ACARDの5インチベイ内蔵型RAMディスクユニット「ANS-9010」がついに発売された。
GIGABYTEのi-RAM以降、コンシューマー向けのハードウェアRAMディスクが発売されることがなかったので、注目している人も多いと思う。
RAMディスクマニアの筆者は、度重なる発売延期にヤキモキしつつ、登場を1年以上待ち続けていた身なので、製品の発売に関しては正直感慨深いものがある。発売中止の噂を何度聞いたことやら………。
今回、短時間ではあるが動作させることができたので、簡単な使用感などをお伝えする。
簡単に結論をまとめると、弱点はいくつかあるものの、おそらくANS-9010は現状最速のSerial ATAデバイスである可能性が高い。
体感速度を伝えることは難しいが、片鱗だけでも感じてもらえればと思う。
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最速クラスのOS起動時間、XPの起動短縮の限界に迫る?
まず、実際にOSをインストールして起動時間を見てみた。下の動画は、BIOS表示直前からOS起動後、砂時計マークが消えるまでの様子だ。
見てもらえれば簡単にわかるが、(RAID無しの)単体ストレージの起動時間としてはかなり速い。BIOSの処理のほうが重く感じるという普通ではありえない状況だ。
テスト環境はCPU Core 2 Duo E8400、メモリ PC2-6400 2GB×2枚、マザーボード ASUS Striker Extreme(nForce 680i)、光学ドライブ1台、OS Windows XP Professional SP3といった構成だ。ANS-9010は1台で2ドライブとして使用することもできるが、ひとまずは1ドライブとして使用している。
ちなみに、今回のテスト時、メモリにはSanMax製のSMD-4G88HP-8R-D(PC2-6400 2GB×2,Hynixチップ)を使用した。全てのスロットにメモリを実装しているが、動作中にエラーなどは発生しなかった。
筆者はほぼ同じ環境でi-RAMやIntel製SSD X25-Mなども使用したことがあるが、起動に関してはANS-9010がこれまでで最速だと感じる。
[動画] Windows XP起動/ 32秒
ランダムアクセスは非常に優秀、ただし、RAID動作時には注意が必要?
次に、CrystalDiskMark 2.2を使用して速度を計測してみた。右がその結果だ。時間がある人はぜひ自分のPCと比較してみてほしい。
最大読み込み速度は240MB/sを誇るIntel製SSD「X25-M」に劣るが、書き込み速度やランダムアクセス性能に関してはANS-9010が上回っている面が多い。とくにランダムアクセスの4Kの値は、読み書きともに80MB/s前後と非常に優秀だ。Intel製SSDと最速デバイスの座を争う製品であることは間違いない。
一般的にストレージの速度はシーケンシャルアクセスが注目されているが、起動ドライブとして使用する場合はランダムアクセス速度が重要になる。特に4Kなどの細かいサイズのランダムアクセスの速さは、体感速度に影響するので重要視したい。ちなみに、一般的なHDDの場合、ランダムアクセスの4Kの値は数MB/s程度しか出ない。
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1ドライブ動作時
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ANS-9010は1台で2ドライブ動作も可能なため、RAID 0での速度も計測した。使用したRAIDカードはLaCie SATA II 3Gbits/s PCI-Express Card 4EとHighPoint RocketRAID 3520。
なお、RAIDカードに搭載されたキャッシュの影響をできるだけ避けるため、今回のベンチマークは計測サイズを1,000MBにして行っている。
時間の都合もあり、RAIDのブロックサイズは各RAIDカードの最小値のみでテストした。なぜ最小値かというと、HDDの場合はブロックサイズが小さいほどランダムアクセス速度を重視したセッティングになるためだ。なお、RAIDカードにもよるが、RAID 0では小サイズのランダムアクセスは単体時より落ちる場合が多い。
右がそれぞれの結果だが、ランダム4Kの値に差がでた。SATA II 3Gbits/s PCI-Express Card 4Eは最小ブロックサイズが8KBと小さいこともあり、ランダムアクセスに低下が見られず良好な結果が出ている。ただし、RocketRAID 3520は最小ブロックサイズが16KBのためか、ランダム4Kの値は1ドライブ動作時より大きく落ち込んでいる。
なお、RAIDカードとの相性でブロックサイズをある程度大きくしたほうがランダムアクセスが速くなる場合もある。このあたりはさらなる検証が必要そうだが、RAIDを構築する際はなるべく小さいブロックサイズにした方がいいかもしれない。
□関連記事
【2008年9月10日】Intelの超高速SSD「X25-M Mainstream SATA SSD」 (平澤寿康の周辺機器レビュー/PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0910/hirasawa004.htm
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2ドライブ動作時 (LaCie SATA II 3Gbits/s PCI-Express Card 4E(ブロックサイズ8KB))
