフォーマンス向上のためにメモリクロックも7,096MHzまでオーバークロックされている。

バックプレートは戦闘機のロゴと「LIGHTNING」の文字があしらわれている
ディスプレイ出力は、DVI-D×1、HDMI×1、DisplayPort×3の5系統を備える
カード側面の「LIGHTNING」の文字は付属ユーティリティの「Mystic Light」で発光パターンやカラーのカスタマイズが可能
LEDカラーのカスタマイズに対応したユーティリティ「Mystic Light」
GPU-Z 8.5の実行画面、今回使用した個体のブーストクロックの実測値は1,379.5MHz

Intel Core i7-6700K

Intel Core i7-6700K

 CPUを選ぶ際に重要になるのは、動作倍率が変更可能だという点。倍率変更が行えないとチューニングの幅がかなり狭まってしまう。

 動作倍率の変更対応と同様に重視したいのがスレッド数。Skylakeであれば、Core i5-6600Kよりも、Hyper-Threadingに対応して合計8スレッドで動作する「Core i7-6700K」の方がベターと言える。スレッド数が重要となる局面ではより高い性能を発揮してくれるはずだ。

 「Core i7-6700K」はベースクロックが高いこともあり、チューニング次第では、6コアのHaswell-Eに近いマルチスレッド性能を発揮できるので、Z170マザーをベースとした常用OCマシンを組みたい場合、「Core i7-6700K」を選ぶのがお勧めだ。

 また、OCの伸びが悪いハズレを引いてしまった場合でも、元々の動作クロックが高いモデルは定格クロックで使用しても十分高い性能を発揮してくれるので、リスク回避の面でも高クロックなCPUを選ぶ価値はある。

CORSAIR H110i GT

CORSAIR H110i GT

 CPUクーラーには、280mmサイズのラジエータを搭載するCORSAIR製の水冷クーラー「H110i GT」を選択した。

 「H110i GT」の搭載ファンは14cm角×2という構成で、12cmファンよりも低回転で十分な風量を発生できるため、静音性が高い。また、ケースの排気側にラジエーターを設置することで熱がPC内に篭もらないという利点もある。こうした水冷クーラーの特性は長時間使用するPCと相性が良い。

 また、「H110i GT」は水冷ヘッドにフルカラーのLEDを搭載しており、好みのカラーで発光させたり、CPU温度に合わせて発光色を変更するといったことなども可能。CORSAIRのシステム管理ソリューション「Corsair Link」に対応しており、ソフトウェア上から温度に合わせたファンコントロールや動作状況のモニタリングなどが可能だ。

Panram PUD43200C164G2NJW

Panram PUD43200C164G2NJW

 メモリはオーバークロック耐性の選別が最も進んでいるPCパーツ。高クロック動作を狙うなら、OCメモリを選ぶのが無難だ。

 今回選んだPanramのPUD43200C164G2NJWは、DDR4-3200での動作がうたわれているモデル。

 DDR4-3200で動作させるには、CPU内蔵のメモリコントローラの耐性や、マザーボードのチューニングなどに左右されるが、高クロック動作をうたうメモリは純粋にOC耐性が高いチップが採用されていると判断して問題ない。

 高クロックメモリは、クロックを上げて使うこともできるし、製品の定格クロックから若干落とし、レイテンシや電圧を調整して使うこともできるので、チューニングの幅が広く常用OCマシンに向いている。

CORSAIR RM1000i

CORSAIR RM1000i

 オーバークロックは瞬間的に消費電力があがることもあるので、ゆとりをもった容量のモデルを選びたい。また、OCには12Vの出力がシングルレーンのモデルが適しているので、こうしたところも気にしたいところ。

 今回選択したのはCORSAIRの「RM1000i」。80PLUS GOLD認証取得の1,000W電源で、+12Vの仕様はOCに最適なシングルレーン構成。搭載されているコンデンサが全て日本製なのもポイント。

 負荷が40%以下の時はファンが停止するようになっているので、低負荷時の静音性は高い。ケーブルは全てが取り外し可能なフルモジュラータイプとなっているので、配線を綺麗にまとめやすい。

 「RM1000i」も「Corsair Link」に対応しており、ソフトウェア上で電源出力系統ごとのステータス確認や、ファンコントロール設定などを行うことができる。

