ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

5インチ2HDドライブを搭載し、PC-88シリーズに新たな流れを作った「NEC PC-8801mkIIMR」

正面からの外見はロゴが違う以外、PC-8801mkIIFRとほぼ同じです。キーボードも共通で、右上にプリントされている文字は「PC-8801」のみです。片方のFDDが焼けているので、ちょっとアンバランスに見えます。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げるのは、NECが1985年にPC-8801mkIIFRと同じタイミングで発売した機種、PC-8801mkIIMRです。

搭載しているFDDは1メガバイトタイプで、アクセスすると「ガチャ、ガチャ」と若干大きな音がします。個人的には、その音に高級感を感じたのですが、周囲の人に聞いてみたところ「うるさくてイヤだった」という否定的な意見がほとんどでした。正面から見て左下にあるディップスイッチも、FRと同じです

 1985年末に、PC-8801mkIISR(以下、SR)の廉価版とも言えるPC-8801mkIIFR(同FR)が登場しましたが、それと同じタイミングで市場デビューしたハードが、このPC-8801mkIIMR(同MR)です。

 当時の宣伝文を見ると「8ビットの頂点に立つPC-8801mkIIMRは~(中略)~メインメモリも192Kバイトと群を抜く記憶容量を実現~(後略)」と書かれており、NECがかなりの自信を持って市場へと送り込んだのが良く分かります。実際、搭載していたドライブはSRやFRが320Kバイトタイプ5インチFDDだったところ、MRは1Mバイトタイプ5インチFDDを2台内蔵。しかも、FRがFDD無しで99,800円という安価なmodel 10からFDD2基搭載のmodel 30までを用意していたのに対し、MRはFDD2基搭載の1モデルのみ。本体標準価格も、FRのmodel 30から6万円上乗せとなる238,000円というワンランク上を設定していました。

当時の広告では「1MバイトFDD搭載の実力派。これが8ビット最新鋭機。」と、そのハイパフォーマンスをアナウンスしてました。ちなみに、機種名の“SR”や“TR”は、文字部分はベタ塗りでしたが、FR・MR以降はその部分がスキャンラインが入ったような感じで表現されるようになっています

 趣味で使うユーザーを対象としていたFRに対し、MRはデータベースや日本語ワードプロセッサを使用するようなビジネス寄りのユーザーを想定していたということなのでしょう。当時としては大容量だったメモリを有効に活かすゲームもいくつか登場し、そのようなタイトルであればMRユーザーはSRやFR、またはTRユーザーと比べてディスクアクセスの少ない、快適な環境で遊ぶこともできました。

背面のインタフェースは下段左からボリュームつまみ、アナログRGB端子、デジタルRGB端子、ラインアウト端子、RS-232C端子、I/Oポート、プリンタポートとなっています。上段には電源の他にサービスコンセントが2つと、拡張スロットがFRよりも1つ多い2スロット分用意されています。FRにはあったCMT端子は、MRでは削除されています。
ガワを取り払った中身も、パッと見はFRとあまり代わり映えしません

 しかし、実際はSR以降対応ソフトを安く遊べるFRが数多く出回り、MRはそのパワフルさを活かす機会があまりありませんでした。また、1Mバイトタイプの5インチFDDで書き込みをしてしまったフロッピーディスクは、後にSRやFRで読み込むことができなくなってしまうことなども希に起きていたため、ゲームをメインとしていたユーザーからは敬遠されてしまったのかもしれません。

 本機以降、PC-8801シリーズは1Mバイトタイプ5インチFDDを搭載した“M”シリーズと、従来通りに320Kバイトタイプ5インチFDDを内蔵した“F”シリーズに分かれていきます。また、型番としてPC-8801の後に“mkII”が付く、最後のモデルでもありました。