忍者増田のレトロゲーム忍法帖

プレイヤーをドカンと突き放した難解アドベンチャー『MYST』

~『MYST』編 壱ノ巻~

忍者増田氏とPlayStation版『MYST』。
(C)Cyan, Inc. and SUNSOFT

 忍者増田氏が名作レトロゲームを紐解き、その作品にまつわるエピソードや、今改めてプレイしてみての感想を語る連載「忍者増田のレトロゲーム忍法帖」。

 第7弾は、アメリカ生まれの一風変わったアドベンチャーゲーム『MYST(ミスト)』をお届けします!


仕事じゃなければ遊ばなかった激ムズアドベンチャー『MYST』

PlayStation版『MYST』と、増田氏がログイン時代に作った攻略本

 今回のお題は、難解さとグラフィックの美麗さで知られるアドベンチャーゲーム『MYST』でござる。

 アメリカのCyan社が1993年にMacintosh用ゲームとして発売したのがオリジナルです。その後、日本でもWindowsや、セガサターン・PlayStation・3DOなどの家庭用ゲーム機で発売され、続編もたくさん登場した人気作でござる。

PlayStation版『MYST』のCDは綺麗な緑色。

 全世界で1000万本以上のヒットを記録した『MYST』。拙者が当時プレイしたのはセガサターン版だったのですが、その後もPSP版が発売され、iPhoneやゲームアーカイブスでも配信されていたのでござるな。

 ちなみに、今回の記事でプレイして画面写真を使用したのはPlayStation版でござる。

 拙者が『MYST』をプレイしたきっかけは、ログイン編集者時代に、このゲームの攻略本の制作を任されたからなのでした。つまり、自分の意思で遊んだわけではありません。絵はメチャメチャ綺麗だけど、やたらパズルチックで難しい謎解きが多いなぁというのが『MYST』をプレイしての第一印象。

 正直なことを言うと、拙者は仕事じゃなければ『MYST』というゲームには手を出さなかったでしょう。何かのきっかけでプレイしていたとしても、クリアーなどとてもできなかったと思います。最終的に好きなゲームにはなったでござるが、ぶっちゃけ死ぬほど好きというレベルでもありません。

 それでもなぜ今回『MYST』を取り上げたのかというと、当時の拙者にとても大事なことを気づかせてくれた、思い出深いゲームだからなのです。

『MYST』のタイトル画面。

操作はクリックのみ! だけど謎解きはとっても頭を使います

ミスト島のこの場所から冒険が始まる。もう最初から何をしたらいいかわからない。

 ゲームは、プレイヤーが突如、ミスト島という本作の舞台に入り込んでしまったところから始まります。この島にどんな謎があり、何をしたら良いのか、なんの情報も与えられていません。

 冒険に親切な誘導があるような、一本道で進むアドベンチャーゲームやRPGに慣れ切ったプレイヤーは、まずここでガツンとヤられるわけです。自分なりに島を探索して情報収集し、少しずつ自分に与えられた使命を推理してゲームを進めていかねばならないのでござる。

ミスト島は自然に恵まれた無人島だが、明らかに人工の建造物もたくさんある。
最初に拾う、冒険のヒントとなる紙切れ。ミスト島を歩き回ることで、アトラスとその妻キャサリンの存在が明らかとなる。そして彼らには、シーラスとアクナーという二人の息子がいるようだ。

 ゲーム内での操作は、ほぼ画面上のクリックのみで行われます。場所を移動するときも、アイテムやスイッチやドアなど様々なオブジェクトを調べるときも、すべてカーソルを該当の箇所に合わせてクリックするというスタイルでゲームが進みます。なので、操作自体はとても楽ちん。昔のPCアドベンチャーのように、言葉探しで詰まることもありません。

ミスト島には不思議な建造物があり、そのすべてに意味がある。
ミスト島のライブラリーにある本には、たくさんのヒントが隠されている。メモ必須。

 クリックだけで進むアドベンチャーなんて、一見簡単にクリアーできてしまいそうでござるが、パズルチックな謎を解くには相当の推理力が要求され、そうすんなりとは進まない。多湖輝氏の『頭の体操』でも、あまりにパズルパズルした問題は飛ばして読むような拙者でしたから、ニンとも面倒くさいゲームだなぁと最初は頭を抱えていたのでした。

【忍者増田氏がMYSTをプレイした動画】

 次回は、難解な『MYST』を根気よくプレイし続けた増田氏が気づいた、本作の面白さについて語ります。お楽しみに!

