ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

PC-6001とよく似たカラーリングの小型パソコン「SANYO PHC-25」

大きさはコンパクトにまとまっていて本体重量も約1.1kgと軽く、電源内蔵とは思えないほどです。オレンジ色のキーが、非常に目に栄えます

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、NECのPC-6001とカラーリングが似ている、SANYOの「PHC-25」(1982年発売)を取り上げています。

 1980年代前半に発売されたマイコン・パソコンは、そのほとんどが独自規格を採用していたため、A社のパソコン用プログラムはB社のパソコンでは読み込めなかったり動かないのは当たり前でした。しかし、なかにはそうではない機種もあり、そのうちの1つがSANYOのPHC-25でした。おそらく、PHC-25の名前を一躍有名にしたのは、すがやみつる先生著『こんにちはマイコン』後半に掲載されていた“マイコンベストカタログ”のコーナーではないでしょうか? 市場に出回ったのは1982年中頃のようですが、当時のショップ広告を見ても販売対象機種として取り上げているお店が見あたらないのが、今となっては不思議です。

 ハードは、フルキーの部分はグレーで、それ以外のキーはオレンジと、PC-6001を彷彿とさせるカラーリングが採用されています。ただし、オーバレイシートという概念は無く、ファンクションキーは4つ、その隣にカーソルキーが←→↑↓と並んでいるため、上下左右に移動するゲームを遊ぶには少々厳しい感じです。

本体を真上から撮影しました。大きさが分かるように、隣に5インチフロッピーディスクを配置しています。PC-6001と違い、STOPキーとHOMECLRキー、ページ切り替えキーはありません。SHIFTキーを押下しながらESCキーを押すことで、STOPキーと同じ動作をします。なお、PC-6001では独立していたINSキーとDELキーは、一つに纏められています
PC-6001では右側面に拡張スロットが用意されていますが、PHC-25の右側面は電源スイッチのみが配置されています
背面には左から、電源コネクタ、拡張バス、プリンタポート、ビデオ出力端子、チャンネル切り替えスイッチ、RF出力端子、CMTコネクタとなっています。本体には、ジョイスティック端子は存在しません

 スペックとしては、CPUにZ80A相当品を採用し、RAMは22KB、ROM24KBを搭載。テキストは32文字×16桁で、グラフィックモードは64×48ドットで9色のほか、128×192ドットでは4色、256×192ドットなら2色が扱えます。仮名文字は、カタカナとひらがなを使用できるということで、このあたりもPC-6001と似た仕様となっています。サウンド機能に関しては、PC-6001と同じく3重和音での演奏が可能です。ただし、別売りのシンセサイザを接続しないと、命令は実行されるものの音は出力されません。シンセサイザを繋いだ場合、キーを押下するごとにPC-6001ではお馴染みの“プッ”という音が聞こえます。

分解し、本体内部を撮影しました。CPUに、Z80A互換となるD780C-1が搭載されているのが見えます。このCPUは、FP-1100やPC-8001mkII、SC-3000などでも採用されています。
こちらが別売りのシンセサイザ、PSG-01です。背面には本体と接続する拡張バスと、オーディオ出力端子が用意され、正面にはジョイスティックと記された2つのポートが見えます。音量は、この時期のハードにありがちな丸いボリュームつまみでは無く、スライド式を採用しています

 以下の画面写真を見ると分かると思いますが、緑色を背景に文字が表示されたり、PC-6001では“How Many Pages?“と表示されるところが“Screen?”となっているなど、起動時の挙動もPC-6001に近いです。ここまで来ると、次に気になるのは“果たしてPC-6001向けゲームは動くのか?”というところだと思いますので、いくつか実際に試してみました。

 手元に用意したのは、PC-6001向けタイトルの代表作の1つである「AX」シリーズから『AX-2 宇宙輸送船ノストロモ』と『AX-3 マイクロターン』、ソフトハウスロメロの『シュガーシリーズ』、そして雑誌や書籍から入力したBASICのプログラムが保存されている当時のテープと、『こんにちはマイコン』掲載の『あらし UFOゲーム』です。

実際に、PHC-25で『AX-2 宇宙輸送船ノストロモ』から『イン・ザ・ウッズ』を読み込ませた様子を撮影してみました。オチとしては、エラーで止まってしまいました。なお、N60-BASICでのエラーは“?×× Error”と表示されますが、PHC-25 SANYO BASICでは、このように省略されない形でのエラー表示となっています。

 マシン語を使用しているプログラムは動かないと考えていましたので、まずはダメ元で「AX」シリーズを読み込ませてみました。結果、すべてのタイトルを読み込むことが出来ましたが、実行するとフリーズしたりエラーで止まるなど、ほぼ予想通りとなっています。特に、PC-6001用のシューティングやアクションゲームで当たり判定に使用される“SCREEN(X,Y)”命令がエラーとなるほか、EXEC命令を使用しているプログラムもほぼNGとなりました。

『あらし UFOゲーム』ではインベーダー映像が表示され、シンセサイザを接続していればBGMも流れますが、説明後のゲーム画面で当たり判定が発生すると“Syntax Error”を表示して止まります。

 次に試した『シュガーシリーズ』では、1本目の『デス・リバー』、2本目『パチンコ』はエラーとなり、3本目にプレイした道を選択して進むアドベンチャーゲームのようなタイトル『アーク』のみ、最後まで遊ぶことができました。

 さらに、プログラムを入力したテープからロードした作品も、そのほとんどが“SCREEN(X,Y)”命令部分でエラーとなってしまう結果に……。『あらし UFOゲーム』も、当たり判定に“SCREEN(X,Y)”命令を使用しているため、ショットを撃つとエラーで止まってしまいます。なお、そこに至るまでのタイトル画面や遊び方部分に関しては、きちんと表示されました。

参考までに、起動時の画面も掲載しました。PC-6001でいうところのページ1ではフリーエリアが14265bytes、ページ2は8121bytesと表示されます。

 これらのことから考えると、PHC-25はPC-6001でカセットテープに保存されたデータは読み込めるものの、実行できるかどうかは使われている命令次第、という結論になるかと思います。市場へはあまり出回っていないと思われるハードですが、パピコンファンならば一度は使ってみたい機種かもしれません。