ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

この1台があれば長らく現役で使えたPC-98マシン「PC-9801VX2」

“The 98”といえる、ベージュで彩された直方体の本体は、シリーズ王道のデザインと言えます。面白味のある形ではありませんが、ビジネスシーンにはマッチしました。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、NECが1986年にPC-9801VM21と同じタイミングで発売した「PC-9801VX2」となります。

 1986年の6月に、PC-9801シリーズの新機種UV2を発表したNECですが、そこから半年も経過していない10月、新たに4タイプの新98シリーズをPC-8801FHやPC-8801MHと共に公開しました。そのうちの1機種が、今回取り上げる「PC-9801VX2」です。

 キャッチコピーは“明日のビジネス機能を備えたエクセレント16ビット”で、後々までに定番となる機種でした。なお、残りの3機種はPC-98LT、PC-98XL、そしてPC-9801VM21です。

このタイミングで登場した新機種すべてを網羅したパターンの広告が作られていたようで、PC-9801VX単機のバージョンは見あたりませんでした。右側の広告を見ると、一番売りたいメインがVXシリーズだったことがわかります。

 PC-9801VXのスペックは、CPUとしてμPD70116-10(V30)(8MHz/10MHz)に加えて、8MHzの80286を標準搭載。互換性を保っているのはもちろん、処理スピードの大幅アップを果たしています。ユーザーズメモリも大容量の640KBを最初から備え、最大4.6MBまで拡張することができました。

 グラフィック面では、640×400ドットで4,096色中16色を2画面にて使用可能となっていて、EGC(Enhanced Graphic Charger)とデュアルポートRAMの採用により更なる高速化が実現されています。どのくらいスピードアップしているかというと、VMとBASICレベルで比べるとペイントが約4.6倍、ライン表示が約4倍、画面クリアが約2倍、サークル表示は約35倍という早さを実現していました。

本体正面を見ると、以前紹介したPC-9801VM21にかなり似ていますが、若干違っています。インタフェース類は左から、リセットボタン、10MHz/8MHzクロック切り替えスイッチ、ボリュームつまみ、ジャンパ、ディップスイッチ、電源ボタンとなっています。
ハードディスクの価格の話が出たということで、ほぼ同じ頃のロジテックの広告を載せてみました。HDDの価格が、なかなかお高いことに気づくかと思います。この値段を考えれば、VX4の売値は納得できるものではあるのですが……今振り返っても、やっぱり高価でした(笑)。

 用意されたラインアップは、1MバイトタイプFDDインタフェース内蔵のVX0、1Mバイトタイプ5インチFDD2台内蔵したVX2、そして1Mバイトタイプ5インチFDD2台と20MBタイプ3.5インチ固定ディスク1台内蔵のVX4となります。価格は、VX0が353,000円、VX2が433,000円、そしてVX4が693,000円でした。

 この時期、ロジテックの20MBハードディスクが328,000円するなど20MBクラスのHDDが約30万円前後の価格だったことを考えると、VX4の約70万円という設定も今となっては頷けます。とはいえ、ゲームを遊ぶにはVM21の方が手頃だったため、当時はそちらを買ったという人の話を多数聞きました。VX2がもう少し手を出しやすい価格になるには、翌年に登場するVX21を待つことになります。

背面は左から、マウスコネクタ、1MBフロッピーディスクインタフェース端子、RS-232C端子、認定番号表記、プリンタポート、白黒モニタ接続端子、デジタルRGB接続端子、アナログRGB接続端子、そしてプリンタポートの上に拡張スロットが4つ並んでいます。

 筐体デザインですが、この時期に登場したVM21、VX、そしてXLは統一された見た目となっていました。特に、VM21とVX2は正面からの見た目がロゴ周り以外はほとんど変わらないため、ロゴを隠すとどちらの機種か非常に見分けが付きづらいです。これが一目で判別出来るようになれば、あなたも立派な98博士に!? 見比べてみたいという人のために、2台を縦に並べた写真も掲載してみました。

VM21とVX2を縦に並べてみました。正面はロゴ周辺のみ、背面も銘板など一部が違っているだけで、インタフェース類の配置はまったく同じなのが分かります。

 この年にPC-9801VXシリーズが発売されると、「PC-9801VXシリーズ以降対応」と記されたタイトルが一部に登場しますが、但し書きとして「VMシリーズなどでも動きますが、動作は遅くなります」と表記されていたソフトも出てきます。実際にプレイしてみると確かに遅くなるものの、作品によっては何とか遊べてしまうこともあって、それほど深刻な問題にはならなかったと記憶しています。

VXシリーズ以降対応と書かれたゲームのうちの1本、『ぷよぷよ』です。それ以前の98でも遅くなりますが動きます、と但し書きに記されているのが見えると思います。

 PC-9801VXシリーズが市場へと送り込まれた時点で、PC-98シリーズは累計82万台という出荷台数を記録していました。しかし、その裏ではEPSONによる互換機開発がヒタヒタと進んでいて、翌年の春からNECはEPSONとの互換機競争という荒波にさらされることになります。