ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

1980年代後半のソフトハウス「ゲームアーツ」と「日本テレネット」編

~永久保存版 80年代マイコン大百科~

永久保存版 80年代マイコン大百科

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 80年代マイコン大百科」(著:佐々木 潤)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、ボクたちを虜にしたソフトハウス編から1980年代後半の「ゲームアーツ」と「日本テレネット」。

 なお、書籍版では画像はモノクロ(電子書籍 Kindle版はカラー)だが、本記事ではカラーの写真を掲載している。


- ボクたちを虜にしたソフトハウス・80年代後半編 -ゲームアーツ- -


彗星のように登場し、瞬く間に名声を得た新進気鋭ソフトハウス

 1985年4月に、PC-8801mkIISR専用タイトルとして『テグザー』を発売。美しいBGMと滑らかなアニメーション、色鮮やかに変わるレーザーなど、これまでにないテクニックを駆使した作品で、当時のユーザの心を一気に掴むことに成功したソフトハウスだ。

処女作である『キュービー・パニック』と、ゲームアーツの名を世に知らしめた『テグザー』。PC-8801mkIISRが市場に登場して間もない85年4月に発売され、多くのパソコンゲームファンを虜にした。のちに数々の機種に移植され大ヒットしたが、パソコンユーザからするとファミコン版は……。

 85年に宮路洋一・武両氏とアスキーの仲間たちが立ち上げ、のちに数々のヒット作を生み出していく同社だが、特に1986 年にPC-8801mkIISR用として発売された『シルフィード』は、当時のパソコンとしては驚異的な高速ポリゴン表示を実現し、さらにパソコンがしゃべるなどということもあり大人気を得た。

何度も広告が掲載され、そのたびにワクワクさせてくれた『シルフィード』。初期のタイトルロゴが、製品版とは違う点に注目してほしい。同時に掲載されているのは、のちにシリーズ化された麻雀ゲーム『ぎゅわんぶらあ自己中心派』の1作目だ。
『シルフィード』の発売直前広告。店頭デモで見た、PC-8800シリーズとは思えない滑らかな挙動に興奮したものだ。

 ほかにも「リーチ」や「ロン」などのセリフをパソコンに実際にしゃべらせた麻雀ゲーム「ぎゅわんぶらあ自己中心派」シリーズや、人間の思考の裏をついたマップがプレイヤーを悩ませたRPG『ゼリアード』、『テグザー』の続編『ファイアーホーク』、ダメージを受けると各部位が破壊されているリアルさが特徴の『ヴェイグス』など、ほかのソフトハウスとは毛色の違うゲームを数多くリリースしている。

 なお、ゲームアーツを設立した宮路兄弟のうち弟の武氏は2011年、45歳という若さでこの世を去っている。

その後はRPG『ゼリアード』やロボットアクション『ヴェイグス』などを発売。

- ボクたちを虜にしたソフトハウス・80年代後半編 -日本テレネット- -


ゲーム中にビジュアルシーンを取り入れて一世を風靡!!

 1983年に設立され、縦スクロールアクションゲーム『ファイナルゾーン』から社内の開発チーム・ウルフチームの名前が登場する。ゲーム中にビジュアルシーンを盛り込むスタイルは、ここから始まったといえるだろう。

同社初期作品といえば、この『アメリカントラック』や『ファイナルゾーン』『アルバトロス』だろう。これらのソフトに共通していたのは、BGMのすばらしさだ。
BGMのクオリティの高さは、のちに発売された『デジタル・デビル物語 女神転生』にも受け継がれている。ちなみに当時の広告には“ 開発協力:(株)アトラス” と記されていた。

 このあと「夢幻戦士ヴァリス」シリーズをはじめとして、シューティングゲーム『ルクソール』、ゴルフゲーム初のマルチウィンドウと銘打った『アルバトロス』、アトラスが開発協力した『デジタル・デビル物語 女神転生』など続々とリリースしていく。

あらゆる意味でテレネットの看板タイトルとなった『夢幻戦士ヴァリス』。“AV時代の幕開け”とあるように、ビジュアルシーンとBGMがマッチしたいい作品だった。そのほかにも、シューティングゲームにビジュアルシーンを挿入した『ルクソール』、PC-88VAシリーズ向けという意欲作『神羅万象』など、この時期は数々の作品を世に送り出している。
人気作だった『夢幻戦士ヴァリス』は、シリーズ2作目も発売された。PC-8801mkIISR版では、サウンドボードIIを増設すれば島本須美さんの声で台詞を聞くことも可能。主人公・優子のイメージガールを決める“ミス優子”コンテストも行われ、大勢がエントリしたという。グランプリを受賞した人物は一時期、同社の広告にも登場している。

 1987年にウルフチームが独立するが、以降も『反生命戦機アンドロギュヌス』『紫醜羅』『XZR』などを積極的に発売し、80年後半を駆け抜けていった。

 余談だが、日本テレネットに在席していたクリエイターには本書でも取り上げているBug太郎氏(ソルフィース)のほか池亀治氏(ライレーン)や、コンポーザとして恋瀬信人氏(ルクソール)、佐藤天平氏(夢幻戦士ヴァリスII)など、名だたる人物たちが活躍していた。

『夢幻戦士ヴァリスII』以後は、アクションゲームを数多くリリースしていく。だが、PC-8800シリーズの人気が衰退していくのと歩調を合わせるかのように、日本テレネットもまたパソコンゲーム業界から去ってしまうのだった。
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