ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

80年代初期のパソコン事情(後編)

~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~

永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、80年代初期のパソコン事情ページの後半部分だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、本記事では一部カラーの写真を掲載している。


80年代初期のパソコン事情 -後編-


ラインナップが出揃い、御三家とそのほかに

 1982年になると、NECは「PC-9801」を発売、富士通が「FM-7」を、シャープが「MZ-700」シリーズ、そして「X1」を登場させ、ブームが爆発する。この年には、16ビットパソコン「ぴゅう太」やハンドヘルドコンピュータ「HC-20」、ゲームパソコン「M5」などのハードも登場し、いうなれば“マイコン百花繚乱”の様相を呈したといえよう。

 NECの「PC-9801」はビジネス向けとしてこの年に登場し、「PC-8801」より更にパワフルなスペックを誇っていた。そのぶん、値段もホームユースで使うには高く、当時の価格は298,000円。しかし、後の全盛期には国内市場占有率90%以上という、ほぼ独占状態を勝ち取ることになる。

スーパーインポーズやテレビコントロールなど、パソコンテレビの愛称に相応しい機能を取り込んでデビューしたX1。純正ディスプレイを使用すれば、横幅も同じサイズになるなど、家電のデザインも取り込んでいる。

 シャープが登場させた「MZ-700」シリーズは、「MZ-80K」シリーズの流れを汲むパソコン。オプションを何も付けなければ79,800円という破格の値段で購入できたことが功を奏し、人気を博した。同じシャープだが、別事業部からは「パソコンテレビ X1」が発売。テレビ画面とパソコン画面を重ね合わせる(スーパーインポーズ)ことができたり、「X1」側からテレビのチャンネル変更やタイマー設定が可能など、未来を予感させるようなハードだった。標準で備えられていた電磁カセットメカもスピードが2700ボーと早く、頭出し可能だったこともあり、数多くのテープ版ソフトが登場している。640×200ドットで8色が表示できるグラフィック機能や、8オクターブ3重和音が表現できるPSG機能を内蔵していたことで、「PC-8801」よりもスペック的に優位に立っていたことも特徴といえるだろう。

FM-8の後継機となるFM-7。ライバル機と比べてもコスト面・ハードのパフォーマンス面でも優れていた。

 「FM-7」は、「FM-8」の廉価版後継機という立ち位置で登場。バブルスロットは取り除かれたほかCPUが高速化され、安くなったが性能は向上したハード。126,000円という値段は、ライバル機種だった「PC-8801」の228,000円よりも、「X1」の155,000円よりも安く、それでいて640×200ドット8色のグラフィックとPSG3声によるサウンドを鳴らすことができた。ワンランク上のスペックを、ワンランク下の値段で実現したことから大ヒットし、日立を蹴落としパソコン御三家の仲間入りを果たす。

MSXが市場に参入し、新たな流れが起きる

 その翌年となる1983年、「MSX」が誕生した。規格が発表されたのは83年6月で、10月には各メーカーより出荷が開始されている。この頃既に、パソコン御三家の人気は不動のものとなっていたこともあり、ほかのメーカー1社では既に太刀打ちできない状況だった。そのため各社はこぞってMSXへと参入し、結果多数の機種が登場することになる。

 その中には、「FP」シリーズを発売していたカシオ計算機、「MULTI」シリーズを発売していた三菱電機、「PASOPIA」シリーズを発売していた東芝、「JR」シリーズを発売していた松下電器、「ベーシックマスター」シリーズを発売していた日立、「SMC」シリーズを発売していたソニーなど、御三家になれなかったメーカーが多数名前を連ねていた。専用モニタがいらず、ROMカートリッジが使え、それでいて価格が安いという特徴を前面にだして攻勢をかけたが、規格が共通だったこもあり、徐々に価格競争へと陥ることになっていく。

最終的には、累計出荷台数400万台以上を誇るハードとなったMSX。ホビーと学習用途に使えるホームコンピュータを目指していたが、低価格ゲームパソコンとして普及した面も大きい。これは、MSX規格で最後までハードを出し続けた松下の、最初のMSX。

各社からさまざまなハードが登場した1983年

 NECは同じ年、「PC-6001」「PC-8001」「PC-8801」のそれぞれ2代目となる「PC-6001mkII」、「PC-8001mkII」、「PC-8801mkII」を世に送り出す。どれも順当な性能アップを果たしてはいたものの、「PC-8001mkII」「PC-8801mkII」共にサウンド周りは前機種から変わらないまま。特に、ライバル機種との競争に晒されていた88陣営は、苦しい戦いを強いられることになった。

 また、御三家以外にも東芝が「PASOPIA7」を、三菱が「MULTI8」、バンダイが「RX-78」(通称ガンダム)、日立は「ベーシックマスターレベル3Mark5」、そしてセガが「SC-3000」を登場させる。

 しかし、さまざまなメーカーからたくさんの機種が発売されるのはこの年まで。以降は御三家以外のメーカーはMSXへと移行するかパソコンから手を引き、世の中は次第に御三家+MSXへと絞り込まれていくのだった。

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