CORSAIR Graphite Series 760T

CORSAIR Graphite Series 760T

 高負荷状態が長時間続くゲームなどの用途には、熱が内部に篭もらない排熱に優れたケースを選びたい。

 CORSAIRの「Graphite Series 760T」は、EーATX規格に対応した内部空間の広いフルタワーケース。奥行きが450mmもあるので、大型なハイエンドビデオカードも楽々搭載できる。

 3基の搭載ファンが全て14cm角ファンなので静音性に優れるほか、フロントと本体底面にダストフィルターを標準搭載しているのでホコリにも強い製品だ。

 また、サイドパネルに大型のアクリルウィンドウを備えているので、イルミネーション機能などを備えたパーツを搭載してライトアップするのも良いだろう。今回使用しているクーラーの「H110i GT」のように、温度変化によって発光色が変わるモデルなどとも相性が良い。

常用4.5GHz動作を狙ってCPUをチューニング発熱を抑えつつ潜在能力を引き出す

 Skylake世代では、CPUコアとリングバスに掛かる電圧が1つのラインに統合されているので、CPUの定格電圧はHaswellやDevil's Canyon世代よりも高くなっている。

 電圧が高い分発熱も多くなっているが、CPU電圧を1.25V以下に抑えれば発熱を大幅に低減することができるので、常用OC設定を探す際は1.25Vをひとつの目安として考えるといいだろう。

 ちなみに、Core i7-6700KのTuboBoost有効時(4.2GHz)の動作電圧は、CPUの個体によってかなり開きがあり、1.18Vで動作する物から1.32Vを必要とするものまで様々な個体が存在する。高電圧型の個体は、定格クロックでもかなり発熱するので、オーバークロックしない場合でも電圧の調整を行うメリットはある。

 今回使用しているCPUは、4.2GHz動作時に1.24V前後が定格電圧となる個体。比較的伸びしろがありそうなので、4コア/4.5GHz動作の常用を狙ってみたい。

OC設定の画面
電圧設定項目の画面

 今回は負荷テストとしてOCCTのCPU:OCCT TESTを使用し、30分間ノーエラーでパスすればOC成功という判断にした。また、常用PCなので、動作温度は80℃以下に抑えたいところ。

 まずはCPUの倍率を45倍に設定して、動作クロックを4.5GHzにする。常用OC設定なので、低負荷時にクロックを下げる「EIST(Enhanced Intel SpeedStep Technology)」は有効のままでOKだ。

 続いては電圧設定。MSI製マザーボードの場合、「CPU Core Voltage」がCPUコア電圧の設定項目だ。ひとまずは基準値の1.25Vに設定して、4.5GHzを達成できたら電圧を下げていくことにする。アンコア電圧やPLL電圧などはAUTOのままでOKだ。

CPU電圧を1.25Vに設定して4.5GHzでOCCTを実行した際の最高温度
CPU電圧を1.21Vに設定して4.5GHzでOCCTを実行した際の最高温度

 実際にCPUコア電圧を1.25Vに設定し、4.5GHz動作の状態でOCCTを実行してみると、あっけなくテストをパス。今回使用したCPUは常用OC向けとしてはなかなかの素性の良さだった。

 CPU温度はHWMonitor読みで75℃までしか上昇しなかったので温度的には問題ないが、80℃に近いこともあり、CPUクーラーのファンが高回転となり若干耳障りだ。4.5GHz動作はクリア出来たので、ここからは静音方面の設定を詰めていく。

 UEFI上でファンの回転数を落として静音性を向上させる手もあるのだが、そうすると冷却力不足でCPU温度が80℃を超えてしまう。よってここから先は、CPUコア電圧を下げていき、CPU温度と動作音を下げる方向でチューニングを進めていく。

 1.25VからCPUコア電圧を下げていくと、最終的に1.21VでOCCTをパスすることに成功し、CPU温度は65℃まで低下した。60℃台であればCPUクーラーのファンの回転数もそれほど上がらず、動作音もそれなりに静かだ。

 消費電力の面でもチューンの効果は大きく、1.25V時に179.4Wあったシステム全体の消費電力が、1.21V時は161.9Wまで低下。静音性だけでなく、消費電力の面でも電圧を下げたメリットが発揮された。

