ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

古代祐三氏がサウンドを手がけた『ザ・スキーム』

外箱には、ヘルストーンズ教団の首領とおぼしきキャラクターと、それに立ち向かう国王マルスの姿が描かれています。マニュアルやFDは、ボーステックお馴染みの缶の入れ物に入っていました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、ボーステックから1988年に発売されたハイパーロールプレイングアクションと銘打たれた『ザ・スキーム』を取り上げています。

当時の広告を見ると、楽曲要素を大きくプッシュしているのがわかります。収録楽曲32曲のうち、16曲が「FM6重和音、PSG3重和音に加えてAD-PCM1音のスーパーポリフォニックサウンドが君の88で鳴る!」と大々的に書かれていました。更に、STOPキーを押しながら起動すると99曲のサウンドモードに入れることや、COPYキーを押しながら起動することでもサウンドモードに入れるという裏技まで載っています。

 1987年、NECはPC-8801FA/MAという、前機種であるPC-8801FH/MHから音源部分をパワーアップさせた新機種を発売します。既に登場していたPC-8801mkIISRなどには、別途拡張カードという形でPC-8801-23をリリースし、これを挿すことで音源部分に関してはFA/MAと同等になるような配慮も行われました。すると、その音源を活用したソフトウェアが、少しずつではありますが市場へとデビューするようになります。そんなタイトルのうちの1本が、1988年にボーステックから発売された『ザ・スキーム』です。本作は、あの古代祐三さんが楽曲を手がけていたことでも有名ですが、そのプロローグはこのようになっていました。

 遙か未来、我々の棲む地球から遠く離れた別の世界「惑星レア」。この実り豊かな星は、いま恐怖と殺戮の教団「ヘルストーンズ」に支配されていた。人々は凶悪な暴力に、脅え惑うばかり。このヘルストーンズ教団の陰謀を打ち砕くために、レアの国王マルス=レアが立ち上がる。ヘルストーンズ教団の首領ハーディを倒すために。右腕から出る「フォース」を唯一の武器に、「バイオ・エナジー」と「バイオ・フォース」でパワーアップせよ!ヘルストーンズ教団の陰謀とは?そして、首領ハーディの正体とは??

PC-8801mkIISR以降でサウンドボードIIを搭載している機種、またはPC-8801FA/MAの場合、起動すると楽曲をNORMALとSPECIALから選べます。2曲を除いて全く違うので、通しで2回はプレイしたいところです。
スタートして最初のステージは、左へ進んでいくと突き当たりでボスと戦うことになります。それまでに、レベル2から3までは上げておきたいので、途中の稼ぎやすい場所で敵を倒して画面切換……を繰り返し、FORCEを大量ゲットしておきましょう。

 ゲームは、プレイヤーが主人公のマルス国王を操作し、教団の陰謀を打ち砕くため敵を倒しながらダンジョンを突き進んでいくという、サイドビュー形式のアクションとなっています。最初はジャンプしか出来ませんが、スタート地点にあるアイテム・フォースシューターを取ることで右腕からフォースを発射することが出来るようになるので、これを駆使して先へと進んでいきます。マルスにはENERGYとFORCEという2つのパラメータが用意されていて、敵と接触したり被弾するとENERGYが一定値減少、0になるとゲームオーバーに。

 操作すると分かるのですが、キャラクターの動きが非常に滑らかなため、思い通りに動かせるのが凄い部分でした。その分、細かい動きも要求されるので、挙動に早めに慣れる必要がありますが……

最初のボスは、フォースを何となくジャンプでかわしながらこちらに向かって走って来ます。タイミング良くフォースを撃てばヒットさせられるので、焦らず対処すれば楽勝です。倒すと大量の玉をばらまきますので、全部回収したいところ。玉は放物線ぽい軌道を描いて動くので、思ったより簡単には取れないのが難しいです。

 敵は倒されると、赤と青の玉をそれぞれランダムで残します。玉には“I”、“II”、“III”、“▼”のいずれかが描かれていて、赤ならばFORCE、青であればENERGYが、それぞれ1(I)、2(II)、3(III)、または5(▼)アップします。これらを回収していき、FORCEが一定値を超えるごとにマルスのレベルがアップ! 攻撃力が上昇し、それまでよりも少ないフォース数で敵を倒すことができるようになる仕組みでした。

 舞台となるダンジョンには、特定の場所にマルスをパワーアップさせるアイテムが配置されています。それらすべてを回収しなければ、首領ハーディへたどり着くのは不可能。特に、ENERGYの上限をアップさせる“ENERGY(エナジー)”や、より高くジャンプ出来るようになる“POWER BOOTS”などは、ダンジョンを奥深くまで探索するためには必須となります。序盤に関してはマニュアルにマップが描かれていますが、それ以降は自力でマッピングする必要があり、サボると自分がどこにいるのか分からなくなってしまうことも。ダンジョンは思った以上に広いので、地道に少しずつ探索しなければなりません。

ボスを倒して地上を右へと進むと、いよいよダンジョン内へと突入です。下へと落ちていくのは楽ですが、上がってくるのは一苦労なので、攻略する順番を慎重に考えた方が良いでしょう。ここから先は道が入り組んでいるので、マッピングが不可欠となります。道中には、遠くから弾を撃ってきたり、近づくと自爆と同時に弾を発射する敵などが登場し苦戦させられることに……

 なお、ENERGYが0になるとゲームオーバーですが、その際にコンティニューまたはセーブが選択出来ます。ただし、コンティニューした場合はENERGYが半分になってしまうので、ゲームオーバーを極力避けて探索することが重要でした。マップは画面切換式で進んでいき、隣の画面に移動して即座に戻れば倒した敵もすぐに復活するので、これを利用して敵の数が多く攻撃しやすい場所を見つけ、そこで腰を据えて体力回復に努めるのがコツとなります。合わせてFORCEも溜めてレベルアップに励めば、一石二鳥に。

 こうして探索を進めていくと、いくつかの場所でボスとの戦いが待っています。相手は大量の弾を撃ってきたり、素早い動きでプレイヤーを翻弄してくるので、事前にレベルを上げまくっておいてから戦えば苦戦することはないでしょう。

ダンジョンの中には、マルスをパワーアップさせてくれるアイテムも配置されています。これらを漏らさず回収することが、首領ハーディへの近道。そのためにも、マッピングは欠かせません。

 PC-88というハードで、滑らかなアクションゲームを実現したのは特筆すべき部分ですが、もう一つの特長と言えば、古代さんが手がけた名曲が大量に収録されているというところです。PC-8801FA/MAが登場したことで、この時期にはその音源スペックに合わせた楽曲を収録したソフトが登場していますが、本作はPC-8801mkIISRが搭載していたFM3声PSG3声(ノーマル音源版)の曲にくわえて、サウンドボードII準拠のBGMも収録されていました。しかも、2曲を除いて各音源ごとにまったく違うものが聞けるというのも、今考えれば非常に贅沢な仕様です。

 特に、サウンドボードIIに対応させた16曲はすべて古代さんが作曲を行っていて、各曲に関してのコメントを当時発売されていた、マイコンBASICマガジン別冊『チャレンジ!! パソコンアドベンチャーゲーム&ロールプレイングゲーム IV』に掲載していました。興味がある方は、ぜひ同誌を手に入れて読んでみてください。

 『ザ・スキーム』は、現在ではプロジェクトEGGにて無料で配信(月会費は必要)されていますので、まだプレイしたことがないという人は、この機会に遊んでみるのも良いかもしれません。

【プロジェクトEGG The Scheme for PC-8801 (1988)】

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