アキバスポットガイド
改造バカ、30年前のパソコンショップに迷い込む!? あの日の少年の心躍らせる魅惑のレトロゲームショップ
~ 単行本も発売決定!秋葉原スポットガイド ~ text by 高橋 敏也
2019年3月18日 00:00
秋葉原と言えば言わずと知れた「オタクの街」だが、一口に「オタク」といっても千差万別、ジャンルが違えば目的地も異なる。何の変哲もない雑居ビルの一室が、あるジャンルのオタクにとっては聖地だったりする。そこで、秋葉原歴うん十年、改造バカこと高橋敏也氏が秋葉原内のさまざまなスポットを訪問し、そのディープで雑多な魅力をとことんレポートするのがこの企画。2次元&アイドルだけがアキバじゃないのだ!
地下に眠るはレトロゲームの数々。あの懐かしの時代へいざ行かん!
秋葉原の地下にあるというパラダイス(シャングリラでも可)へたどり着くには、中央通りから神田明神へ1本入った通りを目指さなくてはならない。JR秋葉原駅からも、地下鉄末広町駅からもほど近い場所、秋葉原駅から向かったなら牛丼サンボを右手に見つつ、左手の角にケバブ屋さんが見えたらもうすぐである。もう少し進むと天国への階段(地下へ降りるんだけどね)が左にある。そう、その階段を降りていけば、そこにはレトロPCとレトロPCゲーム、ゲーム基板、その他もろもろを愛する人々のパラダイス、秋葉原@BEEPがあるのだ。
地下にいたる階段脇の看板、そのイラストが時代がかっているのはおそらく「レトロ」への演出だろう。秋葉原@BEEPのサイトを見ても、思わず「懐かしいタッチだなあ」という雰囲気のイラストが多い。さて、地下のドアから中へ入ると、これがまたどことなく薄暗い雰囲気の店内がいい味を出している。そしてとにかくモノが多い! 一部の棚の間は人がすれ違うのが難しいほどだ。そこそこの広さがあると思われる店内だが、とにかく隅から隅までモノで埋めつくされている。
絶滅した「秋葉原のイメージ」を現代に復活させたい
そんな店内で、株式会社三月うさぎの森、法人営業部の丸山さんにお話をうかがった。ちなみに秋葉原@BEEP(以下、BEEP)は三月うさぎの森という会社が運営するショップなのだ。そしてこの丸山さんへのインタビュー、そして店内の説明がわれわれ(高橋と担当編集)のヘブン状態を加速したのである。
「約10年前に弊社の代表が起業したときはネットショップでした。ヤフオクで始めて、やはり代表が好きなのでゲームも扱うようになりました。とくに力を入れていたのはアーケードゲーム基板でしたね、最初は。そしてアーケードゲームの筐体も扱うようになって。ここにはそんなに置けないんですが、本部のほうにはたくさんあります。そしてパソコンのゲーム、家庭用のゲームなど含めて、いろいろなものを仕入れて売るというのをやり続けているうちに、このお店が3年前にできたんです。 このお店のような雰囲気って、もう絶滅した『秋葉原のイメージ』だと思うんです。あの頃、80年代から90年代の熱気や情熱を復活させたい、当時から秋葉原を見ていた当社代表の気持ちがそのままこのBEEPになりました(笑)」
BEEPはレトロPC、そしてゲームの専門店である。具体的にはレトロPC、レトロを含むゲーム、アーケードゲームの基板、アーケードゲーム筐体、そしてこれらの周辺商品を扱っている。買い取り、そして販売の両方を行なっているので、手持ちのコレクションを持ち込んで買い取ってもらう。あるいはショップに行って昔懐かしいハードやゲームを購入するのもアリ。たとえばBEEPでどうしてももう一度プレイしたいゲームタイトルを発見、しかしそれを動かすハードはもう持っていない。そんなときはハードとソフトを一緒にBEEPで買うことも可能なのだ。
かつてのパソコン少年たち、思い出があふれて止まらないモードに!
