ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

名作ソフト一網打尽「ザ・ブラックオニキス」シリーズ ~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~

永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、“名作ソフト一網打尽「ザ・ブラックオニキス」シリーズ”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。


名作ソフト一網打尽「ザ・ブラックオニキス」シリーズ


最初期の3DダンジョンRPG『ザ・ブラックオニキス』パソコン少年たちを唸らせた名作中の名作!


3Dで表示されるダンジョンを探索しながら、敵と戦いパーティーを育てて行く。敵を倒しお金を貯めて、より強い武器を装備してダンジョンの奥を探索していくという、RPGの“いろは”がすべて盛り込まれていた名作。

 発売前から話題に事欠かなかったものの、結局登場することはなかったタイトルの筆頭といえば『ザ・ムーンストーン』だろう。本来であれば、『ザ・ブラックオニキス』『ザ・ファイヤークリスタル』に続く第3弾として登場するはずだったが、残念ながら世に現れることなく姿を消していった。

 そんなシリーズの最初のタイトルとなった『ザ・ブラックオニキス』は、1984年の1月に発売されている(83年12月という説もあり)。日本のRPG黎明期に登場した本作は、3Dで表示されるダンジョン、複数キャラでのパーティー編成、購入すると強化される装備品、敵とのコマンドバトル、わかりやすいHPと経験値表示、ノンプレイヤー・キャラクターとの会話など、さまざまな面で目新しさが凝縮されていた。

 目的は、ブラックタワー内に眠っているといわれている伝説の宝石「ブラックオニキス」を確保すること。進め方は現代のRPGとそれほど変わらないが、パーティーが装備を調えたりする地上のウツロの街にはダンジョンへの入口が複数あり、入る場所がわからずに挫折する人もいたとか。墓場には非常にわかりやすい地下への入口があり、そこから入ると地下1階だけのダンジョン探索ができた。しかし、それより下へ進むことができないため、地下1階と地下5階以降しか存在しないと思った人もいたかもしれない。

 次にわかりやすいのが、ウツロの街にある井戸だ。ここから侵入すると、初心者パーティーでは到底太刀打ちできない強敵のクラーケンが待ち構えており、倒せなければ全滅してしまう。

 攻略上の正しい地下への入口は、魔法使いの館だった廃墟だ。ここより地下へと降り、地下6階まで順番に攻略しながらキャラクターを育てていかなくてはならない。そして地下6階では、隠された謎を解いてブラックタワーに侵入し、ブラックオニキスを手に入れるのだ。

 タワーに入るための謎が各機種ごとに異なり、ここで苦労した人も多かったのではないだろうか。今でも覚えている人が多いだろう“イロイッカイズツ”は、有名なキーワードだ。


続編『ザ・ファイヤークリスタル』魔法の要素が追加されたものの、ダンジョンの難易度は格段にアップ

『ザ・ブラックオニキス』で育てたキャラを移してプレイする。新たに魔法が使えるようになったので、それを駆使してダンジョンを探索していく。魔法のエフェクトが表示されるのは、当時としては非常に斬新だった。

 翌年9月、続編となる『ザ・ファイヤークリスタル』が登場し、新たに魔法の要素が導入された。

 魔法使いになったキャラクターは魔法が使えるようになり、戦闘で使用することで能力がアップする。しかもビジュアル表示されるので、見ていて非常に格好いい。機種によっては処理が遅くてイライラするものもあったようだが……。

 魔法使いでも強力な武器が所持できるので、戦闘に参加させることもできたが、鎧を装備すると攻撃魔法が使えなくなるので、プレイヤーの好みで個性を出すこともできた。

 今回の目的は「ファイヤークリスタル」の確保だが、マップが前作と比べると非常に難しくなっており、落とし穴やワープにくわえ方向感覚を失わせるターンテーブルなども仕掛けられていたため、マッピングの難易度も上がっていた。

 プレイキャラクターは『ザ・ブラックオニキス』で育てたものをインポートして使えるのだが、ブラックオニキスを手に入れているとその段階で2レベルアップするので有利にゲームを進められる。今回のキーワードは“ケイマトビ”だが、将棋を遊んだことがない人にとっては、やはり難しい謎解きだっただろう。

発売されなかった『ザ・ムーンストーン』幻と消えたタイトルは、僕たちに永遠の夢を見せる

『コンプティーク』1987年5月号のスクープ記事より。誌面には、制作スタッフへのインタビューやゲーム画面予想図、モンスターグラフィックなども掲載されていた。パッケージイラストになる予定だったラフスケッチも公開されている。イラストを担当しているのは、生頼範義氏。小説「幻魔大戦」シリーズの挿絵などや、ゲームでは光栄作品のパッケージも多く手掛けていた。

 そして3作目が、『ザ・ブラックオニキス』のアウトドア編とアナウンスされていた『ザ・ブラックオニキス3(仮)」。途中でタイトルが『ザ・ムーンストーン』となり、正式に発表される。

 しかし、いつまでたっても発売される気配がない。「今作っている」「今はハワイで制作中」「完成近くまでいったけどやり直し……」といった話が当時のパソコンゲーム雑誌に流れてきては消えていき、気が付けばそのままフェードアウトしていた。

 冒頭に書いたように、前評判だけでこれだけ盛り上がったゲームというのも、なかなか見当たらないのではと思われる。それだけ、筆者を含めた当時のユーザーが期待していたということなのだろう。各雑誌とも、発売前にもかかわらず少しの情報だけで特集を組んだというのも、それを裏付けているのではないだろうか。

 「ブラックオニキス」シリーズは、日本のRPGの礎を築いた、そしてBPSというメーカーの名前を一躍有名にしたタイトルだったのは間違いないだろう。果たして、『ザ・ムーンストーン』というゲームはどのようなものだったのか、当時のファンは一生その面影を追いかけるのかもしれない。そして、我慢できないファンが数少ない資料から、現代に蘇らせるかもしれない!?

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