ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

富士通 FM77AVシリーズ史上、一番のてんこ盛り機種「FM77AV40EX」

機種ロゴの下には、同時発売されたFM77AV20EXにはない「FUJITSU PERSONAL COMPUTER.」と「EXCELLENCE IN AUDIO & VISUAL.」という文章が描かれています。特に前者は、FM-7やFM-8時代から使っていた人にとっては、ちょっと懐かしさを思い起こさせる文言かもしれません。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、1987年に富士通がFM77AV20EXと同時に発売し、ブラックカラーを採用した最後の機種となった「FM77AV40EX」を取り上げました。

 1980年代中盤から後半にかけて、各社はパソコンのパワーアップ方針を明確にして、それに沿って新機種を発表してきました。そんな時代に富士通は、グラフィック面に力を入れたハードをリリースし続けてきましたが、その一つの到達点とも言えるのが、今回取り上げた「FM77AV40EX」となります。キャッチコピーは「スーパー・クリエイティブ・パソコン」で、これ以降しばらくはイメージキャラクターを南野陽子さんが担当しています。

FM77AV40EXのキャッチコピーは「スーパー・クリエイティブ・パソコン」。
当時の広告からグラフィック面に力を入れていることが分かります。
FM77AV40EXとともにFM77AV20EXも掲載されています。

 本機は、前機種に当たるFM77AV40が228,000円だったところを一挙に6万円のプライスダウンを実現させ、FM77AV20と同じ168,000円で市場へと投入されました。メインメモリは標準で192KBを搭載し、最大で448KBまで拡張可能。増設分をRAMディスクとして利用すれば、高速なファイルアクセスも可能となりました。VRAMは、FM77AV40の144KBからさらに増量され、これまでで最大となる192KBとなっています。これにより640×400ドット8色が2画面使えるほか、320×200ドット4,096色も2画面使用可能となり、グラフィックスの表現力がさらにアップしました。

FDD下部の部分はFM77AV20EXと違う材質が採用されています。正面インタフェースは左からキーボード接続端子、電源スイッチ、音量バランスボリューム、高速/低速モード切り替えスイッチ、BASIC/DOS切り替えスイッチ、電源インジケータ、CAPキーインジケータ、カナキーインジケータ、INSキーインジケータ、リセットボタン、そしてジョイスティック端子が2つ並んでいます。上段には、3.5インチFDDが2基搭載されているのが見えます。

 また、FM77AV40などではMMRメモリ使用時にCPUの動作クロックが2MHzから1.6MHzとなって動作していましたが、本機は2MHzのまま動くため、以前と比べると25%ものスピードアップとなっているのも特徴でしょう。くわえて、FM77AV40ではシステムディスクでサポートされていた拡張サブシステムが、FM77AV40EXではROM化されてメイン側に乗りました。これにより、システム起動時の拡張サブシステムのロードや画面モード切替時の入れ替えが高速になり、結果としてディスクのフリーエリアも増えることとなっています。

 かな漢字変換には、ハンディ・ワープロ“OASYS Lite”シリーズと同等の約4万語にも及ぶ辞書をROM化して搭載しました。ディスクに入っている辞書と比べると、その動作のスムーズ差は一目瞭然です。これを活かして、同梱されているF-BASICも日本語機能が強化されました。

キーボードの見た目は、BREAKキーが朱色なのは前機種と同じですが、手前の部分にラインが入っている違いがあります。接続方法も代わり、FM77AV20/40が6ピンモジューラジャックだったのに対し、FM77AV20EXではminiDIN4ピンになりました。現在なら、S端子ケーブルがあれば本体と接続出来ます。2キーロールオーバーなのは前機種と同じですが、赤外線を利用したワイヤレスでの通信ができなくなっていて、ワイヤードオンリーとなります。

 ビデオデジタイズ機能に関してですが、FM77AV40では専用のビデオデジタイズ端子からの取り込みのみでしたが、FM77AV40EXでは21ピンのアナログRGBモニタからのデジタイズができるようになっています。専用のモニタで無くてもよくなり、市販の21ピン端子付きモニタからビデオデジタイズも可能となりました。

 同梱されているF-BASIC V3.4 L20から起動するとメニューが表示され、そこからBASICや付属のアプリケーションソフトを選択することができるようになったことで、よりユーザーが操作しやすくなっているのもポイントです。また、システムのドライブ数やファイル数の設定をし直す時に、NEW ONコマンドで即座に再起動もできるようになりました。同時に発売されたFM77AV20EXでは削除されてしまった、CMT端子が搭載されているのも嬉しい部分でしょう。

FM77AVシリーズのキーボードエンコーダには隠しメッセージがイースターエッグとして入っていて、CAPキーとカナキーをONにした状態で、CTRLキーと左右両方のSHIFTキーとGRAPHキーとTキーを同時押しすることでこのような画面が表示されます。

 FM77AVシリーズ最強と言えるスペックを持ったFM77AV40EXでしたが、その機能をフルに活かすようなキラーソフトがお目見えしなかったこと、さらには世の中のパソコン市場がPC-98シリーズやX68000シリーズなどに移動していったことなどと相まって、シリーズ機種は次にリリースされたFM77AV40SXが最後となり、富士通はFM TOWNSシリーズへと舵を切ることとなります。

背面は左から、CMT端子、RS-232Cコネクタ、I/O拡張バスコネクタ、拡張FDDコネクタ、ステレオ音声入出力端子、映像入力端子、プリンタポート、RGB21ピンマルチ出力コネクタ、オプションI/Oスロット、外部アダプタ端子、右端にサービスコンセントとなっています。