ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

電源オンでグラフィックツールが起動、“感性MSX2”こと「三菱 ML-G10」

カートリッジスロットの隣にスリットが入っているからか、見た目よりもシャープな印象を受ける外観です。キーは白と灰色の、2色に色分けされています。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、三菱電機株式会社が1985年8月21日に発売したMSX2規格のパソコン「ML-G10」です。

 1985年に入り、MSX2規格が発表されると、各メーカーはそれぞれ特色を生かしたMSX2規格のパソコンを発売していきます。“Letus”の愛称をつけたMSXパソコンで参入した三菱も、特徴ある機種をMSX2マシンとして投入しました。それが、今回取り上げた“感性MSX2”ことMelbrain's(メルブレーンズ)・ML-G10です。スペックとしてはRAMを64KB、VRAM128KBを搭載し、2つのカートリッジスロットと独立テンキーを備えていました。当時の標準小売価格は、98,000円です。

白のフルキー部分と、灰色の機能キー部分との対比が美しいキーボードです。奇をてらった部分がなく、質実剛健という表現がマッチしています。

 通常のMSX2マシンは電源をオンにすると、MSXのロゴがアニメーションした後に各社オリジナルの起動メニュー、またはBASICの画面が表示されます。しかしML-G10は起動後、いきなりグラフィックエディタ「アートペーパー」が立ち上がるようになっていました。このプログラムは32KBあり、わかりやすいアイコン操作とマウス・ジョイスティック・カーソルキーをサポートしたことなどをウリとしています。広告でも、ビデオから取り込んだ象の実写写真を用いて「アートペーパー」で胴を引き伸ばした後に、背景とスーパーインポーズして“ダックスフンゾウ”なる架空の生物を簡単に作れます、とアナウンスしていました。

広告では、AVアダプタを使用しての画像加工が前面に押し出されていました。ただし、肝心のAVアダプタに関しては“近日発売”としか書かれていませんでした。

 メニューからENDと書かれた部分にカーソルを移動させてスペースキーを押すか、DELキーを押しながら電源スイッチをオンにするかリセットボタンを押せば、BASICへと移行しました。もちろん、最初からカートリッジスロットにソフトを挿し込んで起動すれば、そのソフトが自動的に動きます。

【ML-G10の起動の様子】
起動時の模様を動画にしてみました。電源をオンにすると、自動で「アートペーパー」が起動するのがわかります。ENDへカーソルを移動させてスペースキーを押せば、OKと表示されたBASIC画面になります。

 周辺機器のAVアダプタML-85AVを接続すれば、ビデオなどの画面をデジタル化してコンピュータに取り込むデジタイズ機能、コンピュータの画面を重ねるスーパーインポーズ機能、作成した画面に文字を入れるテロップ機能、そして画面のビデオ録画ができました。趣味レベルでガリガリと使うというよりは、映像系の小規模プロダクションなどに需要があったと思われます。

背面は、下段左から2つ目のカートリッジスロット、プリンタポート、三菱独自のI/Oポート。上段にRF端子、チャンネル切り替えスイッチ、TV・コンポジット切り替えスイッチ、音声出力端子、映像出力端子、RGB出力端子となっています。

 もう一つの周辺機器として用意されていたのが、統合ソフトユニットのML-WPS1です。これは漢字ROMカートリッジと統合ソフトディスクで構成されていて、統合ソフトはワープロ/表計算/描画/通信の4機能を内蔵、これらの機能を自由に組み合わせて使用できました。価格は49,800円でしたが、ディスクドライブも必要となります。

 そのFDDも、1ドライブを内蔵したモデル・ML-30FDが64,800円、それを本体に接続する為のフロッピーディスクコントローラ・ML-30DCを25,000円で提供していました。本体とFDD、フロッピーディスクコントローラを揃えると約19万円にもなりますが、1985年に市場に流通していた他機種を見ればNECのPC-8801mkIISRが1ドライブモデルで213,000円、シャープのX1turboIIが178,000円(2ドライブモデル)、富士通のFM77AV1(1ドライブモデル)が128,000円と、この年一番人気のPC-8801mkIISRと比べれば安い価格でした。

正面から見て右側面には、CMT端子、ジョイスティックコネクタ2つ、リセットボタンが配置されています。このリセットボタンは誤って簡単に押されることがないよう、その左右に突起が設けられています。正面から見て左側には、電源スイッチのみがあります。

 もっとも、三菱もこの後にFDDを内蔵した機種ML-G30をリリースするのですが、そちらは1ドライブモデルが168,000円だったことを考えれば、この時点での約19万円も妥当な金額だったかと思われます。

 三菱はこの後、パソコン通信時代を見据えたML-TS2などを登場させますが、それを最後にMSX界隈からは去っていきます。