電圧の設定画面。アンコア電圧が自動で昇圧されているのが確認できる

 CPUコア電圧が決まったところで、さらなるCPU温度の低下を狙って、CPUのアンコア部分の電圧の調整にも調整してみた。MSIのマザーボードでは、「CPU SA Voltage」や「CPU IO Voltage」がそれに該当する箇所となっている。

 これらの電圧は、メモリコントローラが実装されているSystem Agent部やそのIO部分の電圧なため、メモリコントローラのOC耐性に大きく影響してくる箇所で、XMPを適用すると自動で昇圧されてしまう場合が多い。OC向けモデルで高クロックのメモリをXMPで使用する場合などに、知らぬ間に危険域まで昇圧されていることがあるので注意が必要な箇所でもある。

 今回は、XMPプロファイルを利用しメモリをDDR4-3200に設定している。XMPの適用後に「CPU SA Voltage」が1.050Vから1.248Vへ、「CPU IO Voltage」が0.950Vから1.208Vへ昇圧されていた。メモリコントローラはCPU内でもかなりデリケートな部分なので、長時間稼働させる常用OCマシンではこれらの電圧を1.15V以下に設定するのが望ましい。

 ただ、定格値のままでは高クロックなOCメモリを安定させることが難しいので、システムを安定させるためには最適な値を探る必要がある。

 両電圧を1.05Vから徐々に昇圧していくと、30分間のOCCTをパスすることができる最低電圧は、「CPU SA Voltage」が1.100Vで「CPU IO Voltage」が1.100Vだった。

 これらの最適値は、CPUの個体差やマザーの性能、使用しているメモリのクロックやレイテンシで、大きく変わってくる。いきなり昇圧すると、メモリコントローラにダメージを与える場合があるので、定格値付近から徐々に昇圧していくのがセオリーだ。

 CPU温度はアンコア電圧の調整前と同じ65℃まで上昇してしまったが、消費電力値は1.1W低い160.8Wを記録した。、温度や消費電力の面では大きなメリットがなかったのが残念だが、不要な昇圧によるアンコア部分への負担は大幅に減っているはずだ。

 今回はOC向けモデルなので、アンコア電圧が昇圧されていたが、製品によってはAUTO設定だとアンコア電圧が昇圧されない物もある。OCメモリをXMP設定で使用すると不安定になるような場合は、アンコア電圧の調整で解決できることが多いので挑戦してみてほしい。

定格状態でのCINEBENCH R15の実行画面
4.5GHz時のCINEBENCH R15の実行画面、しっかり性能が向上していることが確認できる。

ビデオカードの常用OCは定格電圧内のチューンが定石カードに負担をかけず性能を引き出す

MSI「AFTERBURNER」

 ビデオカードのオーバークロックは、MSIのビデオカード向けのユーティリティである「AFTERBURNER」を使って行う。OS起動時に「AFTERBURNER」を起動するように設定しておけば、起動毎に設定する手間が省けるのでお勧めだ。

 ゲームなど高負荷状態が連続して続くシチュエーションを想定して、ビデオカードのOCは昇圧を行わない範囲に留めるのがセオリーだ。ベンチマークでハイスコアを狙う場合に一時的に昇圧するのはOKだが、常用を考えると定格電圧で安定動作する範囲に留めておきたい。

 電圧の中でも特に危険なのがメモリ電圧。オリジナル基板を採用するモデルでは調整に対応した製品が一部あるが、昇圧により破損のリスクが飛躍的に高まるのでお勧めはしない。ビデオメモリはビデオカードで最もデリケートな部分なのだ。

 今回は、定格電圧で安定動作する範囲で「GTX 980Ti LIGHTNING」の常用OC設定を探ってみた。負荷テストとして使用したのは3DMark Fire Strikeで、CPUは前章で設定した4.5GHz常用設定のままテストを行った。画面が乱れることなくテストをパスできることを成功の条件とした。

 コアクロックの設定の前にまずはビデオメモリの設定を行う。コアクロックが上がるに従ってビデオメモリのOC耐性が下がる個体もあるので、まず最初にビデオメモリ自体の安定動作ラインを見極めるのがビデオカードOCのコツだ。

GPU定格時(メモリ1,774.3MHz)の3DMark Fire Strikeのスコア
ビデオメモリを1968.8MHzまでOCしたときの3DMark Fire Strikeのスコア