 ※次回掲載は10月2日(火)を予定しています。

注釈

  1. 続編
    『MYST』は、1998年に2作目『RIVEN THE SEQUEL TO MYST』、2001年に3作目『MYST III EXILE』、2004年に4作目『MYST IV REVELATION』、2005年に5作目『Myst V:End of Ages』が発売され完結。2003年に『MYST Uru:Ages Beyond Myst』という外伝的作品も発売されている。増田氏は、『MYST』以外は未プレイだそうだ。
  2. ログイン
    かつてアスキー(現Gzブレイン)から刊行されていたPCゲーム誌。1982年、月刊アスキーの季刊別冊「別冊ログイン」として誕生。その後1983年に月刊化した「月刊ログイン」を経て1988年に月2回刊「ログイン」に。2008年に休刊。立ち位置としてはパソコンゲーム雑誌だが、それ以外にもバラエティーに富んだ記事が掲載されていたことで知られる。読者投稿ページが栄えていたのも特徴で、増田氏はログインの常連投稿者を経て、ログイン編集者となった。
  3. 攻略本
    増田氏が当時編集者として制作した『MYST』の攻略本は、奥付によれば1995年4月4日初版発行。ライターは、マッキー佐藤さんという女性。マッキーさんも元ログイン編集者で、『愛のモザイク劇場』というアダルトなページを担当していた女王様キャラとして知られる。増田氏とはとても仲が良く、現在でも交流は続いているとのこと。
  4. 昔のPCアドベンチャー
    昔のPCアドベンチャーゲームは、「ドア アケル」のように、名詞プラス動詞で直接コマンドを入力して行動していた。よって、正解の行動が頭では予想がついていても、対応する言葉探しで詰まったりすることがあったし、物語と何の脈絡もない理不尽な謎解きが登場する作品も多かった。
  5. 頭の体操
    心理学者の多湖輝氏が、1966年に発表したクイズ集。光文社発行。ベストセラーとなり、約40年間に23巻までの続編が出版されている。増田氏の父が4巻まで持っていたのをきっかけに、増田氏も読み出したそうだ。多湖氏は2016年、間質性肺炎により90歳で死去。

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『MYST』は今このプラットフォームで遊べる

『MYST』を今遊ぶには?(参考価格/価格は税込表記)
Macintosh版(中古品)1,980円前後
Windows版(並行輸入品)7,000円前後
セガサターン版(新品)1,800円前後
PlayStation版(新品)18,000円前後
3DO版(新品)6,800円前後
PSP版(新品)24,980円前後
iPhone/iPod touch版600円
ゲームアーカイブス版617円
※2017年9月調べ

(C)Cyan, Inc. and SUNSOFT

増田厚(ペンネーム:忍者増田)

 茨城県生まれ。漫画『ゲームセンターあらし』や『マイコン電児ラン』の影響を受け、中学2年生のときにパソコンをいじり始める。東京の大学入学と同時に、パソコンゲーム誌『ログイン』にバイトとして採用され、6年間在籍。忍者装束を着て誌面に出る編集者として認知度が高まる。その後、家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ通』に3年在籍したあと、フリーライターとなる。現在はおもに、雑誌やWeb、攻略本などでゲームのレビュー記事や攻略記事を執筆しつつ、ゲーム以外のライティングも。得意なゲームは、『ポケモン』、『ウィザードリィ』、『サカつく』など。