ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

柔らかいデザインで登場した新たなPC-98シリーズ「PC-9801RA2」

それまでの直方体からデザインを変更し、アールを持たせることで柔らな印象の仕上がりになっています。カラーリングも従来から変更され、明るいグレーになりました。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、NECより1988年に新たなデザインで発売されたPC-9801シリーズの新機種「PC-9801RA2」です。

 1982年に初代PC-9801が発売されて以来、様々な部分を少しずつパワーアップしてきたPC-98シリーズですが、デスクトップ型はデザインやカラーリング、キーボードなどは初代からそう大きくは変わらず、シャープなデザインが特徴となる直方体の大型筐体に幅の広いキーボードという組み合わせでした。約5年もの間、基本的なイメージを踏襲し続けたわけですが、大幅なリニューアルが行われて1988年の7月に登場したのが、今回取り上げるPC-9801RA2です。広告でのキャッチコピーは「ハードとソフトの新天地に、ようこそ。」でした。

本体正面左下には、キーボード端子、マウスポート、リセットボタン、クロック切替スイッチが並んでいます。蓋を開けると、3組のディップスイッチが配置されていました。

 用意されたのは2モデルで、1Mバイトタイプ5インチFDD2基搭載型のPC-9801RA2が498,000円、1Mバイトタイプ5インチFDD2基搭載+40MBタイプ3.5インチ固定ディスク(HDD)1台内蔵のPC-9801RA5は736,000円となります。固定ディスクの有無以外、スペックは同じとなりますので、本記事ではPC-9801RA2をベースとしました。なお、PC-9801RA2も後から固定ディスクを増設すれば、PC-9801RA5とまったく同一のスペックになります。

背面

 PC-9801RA2は、「最新鋭の32ビットCPU80386(16MHz)を採用。メモリアクセスノーウェイトにより、処理速度が向上しています」とあるように、CPUに80386を搭載。それだけでなく、互換性を考慮してVXシリーズなどでも載せられていたV30も装備しています。ユーザーズメモリは、大容量となる1.6MBytesを標準で内蔵し、メモリ専用スロットと拡張スロットを併用することで最大12.6Mbytesまで拡張することができました。EMS機能のサポートにより、日本語MS-DOS Ver3.3を利用すれば、80386CPU使用時に640KBytesを超えるメモリも使用可能となっています。

 大きく変わったのは外見で、従来機のデザインから大幅リニューアルを遂げました。VXまでの横長で鋭角なボディラインから一転して、アールの効いた柔らかみのある、“ずんぐりむっくり”という感じになっています。サイズを比べてみると、前機種であるPC-9801VX21の幅420mm×奥行き345mm××高さ150mmから、幅380mm×奥行き335mm×高さ150mmと、幅が40mm奥行き10mmほどダウンサイジングされていました。容積では、VX比で約88%となっています。

PC-9801RA2では、キーボードが大きくリニューアルされています。カーソルキーの横にあった余白部分が無くなって全体的な幅が縮まり、新たにvfキーが追加されました。合わせて、カラーリングも本体準拠になっています。キータッチは、VXまでの“カタカタ”に対して“ふわっ”という感じになっています。

 カラーリングも変わり、従来のアイボリーとブラウンを基調としたカラーから、非常に明るいグレーへとチェンジ。アローラインも変化し、以前のデザインを踏襲しつつも筐体右端まで延びています。その本体右側部分に配置されたFDDですが、これもまたVXやVM時代のモデルからリニューアルしました。それまでは正面パネルにFDDの穴が開いていて、そこにベゼルが出ていたFDDをはめ込むようになっていましたが、RA2ではディスクを挿入するスロットと固定レバーのみとなったため、非常にスッキリとした印象を受けます。

広告で使われていたキャッチコピーは「ハードとソフトの新天地に、ようこそ。」でした。MS-DOSのVer3.3をサポートしたこともトピックとして書かれているのが見えます。
1988年中頃のHDD(固定ディスク)の価格ですが、20MBで10万円前後、40MBで16万円から20万円といったところが相場のようでした。今や4TBのHDDが1万円前後で購入できることを考えると、非常に価格が下がったのがわかります。

 キーボードも、デザイン面や機能面でのモデルチェンジが図られました。これまでと比べて柔らかい雰囲気となっただけでなく、テンキーの上にはvf・1からvf・5までのプログラマブルファンクションキーが配置されています。CAPSキーとカナキーはメカニカルロックではなくソフトウェアロック方式に変更され、キーボードの幅自体もコンパクトになりました。

 右上部分には従来と同じくPC-9800シリーズのキーボードを表すロゴが入っていますが、機種がRA2となったことで文字も“PC-9801R”という表記に変わっています。このキーボードはPC-9801RA2とRA5でしか使われていないのですが、意外に見かける機会が多いので、それだけ多く販売されたということなのかもしれません。

 なお、3.5インチモデルのPC-9801シリーズには搭載されていたFM音源に関しては、デスクトップモデルでは今回も見送りとなります。ユーザーが増設することなくFM音源が使えるようになるのは、1990年に登場するPC-9801Dシリーズまで待たなければなりませんでした。