ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

1980年代前半にFDDよりも安くて手軽に使えた「データレコーダー」 ~NEC製品編~

今回取り上げたのは、これら5機種。基本的には、平置き型と縦置き型の2種類が存在します。どちらが良いというものではないですが、専有面積の少なさでは縦置きが、どっしりとした安定性では平置き型に軍配があがります。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は少し趣向を変えて、当時の周辺機器を取り上げる番外編その2「データレコーダ・NEC編」としました。

 マイコン・パソコンで使用された記録媒体と記憶装置はさまざまですが、中でも安く・手軽に使えたものの代表がカセットテープとデータレコーダでした。1980年代前半であれば、パソコンやマイコンを購入するときにセットで買った、という人も少なくないでしょう。

 この時代のフロッピーディスクドライブ(FDD)は少なくとも10万円以上する高価な代物(1981年秋の価格では、FDDが約30万円!)で、メディアも1枚1,000円以上という高級品でした。それと比べるとデータレコーダ本体は1万円台で買えるだけでなく、記録用に使用するカセットテープは数百円レベルと、格段に安かったです。

 その代わり、FDDと違って速度が遅く信頼性もFD並とまではいかない、という問題点がありましたが、価格を考えれば我慢出来るものでした。今回は、そんなデータレコーダの中からNECが発売したメジャーなものを取り上げています。眺めていくと、「当時はこれを使っていた!」という機種が見つかるかもしれません。

これは、1981年10月に掲載されたベーシックマスターレベル3の広告ですが、ミニ・フロッピーディスクが298,000円、ディスケットが1枚1,800円と記載されているのが見えます。この価格を考えると、1980年代初頭にカセットテープとデータレコーダが普及したのも分かるかと思います。

PC-6081(DR-310)

 型番からも分かるように、PC-6001(愛称パピコン)と同時期に発売されたデータレコーダです。価格は12,800円で、シンプルにロードレベル調整スライダのみが搭載されていました。これを操作することで、読めなかったテープもロード可能になることがあります。現在でも、このスライダにはよくお世話になります(笑)。

 ほかには、再生や早送りといったボタンが大きく、押しやすいのも特徴でしょう。各ボタンの耐久性はそれほど高くないようで、ボタンが下がったままの状態になってしまっている個体をよく見かけます。手元にあるものは、PAUSEボタンが下がりっぱなしでした。

背面には、音声出力の有無を決めるMONITORボタンのほか、CMT IN/REMOTE/CMT OUTの、データレコーダケーブルの赤黒白端子を接続するコネクタが用意されています。音声出力レベルは変更不可でした。

PC-6082(DR-320)

 こちらも、PC-6001と同時期にリリースされたデータレコーダの1つです。個々の操作ボタンがPC-6081よりも小さく、最初は無機質な印象を受けました。しかし、長年使用してもボタンが故障する事例に遭ったことはないため、耐久性はあると思われます。価格は19,800円とPC-6081よりもアップしていますが、その分機能が加わっていました。追加された操作方法の1つが、音量調整用のモニタレベルスライダです。PC-6081では音量の調整が出来ませんでしたが、PC-6082ではスライダを操作することでボリュームを変えられました。

 もう一つの追加要素が、プログラムサーチです。カセットテープに保存する際、プログラムとプログラムの間に数秒間の空白部分を設けておくことが前提ですが、そのようなテープであれば再生ボタンを押しながら早送り、巻き戻しボタンを押下し、本体右上にある1から5までのボタンを押すことで、自動的にその数の分だけプログラムをすっ飛ばしてくれました。いわゆる、楽曲の頭出し機能のようなものです。しかし、個人的には実際に使用することはほとんどなく、保存した場所のテープカウンタをケースのレーベルに書き込んでおく方が確実でした……。

背面はCMT IN/AUX/REMOTE/CMT OUTとなっていて、PC-6081とは違いMONITORの代わりにAUXが設置されました。
こちらは、PC-6082のアナザーバージョン(?)です。当時筆者が購入したのがこれで、上記で紹介しているPC-6082と比べてカセットの蓋部分にある窓が大きく、テープの状態が見やすくなっていました。それ以外の仕様や型番は、すべて同一です。

DR-311

 ここまでで取り上げたのは平置き型ですが、DR-311は縦置き型です。PC-6081やPC-6082よりも後に発売された機種で、フロントローディング機構を採用していました。ボタンもピアノタイプオペレーションキーとなって、操作しやすくなっています。PC-6081譲りのMONITORスイッチが正面に設置されたほか、レベル調整スライダは側面に用意されました。さらに、位相を反転するフェーズ切り替えスイッチも追加されたことで、どのパソコンに接続しても使える、オールマイティな1台となっています。価格は12,800円で、PC-6081と同じでした。

ケーブル接続部分は正面左側面に設けられているので、背面にあるよりも抜き挿しがしやすいです。上から、ロードレベル調整スライダ、フェーズ切り替えスイッチ、CMT IN/REMOTE/CMT OUTと並んでいます。

DR-330

 さまざまな機能を詰め込んだDRシリーズのボスで、価格は19,800円と、こちらはPC-6082と同一です。据え置き型でフロントローディング機構なのはもちろん、操作ボタンはソフトタッチオペレーションキーを採用。軽く押すだけで良いので、他機種のようにグッと押し込むといった動作が必要ありません。電源スイッチの隣には、リモートスイッチの切換やAch/Bchどちらをモニタするかを選択するスイッチも用意されています。テープカウンタの下には、音量調整に使うモニタレベルスライダとロードレベルスライダがあり、さらにその下には入力を選ぶINPUT SELECTORと、Ach/Bchどちらに録音するかを選択するRECORD TRACKスイッチが見えます。

 本機は、カセットテープの第1トラック(Ach)、第2トラック(Bch)にそれぞれ独立して録音・再生ができる機能をもっていたので、プログラムのロード中に音声などを出力することもできました。くわえて、PC-6001mkIIに専用コントロールコードPC-60M93で接続することで、再生時にAchとBchのモニタオンオフをソフトウェアでコントロールすることも可能です。ただし、この機能を使用したソフトは、ごくわずかしか存在しないと思われます。
 位相を反転するフェーズ切換スイッチや外部スピーカ接続端子も設けるなど、かなり高級感ある1台でした。

がっしりとした造りで、重量はDR-311の2倍となる2.2kgです。背面には左から、外部マイク接続端子、PC-60M93接続端子、CMT IN/REMOTE/CMT OUT、外部スピーカ接続端子、フェーズ切り替えスイッチと並んでいます。