ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

重量は本体のみで約5.8kg!NECのラップトップパソコン「PC-9801LV22」

全体的にがっしりしていて、重厚な造りになっています。白がメインだったデスクトップ98と違い、シックで少々の高級感を醸し出す黒を本体カラーに採用していました。なお、持つとズッシリと重いです。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、NECがエプソンに先を越されてしまったPC-98互換ラップトップパソコンというジャンルの中から、PC-9801LV21のディスプレイ改良版となるPC-9801LV22を取り上げました。

PC-9801LV21の時は、軽さやコンパクトさを前面に出した広告を採用していましたが、PC-9801LV22では“見やすくなった”ことを積極的にアピールしています。

 1987年11月に、エプソンからPC-98互換ラップトップパソコンとなるPC-286Lが発売されます。NECは当時、まだPC-98互換ラップトップパソコンはラインアップにはなく、持ち運べるマシンとしてはPC-98LTがその座に納まっていました。これによりエプソンの後塵を拝したNECは、PC-98互換のラップトップパソコンに取りかかります。

 そして1988年、池袋のサンシャインシティにて3月11日と12日の両日に開催されたNECのPCパーソナルフェアにて発表、3月下旬より発売としたのが、PC-98互換ラップトップパソコンとなるPC-9801LV21でした。

背面は左から、プリンタポート、RS-232Cコネクタ、アナログRGB端子、拡張バスとなっています。

 NEC陣営はこれで安泰か……と思われたのですが、PC-9801LV21が搭載していた8階調表示のバックライト型青色液晶ディスプレイは見づらく、ライバル機であるPC-286Lの方が見やすいという評判が出てしまいます。

 その点を改善し、スペックはそのままにモニタをバックライト機能付き8階調白黒液晶ディスプレイへ変更して翌89年1月30日に発表されたのが、今回取り上げたPC-9801LV22でした。

右側面にはリセットスイッチ、テンキーボード用コネクタ、10MHz/8MHz切換スイッチ、3.5インチFDD×2基、マウスコネクタと並んでいます。左側面には、ACアダプタ端子、バッテリパック、電源スイッチ、ボリュームつまみ、輝度調整つまみ、コントラスト調整つまみ、3連ディップスイッチが設置されていました。

 仕様としては、CPUにクロック周波数8MHz/10MHz切り替え可能なV30を搭載(ノーウェイトまたは1ウェイト切り替え可能)し、メインメモリは標準で640KBytesを内蔵しています。3.5インチFDDを2台と、満充電してある状態であれば約1時間ほど駆動可能なバッテリも装備していました。外部I/Oも豊富に備えていて、マウスやテンキーボード、外付けFDD、RS-232C、プリンタ、拡張バスと、ほぼデスクトップのPC-98と同じになっています。くわえて、ディップスイッチもデスクトップ同様の3連8個のものが載っているということで、デスクトップ98をそのままダウンサイジングしたものということがわかるのではないでしょうか。

キャリングハンドルを収納した状態と引っ張り出した状態で、それぞれ真上から撮影してみました。キーボードのキー配置がデスクトップ用のキーボードとは若干変わっているのと、キャリングハンドルを収納すると簡易なパームレストとして機能するのも特徴です。左上に見えるのは、電源自動切断機構スイッチです。OFFの位置ならモニタを閉じたときに電源が切れ、KEEPなら液晶のバックライトは消えるものの電源は切れません。

 なんといってもユニークだったのが、搭載している液晶モニタを取り外すことができる点でしょう。背面にアナログRGB端子を備えているので、通常時に外部モニタへ接続すれば今でいうところのミラーリングでの運用ができて、モニタを分離すればデスクトップパソコンのように使うことができます。本体のみでは見る事ができないカラーも、外部ディスプレイを接続すれば問題ありませんでした。視認性も向上するということで、当時に省スペースデスクトップマシンの代わりに使っていた人もいたのではないかと思われます。

内蔵モニタを取り外すと、このような感じでコンパクトになります。代わりに外部モニタなどへ接続することで、省スペースデスクトップマシンとして活用することも可能でした。

 キーボードはデスクトップのものと比べて、ファンクションキーがやや小さくなっていました。そのため、ファンクションキーを多用するソフトを使う人にとっては、少々使いづらかったかもしれません。カーソルキーは逆T字に配置されたので、デスクトップ用キーボードと遜色ない使い勝手をキープしていました。

付属するACアダプタは思った以上に大きく、隣に配置した3.5インチフロッピーディスクと比べると幅が1枚分、長さが2枚分、厚みは約19枚分となっていました。

 重量は本体のみで約5.8kgと、なかなかのヘビー級です。同時に発表された小型のPC-9801UV11が約5.1kgでしたので、ある意味ではデスクトップマシンより重いということに。PC-9801LV22はモニタも内蔵しているので、それを加味すれば6kg弱に押さえているというのは、当時としては健闘しているのですが……。各種周辺機器やマニュアルも同時収納できるキャリングケースが販売されていましたが、これにすべてを保管すると一人で持ち歩くには難儀な重さに……。

こちらは、PC-9801LV22の本体とACアダプタ、テンキーボードなどを一度に収納することができるキャリングケースです。非常に大きくて重く、そして丈夫にできています。機種名のロゴが入っていなければ、何となく高級なケースに見えるかもしれません。この状態では、重さ約8kgほど……。

 筆者所有のPC-9801LV22は元気に稼働するので、いくつかのアプリケーションやソフトを起動させてみました。まずは、手元にあったMS-DOS Ver 3.3CをFDDに突っ込んでみましたが、特に何事も無く立ち上がり、コマンドも問題無く実行できました。静止画面状態であれば見づらさを感じないのですが、カーソルを移動させたり画面がスクロールするると、画面に残像が残るため一気に見づらくなってしまうのが厳しいところです。

 続いて、システムサコムから発売されていた『ALL ABOUT MARK FLINT』から、『VALIANT』のディスクを挿入して動かしてみました。こちらは、同時に接続した三菱の液晶ディスプレイMDT152Xでもミラーリングもさせています。パッと見てわかるのは、当時の液晶モニタの性能です。動きのあるものが見づらく、長時間画面とにらめっこしていたら、あっという間に目が悪くなるかもしれません(笑)。同時に映している外部液晶ディスプレイと比較すると、その差が良く分かると思います。本体の液晶モニタのみで動作している動画も撮影しましたので、じっくりと見たい人はこちらもチェックしてみてください。

『ALL ABOUT MARK FLINT』収録の『VALIANT』を本体内蔵モニタで起動したときの模様です。
『ALL ABOUT MARK FLINT』収録の『VALIANT』を本体内蔵モニタと、外部液晶モニタMDT152Xで表示させたときの映像です。

 PC-9801LV22はそれなりにまとまったマシンでしたが、この年の終わりが見えてきた頃に98NOTEが登場することで、ラップトップパソコンの活躍の場は徐々に少なくなっていってしまうのでした。