ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち
ゲームソフトの自動販売機「ソフトベンダーTAKERU」 ~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~
2022年8月9日 00:05
連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。
今回取り上げるページは、“ゲームソフトの自動販売機「ソフトベンダーTAKERU」”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。
ゲームソフトの自動販売機「ソフトベンダーTAKERU」
約30年前に存在したダウンロード販売システム!ゲームソフトの自動販売機「ソフトベンダーTAKERU」
パソコンソフトの自販機「ソフトベンダー武尊(TAKERU)」が登場したのは、1986年のこと。現在は複合機で知られるブラザー工業が開発し、全国のパソコンショップを中心に設置され、CMも繰り返し放送されて話題となった。
おもな仕組みは、ユーザーが選んだタイトルを、デジタル通信回線でホストコンピュータから「TAKERU」本体にダウンロードし、そのデータをフロッピーディスクやROMカートリッジ、カセットテープに書き込んで販売する、というものだった。
具体的な購入の流れも説明しよう。「TAKERU」本体のモニターを見ながら、機種とほしいタイトルを指定し、料金を投入すると「TAKERU」オリジナルのパッケージが出てくる(のちにパッケージは廃止)。中には何も書き込まれていないメディアが入っているので、取り出して「TAKERU」本体のスロットに差し込む。すると、データの書き込みがはじまり、そのあいだにマニュアルが印刷され、書き込みが完了したら終了、といった具合だ。購入までにかなり時間がかかるのは、ご想像の通り。
対応機種は、PC-8801mkIISR、PC-8001、PC-6001、FM-7、X1、MSXなど15機種で、その後、本体のバージョンアップに伴い、PC-9801やX68000、Windowsなどもくわわっていった。そして、タイトルラインナップは、新作や人気ゲームが中心。市販の通常版と内容は同じで、流通コストを省いたことと、パッケージやマニュアルの簡略化による安さをウリにしていた。たとえば、アートディンク『A列車で行こう』は通常版の7,800円に対し、“TAKERU価格”は6,600円。
そのほか、「TAKERU」でしか買えなかったり、パッケージ販売のない作品も存在感を示した。たとえば、KGDソフト(工画堂スタジオ)の『へらくれす』は、メーカー直販と「TAKERU」のみの販売。機種によって「TAKERU」専売というタイトルもあった。
ほか、日本ファルコム『ソーサリアン』用追加シナリオやデービーソフト『今夜も朝までパワフルまあじゃん2』用データ集など、本編の楽しみを拡張するソフトも「TAKERU」ならでは(といいつつ、『ソーサリアン』の追加シナリオにはパッケージ化されたものもあったが)。さらに、雑誌『ログイン』のソフトウェアコンテスト入選作品は、長らく『テープログイン』(雑誌掲載のプログラムを収録したカセットテープ)として頒布されていたが、やがて「TAKERU」で販売されるように。後期には、同人ソフトの取り扱いもあった。
ややこしいのが『COSMO 聖士LEAZA』といった「TAKERU」オリジナル作品で「TAKERU」での販売のほかにパッケージ版も市販され……。
そんな「TAKERU」は、1997年2月末日にサービスの終了を迎える。ビジネス的には失敗だったそうだが、その技術は通信カラオケ「JOYSOUND」に活かされ、別のカタチで成功を納めたと聞いている。