【 2010年12月28日号 】 | |
店内の漫画を「自炊」するレンタルスペースが仮オープン、 裁断済み書籍を提供、ネット上は懸念の声多数 |
- ※(12/31 16:20更新)プレオープンの休止を追記。
※(12/29 17:55更新)発言のまとめサイトを追加。
※(12/29 17:35更新)料金を更新。
※(12/29 6:45更新)ネット上での反響を追記。店内のコミックや同人誌を、その場で電子書籍に「自炊」できるという、自炊機材のレンタルスペース「自炊の森」が27日(火)にプレオープンした。場所はGENO OUTLET(ブロックD1-[f6])の上階、以前BLESSがあったロックビル2F(ブロックD1-[f6])だ。
同店のシステムは、自炊機材の貸し出しに加え、裁断済みの書籍もその場で提供、「1冊いくら」の料金体系で電子書籍化できるという、これまでにないもの。
手持ちの書籍などを自分でデジタル化する「自炊」が知られるようになってきた昨今だが、「自分の持っていない書籍をデジタル化できる」というサービスが店頭で行われたのはこれが初めてだ。
[12/29 6:45追記]
なお、ショップの開店告知を受けて、ネットは騒然状態。情報流通の早いTwitterでは、こうしたサービスに対する懸念の声が非常に多く挙がっている。具体的には、モラルに対する問題や、作者に対する対価がない点、さらには文化の衰退につながるという指摘など。著名・無名に関わらず、多くのクリエイターを巻き込んだ動きになりつつある(詳細)。
●イメージはマンガ喫茶のコピー機?
ショップ側は「問題ないシステムと判断」
このショップの基本システムは、「店内の棚からスキャンしたい書籍を選び、店内の機材を借用、利用者の手でスキャンする」というもの。つまり、「自分が持っていない書籍を店内でスキャンできる」という仕組みを謳っている。
店内の様子
店内の様子
店内の様子こうしたことから、どうしても気になってしまうのが、この仕組みの合法性だが、同店では「知的財産権に詳しい弁護士と相談し、問題ない仕組みと判断した」と説明。イメージとしては「マンガ喫茶においてあるコピー機」に近いという。
具体的な同店の説明によると、「まず、著作権法上、私的複製をするために、オリジナルの本を自分で買う必要はなく、たとえば書籍を友人から借りて複製する行為も法的には問題ない」「店内で本を来店者にアクセスさせる行為は、あくまで閲覧行為であって、著作権法上の貸与権条項には抵触しない」「私的複製の範囲を制限する、“公衆の自動複製装置”に関する規定も文書または図画については対象外とされている」とのこと。「閲覧行為」に関しては、マンガ喫茶の業態に関するものとして、文化庁からコメントも出ているのだという。
法律の解釈がこれ以外にある可能性もあるが、少なくとも「同店が、法の範囲内でできることを調査、“大丈夫”と判断したシステム」ということになる。なお、作者/出版社側への利益還元などについては、特にアナウンスされていない。
これら法解釈については同店のWebサイトや公式Twitterでも告知中だ。
●市販の人気漫画や同人誌などを店内に陳列、裁断済み
料金は定価の4割
店内の棚に用意されているのは、「ONE PIECE」をはじめとする市販の人気コミックや各種同人誌。
裁断済みの書籍。輪ゴムでとめられている。
自炊ブース
裁断済みの書籍
業務用スキャナ
裁断済みの書籍
開店告知コミックに関しては少年/青年/大人向けコミックが中心で、同人誌に関しては18禁のものがメイン。これらは既に裁断されており、同店の業務用高速スキャナ(Panasonic KV-S5505Cなど)を利用することで、市販のコミック1冊を約1分程度と非常に高速にスキャン可能。こうした「自炊ブース」は計6組用意されている。
なお、スキャンに関しては「あくまでも“私的複製”なので、利用者が自分で行う必要がある」(同店)とのこと。こうしてデジタル化したデータはメモリーカード、あるいはDockコネクタ経由でiPhoneなどに転送、持ち帰ることになる。
[12/29 17:35更新]
料金は、定価の40%+消費税(市販書籍)あるいは210〜420円(同人誌)で、持込書籍のスキャンおよび裁断は350ページ以内が160円など(持ち込み書籍については、本オープン後にサービス開始予定)。本オープンの予定日は来年1月21日(金)。それまではプレオープンが続き、年末年始は12月29日〜1月2日に営業、その後21日までは土日のみの営業になる予定。
なお、店内の書籍ラインナップは随時強化していく予定。既にライトノベルなどが準備中という。
●サービスに対する懸念の声が多数
モラルや文化の衰退を危惧する声など(12/29 6:45更新)なお、ショップのサービス内容の告知をうけて、29日(水)の朝現在、ネット上は騒然状態。特に情報流通の早いTwitterでは、こうした「自分の所有していない書籍をデジタル化できる」サービスに対する懸念の声が非常に多く上がっている。
具体的な内容は、サービスそのもののモラルを問う声や、作者に対する対価がない点、さらにこうした事が一般化することで、創作意欲が失われ、文化の衰退を危惧する声など。また、法律問題に関しても「違法ではないか?」と指摘する声もある。
これに関しては、著名・無名に関わらず、非常に多くのクリエイターも同様の懸念を示しており、Twitterの発言まとめページも既に複数(1/2)[12/29 17:55更新]作成されている。
また、対応策として、著作権法の早期改正を求める声がある一方、逆に私的複製の制限強化によって(「自分の所有する書籍をデジタル化する」という意味の)本来の「自炊」に制限が生まれる、ということに対する懸念の声も聞かれる、といった状況だ。
なお、この後、12月31日になり「システム整備のため」としてプレオープンを休止、サービスや料金体系を変更することが明らかになった。これらの詳細に関しては別記事参照のこと。[12/31 16:20更新]
□自炊の森
http://www.jisuinomori.com/
□Twitterアカウント
http://twitter.com/jisuinomori
□Togetter - 「「自炊の森」問題」
http://togetter.com/li/83973
□Togetter - 「「店内の漫画を「自炊」するレンタルスペース」にマンガ家・ファンが騒然」
http://togetter.com/li/83965□関連記事
【2010年12月18日】電子書籍を自炊できるレンタルスペースが開設
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20101218/etc_apad.html
【2010年9月17日】書籍の電子化、「自炊」「スキャン代行」は法的にOK? 〜福井弁護士に聞く著作権Q&A -INTERNET Watch(Internet Watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20100917_393769.html[撮影協力:自炊の森(ブロックD1-[f6])]