ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

ミュージックキーボードと繋がる異色のMSX「ヤマハ CX5F」

黒系統のカラーで統一された渋さが目を引きます。“CX5F”と記された書体は、同社が発売しているミュージックキーボード「DX7」などに使われているものと同じです。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、ヤマハが1984年発売したMSXパソコンの一つ、ミュージックコンピュータ「CX5F」を取り上げました。

 1980年代初頭、ヤマハは自社オリジナルブランドのパソコンとして、YISというホームコンピュータを発売していました。木目調の家具に収まって撮影されているそのハードは、スペックは高かったものの価格は50万円以上もしたため、趣味目的としては盛り上がることなく終わってしまいます。

こちらは、80年代初頭に発売されていたヤマハのパソコン、YISシリーズの広告です。スペックも凄いですが、価格もなかなかでした。木目調のインテリアに合わせたカラーリングのため、違和感無く設置されているのも凄いです。

 その後、MSXパソコンへと参入したヤマハは、いくつものハードを発売していきますが、そのうちの一つが今回取り上げたCX5Fです。他にも類似機種としてCX5やYIS503、YIS303がありますが、YISシリーズが家電量販店を中心に販売されていたのに対し、CXシリーズはヤマハのシンセサイザ「DX7」などにカラーリングを合わせ、楽器の一種と位置づけて楽器店を中心に販売されていたモデルです。

当時の広告では、同社のミュージックキーボード「DX7」や「YK-10」などと一緒に掲載されていました。

 ヤマハのMSXの特長としては、他はビクターのMSXにしかない“サイドスロット”が挙げられるでしょう。ここに拡張ユニットを挿すことで、さまざまなパワーアップが可能です。今回取り上げたCX5Fの場合は、サイドスロットにFM Sound Synthesizer UnitであるSFG-01を装着して販売されていました。

 MSXは規格上、本体に搭載されているのは俗に言うPSG音源ですが、CX5FではそれにくわえてFM音源をも使うことができました。SFG-01に採用されていたのはYM2151と呼ばれるチップで、後にX1turboZシリーズやX68000シリーズでも使われています。更にSFG-01には、入出力のMIDIインタフェース、オーディオステレオ出力、専用キーボードインタフェースも取り揃えられていて、ここへミュージックキーボードなどを接続することができました。

左側面には電源スイッチの他、サイドスロットに挿し込まれたSFG-01に設けられたインタフェースが見えます。左から順に、ミュージックキーボードコネクタ、MIDI IN/OUT端子、左右オーディオ出力端子となっています。SFG-01は単品でも販売されていて、標準小売価格は19,800円でした。

 MSXとしてはメモリ32KBでスロットが1つと、この時代としては標準的なモデルだったといえるでしょう。ただし、背面にもう1つスロット(リアスロット)が用意されていて、ここへオプションのシングルカートリッジアダプタCA-01を装着することで、ROMカートリッジスロットとして機能させることができます。後々の事を考えるとシングルカートリッジアダプタは持っていたい周辺機器ですが、標準小売価格が3,800円だったため「この値段なら新しいソフトが1本買える」と思い、ソフトを買ってしまった人もいたのではないでしょうか。

背面は左から、リアスロット、プリンタポート、CMT端子、DIN5ピンモニタ端子となっています。
右側面には、ジョイスティック端子が2つ用意されている以外は、特に何もありません。

 映像出力端子は他のMSXと違い、DIN5ピンが採用されています。そのため、このままではコンポジット入力やRGB入力端子に接続することもままなりません。変換コネクタのVC-01またはRF-01などが必要となりますが、背面のピンアサインがヤマハのホームページからダウンロードできるCX5Fのマニュアルに掲載されていますので、それを見て自作変換コネクタを作ってしまうのも一つの手かもしれません。