ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

外部ディスプレイ出力が可能な初のNEC 98ノート「PC-9801NS/E」

PC-9801NS登場から1年後となる1991年5月に、その後継機種として発表・発売開始となったPC-9801NS/Eです。NSの跡継ぎではあるものの、外見などは半年前にリリースされたPC-9801NVとほぼ同じとなっています。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、1991年5月のビジネスショウなどでお披露目され、同月より発売開始となった98NOTEシリーズの1台、PC-9801NS/Eを取り上げました。

蓋を閉じた状態と、開いて正面から撮影した写真となります。蓋には、98NOTE SX/Eの文字がプリントされています。開いた状態では、右上のPC-9801NS/Eロゴと液晶が青から白になっている以外は、PC-9801NVとほぼ同じです。

 1989年11月にPC-9801Nが登場して以来、デスクトップモデルと同じく“早く、安く、便利に”を目指してパワーアップが施されていった98ノートですが、1990年5月に発表されたPC-9801NSではCPUに80386SXが採用され、処理速度の面などでの強化が図られます。さらに、同年11月に発表されたPC-9801NVではレジューム機能を搭載し、それまで以上に使い勝手が向上しました。

 それらの利点を受け継ぎ、さらに使いやすさを目指して1991年5月に発表・発売されたのが、今回取り上げたPC-9801NS/Eです。当時の雑誌を調べると、5月15日から18日まで開催された“第72回ビジネスショウ”に先駆けて発表・発売となったと書かれてはいたものの、残念ながら正確な日付は記されていませんでした。

本体右側面にはFDDが、左側面にはリセットボタンとACアダプタの接続コネクタ、そしてその部分をずらすとHDDを挿入できる穴が現れます。

 スペックとしては、CPUに80386SXの16MHzを採用。PC-9801NVと同じくセカンドバッテリーを搭載していて、FDDモデルであれば最大3.4時間、HDDモデルでも最大3.2時間の駆動を実現しています。さらに、NVでお馴染みとなったレジューム機能もサポートされたことで、フタを開ければ作業を即再開できるようになりました。バッテリーをフル充電した状態であれば、約10日間は再開が可能になっているので、通常であれば十分な時間だったと思われます。

 また、NSではFDDモデルと20MBのHDDを内蔵したモデルが用意されましたが、NS/Eでは更に40MBのHDDを内蔵したモデルも追加されています。価格は、FDDモデルのNS/Eが278,000円、20MBのHDDを内蔵したモデルが378,000円、40MBのHDDを内蔵したモデルが418,000円で、オプションのHDDは20MBが100,000円、40MBが140,000円と、本体の価格差と同じになっていました。

 もちろん、FDDモデルを購入後にHDDを追加することも可能です。この金額はPC-9801NSと比較すると、FDDモデルでは2万円、20MBのHDD内蔵モデルであれば約7万円ほどもお安くなっていました。1年で大きく値下がりしたことは、これから購入するという人にとってはありがたかった反面、1年前に12回払い以上での支払いを契約してしまった人にとっては、泣きたくなる思いだったかもしれません。

 機能が追加されたことで、NSと比べると厚さでは1mm、重さはFDDモデルで約200g、HDDモデルであれば約300gほど、それぞれ増加しているのですが、それでも重量は約3kg(HDDモデルは約3.3kg)に抑えられているので、当時としてはそれなりの重さだったかと思います。

背面は左からテンキーパッド接続コネクタ、マウスコネクタ、RS-232Cコネクタ、プリンタポート、バックアップスイッチ、拡張バスとなっています。バッテリーパックの部分を見ると左端に小さな端子がありますが、ここに接続する形でCRTパックを装着することで外部ディスプレイへ映像を出力できました。

 液晶モニタは、従来の青液晶からCFL(冷陰極管)サイドライト付き8階調白黒液晶へと変更されました。これによって視認性が大幅にアップしたので、特にゲームが見やすくなったのは一部のユーザーにとってありがたいことだったかもしれません。

 とはいえ、この時代の液晶モニタはまだまだ見づらかったため、CRTへ映し出すことも望まれていました。それに応える形で、98ノートとしては初めて、メインバッテリーの接続部分に外部CRT用インタフェースが付けられています。ここへ、メインバッテリーの代わりにオプションのCRTパック(25,000円)を接続することで、外部CRTへと映像を出力することができました。その際には、デスクトップ98と同じく4,096色中16色での表示が可能になるので、遜色ない環境での作業を行うことが可能になります。

本機は、広告では“98NOTE SX/E”と表現されていましたが、あまりその愛称は聴かなかったような気がします。もちろん、イメージキャラクターは大江千里さんでした。

 ハード構成としては、3.5インチFDDが1台にRAMドライブという形をとっていて、これは従来機種と変わりません。RAMドライブをメインメモリとして使用できるのも代わらずで、増設RAMカードを併用すれば最大で9.6MBytesものメモリを利用することができました。

 HDDが取り外し可能なパック型になったことで、OSに合わせて入れ替えて使うということも可能になったのですが、この時期の98ノート用HDDは出始めということもあり、なかなかのお値段がしています。逆に、デスクトップへ接続するSCSIタイプのHDDが徐々に価格低下&大容量になっていったため、周辺機器を含めるとどのPC-98シリーズを購入すれば良いのかで悩む時代でもありました。

 また、この頃にはMS-Windows 3.0も動き出していたこともあり、雑誌誌面でも特集が組まれるようになっています。PC-9801NS/Eでもそれを稼働させることができたため、地道に人気を博すことになるのでした。

当時の実売価格一例として、“5つのNO!”でお馴染みだったSTEPの広告を資料として掲載しました。NS/EのFDDモデルが204,000円と、定価より約7万円強も安く販売されているのがわかります。