2ドライブ動作時 (HighPoint RocketRAID 3520(ブロックサイズ16KB))
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ECC機能搭載など優れた面もあるが、S.M.A.R.Tには非対応
ANS-9010はハード側でECC機能を備えている。標準でオンになっており、背面のジャンパピンでオン・オフの
切り替えが可能だ。なお、ECC機能利用時にはユーザーが使用できるメモリ容量は実搭載量の9分の8となる。ECC機能オフでの使用はECC付きメモリ使用時のみ推奨されているが、ECC非対応メモリでもECC機能オフで使用できる。一応試してみたが、ECC機能のオン・オフで転送速度が変わることは無いようだ。
ただし、筆者としては、(速度面に影響ないこともあり)使用できる容量が多少減るとしても、ECC機能オンでの使用をお勧めしたい。
以前、メモリモジュールメーカーから宇宙線などの影響で発生するソフトエラーが深刻化していると聞いたことがある。ソフトエラーとは簡単に言うとメモリのデータ化けなどが起こる現象だ。メモリの品質などでもエラー発生率は違うのだが、24時間稼動のPCなどでは高確率でソフトエラーが発生していると考えていいという。
ECCがあればエラーが発生してもある程度訂正されるので、安定運用を目指すならECC付きメモリを使うか、ECCオンでの使用が望ましい。この点はコンシューマー向けハードウェアRAMディスクの初代といえるi-RAMから大きく進歩した点だ。
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ECC機能のオン・オフや、2ドライブ動作させる際の切り替えなどはジャンパピンで行う
ECC機能オフ時のベンチマーク(1ドライブ動作)、オン時とほぼ変わらない
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また、RAIDカードを使用する際に問題となるS.M.A.R.T対応の有無だが、CrystalDiskinfoで見る限り、対応していないようだ。HDDで対応していない製品はまず無いが、一部のSSDやi-RAMはS.M.A.R.T非対応のため、使用できるRAIDカードが非常に限られる状況となっている。ANS-9010もRAIDカードを選ぶ可能性がある点には注意が必要だ。
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対応機能にS.M.A.R.Tの文字は見当たらない、温度なども計測できないようだ
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体感速度は非常に優秀、唯一の難点は運用面
今のところ2時間程度しか触れていない状態での感想になるが、OSのインストールやベンチマークなどを行っている限り安定して動作している。全体的に動作がキビキビとしており、体感速度も非常に優秀。OS起動の速さもあってパフォーマンス面での満足度は高い。
ただし、常に本体に通電することが前提となっていることや、電源断によるデータ消失の可能性があるなど、玄人向けな感は否めない。CFを利用したバックアップ機能も書き出し時間がかなりかかるので、あまり実用的に思えない点もマイナスだ。i-RAMなどを利用していてノウハウがあるユーザーには問題ないが、初めてRAMディスクを使用する人は戸惑ってしまう面もあると思う。常に通電することが前提なので、正式対応をうたうACアダプタなどが用意されているなど、メーカー側からのフォローがあってもいいのではと思う点もいくつかある。また、ファンレス仕様だがそれなりに発熱するので、エアフローが悪い状態で使用すると熱暴走する可能性がある。
なお、RAMディスクはメモリとの相性がシビアな傾向があるので、使用の際はメーカーバリデーションリストを通過したものをお勧めしたい。そうしたメモリが手に入らない場合は、確実では無いがバリデーションリストに記載されているチップメーカーのチップを採用したメモリを使用すると、動作する可能性が高いだろう。
手放しにお勧めはできないものの、RAMディスクはほかには無い体感速度を味わえるので、一度使うとやめられない中毒性がある。使いこなしさえすれば、SSDをも越える非常に快適な環境が構築できる。苦労を割り切れる人やi-RAMユーザーには十分お勧めできる製品だ。
□ANS-9010(ACARD)
http://www.acard.com/japanese/fb01-product.jsp?idno_no=256&type1_idno=13>
□関連記事
【2008年11月1日】ACARDのDDR2 RAMディスク「ANS-9010」が発売 4GB×4枚セットの対応メモリも登場
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20081101/etc_ans9010.html
【2006年12月10日】i-RAMが「フタ」で外付け可能に(Junk Blog)
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/blog/archives/2006/12/iram_2.html
【2007年12月31日】i-RAM4枚でRAIDカードを比べてみた(Junk Blog)
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/blog/archives/2007/12/iram4raid.html
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