ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

岩田聡氏がプロデューサーを務めた傑作ピンボール『ローラーボール』

カートリッジスロットを一回りちょっと大きくした紙のパッケージに、カートリッジと取扱説明書が入っているシンプルな構成になっています。パッケージに描かれているのはイメージイラストですが、奥にプレイヤー側が配置されている珍しい構図でした。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、株式会社HAL研究所(パッケージ&マニュアル表記)から発売されていたMSX用名作ピンボールゲーム『ローラーボール』を取り上げました。

広告では「マジメな君には、おすすめしない!!」とのキャッチコピーで宣伝されていました。

 アーケードゲームを自宅のパソコンでプレイしたいという願望は、マイコン・パソコンの生まれた1970年代からありました。その“遊びたい”タイトルの中には、ゲームセンターで人気を博していたピンボールも含まれています。しかし、元からコンピュータ上で作られたアーケードゲームと違い、ピンボールは物理的な挙動部分が多いため再現が難しく、当時それほど多くのタイトルは出ていませんでした。

 そんななか、1984年11月にMSX用ソフトとして発売されたのが、今遊んでも面白い傑作『ローラーボール』です。タイトル画面を見ると分かるように、プログラムなどを松岡聡さん、プロデューサーを岩田聡さん、音楽を菅浩秋さん、キャラクターを羽生昭夫さん、そしてタイトルロゴを中村さんが担当していました。

 本作の音頭を取った松岡さんは、集まった5人を“キムチブラザーズ”と命名したことから、本作のタイトル画面にも記されています。ちなみに、なぜそのような名前にしたのかはMSXマガジン1985年2月号に掲載されていて「麻布の自宅近所に韓国大使館があったから」と書かれていました。また、この5人はハル研究所創業時の学生アルバイトメンバーでもあるのですが、彼らが1978年に池袋・西武百貨店のPETショップにて出会ったことなども一緒に記載されています。

タイトル画面には、本作に関わった5人の名前が列挙されています。ここでスペースキーを押すと、プレイ人数&難易度選択画面に移りました。

 ピンボールということで、これと言ったストーリーは用意されていませんが、マニュアルには「ゲームセンターでおなじみ、世界中で愛されているピンボールが、4台分まとめてリアルに楽しめる! 4面続けて満載されたバラエティいっぱいの仕掛けの中を、すばやく複雑にバウンドするボール、どこまでコントロールできるかな? 栄光の100万点プレーヤーめざしてがんばろう!」とありました。

 プレイヤーはキーボードまたはジョイスティックで各画面に用意された左右のフリッパーを操作し、ボールを落とさないよううまく打ち返して点数を稼いでいきます。パッケージには書かれていませんが、マニュアルを見るとトラックボールにも対応しているとのことでした。タイトル画面でスペースキーを押すと、プレイ人数(1人または2人)と難易度(NOVICE、AVERAGE、EXPERT、PROの4段階から1つ)を選ぶことも可能です。

A面は、右上のレーンを通してホールキッカーにボールを入れられるかどうかが腕の見せ所となります。

 ゲームフィールドは縦に4画面分用意されていて、マニュアルによると上からそれぞれA面、B面、C面、D面と指定されていました。D面右側にあるプランジャーから打ち出されたボールは、まずA面に到達します。一番上なのでミスになることはなく、また右上のホールキッカーにボールを何度も入れればエクストラボールが得られるということもあるので、とことんまで粘っていきましょう。

 画面中央のスロットが一際目立つのがB面です。Aのスタンプターゲットに当てるとスロットの左が、Bは中央、Cは右のスロットがそれぞれ回転する仕組みになっていて、ベルが3つ揃うとボーナスマルチプライ(×1など)が1段階アップ! チェリーが3つ揃うと5000点ボーナスにくわえて、A面とB面の間に上向きのボールキッカーが出現するほか、後述するD面のボールキッカーも上向きになります。しかし、ゾーニと呼ばれるナスが3つ揃ってしまうと、点数が入らないどころかA面とB面の間に下向きのボールキッカーが現れ、さらにD面のボールキッカーも下向きに……。このペナルティは、ミスをするかベルを3つ揃えない限りは解消できません。ここでは、いかにしてベルとチェリーを揃えて稼ぐかがポイントになるでしょう。

スロットが目立つB面では、ベルやチェリーを揃えて点数を稼ぎましょう。なお、なぜナスがゾーニと言われているのかもMSXマガジン84年11月号に解説があり「某HAL研にゾーニなるナスの生き写し人物がいました。この人物は本物のナスと違って煮ても焼いても使い物にならない、はっきり言えばカスだったのです」といった理由から、悪役はゾーニしかいないぞ! となり、全員一致でその名前に決定したそうです。

 D面からボールを上げることで移動出来るC面は、点数が一番稼げるフィールドです。ABC各レーンを通過するごとに対応したドロップターゲットの色が変わり、当たるごとにボーナス点が加算されていきます。これは最高で99000×9まで増やせるため、どれだけ粘ってドロップターゲットを倒せるかがハイスコアへの道となるでしょう。

 一番下のD面は、ミスをするとボールが1つ減ってしまうため油断は禁物。ここで最優先するべきことは、ABCの面にボールを戻すこと。そのためには、まずは画面右側で縦に4つ並んでいるドロップターゲットにボールを当てて、すべて消すことです。すると、画面左のボールキッカー部分で光っている下向きの矢印が上向きになってボールを上部へと打ち出してくれるようになるので、そこをめがけて打ち返せば無事にB面へと復帰できました。

C面は、D面からボールを上げることで入れます。スタンダップターゲットにボールをヒットさせれば、最初は1000点だったものが2000点→3000点→……と10000点までアップしていきます。そこまで成長させて、得点を稼ぎましょう。

 これを繰り返して、ひたすらハイスコアを目指しプレイしていきます。デフレクトパス(落ちそうな軌跡のボールがあるときに、片方のフリッパーを上げたままにして先端にボールをかすらせ、その移動先を変える)などのテクニックや、両方のフリッパーを上げてしまいミスをするダブルフリップといったダメ技などが実機とほぼ同じ感覚で通用するので、ゲームセンターで遊び慣れている人でも十二分に楽しむことが出来ました。

 今見ると、ギミックの少なさが惜しいところですが、ボールの動きなどは1980年代のピンボールゲームとしては非常に良く出来ていて、現代でも問題無く楽しめます。何よりも4画面にしたことで、数々の仕掛けをこぢんまりとせずに配置出来たのが面白さの一因でしょう。

最下段のD面は、ミスをするとボールをロストしてしまうので注意! 目標は、右側に縦に並んでいるドロップターゲットにすべてヒットさせ、左側のレーンにあるボールキッカー部分の矢印を上向きにすることです。その状態でボールを入れられれば、B面へ復帰できます。

 本作は後にPC-8801シリーズへ移植されますが、その際には縦に4画面ではなく“田”の字のような4画面の配置となりました。

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