ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

PC-98互換機の影響を受けて登場した「NEC PC-9801VX21」、マイナーチェンジにして長命モデル

外見は、前機種であるPC-9801VX2とまったく同じです。キーボードも変わらずで、この見た目が1986年から88年まで使われたため、PC-98シリーズといえばこの外見!という人も多いかもしれません。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、NECが1987年の6月に発表した、PC-9801VX2のマイナーチェンジモデル・PC-9801VX21となります。

本体正面のインタフェースは左から、リセットボタン、8/10MHz切り替えスイッチ、ボリュームつまみ、ジャンパー、ディップスイッチ、キーボード端子、電源ボタンとなっています。

 1986年秋、PC-8801FH/MHと共に発表されたPC-9801VX2は、2年後に新機種が登場するまで第一戦で活躍することになるのですが、途中で一度だけマイナーチェンジされました。それが今回取り上げた、PC-9801VX21です。筐体に描かれた型番はPC-9801VXのみなので、PC-9801VX2と見比べても違いが分からない形でした。

 キャッチコピーとして「オフィスは、本物を知っている。」を採用したPC-9801VX21は、スペックとしてはPC-9801VX2とほぼ同じですが、CPUに“クロック周波数10MHzの最新鋭80286CPUを採用(広告より)”とあるように、10/8MHzで駆動する80286を搭載したのが大きな違いです(VX2は8MHz)。もちろん、VX2と同じくμPD70116-10(V30)(10/8MHz)も載っていました。

 なお、80286の10MHz動作時のみグラフィック処理を高速化するEGCを動かすBIOSが採用されたことで、クロックアップと相まってトータルで2倍ほどグラフィックス処理が高速化されています。

 さらには、それまでの5インチドライブはシーク速度が50msecだったのに対し、VX21/41内蔵のモデルは35msecへとスピードアップされました。とはいえ、シーク速度以外のデータ転送速度は変わっていなかったため、恩恵を受けられる作業は少なかったかもしれません。

背面は左から、マウスコネクタ、1MBフロッピーディスクインタフェース端子、RS-232C端子、認定番号表記、プリンタポート、白黒モニタ接続端子、デジタルRGB接続端子、アナログRGB接続端子、そしてプリンタポートの上に拡張スロットが4つ並んでいます。VX2とVX21の違いを見分けるには、認定番号表記を確かめるのが速いです。

 他の違いとしては、標準搭載メモリは640KBだったもののVX2が最大で4.6MBまでの拡張だったのに対し、VX21は8.6MBまで内蔵可能となっています。また、“日本語MS-WINDOWSやマルチタスク・マルチユーザ環境を実現するPC-UX/Vをサポート(広告より)”などの特徴も持っていたとありました。

 用意されたラインアップもVX2の時と変わらずで、1MバイトタイプFDDインタフェース内蔵のVX01が353,000円、1Mバイトタイプ5インチFDD2台を内蔵したVX21が433,000円で、これらはVX0/VX2から価格据え置きとなっています。最上位モデルの1Mバイトタイプ5インチFDD2台と20Mバイトタイプ3.5インチ固定ディスク1台を内蔵したVX41のみ、VX4の693,000円から値下げされ630,000円という値付けになっていました。これは、VX4が登場した時期と比べてHDDの価格が下がったためで、同時期の20MB外付けHDDが149,000円という広告からも分かるかと思います。

 ちなみに、PC-9801VX2の紹介記事で掲載した20MBの外付けHDDの広告に書かれていた値段が328,000円でしたから、約8カ月で約半分ほどに価格が下落したというのは驚きです。

VX2を上に、VX21を下に配置してみました。ここまでそっくりだと、見分けが付かなくても不思議ではないと思います。電源スイッチが、本体と同じ色になったのが判別部分です。

 VX21の発売はVX2の市販価格を下げる効果もあったと思われますが、当時の通信販売広告を見てみると、それ以上にVX21/41の売り出し価格が安かったようです。

こちらは、雑誌『Oh!PC』の1987年10月号に掲載された、当時秋葉原にあったショップ・ナカデンの広告ですが、VX2が285,000円という値付けなのに対し、発売されたばかりのVX21が303,000円、VX41にいたっては約16万円引きの472,500円という価格が提示されていました。これならば「ちょっと足してVX21にしよう」という人も多かったのでは無いかと思われます。

 マイナーチェンジされただけのVX21ですが、VX2からどれだけ変わっていないのかを見るために、正面と背面からの写真を掲載してみました。正面からの違いで分かるのは、電源スイッチの色のみです。これが茶色であればVX2、白ならばVX21ということでした。また、背面では銘板の部分に“PC-9801VX21”と書かれているのが文字通りPC-9801VX21で、これがVX2の場合は“PC-9801VX”としか表記されていません。外見からは、この2点のみで見分けることができますので、オークションサイトなどでタイトルに“PC-9801VX”と表記されている機種を判別したい場合の参考にしてください。

 本機を手に入れてしまえば、ソフトに「CPUに80286以上が必要」と書かれていても使用することができたため、VX2などと合わせて長期間現役で使えたかと思います。

広告に書かれた“本物”とは、エプソン機は互換機ですがPC-98は本物ですよ、という意味です。ここからしばらくは、広告城でもそのようなやりとりが繰り広げられることになります。