自作PCで楽しむ!仮想通貨マイニング

マイニング専用OS「ethOS」で仮想通貨を掘ろう、導入から設定までを実践!

安定性がウリのマイニングOS、ビデオカード×10枚以上の環境も構築可能 text by マイナー太郎

 今年はビットコインなど仮想通貨が大きく注目され、自作PC市場ではビデオカードを使ったマイニングブームも起こりました。

 PCマイニングを本格的に行う場合、多数のビデオカードを使用しますが、ビデオカードの枚数が増えれば増えるほど安定させることが難しくなります。その要因は、ビデオカードが増えることでピーキーな部分が出たり、OSやドライバの影響だったり、温度や電力の供給状態だったりと様々です。

 リセットを掛けながら運用すれば問題はありませんが、本格的にマイニングを行っている人ほど少しでもPCは安定稼働させたいと思うのではないでしょうか。

 そこで、今回のレビューでは、マイニング専用にカスタムされ、動作が安定していると言われる「ethOS」を取り上げたいと思います。導入からセットアップを済ませ稼働させるところまで手順を紹介するので、初めて同OSを導入するという方は是非参考にしてください。セットアップはWindowsよりもかなり簡単です!

マイニング専用にLinuxをカスタムした「ethOS」、導入の手軽さが魅力

 ethOSは、Linuxベースで作られたマイニング専用OSで、ドライバやマイニングソフトなどの設定があらかじめ済ませてある状態で提供されています。

 このため、USBメモリ版を購入すればインストール作業などは不要で、OSは即起動可能。ウォレットコードを自分のものに書き換えるだけですぐにマイニングを始めることができます。Linuxベースで安定性が高い点と、導入が非常に手軽と言う部分がethOSの魅力です。

 マイニングする仮想通貨はイーサリアム(Ethereum)で、他の仮想通貨もマイニングできますが、基本的にはイーサリアムを専門的にマイニングするためのOSです。

ethOSのメイン画面
日本では代理店のアユートからUSBメモリにインストールされた状態で販売されている。価格は税込4,320円。

 以前であれば海外から輸入するか、海外のダウンロードサイトから購入する以外に入手方法はありませんでしたが、現在は日本でも入手可能になり、代理店のアユートからUSBメモリに入った状態のものが販売されています。国内で購入できるようになったので、入手性も改善されました。

使用するのはRadeon RX 570×8枚構成のマイニングリグ

 今回ethOSを導入するのは、Radeon RX 570×8枚構成のマイニングリグです。

 使用しているPCパーツは、手にに入りやすく安定性の高いものからチョイス。メタルラックよりも専用フレームを使用した方が綺麗にまとめられるので、アユートから販売されているマイニング用フレーム「PM-MINING-F」をベースに使用しています。

BIOSTAR TB250-BTC+(Intel B250)
PowerColor AXRX 570 4GBD5-DM(Radeon RX 570)
Cooler Master RSC00-AFBAG1-JP(1,200W)
アユート PM-PCIE1T1(左) / B073RDFSYR(右)
Intel Celeron G3930
Team製DDR4-2400 4GB

 パーツを選ぶ際の注意点ですが、マザーボードはマイニング用モデルを選ぶことをお勧めします。

 マイニング用でないモデルを選ぶと、特別な設定をしないとGPUを認識しなかったり、そもそも認識できる枚数が少なかったりと、セッティングに手間や時間がかかります。今回使用しているBIOSTAR TB250-BTC+であれば、マイニング用の設定「Mining mode」が用意されているので、手軽に導入できます。

 もう一点、電源周りも注意して欲しい部分があります。一番やりがちなミスが、SATA電源ケーブルにライザーカードを繋ぎすぎてしまうことです。

 1本のSATA電源ケーブルに3枚以上ライザーカードを接続すると、場合によってはケーブルが燃えることがあります。できれば1本のSATAケーブルには1枚、最大でも2枚までにとどめてください。

 また、SATA電源ケーブルだけで給電しようとすると口が足りなくなることが多いので、使用する電源の仕様にあわせ、ライザーカードはビデオカード用6ピンコネクタ給電タイプや、4ピンペリフェラル給電タイプのものを混ぜて使うと良いでしょう。

イーサリアム公式ウォレットの「mist」
さまざまな仮想通貨に対応しているウォレットの「Jaxx」

 このほかに事前に用意しておくものとしては、マイニングした通貨を貯めるためのウォレットも必要です。ethOSはイーサリアムをメインにマイニングするので、イーサリアム対応のウォレットを用意しましょう。

 ethOSは基本的にリモート操作で管理しますが、セットアップ時はマウスとキーボードが必要になるので、これらも準備しておいてください。

ethOSの導入はUSBメモリを接続し、BIOS設定を変更するだけ

 それではethOSのセットアップにはいります。

 ethOSの導入は、組み上がったマイニングリグのUSBポートに、ethosの入ったUSBメモリを接続するだけです。USBメモリ内のデータがインストール済みの状態になっているので、非常に手軽です。

