ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

パソコン通信時代を見据えてソニーが投入したモデム内蔵MSX2「HB-T7」

本体左上に配置されたパイロットランプが、中二心をくすぐるデザインでした。ホームポジションに合わせて、キーボードのカラーリングが異なるのも目立ちます。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのはソニーから発売されたHITBITの1機種で、当時としては珍しい、モデムを内蔵したMSX2パソコンのHB-T7です。

本体を真上から撮影した写真です。左上に書かれた“COMMUNICATION TERMINAL/HB-T7”という型番部分が、一際目立つのが分かります。その下部には、状態に応じて光るパイロットランプも用意されていました。HOOKの部分には“通話中”の、CONNECTの部分には“接続中”といったように、日本語でも説明書きが表示されていました。

 1985年、日本電信電話公社がNTTへと移行する時に、さまざまな法律が改定されています。これにより通信の自由化が行われ、それまでは受話器を音響カプラに乗せてダイヤルも手動で作業していたパソコン通信も、モデムを使用することにより手軽で高速に行えるようになりました。

 この波に合わせて、日本各地に数々のパソコン通信サービス(ホスト局)が、大手草の根問わず開設されることとなります。

 この時期は、各社共にパソコン通信が次のウリになると考えていたようで、例えばシャープはMZ-2500のCMで海外との通信を行っているシーンを流したり、NECはPC-8801mkIITRというモデム電話内蔵パソコンを発売していました。

 そして、ソニーが1987年6月1日に59,800円という価格で登場させたのが、パソコン本体にモデムを内蔵した機種・通信パソコンHB-T7です。

背面は左から、CMT端子、プリンタポート、パルス/トーン切換スイッチ、LINEコネクタ、TELコネクタ、チャンネル切換スイッチ、RF接続端子、オーディオ接続端子、ビデオ接続端子、RGB接続端子、サービスコンセントとなっています。

 スペックとしてはRAM64Kbytes、VRAM128Kbytesを搭載した、いわゆるMSX2規格準拠のMSX2パソコンでしたが、最大の特徴がモデムと第1水準の漢字ROMを搭載していたことでした。

 モデムや漢字ROMを内蔵していなければ、それらの機能を持ったROMカートリッジを調達すれば良いのですが、一般的なMSX(2)パソコンはカートリッジスロットが2つ。パソコン通信をしようと思いモデムカートリッジと漢字ROMカートリッジを挿してしまうと、『MSX-Write』やFDDインタフェースカートリッジを挿すことはできません。

 その点、本機であればモデムと漢字ROMを内蔵していたため、空いているスロットにFDDインタフェースカートリッジを挿して、あらかじめ書いてフロッピーディスクに保存しておいたメールをアップロードする、といったことも可能でした。

右側面にはジョイスティック接続端子が2つ、左側面には電源スイッチが用意されていました。

 パソコン通信を行う場合ですが、本体背面に用意されているLINEと書かれたコネクタ部分に、壁のモジューラジャックから出ている電話線を繋ぎます。さらに、もう一本の電話線をTELと書かれたコネクタ部分に挿し込んだら、反対側を電話機に接続。これで準備は完了ですので、あとは本体の電源をオンにしてBASICから“CALL TELCOM”と入力すると、“MSX-TELCOM”と呼ばれるソフトが立ち上がります。設定などは、ここから行うようになっていました。

 内蔵していたモデムは、通信速度が300ボーで全2重または1200ボー全2重に対応していましたが、これは先にソニーから発売されていたモデムカートリッジHBI-1200と同じスペックとなっています。また、内蔵ソフトからはプロトコルとしてX-MODEMを選択出来たり、Xon/Xoffやトーン/パルス信号の切換といった設定が行えるなど、一通りの機能が揃っていました。

 この内蔵モデムは、標準MSX日本語入力フロントエンドプロセッサのMSX-JEに対応したものとなっていましたので、日本語ワープロ『MSX-Write』などと組み合わせて使用すれば、漢字の書き込みも手軽に行うことができます。もちろん、日本語ワープロが無くても漢字で書かれた掲示板の内容を読むことはできるので、漢字ROM非搭載機種と比べれば使い勝手は格段に良かったのではないでしょうか。

BASIC画面から“CALL TELCOM(または_TELCOM)”と入力すると起動する、本体に内蔵されたソフトのMSX-TELCOMです。電話帳にホスト局の名前と電話番号を入力したり、ホスト局に合わせたモデムの設定が行えるなど、一通りの機能を備えていました。現在稼働しているホスト局が分からなかったため、今回は実際に使用している画面は撮影出来ませんでした。

 本体は、ディスクドライブを内蔵しないキーボード一体型のデザインを採用していて、これはHB-F5とほぼ同じとなっています。テンキーを搭載していることや、カーソルキーの形状などもHB-F5と同一。ファンクションキーの上にはインジケータが4つ配置されていて、それぞれ通信状態を示す際に光るようになっていました。また、BSキーの上には赤いRESETボタンが設置されていますが、HB-F5のRESETボタンよりもカバーが若干大きくなり、より間違えて押しづらくなっています。

 この時期のモデムは300ボーや1200ボーでしたが、そう時間もかからないうちに速度は2400bps、9600bps、14400bps、28800bps、38400bps、そして56kとアップしていきました。更にはISDNといったサービスも登場してくるのですが、そのあたりはパソコン通信の話という項目で、また改めて取り上げることにします。

広告には、“これ一台でパソコン通信ができる。ソニーの通信パソコン”というキャッチコピーと共に本体の写真と、パソコン通信時に本体と組み合わせて使用することで便利になる周辺機器が掲載されていました。