忍者増田のレトロゲーム忍法帖

『MYST』の美麗で半リアルな幻想的世界に酔う忍者増田氏

~『MYST』編 参ノ巻~

『MYST』の攻略本を読み懐かしむ忍者増田氏。
(C)Cyan, Inc. and SUNSOFT

 『MYST(ミスト)』といえば、グラフィックの美しさでも話題を呼んだゲーム。忍者増田氏も、本作のグラフィックに関しては一家言あるようです。



アドベンチャーゲームの本質を『MYST』で再確認

 拙者は『MYST』というゲームをプレイして、親切なアドベンチャーやRPGばかりプレイしすぎていて、すっかりヤワになっていた自分に気づいたのでした。

 「最初にどう行動したらいいかわからない」なんて甘えちゃいけない。わからなければ、自分で謎を探しに行けばいいのです。そして謎一つ一つも、どれだけ難解だろうが、自分で頭を働かせて解いていくもの。というか、理不尽な昔のPCアドベンチャーをプレイしていた頃の自分なら実際にそうしていたはずです。アドベンチャーゲームって、本来そういうものではなかっただろうか……。『MYST』はアドベンチャーゲームの本質というものを拙者に再確認させてくれた、恩師のような存在なのでござるよ。

4つの時代からミスト島に戻るには、各世界に隠されているミストの本を開き、触れる必要がある。

人っ子一人いない美しい世界に放り込まれた孤独感

 総括すると、拙者が思う『MYST』の魅力は、「巧妙に仕掛けられた難解な謎を解いたときの達成感」とでも言いましょうか。

 そしてもう一つの魅力が、やはり「グラフィックの美しさ」だと思います。というか拙者的には正確に言えば、「美麗なグラフィックと、その世界が醸し出す寂しげな雰囲気」ですかね。

 明らかに人が作り出したものが散在しているのに、人っ子一人いない、動物の息吹が感じられない不思議な世界……。そんな、美しい自然と人工物が同居する世界に一人放り込まれた孤独感が、ニンともたまりません。ってか人は出てくるのですが、本の中に閉じ込められていたり、映像だったりですからね。ひっそりとした半リアルな幻想的な世界に酔わせてくれるのでござる。

増田氏が好きなチャネルウッド時代。後方には風車が見える。

 美しい4つの時代のなかでも、拙者が特に好きなのは「チャネルウッド時代」。水辺に何本も生息している大木は針葉樹でしょうか。その木々の上に集落ができているのでござるが、やっぱり人の姿は見当たりません。まさに「夏草や 兵どもが 夢の跡」といった感じの廃屋感がお気に入りです。

チャネルウッド時代では、水力で木製のエレベーターを動かして進んで行く。パイプスイッチを動かし、エレベーターのほうに水が流れるようにしなければならない。
チャネルウッド時代は、樹上に集落があり、2階と3階がある。

 そんな大好きなチャネルウッド時代なのに、当時自分の作った攻略本を見返したら、なんと名前を誤記しているページがあることに気づきました。詳しくは写真を参照してくだされ。このたび新しく購入したこの『MYST』の攻略本は7刷。拙者は、初版を出したあと別の編集部に移籍したことで、2刷以降は担当から離れ関わっていません。7回もチェックする間に誰か気づけよという感じだけど、当然ながら自分にも責任がないわけではありません。戒めの意味も含めて、ここに晒しておきましょう。ニンともカンとも。

『MYST』の攻略本と、誤植。当時、ファミ通の攻略本をログイン編集者である増田氏が作るという、変則的体制だったらしい。

 今回、当記事の原稿執筆のために、20年ぶりくらいににPlayStation版『MYST』をプレイさせていただきました。もうすっかり内容は忘れてるし、締め切りがあるので攻略本を見ながら……。

 そうしたら……。

 いやあ、攻略本見ながらでも難しい! すっかりヤワになっていた自分に気づかされました。


 『MYST』を恩師とまで言い切った増田氏でしたが、また20年経って、再びアドベンチャーゲームに対してヤワになっていたというオチがあったようです。チャンチャン!

 ※次回掲載は10月17日(火)を予定しています。

注釈

  1. 動物の息吹が感じられない
    突っ込まれる前にと、増田氏が言っていたことを。動物はほぼ見当たりませんが、たまに道端に小鳥がいたり、鳥だか翼竜だかが飛んでいたりするのも見えたそうです(壱ノ巻の冒険の始まり写真の右上参照)。あと、もちろん植物は生えてます。
  2. 夏草や 兵どもが 夢の跡
    俳諧師・松尾芭蕉が、平泉で詠んだ俳句。かつて武人たちが功名を夢見て奮戦した場所も今は夏草が生い茂るばかりという、栄華の儚さを詠んだ句です。増田氏が特に好きな芭蕉の句とのことですが、他の句はよく知らないそうです。ちなみに、松尾芭蕉忍者説について増田氏に話を聞こうと思いましたが、長くなりそうなのでやめました。
  3. 別の編集部
    週刊ファミ通編集部のこと。正確に言えば、増田氏は、『MYST』攻略本の制作の終わり際に、ログイン編集部から週刊ファミ通編集部に移籍したそうだ。特に要らない情報でしたか?

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※2017年9月調べ

(C)Cyan, Inc. and SUNSOFT

増田厚(ペンネーム:忍者増田)

 茨城県生まれ。漫画『ゲームセンターあらし』や『マイコン電児ラン』の影響を受け、中学2年生のときにパソコンをいじり始める。東京の大学入学と同時に、パソコンゲーム誌『ログイン』にバイトとして採用され、6年間在籍。忍者装束を着て誌面に出る編集者として認知度が高まる。その後、家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ通』に3年在籍したあと、フリーライターとなる。現在はおもに、雑誌やWeb、攻略本などでゲームのレビュー記事や攻略記事を執筆しつつ、ゲーム以外のライティングも。得意なゲームは、『ポケモン』、『ウィザードリィ』、『サカつく』など。