 なお、一つだけ注意点があり、ethOSが起動可能なポートには制限があります。公式サイトのサポートページによると、マザーボードI/Oパネル側にあるLANポート直下のUSBポートか、USB 2.0のポートとされています。今回の環境ではLANポート直下のUSB 2.0ポートに接続して使用しています。

BIOS設定
「Chipset」項目内「Mining Mode」の設定が「Enable」になっているか確認
「Boot」項目内「Boot option filter」の設定を「UEFI only」に

 続いてはBIOSの設定です。今回はBIOSTAR TB250-BTC+を例に解説します。BIOSですが、バージョンが古い場合は表記などが異なるので、最新版へのアップデートをお勧めします。

 まずはBIOSの「Chipset」の項目内にある「Mining Mode」の項目を選択し、同項目が「Enable」となっているか確認します。「Enable」となっていない場合、ビデオカードが6枚以上接続すると起動できなくなるので、PCがうまく起動しない場合も最小構成にしてこの項目の状態確認してください。「Enable」が選択されると、マイニング向けに該当箇所の設定が変更され、6枚以上のビデオカードを接続しても動作可能になります。

 Mining Modeが有効になると、自動的にブート関連の項目も変更されますが、念のため「Boot」項目内の「Boot option filter」の設定も「UEFI only」を選択し、UEFI対応OSのみが起動する状態にします。この項目を変更しない場合、まれにethOSの読み込みに失敗する場合があるので、その対策です。

 以上の設定を確認し、PCを再起動してください。再起動後、自動的にOSが起動します。

ethOS起動直後のデスクトップ、左側にステータス情報、右側にコマンドライン情報が表示される
ビデオカード毎に表示されているHashの値が0から変われば正常動作

 ethOSが立ち上がると、画像のようなデスクトップ画面が表示されます。各ビデオカードのステータスが確認できます。動作温度、ファンの設定、Hash値が表示されます。しばらく待つと自動的にマイニングが開始され、Hash値が0からかわります。全てのビデオカードのHash値が0から変われば正常動作状態となります。

ウォレット情報の書き換え

 デフォルト状態のethOSは、マイニングしたコインを開発者のウォレットに送る設定になっています。これは動作チェックを手軽に行うためのもので、正常動作が確認できたら自分のウォレットにコインが送られるように設定を変更しましょう。

 画面左下にカーソルを移動すると、メニューアイコンが表示されます。左から2番目のファイルのマークをクリックするとフォルダ(Home Folder)が開かれるので、その中にある設定ファイルのlocal.confをダブルクリックして開きます。ethOSはLinuxベースですが、操作感はWindowsとほぼ同じといった感じになっています。

 設定値が書かれたテキストファイルが開かれるので、3行目に記載されている「Proxywallet」の項目を書き換えます。デフォルトで記載されている数値は開発者のウォレットアドレスで、この部分を自分のアドレスに書き換えます。

 なお、書き換えるアドレスはかならずイーサリアム対応のウォレットアドレスにする必要があるので、誤ってビットコイン用のアドレスを記入したりしないよう注意してください。

 書き換え終わったらコントロールキーとSキーを同時押し変更内容をセーブし、ファイルを閉じれば完了です。

設定ファイルの有効化の手順
remote.confファイルを選択し開く
一行目に記載されているURLの頭に「#」を追加
書き換え内容を保存し、ファイルを閉じる

 次に、ウォレット情報を書き換えた設定ファイルを有効化します。

 ethOSは、どの設定ファイルを読み込むか任意に設定可能で、例えば、オンライン上に置いた設定ファイルを読み込ませて動作させることも可能です。これは複数のマイニングリグを管理しやすくするためのものです。ただし、マイニングリグが少ないのであれば不要な機能なので、設定を変更します。

 設定ファイルのlocal.confと同じフォルダ内にremote.confというファイルがあるので、このファイルを開きます。デフォルトの状態ではethOSの公式サイトにある設定ファイルを読み込むようになっているので、これを無効化します。

 remote.confを開くと一行目にURLが記載されていますが、この文字列の頭に「#」を記入し、保存します。これで設定ファイルを任意の場所から読み込む機能が無効化され、ローカルにある設定ファイルlocal.confが優先的に読み込まれる状態になります。

 これでOSの設定は完了です。再起動すると全てが反映された状態になります。

リモート環境からのアクセス方法
「http//192.168.142.80/」の部分がリモートアクセスする際のアドレス
ブラウザにアドレスを入力することで別の端末から操作が可能になる
アクセスした端末にはethOSのコマンドライン部分の情報が表示される

 ethOSは、設定が済んだ後はリモートで管理・運用する仕組みになっています。

 デスクトップ画面の左上に「admin: http//192.168.142.80/」とアドレスが表示されていますが、これがマイニングリグに他の端末からアクセスするためのアドレスになります。使用しているネットワーク環境毎に値は違うので、使用中のethOS上で表示されているアドレスをメモしてください。

