ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

名作ソフト一網打尽「ハイドライド」シリーズ ~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~

永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、“名作ソフト一網打尽「ハイドライド」シリーズ”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。


名作ソフト一網打尽「ハイドライド」シリーズ


彗星の如く登場した『ハイドライド』はアクション要素を取り入れ進化した新感覚RPG!


ベースとなったPC-8801版は画面瞬間切り替えスクロールだが、X1版は背景スクロール方式だったり、FM-7版には隠れキャラクターがいたりと、機種の特色を活かす方向で移植されていた。

 1984年といえば、1月に当時のRPGの代名詞ともいえる『ザ・ブラックオニキス』が発売され、少しずつRPG文化が花開いていった頃。とはいえ、多くは『ザ・ブラックオニキス』ライクなシステムを採用しており、目新しいものはまだまだ少なかった。そんな年の末に、彗星の如く登場したのが『ハイドライド』だ。

 記念すべき1作目となった『ハイドライド』は、それまでのRPGが“静”だったとすると、アクションという“動”を取り入れた新感覚のRPGといえる。その斬新なシステムは多くのユーザーに受け入れられ、パソコン雑誌のランキングに発売以来2年間も載り続けるという人気ぶりで、当時“ハイドライドシンドローム”と呼ばれる現象を起こしたほどだ。ただし、当初はアクションRPGとは呼ばず、「アクティブRPG」という名称を使っている。

 全部で3作品がリリースされ、“フェアリーランド”と呼ばれるパラレルワールドを舞台に、物語が展開していった。1作目である『ハイドライド』では、人と妖精が共存する異世界の王国フェアリーランドの平和を保つ3つの宝石のうち、1つが人間に奪われたことで封印されたバラリスが覚醒してしまう。王国のアン王女も呪いにより妖精の姿にされ連れ去られるなか、1人の勇敢な若者(ジム)が立ち上がるところから物語は始まる。

 プレイヤーは主人公のジムを操作し、「ATTACK」と「DEFENCE」という2つのステータスを使いわけて敵を倒し、経験値を稼いで成長させて、最終ボスのバラリスを倒す。RPGなのに、アクションゲームのように敵に体当たりしてダメージを与えるというのが斬新だった。

 また時代を反映してか、今のようにストーリーを追っていくだけではなく、隠された謎を解かない限りはクリアできない仕様になっていたため、当時のプレイヤーは謎解きに頭を痛めたものだった。


マップの広さは約6倍!さらに新要素の「TALK」を取り入れるなどして、ユーザーに挑戦した『ハイドライドII SHINE OF DARKNESS』

前作からマップを大幅に広げ、魔法の要素を追加。くわえて、より難しい謎解き要素を入れ込んだ作品となった。魔法はファンクションキーを押すだけで発動出来るので、アクションゲーム感覚で遊べる。地下帝国のデュアルダンジョンに悩まされた人は数知れず?

 その1年後、『ハイドライド』の6倍にもなる広大なフィールドマップや数多くの謎を盛り込んだ続編『ハイドライドII』が登場する。システム面でも前作からパワーアップし、善悪の概念や魔法の要素が取り入れられた。

 クリスタルや地下帝国のダンジョンの秘密を解かないと先へ進むのが難しいなど、難易度も大幅にアップ。前作の「ATTACK」と「DEFENCE」にくわえ、新たに「TALK」というステータスが用意され、街の人と会話ができるようになった。これを利用して丁寧に話を聞かないと謎を解くのは難しいのだが、肝心の会話もヒントだけで……

 特に、序盤に手に入るブラッククリスタルで悩まされ続けた印象が強いタイトルだろう。街でBONZEとアクションゲームで戦い勝たないとSTRが上がらないといった要素もあり、目新しさという点では前作に引けを取らない作品だったのではないだろうか。

 ちなみに、『ハイドライドII』のストーリーはこんな感じだった。平和を取り戻したフェアリーランドの地下深くで邪悪に満ちた意識が覚醒し、怪物と広大な地下世界を創り出す。そのとき、神は人間のなかからまだ心の汚れていない少年をフェアリーランドへ召喚する……

シリーズ総決算の3作目は、最大のボリュームで登場! 200階建ての塔や重さの概念なども話題になった『ハイドライド3 THE SPACE MEMORIES』

前作は、最初に発売されたPC-8801シリーズ対応版は音楽面で寂しかった。しかし『ハイドライド3』では、サウンドボード2 に対応した楽曲が収録されるなど、BGM でも一気にパワーアップしている。“両替機”や“ハーベルの塔”といったキーワードを憶えている人も多いはず。

 『ハイドライドII』の2年後となる1987年11月には、シリーズ完結作となった『ハイドライド3』が発売される。グラフィックやサウンド面を強化し、時間や重量といった概念も取り込んだ意欲作で、不条理な謎も少なく遊びやすくなっていた。とはいえ、両替機まで登場させたのは、今思うとやりすぎだったような(笑)。単に重い装備品や、漬け物石といった何のためにあるのかわからないアイテムなども登場し、プレイヤーを悩ませた。

 T&E SOFTのある名古屋にちなんだアイテムも収録されており、ユニークな一面を覗かせたかと思えば、200階以上もの高さがある塔が用意されるなど、さまざまな面で話題になったのも事実。

 物語は、再び平和を取り戻したフェアリーランドが歴史を重ね、人間の世界のようになっていった時代が舞台。ある晩、突然地響きとともに巨大な火柱がフェアリーランドに立ち上り、その翌日から各地で不思議な現象が起きる。そして、消えたと思っていた怪物たちがまたも地上を闊歩する現状を見て、修道僧は原因究明を1人の若者に託した……

 衝撃的なエンディングと、「不思議が当然フェアリーランドってね。」という妖精のセリフが心に焼き付いている人も多いことだろう。

 その後、同社の看板タイトルともいえた「ハイドライド」シリーズは、続編が出ることなく(シリーズ作品を1本にまとめたタイトルは出るものの)歴史の表舞台から静かに去っていくが、80年代を駆け抜け、T&E SOFTの一時代を築いた作品であることは間違いない。

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