ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

デザイン面に力を入れたMSXパソコン「ソニー HB-101」

外見がユニークで、エッジにはすべてアールが付いたデザインになっています。カーソルキーの所に立てて設置するカーソルジョイスティックも特徴的で、当時としては全体的な見た目が際立っていました。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、ソニーが1984年10月21日に発売した、デザイン面に力を入れたMSXパソコンのHB-101となります。

 1983年に規格が発表されると、様々なメーカーからMSXパソコンが登場することとなります。価格に合わせてメモリを増減させたり、外部接続機器との連動を打ち出すなど、どの会社もインパクトあるハードを市場へと投入していきますが、そんななかでソニーがHB-55やHB-75の次に発売した機種が、今回取り上げたHB-101です。1984年10月21日に、46,800円という価格でリリースされました。カラーバリエーションとしてレッド・ブラック・アイボリーの3種類が用意されていましたので、どの色にするか悩んだ人もいたのではないでしょうか。

背面は左から、チャンネル切替スイッチ、RF出力端子、ビデオ出力端子、オーディオ出力端子、CMT端子、プリンタポート、アース端子と並んでいます。

 ニックネームとして“メッツォー(MEZZO)”と名付けられた本機の特徴は、なんといってもそのデザインでしょう。それまでのパソコンはシャープな直線で構成されたものが多かったのですが、HB-101は側面から見るとくさび形でありながら、エッジにはすべてアールが付けられていて、平面・直線・曲線をうまく繋いで滑らかな形状を実現していました。手前側の曲線があることで、ユーザーとキーボードの関係性がワンランク上げられていた、とも当時は言われたそうです。

 アスキーから発売されていた雑誌『MSX MAGAZINE』の1985年1月号でも取り上げられていましたが、そこでは「誰かが“オリベッティのタイプライタ”と称していたが、確かに日本離れした、ヨーロッパ的なイメージを持ったマシンといえる」と、デザイン面にはうるさいアスキーとしては、なかなかの評価をくだしていました。それだけ、本機のデザインが優れていたということでしょう。

本体右側面にはジョイスティック端子が2つ、右側面には電源スイッチがありました。

 手前側には引き出し式のキャリングハンドルが付けられていて、ここを持つことで簡単に持ち運ぶことができました。とはいえ、その際に邪魔になるのが電源コードです。HB-101は本体裏側に電源コードを収納できるスペースが用意されていたため、ここに納めてしまえば友人宅などへ持ち運ぶときでもスマートに移動させることができました。キャリングハンドルにはバネが軽く利いていて、引く力を緩めると自動的に本体部分へと戻るようになっています。

 キーボードには、MSXとしては初となるPAUSEボタンが用意されました。これを押すと、ありとあらゆる動作を止めることができる、完全な一時停止ボタンとして機能します。その間はLEDのインジケータランプが点灯するため、誤操作することもないでしょう。ポーズ機能を持っていないソフトでも使えるため、突然の来客や電話に対応できる便利なボタンでした。

 そのほかの特徴として、カーソルキーの中央部に開いた穴に付属のスティックを挿し込むことで、カーソルキーをジョイスティックのように使用する“カーソルジョイスティック”があります。これを使えば、まるでジョイスティックを使用しているような感じでカーソルキーを8方向に入力することができました。もっとも、カーソルジョイスティックを使うよりは、カーソルキーで操作する方がうまくいく、という人も多かったとか。

本体手前側には、キャリングハンドルが設置されています(ダンボールは、ストッパーです)。裏面には、電源コードを収納するための場所も用意されていました。

 この時期は、オーディオで“コンポステレオ”といった、本体だけでなくオプションのプレーヤやアンプ、スピーカなどのハードウェアをセットで売るということが行われていましたが、HB-101では“PASO COMPO(パソコンポ)”としてハードとソフトを合わせたパックも用意していました。パソコンポは2種類あり、“BASICを覚えて、オリジナルゲームが作れるパソコンポ”と銘打ったHB-P100には本体とデータレコーダ、ジョイスティック、そして「GameABC」というソフトが付属します。これに「聖子のMSX入門」という書籍が同梱されて、価格は74,800円。もう一つのHB-P200では“年賀状やXマスカードなどが簡単にプリントできるパソコンポ”として本体とデータレコーダ、カラープロッタプリンタ、セットとなっていたソフトウェアが「プロッ太」と「プロッ太キャラクター集「おたより」」、そして書籍「MSXプリントアート入門」が同梱され、118,000円でした。

キーボードは、ファンクションキーがオレンジ、リセットボタンが赤で、そのほかの機能キーが濃い灰色、メインの部分は薄めのグレーで塗り分けられていました。ファンクションキーやHOMEキー、INSやDEL、STOPキーは小さいため、若干の押しづらさがあります。

 本機は、メモリ16KBytesを搭載したオーソドックスなMSXパソコンでしたが、この時期に登場していた同程度のスペックを持つ機種としては東芝のPASOPIA IQ(HX-10S)が55,800円、ヤマハのYIS303が49,800円、三菱のLetus(ML-F110)が54,800円とほぼ似たような価格だったため、消費者に何をメインとして打ち出すかが販売競争のカギを握っていたと思われます。

単体での広告は見当たりませんでしたが、似たような時期にMSX版『ロードランナー』が発売されたため、その広告で小さく使われていました。