 テストした結果、定格電圧で画面が乱れずにベンチマークを完走できるメモリクロックの限界は1968.8MHzだった。メモリを限界までOCした状態だと、GPUコアのクロックがうまく伸びないことがあるので、マージンをとり、今回は約100MHz下の1851.4MHzまで下げて運用することにした。

 コアクロックとメモリクロックを同時に最高まで引き上げる設定は難しく、どちらのクロックを引き上げた方がより性能が発揮されるのか、バランスを見ながら調整する必要がある。ベンチマークやゲームタイトルで効く部分が変わってくるので、この辺りのチューニングはかなり奥が深い。

コアクロック 1,450.7MHz/メモリクロック 1,851.4MHz時の3DMark Fire Strikeのスコア

 メモリの上限クロックがわかったところで、コア側のクロックの耐性も調べていく。

 試行錯誤して辿り着いたのは、コアクロックが1,450,7MHzでメモリクロックが1,851.4MHzという設定。ベンチマークを走らせるだけならばもっと上が狙えるのだが、常用マシンにとして使うには余裕を持たせた設定が必要なので、少し抑えた設定になっている。

 ベンチマーク中のGPU温度だが、定格時と同じ64℃を記録しているので、この設定ならば発熱の増加を気にすること無く使用できそうだ。消費電力値は定格時の371Wから13W増加して384Wを記録した。

コアクロック 1,500.6MHz/メモリクロック1,851.4MHz時の3DMark Fire Strikeのスコア

 常用からは離れるが、最後に定格電圧でのコアクロック限界も探ってみた。最終的にテストをパスできたコアクロックは1,500.6MHz。

 MSIの「LIGHTNING」シリーズは、オーバークロック耐性の全数チェックが行われており、基準に満たないモデルは「LIGHTNING」として出荷されることは無いという。あっさり1,500MHzを突破したのはさすがOC向けに設計された「LIGHTNING」といったところで、昇圧すれば1,550MHzあたりが狙えそうな手応えも感じた。

 さて、チューニングも済んだところで、今回の常用OC設定のPCでゲームを遊んだ際に、どれほどのフレームレートがでるのかも確認しておこう。今回はバトルフィールド4とグランド・セフト・オート5の2タイルトルでチェックしてみた。

 バトルフィールド4はフルHD解像度で画質は最高設定。グランド・セフト・オート5は画質設定のプリセットが存在しないので、GeForce Experienceで最適化した状態(解像度はフルHD)でテストしている。

 バトルフィールドは120fpsオーバー、グランド・セフト・オート5は90~110fps前後となっており、遊んだ感じは快適そのもの。現行最高峰のパーツをさらにチューンしているので、シングルVGA構成のマシンとしては最高峰の性能に仕上がったと言えるだろう。これだけのパフォーマンスがあれば相当ヘビーなタイトルにも対応できるので、既存のゲームから年末の大作ゲームまで多くのゲームを快適に遊べるはずだ。

「最高性能の一歩手前」が常用OCのポイント長時間ゲームでもド安定

 ベンチマークを完走させてハイスコアを狙う場合、短時間での動作となるため安定性はさほど重要視されないが、OC状態で常用するとなると話は別。負荷テストに耐えて長時間動作可能な安定性が求められるようになる。

 また、排熱も意識すべきポイントで、熱がケース内にこもり、サーマルプロテクションなどの影響でクロックが下がり、性能がダウンしてしまっては本末転倒だ。快適に使うためには静音性も気にしなければならない。

 そうした理由から、限界よりも少し下の余裕のあるクロック設定を行い、無駄な昇圧を行わないようにして発熱を抑えるのが常用OC設定の最大のコツだ。

 不安定さのリスクを背負いつつも性能を引き出す「オーバークロック」と、普段使いでは最も重要視される「絶対的な安定性」という、ある意味対極の要素を両立しないといけないのが常用OCの難しいところだが、設定が決まった時に味わえる「コントロールしきった感」はたまらないものがあり、感動も一入だ。

 最近のOC向けのパーツは、ハードウェアが堅牢な上に設定も細かく行えるので、パーツの隠されたパフォーマンスの解放に挑戦してみてはいかがだろうか。

[制作協力:MSI]

清水 貴裕