では具体的にどういったものが「レトロ」なのか? たとえばMSXとか、X68000とか、PC-88シリーズとか、いやいやPC-98シリーズも入るだろう。個人的にはぜひFM-7とFM-77AVは入れてもらいたい。家庭用ゲーム機で言えばファミコン、メガドライブ、ネオジオなんてどうだろうか? ゲームで言うなら80年代、90年代のカセットテープやフロッピーディスクを媒体としたゲームは「レトロ」と呼んでよいのではなかろうか。アーケードならインベーダーから始まって、もう数限りなくあると思う。
そしてここが重要、あなたにとって昔を思い出して胸が熱くなる商品が「レトロ」なのだ。思い出してほしい。その昔、秋葉原が「パソコンの街」だった頃を。乏しい資金(こづかい、バイト代)を手にいろいろなショップを覗いてまわり、1本のゲームタイトルを買って家に帰る。それを今となってはまさにトレロなパソコンで夜を徹してプレイする。おじさんね(55歳、17歳からパソコンマニア)、そんなことを思い出したらまじめに涙が出てくるのよ。ここで取材中、高橋が発した迷言を一つ。
「うわあ32X(スーパー32X)だ、なんか意識失いそうです」
大人になった今、あの頃の続きが楽しめる場所がBEEP
「たとえばこういう伝説のMZとか、今の人たちにとってみればもうロストテクノロジーだし、アナログっぽいと感じているフシがあります。ただ、当時はやはり憧れの目で見ていたし、こういうゲームたちもそうじゃないですか。やっぱり10代の多感なときに、これを買うためにどれだけ苦労したかっていうのも。最終的には商売につながるのかもしれないですけど、でもその前に、やっぱり同じ気持ちを持った人に来てもらう。集っていただければいいなっていう、そこですね」
なんかね、丸山さんの言葉も熱いのよ。それに釣られて担当編集も私も、BEEP店内に並ぶ商品を見ていて、どんどん熱くなってくるんだよね。もちろん昔を思い出しながら。そう、BEEPの店内には「熱い思い出」が詰まっている。新しいモノは楽しいし、おもしろい。だがその昔、夜を徹して熱中したゲームには「懐かしさ」が伴う。なぜ、あんなに熱中したものを手放してしまったのか? そう後悔するのは10年後、あるいは20年後なのだ。
大人になってお金も時間もある程度は自分の思いどおりになる。そんなときに昔懐かしい熱中したゲームのことを思い出しても、それを再びプレイするのにはさまざまなハードルがある。そもそもソフトがない、ソフトがあってもそれを遊ぶハードがない。アーケードゲームなどの場合はもっと深刻だ。アーケードゲームの筐体など個人で持っているはずもなく、はたまた仮に入手できたとしても置く場所がない。
そんなときはBEEP。レトロなゲームソフトがPC、ゲーム機にかかわらずズラリと並び、そのハードウェアまで揃っている。アーケードゲームの筐体もあるし、置く場所がないならゲーム基板という形で入手することもできる。私もその昔、スーチーパイという麻雀ゲームにハマってゲーム機のタイトルを全部、そしてアーケードの基板まで入手した。ああ、なんで手放してしまったかな、スーチーパイ。てなことをBEEPで考えるのである。
レトロゲームを今につなげる仕掛け作りがBEEPの真骨頂
BEEPの素晴らしいところは、品揃えだけでなく、レトロなソフトやハードを「今」につなげようとしている点だ。まず何よりレトロなPCを今の環境で使用できるように、各種アダプタが用意されていたり、たとえばX68000保持者の悩みの種、電源部分をACアダプタ化するキットなどを扱っている。さらにレトロゲームやレトロPCの同人誌など各種情報を取り揃え、提供しているのだ。リアルタイムにそういったゲームやハードを楽しんできた人だけでなく、興味を持った若い人もレトロなものを楽しんでもらおうということだ。
また、BEEPではさまざまなイベントを仕掛けている。レトロPCを対象としたゲームプログラムのコンテストなどもそうだし、当時の開発者やゲーム雑誌関係者のトークイベントや座談会なども行なっている。私も含めた当時の人間なら懐かしく楽しめるだろうし、レトロなものに興味を持った若い人には新鮮だと思う。ぜひ公式サイトをチェックしてほしい。
スーチーパイのアーケード基板も含めて、私もほとんど当時のものは処分してしまったが、それでもレトロなゲームタイトルやハードが少し手元にある。私の場合はモノそのものにあまりこだわりはないのだが、もしかしたら私の手元にあるレトロなモノに強烈な思い出を持っていたり、あるいはハードを本当に必要としている人がいるかもしれない。なので私の手元にあるそれらを、いずれBEEPに持ち込もうと思っている。自分の思い出の品が、誰かの熱い思い出を甦らせる。そう考えると、実に気持ちがいい。
【Shop Information】
店名:BEEP秋葉原店
住所:東京都千代田区外神田3-9-8 中栄ビルB1F
営業時間:11時~20時
定休日:水曜
TEL:03-6206-9116
Webサイト:https://www.akihabara-beep.com/
書籍化のお知らせ
突然ですが、本連載が書籍になります! その名も「特濃!あなたの知らない秋葉原オタクスポットガイド」。書き下ろしを含め、10店舗の秋葉原オタクスポットをご紹介する内容で、来る3月25日(月)より全国書店および主要電子書籍ストアで発売が開始されます!
発売日の25日には、PC自作バラエティ生配信「髙橋敏也責任無編集 本ナマ!改造バカ」において本書籍の裏話を語る回を配信予定ですので、ぜひお早めにご予約いただき、発売当日にゲットすることをオススメします。続報を待たれよ!