 このアドレスをWebブラウザに入力すればリモートアクセスが可能で、コマンドラインから本体の操作や状態確認などが行えます。ログインを求められますので以下を入力してログインしてください。

ID:ethos
パスワード:live

 これで設定などは一通り完了なので、ディスプレイ、キーボード、マウスは外してしまってかまいません。なお、パスワードの変更などはコマンドラインから行うことが可能です。

うまく動作しない場合は最小構成でテスト

接続するビデオカードを1枚にして起動
ビデオカードが認識されているか確認
しばらくしてHashの値が0から変われば正常動作、0のままの場合は接続不良などが疑われます

 OS自体が起動できない場合は、機材に不良品があるか、BIOSの設定がうまくいっていない可能性があるので、まずはその点を再確認してください。また、OSは起動するものの、マイニングが行えない場合は、設定ファイルの記入に失敗している可能性があります。

 ビデオカードが認識されない、マイニングが始まらないといった場合は、ライザーカードの接触不良、ビデオカードの故障などが疑われるので、1枚ずつ正常動作するか確認を行います。

 ビデオカードの1枚の状態でethOSを起動し、しばらく経ってHashの値が0から変われば正常です。これを1枚ずつ増やして検証を行い、問題となっているビデオカードを特定し対策を取ります。接触が甘くなっているだけということもよくあるので、ライザーカードとビデオカードを接続し直すと直るという場合もよくあります。

コマンドラインの使い方

コマンドラインで「helpme」と入力し実行すると、コマンドの一覧が表示される

 ethOSはコマンドラインから様々な操作が可能です。リモートで操作する場合は、コマンドラインを利用し操作することになります。

 コマンドライン上で「helpme」と入力しエンターキーを押すと、コマンドの一覧情報が表示されます。基本的なコマンドはここに載っているので、忘れてしまった際などは実行して確認してください。

 はじめはとっつきにくいと思うかもしれませんが、慣れればコマンドラインからの操作はかなり便利で手軽です。

 今回は、覚えておいた方が良い、よく使うコマンドをいくつか紹介します。

コマンド機能
r再起動。設定を変更した際などに使います。
minestop/minestartマイニングスタート/ストップ。マイニングを手動で止めたり動かしたい場合に使います。
allow/disallowマイニング自動開始設定。起動時に自動的にマイニングを開始させたくない場合はdisallow、自動的に開始させたい場合はallowと入力します。初期値はallowになっています。
show minerマイニングの状態を表示します。ハッシュレートや無効シェア数などが表示されます。
show stats動作温度やファンの回転数、バージョン情報など、あらゆる情報を表示します。
passwd ethosログインパスワードを変更します。現在のパスワードを1回入力後、新しいパスワードの入力を2回求められます。

ビデオカードのセッティングを変更してみよう

local.conf内の設定値を書き換えることでチューニングが行える
「globalcore」や「globalmem」の値を変更することで動作クロックを変更することができる
同ファイル内に設定可能な例のサンプル情報が記載されている

 ethOSもWindows環境同様にビデオカードのチューニングなどを行うことが可能です。

 設定ファイルのlocal.conf内の値を変えることで、動作設定を好みの状態に変更することができます。例えば、「global fan」の値を「100」と書き換えると、ファンが100%で回る状態になり、うるさくはなるものの冷却性能を最大化をすることができます。

 ビデオカードの動作クロックを変更したい場合は、「globalcore」(コアクロック設定)と「globalmem」(メモリクロック設定)の値を変更することで設定を変えられます。

 ただし、オーバークロックなどを行った場合はビデオカードが壊れる可能性があるので、設定を変更する場合は値は少しずつ変更するなど、十分注意する必要があります。基本的には、オーバークロックモデルのコアクロックを定格相当などに落とし、ワットパフォーマンスを向上させたりすることに使用するのが良いでしょう。

 その他にも様々な設定項目があり、local.conf内にサンプルとして情報が記載されているので、チューニングを行いたい場合は説明を読みながら設定値を変更してみてください。

マイニングを本格的に行うならethOSが現状ベスト

 ethOSは導入も手軽に行え、安定度も高いOSです。

 完全に落ちないといった環境はethOSでも構築は難しいのですが、Windows環境と比べるとエラーの発生率はかなり低いので、本格的にマイニングを行うなら現状ベストに近い環境が構築できます。自動更新によってマイニングが止められることも無いので、機会損失が減る点もメリットになります。

 また、価格が税込4,320円と、1.4万円前後で販売されているWindows 10 Homeよりも割安である点も魅力。マイニングによって機材コストを回収するのであれば、導入コストの低さは重視すべきポイントになります。

 今回は導入し運用を開始するまでの解説なので触れていませんが、カスタマイズすれば他の仮想通貨をマイニングすることも可能で、効率を高めるためのチューニングなども行えます。自分の環境に合わせカスタマイズできる部分はまだまだあるので、ethOSを導入した際にはぜひ設定などを研究してみてください。

[制作協力:アユート]